主題と手段の従属関係方向に悩む、今のところ出口のないゲーム。調理失敗してないかコレ
Gangsta、と聞くとなんとなく思い浮かぶのはジョルノではなくO.G.LOCなんですが、
前者についてはGangsterなので、子供っぽいニュアンスのあるGangstaよりも
もう少しヤクザ的なニュアンスがある、いささか違う言葉です。
そういったヌルい悪を楽しむゲームなのかなーと思いつつギャングスタ・リパブリカ。
とりあえず私感。
・1部について
総じて1部では殆どシステム的な部分しか語る所がありません。
最初から最後まで殆どラブコメをやっていて、
主題を強く感じさせるような展開が少ないように思えます。
宮本はキャラクター的にはかなり好みなので、BADの展開は少々残念でした。
言うなれば、ゆとりと叶の中間点の人材のような気がします。
しかし、仲間というキーワードから一番遠い人なので、この扱いもやむなしといった所でしょうか。
展開として一番自然なのはこおりルート。
エロゲー的幼馴染みの文脈を踏襲しているので、多少説明不足で
ラブラブ状態に突入しても誰も気にしない。むしろ王道。
禊ルートは2部で語られる情報を恣意的に遮断している気がします。
起承でシナリオが終わっており、内容は無いに等しい。
・希というキャラクターについて
教師としての天才性と、妹キャラとしてのアホさを同居させるという試みは
テキスト上不自然なことになりかねないとは思ったけれど、
そこまでそれを感じさせないのは良いキャラクター作りだと感じました。
2部に関しては最も理知的な会話をしていたように思います。
なので、個人的に対立で勝敗を付けるならどのルートでも希を選びたい。
特に話が噛み合っていないゆとり・禊との対立ルートではそれが顕著。
希関連のルートでは、希を積極的に選んでいるという印象がありません。
叶は「妹だから~」という理由を付けて好きと言っていることが多いように思いますが、
それは希の好きという理由とはかなり違うものに思えます。
総じて、今ひとつ報われないキャラクターだなぁ、という印象です。
・ゆとりというキャラクターについて
1部ではイノセントな楽しさを存分に発揮していたように思いますが、
2部ではどうもその毛色が変わっているように思います。
この違和感を上手く説明できなかったのですが、
ゆとりvs希ルートでの希の発言でしっくり来ました。
「――おまえが好きなのは、お兄ちゃん自体じゃない感じがある」
「おまえの感情には、ワンクッション入ってる」
「おまえが見てるのは『仲間』って奴じゃないか? おまえのまなざしには、
不純物が挟まってる」
ゆとりからのストレートな好意の告白は1部にしかありません。
また、それに対する叶の返答も非常にあいまいなものでした。
エロゲー的な主人公の鈍感さを抜きにしても、私には正直言って、
叶に対する好感情を見ることは出来ても、恋愛的な好意を見出す事は難しかったです。
・禊GenesisとこおりGenesisの矛盾について
材料不足の為解決不能。
まぁ、一応推測を言うと、多分禊ルートとこおりルートは繋がっていないのでしょう。
禊1部:共有ループ開始
→禊2部:共有ループn周目で禊-こおりの対立軸発生
(矛盾点:なんで2部にだけ補習があるのか)
こおり1部:叶二年時のお話。
→こおり2部:叶三年次のお話(ラストのクラス分けは1部-2部の間の話)。
→こおり-禊の対立軸発生はたまたま。
(矛盾点:2部におけるシャールカの存在そのもの)
という感じで。
・屋上における禊との契約とこおりの告白について
材料不足以下略。
以下推測。
そもそも叶が共有ループに入れるかどうかは設定上大きな問題ではない。
叶がループをしているふりをしていた(=禊を含めた共有ループをしているふりをしていた)
としても、共有ループに入っている叶以外のギャング部には、
ループ後、叶が本当に同じ共有ループに入っていたかどうかは確認できない筈だから。
それを前提に、
禊は初回プレイの契約の時点で、叶と共有ループに入っている。
→なので、2周目以降禊としては同じ行為を繰り返す必要はない
→こおりの屋上の告白は、その都度禊の共有ループに消されてきた
という感じで。
・2部の構造の複雑さについて(攻略面でのお話)
正直プレイ時間の半数はルート探索に当ててました。
こういう行き当たりばったりな探索は大好き。
