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RX-93ν-2さんのとらぶる@ヴァンパイア! ~あの娘は俺のご主人さま~の長文感想

ユーザー
RX-93ν-2
ゲーム
とらぶる@ヴァンパイア! ~あの娘は俺のご主人さま~
ブランド
Luxury
得点
75
参照数
1740

一言コメント

佳作キャラゲー。デレ前後の落差を楽しむのが基本。伏線と回収の構図をもちっと上手くやれればなお良かったのだが・・・。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

主人公「下野部 律」は学生時代の恩師のような教師になることを目指し名門の鳳鐘女学園へ赴任するが、学園きっての
問題児軍団デタラメーズ(主人公命名)が所属するクラスを半ば無理矢理押し付けられてしまう。根っからの熱血真面目教師
を目指している主人公は、「教育によってゆがんだ生徒達を更正できる!」と信じデタラメーズと幾度となく接触を試みる中で
偶然怪しげなミサを行っている現場に遭遇してしまう。そこで彼は「姫獅子獅音」が実は吸血鬼で魔物を封じる事を生業と
していることを聞かされるが、予期せぬ主人公の登場に気取られた隙に魔物が逃げ出し襲い掛かってきた。主人公は身を挺して
獅音たちを庇うが、その際重傷を負った彼は絶命してしまう。しかし、気が付けば自分の部屋で目覚め傷の痕跡はどこにもない。
あれは夢だったのだろうか?そう思いながら登校すると、「おはよう、下僕」獅音が嗜虐的な笑みを浮かべていた。昨夜重傷を
負った後、主人公を助けるため獅音は血を吸い自らの眷属としたと言う。彼女達は「世界征服」を標榜しており、その手駒として
律を利用することを告げる・・・。

どちらかと言うと個別分岐後より共通部分が楽しいものが多いドタバタキャラゲーだが、この作品もそんな感じ。どのルートでも
主人公が教師として熱意を注いでくるのを好意と受け取って何となくそんな関係になって行き主人公も抗わないといった印象。
イベント事の違いこそあれ話の流れ的には大差無いので周回を重ねるうちにややマンネリ感を伴う。女性キャラが主人公に好意を
募らせていく様はそれなりに表現できているが、主人公側の気持ちの持って行き方がどうにも中途半端。各ルートでの敵役も
大悪魔のカケラに吸い寄せられた背後関係の不明な単なるその他の魔物というのもストーリーの盛り上がりを阻害する要因。
最終的にはトゥルールートで伏線は回収できるのだが、各個別ルートの最後が締まらない印象を与えてしまっているので、
もう少し丁寧な処理が望まれる。
Hシーンは各キャラ基本3回。行為中も会話が多く、エロ度よりも雰囲気重視。

主人公
基本空気。
主人公の存在や言動によって事態が左右されるような事は少なく、起こってしまった出来事に後追いで右往左往する状況が殆ど。
主体的に動いたり物事の方向性を決定付けたりすることが無いので、ともすると蚊帳の外の傍観者的立ち位置になってしまう場面
も多い。基本的に空気主人公が嫌いな自分ではあるが、どうにもこうにも我慢できないということもないので嫌悪感を伴うほどでも
ないだろう。

ルート消化順
クララ>天音>閏美>覚夜>獅音

クララ
主人公が受け持つクラスに転校して来るがその実は大生徒会側の刺客。
しかし大生徒会のメンバーと言うわけではなく、本来は魔を狩るハンター機関という組織で人体改造を施された魔物ハンターで、
空腹で行き倒れていたところを生徒会長の神楽に助けられ恩を返すために獅音一派に対峙する。
良くも悪くも純粋培養で真っ直ぐなため話にスジさえ通っていれば簡単に篭絡されてしまう。当初は敵勢力として登場も獅音の
口車に乗せられ一派入り。恩義に対し律儀で、危ないところを庇ってくれたり食べ物を与えてくれたり頻繁に褒めてくれたり
する主人公に懐く。
しかしそれら一連の行動は全てお芝居で最初から組織の一員としての目的の基の行動と言うことが明るみに出るのだが、それ以上に
主人公への想いが強く最終的には組織より主人公を選ぶ。クララが主人公に懐いていく様は割と上手く表現できているが、
主人公がクララを意識し出す経緯がやや唐突。ONかOFFしかなく世間擦れの無いクララに色々と指南していく様は恋人と言うより
ほとんど父娘のノリ。ストーリーの流れとしては悪くないが、最後の組織の監視役を含めた戦闘の際、主人公の口八丁で監視役が
あっさりと納得してしまい、いとも簡単にクララを組織から解放してしまうのは如何せん拍子抜け。獅音も何か含みを持たせつつ
何のフォローもしなかったり、神楽の別人疑惑などもそのままという所も今ひとつすっきりしない。

天音
昔犬姿時に主人公に助けてもらった?(主人公が忘れているので定かでは無い)ことがきっかけで、登場時から主人公に懐いている人狼。
獅音に目をつけられた主人公が一方的に虐げられていると思い込み、主人公解放のために奔走するが空回り気味。獅音の魔の手から
主人公を解放するため押しかけ女房的に一派入り。
獅音から主人公を身請けする値段1000万円(嘘)をふっかけられたのを真に受け、賞金1000万円目当てでアイドルオーディションに
出場し優勝したのはいいが実際にアイドルになってしまい主人公との間に微妙な溝が生じる。そんな中、生放送中にアクシデントで
耳と手が狼化してしまい大騒ぎになると言うような話だが、あまりに下らな過ぎて途中から未読スキップで読み飛ばした。
当初共通ルートでの魔物退治の話もそっちのけ。クラス委員と言う設定も無意味だし人狼設定も正体が明るみに出そうになって
大騒ぎになる以外に全く役立たず。本人達の性格こそ違えど主人公との関係がクララと被っているような描写が多く、ロリキャラが
2人も必要だったのか甚だ疑問。

