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RIGHT EYEさんのスイートロビンガール -Sweet Robin Girl-の長文感想

ユーザー
RIGHT EYE
ゲーム
スイートロビンガール -Sweet Robin Girl-
ブランド
Chuablesoft
得点
80
参照数
1041

一言コメント

「くたびれたおじさん」 と 「可憐な少女」。 そう聞いて、どちらにより興味を惹かれましたか?

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

●<アウトライン>
 - 舞台は近世ヨーロッパの街並を彷彿とさせる都市"レヴィンダム"。
   その下町にある喫茶店「Birdie's Perch」は
   珈琲の美味しい喫茶店と評判であった。
   評判の店であった。
   一年前までは。

   母親の長期に渡る療養生活、つみ重なる借金、そんな中失踪した婚約者。
   今残されたのは、見る影もなく埃をかぶった"Birdie's Perch"と
   疲れ切った店の主人"シドニー・ハートマン"自身だけであった。

   "Birdie's Perch"=「とまり木」に寄りつく客はなく
   ただ積み重なった借金の返済期限が迫り
   今日もなじみのパブ"ネピュラ"にツケを重ねる日々。

   まだ貴方には"Birdie's Perch"が残っているじゃない。

   そう、唯一残っているこの店さえも-

   四人の少女たちがこの店に転がり込んだのはそんな頃だった。
   それぞれの事情で町を彷徨う、居場所を無くしたみなしごたち。
   少女たちが店に出るようになると
   いつ開けるとも判らなくなっていた店内に火が灯り
   一人二人と客が増え、少しずつ活気が戻りつつあった。
   そしてなぜか-

   「借金の返済をしばらく猶予する」

   貸金主から意外な催告を受ける。

   料理一切を仕切るエレン。
   四人のリーダーでフロアチーフのフィオナ。
   言葉遣いは荒いけど、フロアに活気を与える元気者メグ。
   ドジだけど、フロアで微笑ましく見守られるプリス。
   ふと気づけば主人公・シドは
   彼女たちの姿を、まぶしく見つめるようになっていた。

   ここは"とまり木"-

   くたびれたおじさんと 可憐な少女たちが織りなす 優しい恋の物語
 
●<評>
設定・シナリオ・テキスト
 「過去との決着」
 この物語の核心はまさしくここにあるのではないでしょうか。
 ょぅι゛ょを全面に押し出した作品でまさか、こんなに渋い年輪を感じさせる
 核心をもってこようとは。
 一見ミスマッチに聞こえる組合せですが
 実のところ、おじさんとょぅι゛ょという組合せは
 ょぅι゛ょの魅力を引き出す最大の装置の一つだと感じました。
 困難に当たった子どもが持つ
 「早く大人になりたい」という憧れ
 「包み込んでくれるような安心出来る大人」への憧れ
 それらを引き出すのがシド(主人公)とその友人たちです。
 シドは大人として、実にその正反対を行く生活の荒みよう
 というのも面白い設定。
 四人の少女と共にシドも「過去との決着」を
 どうつけていくのか、という物語の着地点が見えますが
 決して大人であるシドが一方的に彼女たちを救いあげるのではなく
 もちつもたれつで物語のゴールに向かっていく構成です。
 ちょっと背伸びをしてみせる子ども
 ちょっとだけ張りつめた気を緩めることを許された大人
 なんという背徳黄金律でしょう。

 どう過去に決着をつけるか
 複数のENDを用意しているのも面白かったですね。
 特にフィオナENDは、私にとってどれが最もHappyか悩みます。

 そして最後に"We wish your a merry christmas"なる
 グランドENDがあります。
 癒し系のまとめとしてはこれが最骨頂。

 全体として、とても巧く纏まっているよいお話だと思いました。

 ただし、お話のボリュームは
 昨今のフルプライスとしてはやや物足りません。
 このテーマの作品としては適正だと思います。
 テーマと言うことで言えば
 シナリオの指向性は癒し系ですので
 決してドンパチやら波瀾万丈、急転直下な展開はないので
 心得ておかないと単なる睡眠ゲーとされるかも知れません。
 
 

原画・背景・彩色
 チュアブルではじめての原画・ぎん太以外のライン
 且つはじめてのディレクター・草壁よしお以外のライン(未確認)
 ということで心配されましたが
 原画・関谷あさみさんに合わせてCG彩色もガラリと変えてきました。
 これまでのチュアブルとは違いますが
 作品世界に合わせた良い原画・彩色だと思います。
 出来れば関谷さんの黒髪幼女をもっと見たかったのですが
 まあ、世情が許さなかったと解釈しましょう。
 ただし、H原画は、しっかりロリ体型を心得ていらっしゃる
 関谷さん原画で安心!
 背景は、舞台が近世ヨーロッパ風ということで
 南ヨーロッパ的な石造りやイギリス的な家調品などこだわっていますが
 生活感が大事な作品なだけに
 もう少し朝夕の時間の経過を頑張って欲しかったと思います。
 一枚一枚は悪くはないのですが。
 移動MAPは都市計画的な地区区分が出来ていなく
 また絵のディフォルメが進んでいて
 あまり移動感が感じられませんでした。

その他
 本作でもS+S(Sugar+Spice!)でお馴染みの
 MAPイベント選択方式を一部採用。
 イベントも一定の範囲の四季が盛り込んであり
 生活感を出すのに良い演出です。
 それに、これまで、決して使いやすいとは言いにくかったシステムも
 本作で一定の完成に近づいたのではないでしょうか?
 クリックボイス継続が選択可で
 これまでは[継続]を選択してもクリックのタイミング次第で
 ボイスカットになってしまうことが多々あったのですが
 今回はその精度も少し良くなっています。
 あとはCG閲覧で差分切替の際にクリックキャンセル出来ないことなど
 もう少し改善点がありますが。

 音楽について。
 今回の歌唱曲にはanporinさんを単独起用。
 主題歌の"Birdies'Perch"も良い曲ですが
 ED曲の"Sweet Robin Girl"が素晴らしい。
 挿入歌の"GreenSleeves"も良いです。
 全体に音楽はどれも素晴らしいです。
 ただ、全体として一つか二つ、全く違う曲調の音が欲しかったな、と。
 全体としては"世界名作アニメ劇場"でまとまっております。

 キャラクターボイスについて。
 何と言ってもプリスの「おはょぅι゛ょ」ですよね!?
 有栖川みや美さんG.J!
 
 
●<感想>
 「くたびれたおじさんと 可憐な少女たちが織りなす 優しい恋の物語」
 というコピーの通り、くたびれたおじさんに是非お薦めしたい作品。
 色々辛いことをくぐり抜けて
 色々出会いと別れをそれなりに繰り返してきた世代にお薦めしたい。
 いわゆる二次元で象徴化された"ょぅι゛ょ"像とは少し違うロリコン作品。
 親世代がリアル小さな子を見守るような視点で楽しみたい。
 (こっちの方がなんかきな臭い)
 おいシド、お前危険過ぎるぞ!!ポリスは何をやっているんだ!?

 最後に、おまけシナリオ"We Wish Your A Merry Christmas"には
 泣かされました。
 ここではじめて主人公の過去が清算されます。
 これは是非最後まで見て欲しい。

 キャラ順位
 プレイ前: エレン > フィオナ > メグ > プリス
 プレイ後: レイチェル > メグ > フィオナ > エレン > プリス

 メグ√が主人公の過去に最も触れられていて面白い。
 お尻ペンペン有□。