このブランドにおける集大成
奇跡、夏、家族、友情、あるいは人生を。
それら全てを混ぜ合わせて、文字通り書き換えたような作品でした。
Keyと言うブランドの魅力を凝縮して、
今にウケるように作り直したゲーム
と言う方がわかりやすいかも知れません。
古参のファンの方々から「過去に見たような展開だー」と言われてしまう事自体が、このゲームにとっての最上の褒め言葉なのでしょう。
完全版となる今作、現状「最も手のつけやすいKey作品」になったかと思います。
元々かなり質の高いゲームでしたが、攻略キャラの追加、シナリオの強化でさらに昇華されています。
Key童貞の方に何か一本Key作品を勧めるのならばこれしか無い。と言うレベルで「今ウケしつつKeyらしいゲーム」となりました。
逆に無印をプレイ済みの人は「少し高いアペンド」くらいの気持ちで買うのが良いかと思います。
目に見えた新要素は神山識という新キャラ、既存キャラ新√、CGの追加および演出強化、オーラスの追加シナリオくらいです。また、無印のセーブデータは使えず、「世界の秘密を〜」の選択肢もない為、1から攻略をしなければいけません。
オーラスの5分程度の追加シナリオは個人的には「これだけでも金を払った甲斐があった!」と思えるほどの出来でしたが、ここは意見が分かれると思います。「奇跡」の面が強い故に、解釈によってはあの子の頑張りがなかった事になり得ますので…。
RBから追加された攻略キャラ、神山識の√は、リトバス風に言う「世界の秘密」に対して新しいベクトルから焦点を当てるようなギミックのシナリオで、これが直接オーラスの追加シナリオに響いています。
ただ、一点不満をあげるとするのならば、既存キャラの√では彼女は全く絡んできません。
追加攻略キャラの中で唯一神山識のみ完全な新規キャラでしたので、他キャラのシナリオにどう絡ませてくるのか楽しみでしたが、他√では完全にいない者(一切のシナリオ改変無し)という扱いで話が進んでいきます。
(これはオーラスでも同様ですが、そちらはオーラスの追加シナリオで登場させるという形で対応しています。)
特につむぎ√は全キャラ集まって……というような話なので、ここは多少中盤のシナリオを改変してでも識を交えたシナリオにしてしかったです。
その他新規シナリオも世界線に沿わせて、矛盾なくストーリーを増やしていて良かったです。のみき√は少年団の皆の補完、静久√はつむぎ√の補完、うみ√はALKAの補完と言う形で重要な役割を果たしています。
特にうみ√は涙腺持っていかれました。これはオーラスの追加シナリオにも言える話なのですが、
無印では後半、羽依里君が空気となり、プレイヤー共々置いてかれてるような展開が続きます。
うみ√&オーラスの追加シナリオ=羽依里君に関わる重大な部分のシナリオの補強で、
しろはとうみちゃんだけじゃなく、彼も一緒に夏を過ごしたんだよなぁと改めて感じることが出来、目頭が熱くなりました。
作品全体の評価は無印版で出尽くされているかと思いますので、今回の完全版に対しての感想はこれくらいになります。
無印が販売された時、特典本にて麻枝准は「Keyは死んでいたか、それとも健在か」と言うニュアンスの問いかけをファンに向けていました。
それだけの覚悟を持って売り出されたこの作品の、その完全版。
プレイした後の、一個人としての回答はこうです。
形は変わったかも知れませんが、ちゃんと健在です。