閏美
デタラメーズ頭脳担当。
マッドサイエンティスト(魔女?)のケあり。若く見えるが、かなりのお歳。表面上の言動は腹黒いの一言に尽きるが、実は優しく
寂しがり屋。不死による孤独に諦めにも近い達観を抱いている。
ストーリーとしては閏美の引き起こす大なり小なりの厄介ごとに翻弄され続ける主人公と言う図式。そんな中時折見せる閏美の
物憂げな表情が主人公の気を惹くようになっていく。それにしても主人公は鳥頭設定なのだろうか?直前でヒントが提示されて
いるのにそれを活用できない展開が多く、プレイしていてややフラストレーションが溜まる。
当初は糞真面目な主人公を嘘でからかったり研究の実験台にしたりしてストレス解消の捌け口程度にしか考えていなかったようだが、
そんな自分の性格を知ってからも逐一真摯に対応してくる主人公に惹かれていく。
話の流れは、閏美が自分の所為で死に至らしめてしまった両親への100年間に及ぶ呪縛の想いから解放されるという筋書きで、
佳境ではそれなりに感動的ではあるのだが今ひとつすっきりしない。それなりに閏美の心の支えにはなっているものの、「蚊帳の
外から眺めてる」感が強く展開の左右に能動的に関与しない主人公の立ち位置がそう感じさせるものと思われる。それと、
このルートでの敵役が何の伏線も無く突如現れた第三者(悪魔)というのも盛り上がりに欠ける要因の一つ。
ところで・・・覚夜はどこ行ったの?

覚夜
デタラメーズ武道派担当。
神楽とは実の姉妹だが、溺愛を通り越した変態姉と距離を置くために姫獅子家に身を寄せる。言動や口調は男勝りだが、可愛いものに
目が無くぬいぐるみを集めていたり内面は乙女チック。
当初主人公のことを軟弱だと捉えていたが、異界で行動を共にした際やストーカー事件で男っぽいところに触れ意識し出す。
主人公が薄給貧乏で日々の食事にすら往生しているなんて設定が降って沸いたように出てくる。弁当差し入れイベントを作りたい
のは分かるんだけど、こういった個人の基本的状況と言うのはルートが変わったからといって変化するものでは無いので、こういう
イベントを組みたいならちゃんと共通ルートで伏線を作っとくべき。
吸血鬼風邪の看病での一件を後ろめたく思い覚夜を避け続ける主人公についに覚夜が本音を爆発させると言う話だが、如何せん
展開が急すぎる。避けてたのたった半日やんけ!中腹の無い山みたいなんだよね。なだらかな裾野から山を登り始めて気が付いたら
頂上直前の絶壁で、あれあれ?いつの間にどうやってここまで来たの?みたいな。でもキャラとしてはこの子が一番カワイイ。
ただ、実際に付き合いだしてから最大の障害(神楽)があるし過程よりもこっちがメインの話だからこれはこれでもいいのかも。
姉妹の過去エピはそれなりに考えられているが、神楽の異常妄執に繋がるにはやや弱い。もう一捻り欲しい。

獅音
デタラメーズリーダー。
いよいよ本丸。メインヒロイン?に敬意を表して攻略順は最後で。
目的は世界征服。
当初からかなり見下していたわりには瀕死の主人公を助けるために自らの眷族にしたりとそれなりに気にはかけていた模様。
主人公を傍に置くのは主人公の持つ魔を検知する能力を利用するためのようだったが、力の拠り所とするためものとして集めていた
大悪魔のカケラが原因で一時的に能力の大半を喪失してから足下を見つめなおし謙虚な気持ちを持つようになって、その間
終始気にかけてくれていた主人公に好意を抱くようになる。ツンデレならぬゴーデレ(傲慢→デレる)と言ったところ。
落差に萌えるためのシナリオ。ストーリー的には取るに足らない話。

トゥルー
全てのエンド到達後トップメニューに現れる。
各ルートで放置された伏線の回収と大悪魔の完全封印がメイン。トゥルーとしての体は成しているしこのルートで上手く締まった感じはする。
ただ、どのルートを継いだものなのかはあやふや。獅音ルートっぽい感じはするのだが・・・。

コンフィグはキャラ別音声が調整できる以外は必要最低限と言う感じ。特に不足は無いが便利機能も何も無い。
バグや目立った不具合なし。

CGは今一つ。基本的には悪くないが、立ち絵とイベント絵、又はシーンによって安定感が無く別人に見えるようものもある。
背景はまずまず。

CVはフルボイスでないのは減点要因。
男キャラの声が無いのは臨場感と言う意味でやはり今ひとつ。複数人の会話シーンで男だけ声無しになるのでテンポが悪くなってしまう。

※初回起動時のみディスクチェックあり。

主人公=B キャラ=B CG=C 原画=C CV=C 音楽=C システム=C テキスト=B シナリオ=B エロ=C 費用対効果=B
総合=B(凡例S~E)