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SRさんのこいとれ ~REN-AI TRAINING~の長文感想

ユーザー
SR
ゲーム
こいとれ ~REN-AI TRAINING~
ブランド
銀時計
得点
90
参照数
929

一言コメント

魅力あふれるキャラと独特の設定を上手くまとめた感じの快作。今年の台風の目になれるか

長文感想

ホントは買うつもりありませんでした。
悪名高い銀時計ということで最初からマークしていなかったというのも理由の一つですが、
同じ時期に発売される「Honey Coming」の方を買うつもりでいたからです。
ただ、「Honey Coming」の体験版があまりにつまらなかったため、購入を止めていたところへ
諸兄より、似たようなテーマでなかなか良いブツがあるとの報告。
早速、体験版をプレイし、「ホケマクイ」の話を読んだだけ(開始1分)で、買いに行きました。


【ストーリ】◎
物語の舞台となる恋愛部。その名前から周囲から変な目で見られ、悪い噂が絶えない部。
そんな恋愛部にひょんなきっかけで出会った主人公は、「恋愛」について真面目に議論する
部員達の姿を見て心動かされ、紆余曲折がありながらも入部することになり、
恋愛バトルロワイヤル、通称「ラブロワ」に参加して、「本気の恋愛」とは何か知ろうとするのだが・・・

「恋愛部」に加えて「ラブロワ」と、発想がかなり斬新でほとんど先の展開が読めませんでした。
しかも、プレイヤーへ与える情報を適度に制御して「思考の指定」をしてくるので、
多分こうなるだろうと安易に展開を予想すると、あっさりかわされます。
また、笑いとシリアスをテンポよく投入することに飽き足らず、恋愛講座ではプレイヤーに考えさせるなど
中身が非常に充実しており、プレイしていて眠くなるようなことはありませんでした。

純粋にストーリだけを抽出すれば、多分あまり目新しいものはないはずです。
しかし、そこに「恋愛部」「ラブロワ」という特殊な設定と魅力的なキャラクターを組み込むことで
ストーリに新鮮さが出している印象です。
共通ルートがやや長いため、2週目以降は少し物足りなさを感じますが、
各ヒロインルートも読み応えがあり、萌えるもよし、苦悩するもよし、で十分楽しめると思います。


【システム】◎
恋愛偏差値。ただのルート決定用の選択肢だけではなく、「恋愛」に関する設問(ある種の心理・
推理ゲーム)を加えて、プレイヤーに考えさせる機会を取り入れています。
セーブ&ロードすれば簡単に高得点は出せますが、少なくとも1週目はやり直しをせず、
真剣に考えるとより面白いと思います。

また、本作は演出効果も結構凝ってて良かったと思います。立ち絵の細やかな動きは
「はぴねす」と同レベルかそれ以上ではないでしょうか。
個人的に一番好きなシーンは、「うたはは回転した」です。


【音楽】◎
テーマ曲「TIME」は片霧烈火さん担当。悪く言えば普通のJポップなのですが、爽やかなメロディーと
青い歌詞で、繰り返し聞くたびに愛着の湧くてくるような味わい深い曲です。
また、BGMも良いのがそろっています。その中でも挙げるとすれば、
・「恋愛部にようこそ」
 生き生きとした恋子先輩に恋愛講座にぴったりの躍動感あふれる曲です。
・「砂糖菓子の制服」、「渚」
 どちらも物悲しい曲調。ゲーム序盤はこの曲が流れてくるたびにちょっと泣きそうになりました。
・「十二ヶ月の魔法」「始まりに涙はいらない」
 ストーリの終焉部、解決編を中心に使われる曲でますが、しんみりした気分を漂わせるとともに
 明るい未来をイメージさせる前向きな曲です。
サントラ買っちゃいそうだな。


【CG】◎-
立ち絵のバリエーションが多く、演出効果も手伝って各キャラクターの表情が豊かに表現されています。
特に愛くるしい目と口もとが印象的な絵でした。
また、数はやや少なめですがSD絵も可愛く仕上がっています。
ただ、個人的に気になったのは、体のラインの細さ。絵師さんの持ち味なのでしょうが、
一部の絵ではちょっと異常なくらいバランスが悪く、おかずにはとても使えません。
というか、このゲームにエロはあまりいらないように思えますが。


【お気に入りキャラ】◎
正直、どのキャラもそれぞれ味があって好きなのですが、その中から選ぶとすれば・・・
・沢崎うたは
 ライターさんの思惑通りあっさり撃沈しました。あまりのツン度の高さに「そこは違うだろぉ~」と
 もだえること数知れず。風音さんもGJです。
・沢崎海
 これもライターさんの狙い通り撃沈しました。もう表情、仕草が可愛くってしようがなかった。
 加えてあの健気さ、一途さは卑怯です。
・渡会俊之
 ただのおバカキャラと思いきや。物語の要所要所で投げかける彼の言葉にかなり心打たれました。
 小萌ルートの特に終盤~エピローグは見ものです。


【まとめ】
私としては、今年プレイした中では一番面白かったです。
プレイ直後で補正が入っているかもしれませんが、今までプレイしたエロゲの中でもTOP5に入ると
思われる出来だったので90点としました。
アイデアの新鮮さに加え、萌え、名セリフがふんだんに入っており、そこに少々のサプライズを加えて、
名作と言える作品に仕上がっています。
もちろん、矛盾するところ、強引で屁理屈っぽく話を持っていくところなど、あら捜しをすれば
たくさん細かい欠点が出てくると思います。また、オタク好みなテキスト、きれい過ぎるセリフなど、
人によって気に食わない点を挙げればきりがないかもしれません。
従って万人にお勧めするものではありません。しかし、複雑なストーリ・人物相関を上手くまとめて、
良質の音楽・CGで味付けした本作は一度プレイする価値はあるのではと思います。

これが昨年バグで一躍有名になった銀時計から出るとは全く予想できませんでした。
本当は前作におけるメーカ対応のあまりのひどさを見て、素直に誉めたくはないところですが・・・
とりあえず、本作ライターのなかひろさんには今後の活躍に期待しています。
まずは、過去作の「Heaven's Cage」あたりをやってみようかなと。