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RIGHT EYEさんの車輪の国、向日葵の少女の長文感想

ユーザー
RIGHT EYE
ゲーム
車輪の国、向日葵の少女
ブランド
あかべぇそふとつぅ
得点
80
参照数
670

一言コメント

『車輪の下』を小学校の夏休み読書課題で読んだことがある。その頃このゲーム(非18禁)が先に出ていればもう少し読み込めたのになぁ…

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

車輪に気づかないことが幸せなのか。
車輪に気づいても車輪のふりをしていることが幸せなのか。
あるいは車輪を動かす特権階級になってしまえばいいのか。
最後にプロレタリアートが助けにやってくると信じていた人たちは、どう考えたのだろうか。

このゲームの登場人物には、先にどうしようもなく駄目なところを見せつけられた。
借金の返せない。意見を言えない。信じられない。戦いきれない。諦めているetc…
A profileではそれがイライラしてしようがなかったのだけど、
本作では、それらが同和やワッペンという目に見える形で公然と罪だと晒されていて
登場人物達は勿論自分の駄目なところを嫌と言うほど自覚せざるを得なくて
最終的にはそれを乗り越えなければ話が進まなくなるので
今回は快くまた愛おしくさえあった。
ただし、良い悪いはともかく、あくまで駄目なものは駄目だと
それに非情に接する法月と主人公あってこそ。GJ!

さてこの設定とそれを表す心地よいテキスト。あと他に何を望みましょうか。
=絵と音楽と声。
私は赤や青の髪色ってだけで本来、敬遠するのですが、
それが当たり前の現状では人物絵も及第点。
背景絵もちゃんと向日葵綺麗でしたし、音楽・声も無難。
ただ欲張れば、選択肢が少なく自由度の低い展開と、つけたしのような性表現。
それに主題が主観的で答えがすでに決めつけられているような展開。
これだと、あーだこーだと語り合う隙が少ないし、
何度も読み返すモチベーションがないのよ…。