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Realiveさんのるいは智を呼ぶファンディスク -明日のむこうに視える風-の長文感想

ユーザー
Realive
ゲーム
るいは智を呼ぶファンディスク -明日のむこうに視える風-
ブランド
暁WORKS
得点
90
参照数
918

一言コメント

完結編と言うより続編、果たして救いは有ったのだろうか…

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今作はファンディスクと言う事で、前作攻略している事を前提で真っ当な感想
では無く、他の方と違う視点で私なりの思った所を書いて見ようと思います。

何故かと言うと、この作品自体の「能力と呪い」の扱いが人生哲学ぽいので。

普通、ゲームの設定で「特別な能力」を持って…迄は良く有りますが「呪い」
と言う代物を代償として持ち、有る条件を「踏む」と死が訪れると言う設定。

前作の疑問でも有ったのですが、果たして与えられた能力に見合う(釣り合う)
呪いだったのでしょうか?そして「お話」として救済は無理なのでしょうか?

「能力の代償」として「呪いが死を呼ぶ」と言う話は、ストーリー的に重みと
ご都合的展開が出来て「同盟」が後に「絆」に変わる話には異論は無いですが
前作のエピローグで、能力と呪いが消えた後の救いが、余り無く残念でした。

そして今回、話の結末として、救われ無いのでしょうか?その辺が解決される
と思ったのですが…残念ながら、救いは無く期待外れと謂わざるを得ません。

私には「人生は幸も不幸も釣り合う事が無い、幸せは約束されないのが運命」
と言われている様で…「生きてさえ居られるだけで幸運」とかは解りますが。

確かに「生きて居る内に一瞬でも幸せと思える時が有れば、その人生は幸せ」
と言うのが、自前の人生観なので理解はしますが「お話」として納得出来るか
と言えば別問題で…今回FDと言う事なのに、その辺り救いが無いのは何故?

今回のFDでは前作の「呪い」と言う、テーマとは違う視点からのお話として
作られいて「呪い持ちを、端から救済する気なんて無い」って感じなのです。

…と、言うのは多分これが単なるFDではなく続編に近いからなのではと思う
のです。話的には前作の個別√辺りから、智が平行世界をザッピングする様に
「可能性」を「未来視」の力により、最適解をひたすら探す展開に成ります。

これでは「無限にある可能性」探し止まりで終始しして「完結する気は無い」
と感じました。実際このお話は「結末を迎えるのが趣旨では無い物語」です。

「起承転結」と言う事では「結」がほぼ無いので、結末や後日談等を望む人に
とっては煮え切らないと思いますが…。その代わり智と真耶の話の掛け合いで
「未来に有る可能性」を捨て否定するか?と言う取捨選択の話が展開します。


「誰もが幸せになれる世界なんて存在しない」と解っていても、それでもと、
探し続け、真耶と対決して相打つ事に…。智は皆の為、真耶と相殺を選ぶ…。

「信じなければ、裏切られない。関り会わなければ、傷付けられない」でも、
それでも…智の結論は…(何処かで聞いた様な、台詞と展開ですが)最後に姉に
助けられて、でも「一人じゃないから。みんなもいるんだ」と、外を目指す。

「呪われた世界が来たって、平気。そんなものは、やっつけてやる」と真耶と
約束して…「僕が守れなかった姉さん」と最後の別れをして皆の所へと帰る。


前作の結末等を期待していると最悪「駄作扱い」と成って仕舞うと思いますが
今作の「お話」は、前作とは明らかにテーマの趣旨、方向性を変えています。

「FDだけど趣旨が違わない?」と感じた人は、今作のテーマが気に入れば、
気持ちを新たに楽しむ事が出来れば、得る物が有るのではないかと思います。

でもね、正直ご都合主義でも何でも良いから「彼等に幸福が約束された未来」
が見たかったって贅沢ですか?FDなんだから、少し位夢見させて下さいよ。