ErogameScape -エロゲー批評空間-

RX-93ν-2さんのFloating Material -The hill where the star born-の長文感想

ユーザー
RX-93ν-2
ゲーム
Floating Material -The hill where the star born-
ブランド
biscotti
得点
65
参照数
2886

一言コメント

シナリオ、特に伏線の巡らせ方が絶望的に下手。結果、事ある毎に突然降って沸いたような唐突感に襲われる事になる。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

■導入
前の学校をクビになってしまった主人公はとある山間地にあるお嬢様学校に再就職を果たす。親戚関係が断絶していたため主人公は知るところ
では無かったが、理事長をはじめ多くの生徒と親戚関係があるようで・・・。
導入部分は概ね好感触で悪くないが、対人応対や女性対応が不得意と言う主人公が天然ジゴロで次々に人心掌握していったり、生徒の事を名前
で呼ぶようになる経緯など設定との乖離や、やっつけ感が感じられる部分もある。
ギャグの元ネタが古臭く昭和の匂いがするw
発売直前に違った意味で話題を振りまいた本作品。余計なおミソがついてしまった?それともいい宣伝になった?

■キャラ
攻略キャラは5名。
ただ、全員が全員生徒なのはややマンネリ感漂う。教員側3名のうち1人ぐらいは攻略組に入れてもいいのでは?

■主人公
性格設定や立ち振る舞いは個人的には好感触だが、初期の設定を鵜呑みにしてかかるとやや違和感を伴う。年下の女生徒を上手くあしらってる
と言う印象が強く、とても人付き合いが苦手と言うようには見えない。適度にウイットにも富んでいるしノリも悪くない。ただ、前の学校で嫌な辞めさ
せられ方をしたようなので、多少その辺の影を引きずる感じはあったほうがなお良かったと思う。
一見優男風だが実はドS?あまりにも鈍すぎて全て相手任せと言う点はマイナス要因。

■上里 ひまり
桜と同系統ではあるが、バカみたいなテンションの高さは無く明るく一本気で一途なキャラといったところ。
当初から主人公への好意を隠そうとしないところは風夏と一緒だが、こちらはひたすら陽。主人公に近づこうとする他のキャラに対する当たりは
非常にキツイ。主人公の彼女を目指すにあたって周りの女の子達に劣等感を抱くという事と実家との軋轢がメインの流れ。
このルートでのみ中盤になって女性不審という主人公の追加設定が降って湧いたように明らかになる。このタイミングになってからそんな話を
持ち出すのは幾ら何でも反則技が過ぎると思うが・・・。EDは何一つ根本的な解決に至っておらず拍子抜け。予想外に森都が腹黒いw

■霧崎 伊歩
いいとこのお嬢様だが桜の影響か言動は普通っぽくあまりお嬢様然とはしていない。パニクって起こすドジを何とかしたいと思っている。桜が一応
そのフォロー役。ずっと桜に依存していたものが恋愛感情と共に主人公にシフトしていく。
主人公は伊歩のことを「頑張り屋」だの「努力家」だのと持ち上げて評するのだが、自分のドジ気質を治そうとしてはいるものの実質主人公と日常
会話を重ねているだけなので努力していると言われても何だか空々しい。キャラ的には悪くないだけにもう少し設定をしっかり考えて欲しい。

■清ノ 桜
かなり賑やかなので、やり取りをウザイと感じるか楽しいと感じるかで評価は分かれると思う。自分は小五月蝿いの好きじゃないので、当初ウザッ
っと思っていたが、進めていくとこれはこれで悪くない。立ち位置としてはややサブキャラチックで伊歩のお目付け役。空気読めないダメな子。
伊歩が当て馬的存在で話が進み伊歩と主人公の仲を取り持とうとするものの自分の気持ちも抑えられなくなって・・・と言うような展開。
付き合いだして順風満帆なところに不幸が襲うという展開はやや陳腐。霧崎家お抱えの使用人一家であるはずなのに母親が1人暮らしの
貧乏生活の末孤独死だとか、葬儀に霧崎家のフォローも入らないなど???な点多すぎで、不幸のみを演出したい?がために普通に
考えたら当然そうなるべき流れというものを無視し過ぎ。

■日宮 悠奈
主人公の鳩子にあたるいいとこのお嬢様。お嬢様と言う点では伊歩と被ってるが、伊歩が割と等身大な設定なのに対してこちらは口調からしても
いかにも「お嬢様然」としているのだが、それ以外にこれといった特徴が何も無いので当初は最も影の薄いキャラ。桜の折檻係が板についてからは
それなりに存在感も出てくる。
他のキャラは付き合い出すにあたってそれなりのポイントというものがあるんだが、このキャラだけは何だかよく分からないうちに何となく付き合い
出してしまう。そして突然風香に引け目を感じて主人公を避け出す。元を辿ればどうやら親戚筋でのある出来事が原因らしいのだが、そんなの最初
から分かっていたことであり、クラブへの参加自体を渋るような伏線も無くその出来事が尾を引いているなんて話が突然出てくることに違和感しか
感じられない。

