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R_LuciaさんのBALDR BRINGERの長文感想

ユーザー
R_Lucia
ゲーム
BALDR BRINGER
ブランド
戯画
得点
85
参照数
1396

一言コメント

トゥルー+それに向けての伏線

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

私は今作のトゥルー√がとても好きだった。酷評がとても多く悪い面だけをみてプレイするのを避けているユーザーが多く感じるのが残念に思う。もちろん悪い面も多く存在するがどうか最後までシナリオを読み切って欲しい。

以下個人的な考えと感想
バルド作品として全てを見てしまうと戦闘システムやキャラデザなど受け入れずらい箇所が多々ある作品ではあるがシナリオは単一の作品とすれば侮れないものがある。
そもそもとして本筋を執筆したライターとは違うライターが過去作の設定や伏線をつかいゲームのシナリオを書くと言うのが無茶ぶりではないだろうか。もちろん大人の事情やブランドの事情があるのだろうが。
 まず、各キャラの個別√に位置するようなシナリオが10余りあるが過去作品の舞台や敵、設定を使用しているので過去作品をプレイしていると「おっ」と思うような場面もかなり存在する、だがそれ止まりであることは否定できない。まず各女の子の性格や過去を区別できており、それに対する主人公の接し方や立ち位置などもある程度はよくできている様に思う。しかし基本的に短い話がぶつ切りで展開されるので感情移入などする時間はほぼ無い。各々こういう過去がありそこで何をしたから今こうなってこういう思いを抱えているといいう設定を読んでいるだけの感じてしまう。そしてそこに主人公が助けたいや支えたいなどの感情を抱いてもプレイヤーは「なんやこいつがんばるな~」ぐらいにしか思えなくどうも主人公が自己陶酔ぎみに見えるのが残念だ。そしてそのシナリオが、戦闘→シナリオ→育成→戦闘→シナリオ・・・と基本的にワンパターンなので3,4人終わらす頃には嫌でも作業感を感じてしまう。恐らくここで挫折してしまう人も多いのではないだろうか。特に育成にあたる部分が武器のドロップなど運要素がからんで来てしまうのでシナリオを進めるテンポが最悪になる。戦闘に関しては物量の敵やこちらのバリエーションが少なくなる戦い方など欠点は多くあるもののゲームとしては悪くはなかったと思う。やばい良いとこ全然かけてない。
 しかし作業感のある戦闘やめんどうなことこの上ないドロップなどがあっても大筋であるエリスのトゥルー√はプレイする価値があるものになっている。ここまでの個別√っぽいシナリオはトゥルー√のための尊い犠牲となられたのだ。根本のシナリオに関してはゲームの始まりから最後まで様々な伏線や演出が用意されている。バルドという作品の世界が行く着く儚い結末がそこにはある。なかには戦闘の物量で押してくる敵を大量に倒すという行為を設定とシナリオに織り込んでいるのは目覚ましい。さまざまな出来事が絡み合って収束していくさまはやはりバルド作品のだいごみであるだろう。しかし、ここでどうしても好き嫌いがでてしまうのが今までのバルド作品と話の流れ、形態が全く違っているからだ。今までは一つの時代や場所がありその中で主人公達が戦いそして生きていた、社会や他の生きる人々との対比や描写も多くそれこそバルドと言う1つの世界観を作りあげていた。では今作はどうなのか。ざっくり言うと今作はセカイ系寄りになっているのではないだろうか。基本的には主人公とヒロインと言う関係以外の人物の描写だけでシナリオが展開され、黒幕やそこに至るまでの過程は存在するがそれも語られるのではく作中で残された物を読み解いて知り得ることが多い点や、主人公の存在や選択がこの作品の世界そしてはヒロインの在り方を左右してしまう点などがあげられる。私個人的にはセカイ系と呼ばれるような作品には好きな物も少なくはないのでとても面白く心に刺さる内容ではあったのだが、これまでの様なバルド作品のシナリオを期待しないしは今作の様なシナリオの形態があまり好きでは無い人からするとBALDR BRINGERは残念な作品に映ってしまうのも仕方のないことだと思う。とにかく合う合わないはあるとしても途中で投げず最終的なこの世界の行く末のお話を見届けて頂きたたい。


全ては彼女の物語です、彼女の為に戦ってくれる主人公に、彼女の為に彼女を憎んだダスク、中にはそれぞれの理想とした世界で過ごす女の子たち。最後にに世界がどんなふうになるかは主人公よりも主人公を選んだ女の子次第では無いでしょうか。終わっていた世界に突如現れた主人公が女の子を助けてくれる夢の出来事・・・
サブタイトルにもある様に「The story about a little dream a dead world dreams」なのでしょうから