女装ものとしてもスポコンとしても楽しめる
●シナリオ
騎士育成科がある独自設定の学園や女装主人公など色々な要素を詰め込んだ作品だが、それらがしっかりと纏まった良作となっている。
騎士と言っても剣を使うわけではなく、カデンツァ(決闘)はAR技術を応用した安全な競技であるため、雰囲気的には部活やスポーツに近く、安心して見ていられるものだった。
物語は架空競技であるカデンツァを中心として組み立てられており、いちゃらぶシーンが少ないという不満点は残るものの、起承転結のしっかりした構成となっている。
本作に何を求めるかによって評価は変わってくると思うが、カデンツァの扱いは変にマニアック過ぎず、かといって描写が無さすぎて何をやっているのか全くわからないということもない丁度良いもので、大雑把に表現すると剣道やフェンシングなどの総合格闘技の剣術版な雰囲気だった。また、ペアで戦うデュオカデンツァに物語の焦点を当てることにより、攻略ヒロインとペアになることで仲を深めていく過程が自然と描かれているのもよかった。
主人公と攻略ヒロインがペアとなるのは勿論のことだが、ヒロイン同士のペアも個別ルートごとに異なるのもよかった点で、例えばツンツンしている梨理の場合、お泊り練習を通してライバル視していた依夜と仲良くなる展開もあれば、クレールの母性に溶かされる展開もありと、ヒロイン同士の組み合わせによる化学反応も色々と見ることができた。
反面、カデンツァのシーン数は少なく大半が練習シーンなことに加え、戦闘シーンのテキスト量も少なかったので、本作の目玉要素としてはもう少しシーン数やテキスト量が欲しいと感じた。また、ペアで戦うデュオカデンツァにしても、ペアで戦うという割には1対1が2組という流ればかりだったので、ペアらしい戦闘シーンも見てみたかった。
本作の舞台となる学園は騎士育成科などが存在することからもわかる通り日本を舞台にしているものの、通常の学園モノと比べると非常に独自色の強い世界観となっている。騎士道を教えているだけあって、モブキャラも含めて登場する人物はみんな紳士的(淑女的?)なのは非常によかった。また、カデンツァの勝負にしても正々堂々とした清々しいもので、見ていて気持ちのいいものだった。
自分はensembleの作品をプレイするのは初めてなのだが、女装モノを専門としているだけあって、女装主人公が物語を面白くする重要な要素として活かされていた。
女装バレがヒロインとの関係性が変化する重要な転機として描かれているのは勿論なのだが、バレ方にも色々なパターンがあって面白かった。自分からカミングアウトするパターンもあれば、お互いの妙な勘違いがきっかけでバレる落語的なパターンもあり、各ルートでどんな展開になるのか期待しながらプレイしていた。
主人公の起用声優も素晴らしく、女の子を演じている時の声は可愛らしく、そして男の子としての声を出すときはボーイッシュにと演じ分けがわかりやすいため、演技によっても女装主人公らしさを感じることができた。
本作のシナリオのボリュームはよく言えばコンパクト、悪く言えば物足りないものになっており、具体的には恋人関係になってからのイチャイチャが少なかった。
カデンツァを軸に物語が組み立てられておりテンポよくは進むのだが、恋人関係になって以降はエッチとエッチの間隔も短くシナリオの展開も駆け足に感じた。恋人になるまでの過程は丁寧に描かれていたのは素晴らしかったので、できれば恋人同士のシーンももう少し充実させてほしかった。
もう一つのプレイ中に感じた不満点はサブキャラの睦月の扱いが軽いことで、主人公の人生に大きな影響を与えた存在にも関わらず、物語中では大きく関わってこないのが不満だったのだが、こちらは全ヒロインクリア後に解放される睦月ルートでしっかりと解消してくれた。見せ場があることに加え、ルート内で明かされる衝撃の事実は本編での関わりが少ないことを納得させるのに十分なものだった。
●グラフィック・エッチシーン
本作のCGのボリュームは通常CG78枚+SD8枚となっており、フルプライスとしては標準的なボリュームとなっている。
CGのクオリティは非常に高く、原画・塗りともに素晴らしいものだった。
鎧のデザインについては露出の多いツッコミどころ満載のデザインではあるのだが、エロゲー的には大正解な鎧だった。フィエルテ(鎧の下に着る肌着みたいなもの)のデザインも素晴らしく、長手袋好きの自分には特に刺さるものだった。
エッチシーンのボリュームは全部で18回となっており、杏奈、依夜、梨里が4回ずつ、クレールが5回、女装状態の主人公の自慰シーンが1回の内訳となっている。非抜きゲーとしては標準的な回数だが、シーンの尺は長いため1シーンごとの満足度は高かった。
良くも悪くも主人公が可愛すぎて、主人公が顔出しで描かれているCGの場合は男性器の存在の違和感が強かったが、逆に言うと女性同士のエッチのような淫靡な雰囲気があってよかった。
エッチのプレイ自体はそこまで特徴があるわけではないのだが、鎧を着た状態でエッチをするシーンは印象的だった。また、ヒロインごとのキャラクター性がエッチシーンでも活かされていたのもよかった点で、例えば梨理は小悪魔っぽさが感じられるエッチが多かったり、クレールの場合は甘やかすのが好きな年上のお姉さんっぽいシーンが多かった。
●システム・コンフィグ
本作のコンフィグは充実しており、設定したいと自分が思う部分は一通り設定できるようになっていた。
機能面も基本的な機能に加えマウスジェスチャーも用意されており、快適にプレイすることができた。
攻略は選択肢一回だけの非常にシンプルなもので、選択肢もデュオカデンツァでペアになりたい相手を選ぶだけのわかりやすいものだった。
●まとめ
架空スポーツや独自設定の学園、女装主人公などの要素がうまく調和しており、物語のテンポの良さもあって最後までサクサクと読み進めることのできるものだった。
個別ルートもカデンツァを絡めることによってヒロインと自然に仲を深めることに成功しているだけでなく、ルートごとに展開やヒロイン同士の組み合わせが異なるため、先の展開にワクワクしながらプレイできた。