コイバナというコンセプトがしっかり感じられた。友人キャラやサブヒロインの存在感があるのもよかった。
●シナリオ
コンセプトが毎回明確なASaProjectだが、今作の「コイバナ」も独自性を出すだけではなく、ASaProjectらしい賑やかな雰囲気にもマッチしたコンセプトだった。比較的オーソドックスな学園が舞台だが、恋人を作るという目的が主人公にあるためストーリーのテンポもよかった。
前作は主人公やヒロインが複雑な生い立ちを抱えており、コメディ作品でありながらもシリアスな展開がところどころあったのだが、本作はそういったものは一切なく、頭を空っぽにして楽しめるいつものASaProjectらしい作品だった。
主人公のコイバナ相手が必要なこともあり男キャラクターの登場人物が最近の学園モノのギャルゲーとしては多く、序盤に至ってはヒロインよりも野郎どもとの会話量の方が多いくらいで、頭の悪いやり取り(誉め言葉)は見ていて非常に面白かった。
サブキャラ同士のカップルが存在するエロゲーも少数ながら存在するが、「コイバナ」をコンセプトにしたことで本作は3組のサブカップルが存在するという非常に珍しいことになっている。サブカップルは主人公と異なり最初からペアリングが決まっているため、男女ペアの相性がピッタリとはまっており、むしろ主人公とメインヒロインのカップリングよりも印象に残るくらいだった。
他キャラ視点が頻繁に挿入されるのも特徴で、男子のいない場面でのヒロインたちの恋愛トークは勿論、サブカップル視点のデートなど「コイバナ」というコンセプトを強く感じる構成になっていた。
コイバナの内容も学生っぽい甘酸っぱさがあり、大したことのない日常のやり取りでときめいてしまう純情さは見ていて微笑ましかった。
誰かと付き合うまでを描く共通ルートは「体育祭編」「生徒会選挙編」「修学旅行編」の3パートから構成されている。学園モノの定番イベントを集めた構成だが、本作のコンセプトを絡めつつイベントを丁寧に描写しているため特別感があった。例えば、体育祭の場合はヒロインにいいところを見せるために競技の練習をするところから描写されるため、プレイしているこちらも体育祭本番の盛り上がりに主人公と一緒になって盛り上がることができた。
本作は定番の学園モノでありながら「コイバナ」という要素を入れることで新鮮に楽しめる作品だった反面、コンセプトが明確になっていることもあり、どうしてもヒロインの扱いに格差があるのが残念だった。
常夜が格差の顕著なヒロインで主人公たちとは年齢も部活も異なるため、ヒロインたちのコイバナシーンでは登場しないことが殆どだった。生徒会書記という肩書はあるものの、生徒会所属はサブキャラやサブヒロインばかりなので全体的に出番は少な目だった。
めぐりセンパイも主人公の先輩であるため、修学旅行編では殆ど登場しないし、コイバナシーンでも登場しないことは多いのだが、こちらは乙女や千依と同じバスケ部所属という点や主人公が最初に惚れた相手ということもあり、比較的頻繁に登場するヒロインだったので格差はあまり感じなかった。
もちろん二人ともヒロインとしての魅力がなかったというわけではなく、個別ルートではしっかりと魅力的に描かれていたし、シナリオも主人公とヒロイン二人きりではなく、他の登場人物たちも頻繁に登場するASaProjectらしい笑える展開の多いシナリオだった。
また、終盤の盛り上がりのなさも少し残念だった点で、気づいたらエンドロールが流れていたみたいな終わり方だったので、もう少し物語終盤を意識させるような盛り上がりが欲しいとも感じた。特にメインヒロイン3人はバスケ部ということに加え、主人公も元バスケ部でバスケに未練たらたらという設定なのに、体育祭編以降にその設定があまり活かされていないのは勿体ないと感じた。
●グラフィック
本作のCG枚数は74枚+SD絵10枚+各ヒロインのイメージヴィジュアル4枚というボリュームになっている。
フルプライスとしてはやや少ないボリュームに加え、サブカップルも存在するためヒロイン一人当たりのCGは少なめなのだが、実際にプレイしていても何故か少ないとは感じることはなかった。
クオリティは過去作同様に安定して高いもので、更に前作と比較するとヒロインが肉感的になった点や構図の変化もありエロさが増していると感じた。
●エッチシーン
今作のエッチシーンは全部で18回で千依とこころが5回ずつ、めぐり先輩と常夜が4回ずつとなっており、シナリオでの扱い同様にシーン数も千依とこころの二人の方が優遇されている。
シーン数こそ少なめだが1シーンの尺が長めなので特に不満を感じることはなかった。
公式HPにも記載されている通りサブカップルのエッチシーンは存在せず、そもそもエッチな雰囲気になることすら殆どなかった。
コメディ&ギャグに全振りしたようなシナリオ同様にエッチシーンでも笑いを誘う場面が多いものの、ふざけた日常会話から急にエロい雰囲気へと変貌していく流れは独特のエロさがあり、抜きゲーほどではないがASaProjectらしさとエロさがしっかり両立しているのは素晴らしいと感じた。
逆に悪かった点としては、男性器がモザイク越しでもわかるくらいに不自然な点で、根元からしっかりと写るような構図のCGではまさに取ってつけたように見えるものが多かった。
シーン内容は特定の性癖に偏っていると感じるほどにマニアックなものはないが、バリエーションは豊富で印象に残るシーンもあった。
衣装の種類も多く、どのヒロインも私服や部活のコスチュームなどシーンごとに服装が異なるのもよかった。また、個人的な性癖としてはエッチしながらのキスが多いのも嬉しいポイントだった。
●システム・コンフィグ
本作のコンフィグは充実していると同時に過剰に機能を盛っているわけでもない丁度よいもので、快適にプレイすることができた。
機能面も充実しており、選択肢ジャンプやバックログからのジャンプなどあれば便利な機能もしっかり搭載されていた。
不満だった点はロードするとバックログが消去されてしまうことで、プレイ再開時に直前の会話を確認しようとしてもバックログが使えないというのは地味に不便だった。
逆によかった機能はイベント鑑賞機能で、ストーリーが細かくチャプターに分けられており、好きなチャプターを鑑賞するだけでなく、そのチャプターからゲームを再開することができるという非常に便利な機能となっている。個人的には全ギャルゲーに搭載してほしいと思うほどに便利な機能だった。
●まとめ
明確なコンセプトと良質なコメディが合わさったASaProjectらしい作品。ヒロインも個性的、魅力的で恋愛ものとしてもしっかりと楽しめるものだった。
サブカップルの存在も本作のコンセプトならではの見所で、女子同士で集まってのコイバナや野郎どもの作戦会議シーンなどが非常に面白かった。