延々と続く下卑た日常に麻痺させ溺れかけさせておいて、さあ禁断の果実に触れた時にどこまで禁忌に触れたと実感出来るか。
●<アウトライン>
- 願うなら-「普通に学園生活がしたい」。
全校生徒5人。
全寮制。
高い塀に囲まれ
離れた埋立地に建てられた閉じられた新設校。
それが主人公"風見 雄二"に与えられた「普通」であった。
「普通」の経歴を纏った雄二は
「普通」の学園の「普通」な5人の学生と
ほんの数ヶ月の学園生活を「普通」に過ごすうち
5人の生徒がこの美浜学園に「拘束」されることになる
どうしようもない背景に触れてしまう。
「話したくなったら話すだろうし
俺は人のことにあれこれ口を挟むつもりはない。
挟むことがあるとするのなら…
向こうの方から俺に歩み寄って来た時だけだ。」
その雄二の「普通」の態度に
学園生は自分たちと同じ普通じゃなさを感じ
全校6人の学園生は
それぞれの普通じゃない家族を顕わにしていく。
「普通」に送ってみたかった学園生活。
これが彼に与えられた最大限の「普通」であった。
6人の主人公とヒロインたちを拘束する
どうしようもない枷とはなんなのか?
●<評>
設定・シナリオ・テキスト
「6人を拘束するもの」の背景。
これが物語の核と思われます。多分。
「グリザイアの果実」というタイトルから想起される
ある種の禁忌のような背景を期待しますが
5人の持つ禁忌のうち、私が異常性を感じたのは三人。
その他もそれでも色々しんどい背景なのですが
禁忌に触れるまでが我々の日常に抑圧されている一般的な事情すぎて、ちょっと。
5人の物語はクロスすることなく
それぞれのヒロインの背景が語られていきます。
最もクライマックスに当たるのは
5人の物語の中で少しずつ明らかになる
主人公・雄二の背景ですが
これは、主人公の「師匠」・麻子、姉・一姫について
全てを語らず幕を閉じてしまいます。
消化不良感。
ただし、決して物語自体は、あけすけな進行ではなく
場合によっては少々厳しいBADENDも用意してあって
シリアスで面白いですよ。
特に、天音√の過去回想が物語の最高潮です。
このシナリオをどのタイミングで消化するかで
印象が変わってくるのではないでしょうか。
シナリオ共通部はシナリオらしいシナリオはなく
テキストで会話の応酬を永遠と楽しむ方式です。
その会話の中に物語設定をちょこちょこ説明していく形式。
これが長い。とても長い。
必要以上に長く感じるのは、シナリオが全く進行しないからです。
本当に何も話が前進しない。
これってどうなんでしょう?
プロットがどなたの担当なのか、判らないのですが
イマイチ物語の厚みが物足りなく感じたのは
ここで伏線を置けなかった点にあるのではないでしょうか。
ただし、この辺、テキストは楽しかったです。
何と言うか…変態メイドと化す幸
700円で抱ける隣のお姉さん天音
次々とスラングを覚えていく蒔菜…etc
とても開けっぴろげな下ネタが
藤崎さんと木緒さんの化学反応なのでしょうか?
(藤崎さんのギャグHは健在だった。)
非常に壮大さを感じさせる設定。
テキスト膨大でシナリオは全体的に何とかコンパクトに纏まった感。
原画・背景・彩色
フミオさんと渡辺明夫さんが原画・デザイン。
全く異なる絵ですが、割と良く統一されていると思います。
ただ、正直、由美子とみちるは
H絵での顔や体型の崩れがちょっと気になっちゃいました。
由美子のイベント絵は、結構お気に入りも多いのですけどね。
背景絵についても、予め公開されていたプロモーション絵ほどの
インパクトはありません。
決して悪くはなく寧ろかなり豪華ではあるはずなのですが。
背景絵、イベント絵とも、とにかく枚数はスゴイです。
その他
特筆すべきはOP曲とムービーアニメ
それにED曲の豪華さ。
必ずお気に入りの一曲見つかります。
個人的にはみちるED「SKIP」(歌:茶太)ですかね。
システムはいつものフロントウィングです。
クリックボイススキップ/継続 選択可。
1アクションでSAVE出来ないのがちょっと不満。
SAVE72枠ありますが、10枠ほど足りませんでした。残念。
キャラクターボイス(CV) は
ほしうたからの連投の方が多く、お馴染みの声。
初参戦の一色さんは、由美子なりの鏡の前でのデレ方、味がありました。
岡村さんは、(恒例の)濁音抜きゲームでの発音がお見事!
そして雪見さん…久しぶりに鷹月さんの擬音の良さを実感。
自由で小生意気でエロイ鷹月さんがイイ!
天音の初Hボイスは面白すぎて保存したい。
●<感想>
Sofmap Limited Edition箱でかすぎだろ!!
まあおかげで此度の震災でも無傷なんですが。
「エンジェリック・ハウム」を除いてシナリオは
色々物足りなかったりしますが
テキストが面白いですし
独特の世界観を感じますし
キャラクターは可愛いし
総じて言えば、面白かった!!
さすがFW10周年、というボリュームに仕上がってますって。
期待していた木緒さんは
由美子シナリオ担当らしいですが
恋神(ラブカミ)あたりから徐々に木緒さんらしさが
判らなくなりつつあるわけでして。
テキストは豪快に吹っ切れてますが
シナリオの方は色々配慮が全面に出されている感じで
物足りません。
木緒さんらしさ、というと
こう30・40代♂の過去の記憶をこねくり回すような…甘辛酸っぱ苦さ。
天音は、最初からおっぱい丸出しヒロインって斬新過ぎて
その上、雪見さんのボイスが重なりかなり好きになりました。
蒔菜は、民安さんが巧く口癖をこなされてて愛着が湧きます。
主人公の過去が最も語られるシナリオですのでかなり好き。
幸は、一番普通のシナリオですが
一番普通じゃない台詞ばかりでギャップが面白かわゆい。
みちるは、偽ツンデレっていうところまで来たかツンデレ亜種め。
もうギャグでしかありませんが何と愛らしい動物でしょう。
由美子は、先に「いつ、デレルんだ?」なんて言わせたらだめでしょう!!?
鏡の前でくるんくるんは、可愛かった。