■椎名 風夏
え~と、星野○リじゃないよね(汗。まぁそれは置いといて。
コミュニケーション能力にやや難があり無表情を崩さず必要最低限の事しか話さない。・・・星野ル○(ry
ある意味「サロン部」としての活動内容に相応しい唯一のキャラ。主人公にのみ無条件な好意を寄せてくる。親戚筋と言うことで過去に会った事が
あるらしいが、主人公は覚えていない。
何というか、保護欲みたいなものを大いに掻き立てられるキャラ。
5~6歳の頃のことならともかく、10年ぐらい前の中学生時分に2週間も他家に逗留していた記憶が思い出せないなんて相変わらず説得力の無い
設定。主人公がその頃のことを思い出すのがこのルートの鍵なんだけども、正直「・・・・それだけ?」と言いたくなる様な内容。ご都合主義と言わ
れようが、もっとドラマチックな過去エピにするとか風香が元に戻るぐらいのエンディングにしてもっと盛り上げて欲しかった。

■その他
大人組3人やすみか、森都など攻略組より魅力的に見えるキャラが攻略不能。不能だからこそそう見える無いものねだりなのかも知れないが・・・。
FD要員か?

■CG
背景はまずまず丁寧だが、イベント画でバランスが崩れたりデッサンがおかしな部分が見られた。。
また、展開やテキストの内容とCG(表情)が合っていない部分が諸所見受けられた事と、複数人が一堂に会する会話シーンで、全員真正面を向い
て一直線に横並びと言う構図はどうなんだろう・・・。

■システム
コンフィグの設定項目は、はっきり言って最低限というレベル。下の上。
致命的バグは無いが、誤字誤植やCVとテキストの不一致などが確認できる。
ゲームシステムはオーソドックスなコマンド選択式。難易度ははっきり言って無いに等しいが、そんなに難しい選択肢は無いものの、一つでも間違
うとエンディング到達不可だから選択肢では必ずセーブした方が良い。

■音楽・CV
Vo曲は無し。OPやEDのテーマ曲も無く実に素っ気無い。
音楽は普通だが、場面場面にはそれなりに合っていて悪くない。CVは高レベル。

■エロ
各キャラ一律3回づつ。
尺は普通で内容もどちらかと言えば淡白。純愛物だからこんなものでしょう。普通です。
お嬢様校と教師と言う事を考えると無さ過ぎる倫理観が少々気になる。1人ぐらいそんなキャラが居てもいいが、全員が全員というのは設定からし
たら不自然。Hシーンへの持って行き方はどのキャラともスマートさに欠け情緒もクソもない。もう少し考えましょう。

■総評
主人公がちょっと鈍く、登場するキャラは全員最初から主人公が好きという純愛ハーレムゲーの典型的なパターンだが、妙に物分り良くさらりと身を
引いてくれるイイ子ちゃんキャラばかりに在らず、恋愛に貪欲なやや腹黒い部分もスパイスとしてちゃんと入れているところは個人的に◎。
所々効果的に入る女性キャラ視点のカットインも良い。ルート消化順は桜>ひまり>伊歩>悠奈>風香。特に縛りもないし好きなキャラから消化
すればいいと思うが、如何せん複雑な背景がありそうな主人公の出自があやふやなままなので、それがはっきりしそうなルートを後回しにしてみた。
風香は個人的に妙にツボだったのでオーラスでw
設定倒れやブレ、感情の機微表現が甘かったりする点も目立つ。以下参照。

・当初メンバーが友人を連れてくることでコミュニティの輪を広げると言う趣旨で発足したクラブ活動だったが、最初の5人以外全く輪が広がらない。
折角のサブキャラをもう少し効果的に使うべき。
また、風香以外はコミュニケーション能力に特別難を抱えている訳でもなく、サロン部?というのは如何せん抽象的。主人公に特定の趣味でも
持たせておいて、それを核にしたクラブにでもした方が流れ的には自然。
・物語前半と後半で矛盾を生じる設定がある。複数ライター故なのかもしれないが、1人で全体をコーディネイトしたのならかなりお粗末。
・ルートに分岐するとクラブ活動の描写が全く無くなるものがある。共通ルートはまずまずだが分岐後尻すぼみになる。
・個別イベントが共通ルートに入ってしまっているキャラ(ひまりの告白シーンなど)もおり、その上で他のキャラに傾倒するという事は自動的に
ひまりをソデにすると言う事になるのだが、そのことを踏まえた流れになっているとも言えず、2週目以降は共通ルートがスキップ飛ばしになる事
を考えるとやや構成に難がある。
・恋人関係に至ってから発生する問題と解決の経緯が「第三者からの伝聞」という形でしかプレイヤー側に伝わってこないので、エンディングに
向けての盛り上がりに欠ける。また、エピローグが在ったり無かったりエンディング自体もかなり素っ気無く拍子抜け。
・伏線の巡らせ方がドがつくほどの下手クソ。よって事ある毎に突然降って沸いたような唐突感に襲われる事になる。

パクリパクリと騒がれたが、今となってはパクリ疑惑の無い作品なんてまず無いぞ。どれもこれもどこぞで見た様な設定や聞いたような話ばかり。
このメーカーがマズったのは入力情報をそのまま出力した事だな。まぁ、商用メーカーとしては許されざる事だから非難されたのは仕方が無いが。

主人公=B キャラ=B CG=B 原画=C CV=A 音楽=C システム=C テキスト=C シナリオ=D エロ=C 費用対効果=C
総合=C(凡例S~E)