基本的に2部では最初にモチーフを選択肢、八方美人的な選択肢を選ぶとすれば
(一部、2部前半の選択肢によって行けるルートが限られる状況が存在します)
ライオンルート:禊vsこおり・禊vsゆとり・禊vs希
オオカミルート:禊vsこおり・こおりvs希・こおりvsゆとり
ウサギルート:禊vsこおり・禊vsゆとり・ゆとりvs希・こおりvsゆとり
イルカルート:禊vsこおり・禊vs希・ゆとりvs希・こおりvs希
のように分岐できます。
モチーフによって共通会話はほとんど(2日目起床時と希vs川嶋の会話のシーンのみ)変化せず、
対立ルートに入るまでの選択肢の流れが若干異なるのみで、
対立ルートそのもの、及びその後のエンディングには影響がないため、
私のように全24パターンのエンディングやテキストを確認するとかいう不毛な作業は
やらない方がいいと思います。
少しくらい差異を付けてもいい気がするんですけど……
・総論
悪を純粋にテーマにしたルートは実際の所ほとんどなく、
精々禊vsこおりルートくらいのものでしょう。
他のルートでは基本的に悪や仲間は単なる議論のきっかけで、
その実叶を巡る恋愛バトルになっていやしないか? と思います。
基本的に叶は全く選択せず、受け身で、gdgdエロゲーの主人公の鑑のような存在です。
これは作中でも散々言及されていることから、かなり意図的な演出でしょう。
恐らくヒロインの言説を遮らないような、
ディベートにおけるジャッジのような役割を期待されているのでしょうが、
プレイヤーにとっても正直イライラするタイプの主人公ではないでしょうか。
ループだとか天使だとかについて。
さわりだけしか触れられていないためこの点に関する考察はほぼ不能です。
これは難解とかそういうレベルの問題ではなく、単体の商品としては失格でしょう。
まぁアルカディアも買いますが……
そこで全てが明かされるとしても、こういった手法は褒められたものでは無いと思います。
Gangsta、という言葉から受けるとおり、1部については逆中二病的な
子供っぽい悪を楽しめるゲームでした。
一転、2部ではヒロインの対立が主な話題になりますが、
あくまで対立であって、敵対ではありません。(なんか一部ルートはそうでもなかった気がするけど)
ただ、対立がその後の展開に与えた影響といった意味合いを考えると、
どの対立ルートを通っても、選んだヒロインのエンディングは同じという構造は
結局何のための対立だったのか?と思わなくもありません。
恋愛SLGである以上、叶とヒロインの物語は少なくともゲームの手段です。
ではゲームそのものの主題は何だったのかと言うと、よくわからなくなってきます。
対立軸? 悪? 仲間? それら全てなのでしょうが、これらは調和していたでしょうか?
ルートによっては、それらがすっ飛ばされた上で、結局恋愛話にしかなっていない物がなかったでしょうか?
もしかしたら、これらのパーツを纏める物が、最後に少し提示された
ループや天使のお話だとかいうお話なのかもしれません。
しかしその点に関しては先述の通り擁護できないので、
個々の材料が良いだけに残念なのですが、
調理にいささか失敗していないかなこれ、という印象は拭えないのです。
以下雑感。
・1部・ゆとりルートHシーンの邪悪なテキストは正直ツボでした。主に笑いの。
・こおりさんの豆腐メンタルっぷりに若干苦笑(vs禊ルートを除く)
・「触手が嫌いな女の子なんかいません!」(@禊vs希ルート)
流石の俺でもそれは引くわ(AA略)
・合宿で禊が舞わないルートはゆとりvs禊ルートでゆとりを選んだ時のみ。
このルートのみ禊が明確に仲間を否定しているので残念だが当然。
・選択によっては「こおりの思いに応える」選択肢を断ってもこおりルートに進入可能。
どうなんだそれ。
・川嶋先生の大人っぷりに感心。主にゆとりvs希ルート。
・ゆとりに対する叶の評価は全体的に過大評価。本当に。
・春日君かわいいんだからもう少し話に絡ませても面白かったと思う。あっ…(察し)
・一番噛み合っていた2部ルートはこおりvs希じゃないかなぁと思いました。
・個人的にOPは猫撫よりもカッコよくて好きです。
・ゆとりvsこおりルートのあみだくじ、ゆとりが他ヒロイン役引かなきゃ成立しないんじゃ…
・一番好きなキャラはシャールカなんですが、これは対立を行わない事で
思考の粗や、嫌な部分に目を向ける必要がないというメリットがあるからでしょう。