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RIGHT EYEさんのWhite ~blanche comme la lune~の長文感想

ユーザー
RIGHT EYE
ゲーム
White ~blanche comme la lune~
ブランド
ねこねこソフト
得点
60
参照数
803

一言コメント

ほたるの立ち位置が謎ですがほたるとブリジットさえ気にしなければ楽しめるはず。たぶん。

長文感想

●<アウトライン>
 - 人知れずアジアの一角に浮かぶ"無垢の島"。
   島の人々は外界を知らず、21世紀の世界で
   "ケータイ"どころか"TEL"も知らないように見える。
   島の領主メロヴィング公の館には
   幼い双子が暮らしていた。
   館には滅多に人が訪れる機会がないと言う。
   彼女らは人を疑うことを知らず
   純真・純粋・一途で"無垢"の存在であった。

   そこに一人の男が流れ着いた日から
   島の人々の運命が大きく動き出す。

   館に暮らした幼い双子たちは
   初めて島を出て"東京"に暮らし出す。
   東京での暮らしが始まった早々
   双子につきまとう尾行…
   これまで知らされなかった島内の抗争…
   大きな権力の存在……

   無垢な彼女たちは
   この世界で無垢であり続けることができようか。
   果たして生きていける存在であろうか?

   
●<評>
設定・シナリオ・テキスト
 "無垢"な存在、という話の核においての
 メインが正・マリカ、副・ブリジット。
 過去編が正・カナン、副・ミサという配置。
 「副」とは話に厚みを持たせる引き立て役という意味で。
 何かが足りない…とよくよく考えてみると
 "無垢"に対して「正」「副」はあっても
 「反」が無いのではないでしょうか? "無垢"とは対極の存在。
 このゲームは皆、善人過ぎました。
 本来、その配置に当たるのがクレアだったのではないでしょうか?
 そのせいか、クレアの物語上の立ち位置が曖昧になっています。
 また、ミサにしても、善人過ぎて、カナンは何故片腕を失うことになったのか?
 相手側も、そこまで根深く対立してなかったのではないか、とさえ思わせます。

 そうした事を考えると
 White ~blanche comme la lune~(以下、新White)は
 プロットからもう少し練り上げるべきだったのでは。
 上記のキャラクター配置の中に「ほたる」が入っていませんが
 それは、私が彼女の立ち位置を未だ理解出来ていないからです。

 とはいえ、マリカ、カナンシナリオのそれ自体は悪くありません。
 ねこねこらしい、過去と今をフラッシュバックして繋ぐ展開…ちょっと泣けます。

 また、蛇足ですがカナンさんがギリ、セーフをインスパイアして見せてくれたり
 「Scarlett」ラストから繋がるしずかが現れてくれたり
 マジカル☆ひよりんが登場したり
 ねこねこ好きには嬉しいネタがふんだんで嬉しくなります。
  
原画・背景・彩色
 今作では、舞台が島→都会とがらりと変化しますが
 それぞれで背景の色調が変化して面白いです。
 背景絵はこれまでで最も良かったです。

 人物原画に関しては
 相変わらず複数原画に殆ど違和感がありません。スゴイ。
 ただし、今回はイベント絵ごとにややキャラの顔つきや頭身が変わったり
 立ち絵とイベント絵で人物がやや別人な感じがしたり
 違和感が目立ちました。

 よく見ると、今回のCG枚数が多い!
 これだと多少崩れるのも、已むなし?

その他
 またまた夏野こおりさん、ひゃっほぉぉぉぃ!!!
 夏野さんの声が気になりだしたのが
 「サナララ」の希未先生からの若造なもので
 こういう「ぁぁぅ…」系の夏野さん嬉しい。
 ていていっ!あっいた!

 システムは前作から変化無しで
 クリックでボイスキャンセル/継続 選択可。
 音楽が相変わらず印象に残る良曲揃い。
 あ、あれ…今回スカーレットは流れましたっけ? 
 
●<感想>
 姉萌え、妹萌え、幼なじみ萌え-
 と"閉じられた"優しいその作品の世界の中でだけでこそ
 萌えと純愛を描けるのがエロゲ世界ですが
 もし、本当にそんな純真なヒロインが
 その作品世界の外に出たとしたら
 そのまま純真でいられるだろうか?
 そんな風に、B2Fは新Whiteのテーマを受け止めています。

 その結果、マリカはこんな世界でも
 最後まで"無垢"であり続けてくれたのが
 私たち2次元の住人を渇望する者として救われた気分になります。
 ブリジットは妹の分まで
 無垢ではいられず…いや最後キチッと成長した姿を見せてくれました。
 最後の"White"シナリオで見せたブリジットのお姉ちゃんぷりに
 萌えます。 
 
 本来ならこの二人だけを
 そのままメインヒロインにしてまとめておけば
 こんな変なことにはならなかった筈なのです。
 ヒロインが2人だけでは…という大人の事情が働いたのかどうか
 知りませんが
 ほたるは全く要らない子になってますし
 カナンも攻略キャラではなく
 素直にサブに甘んじて良かったのではないでしょうか。
 個別ルートで言えば
 Clear編、マリカ編、white編と
 カナン編を過去編に置き換えたものだけで
 構成していたら良いゲームになっていたのに…と惜しまれます。

 おまけで片岡ともさんが触れられていましたが
 今回はともさん以外のシナリオ管理が全く上手くいっておらず
 散々な出来でした。
 そんな中、ウナトミーさんはさすがお弟子(?)さんで
 ほとんど設定など情報が伝わっていなくとも
 ある程度、ともさんなら…という予測が働いていたようです。
 南十字星と北斗七星…ぜんまい式腕時計を使って
 過去と今を繋ぐところなど
 これぞ、ねこねこ節!って手法ですよね。
 (ウナトミーさんはカナンシナリオ担当)
 ねこねこソフトは、もう片岡ともさん単独で書くか
 片岡ともさんと木緒なちさんと海富一さんと
 秋津環さんと大月祐々さんで書いて欲しい!

 と最後は少々愚痴っぽくなりましたが
 総じて言えば悪くない作品だったとは思います。
 おしっこのエスカレート具合や主人公の紳士っぷりは
 ライバル「スイートロビンガール」を超えます。
 年齢設定や過去編において、かなりのサプライズがありましたしね。

 最後にお気に入りキャラ。
 プレイ前: ブリジット>マリカ>ほたる
 プレイ後: マリカ>クレア>ブリジット>ミサ>カナン>ほたる

 CG/(差分含まず)116
 シーン/マリカ:2 ブリジット:3 カナン:2 ほたる:3 ミサ:1 クレア:1
 容量/2.52GB(パッチ込)