ギャル系ヒロインというのは統一しつつも、ヒロインそれぞれに異なる魅力があった。
●ヒロイン
もともと年上のヒロインが多いブランドだが、今作はギャル系の年上に特化しており新鮮に感じた。主人公が好感度の高いヒロインたちに振り回される展開もブランドお約束と言えるもので、ヒロインごとの方向性もしっかりと異なるため、マンネリにならずに最後まで楽しむことができた。シナリオ構成も素晴らしく、プレイを進めるにつれてヒロインの魅力が徐々にわかっていく構成になっており、共通ルート終盤ではどのヒロインから攻略しようか悩むほどにどのヒロインにも魅力を感じるようになっていた。
個別ルートは恋人ルートと淫欲ルートの二種類あり、恋人ルートは共通ルートでは見ることできなかったヒロインたちの恋人としての顔を見ることができる。対して淫欲ルートでは共通ルートでのキャラクター性がほぼそのまま維持されるため、同じヒロインでありながら二度楽しむことができた。
・瑛巳
暴君系ツンデレという性格が実姉という立場とうまくマッチしており、それがヒロインの魅力に繋がっているかはともかくとして、横暴な言動を違和感なく受け入れることができた。第一印象はイマイチだったのだが、主人公への愛の深さを実感できるエピソードや、小説執筆の際の取材のための恋人ごっとのような甘酸っぱいエピソードを通して徐々に印象が良い方向へと変化していった。淫欲ルートでは横暴な性格はそのままで、勝手に主人公の恋人面をして色々と恋人としてやりたいことを命令してくるのに加え、エッチの導入も強引なものが多かった。対して恋人ルートでは早々に主人公のことを旦那様呼ばわりまでする激しいギャップが面白かった。
・史乃亜
瑛巳同様に最初から好感度マックスだが、こちらはヤンデレ寄りの独占欲と強引さで主人公に迫ってくる。隙あらば主人公に性的に襲い掛かってくるのだが、時にはホラー映画のような手法で主人公に襲い掛かってくるのもヤンデレっぽさを助長していた。しかし、主人公への想いの真摯さ感じるようなエピソードもあり、ストーリーを進めるにつれて物語序盤では気づけなかった魅力を発見することが多かった。淫欲ルートでは独占欲を大爆発させて主人公に貞操帯を装着して射精管理をするというM向けの展開となっている。恋人ルートでも初エッチの前から外堀を埋めて婚約状態に持ち込んだりと相変わらずヤンデレっぽさを感じる方法で迫ってくるが、主人公とのやり取りやエッチは淫欲ルートと比較するとラブラブな雰囲気が強かった。
・莉愛
主人公への好意が振り切っている他二人のヒロインと比べると、莉愛は最初から主人公に惚れているわけではなく小悪魔的に主人公を弄んでいる感が強かった。それが小説執筆の参考にするための恋人ごっこを通してどんどん意識しあうようになっていく展開となっており、最も普通のギャルゲーっぽいヒロインだった。反面、恋人ルートと淫欲ルートの違いが最も小さいヒロインで、両ルートをプレイした後も良くも悪くも印象は変化しなかった。
・由依子
サブヒロインであるためルートは一つしかないが、個別ルートへ入った後の変貌ぶりはヒロインの中でダントツ。共通パートでは主人公が困っている時に助けてくれる頼れる存在であると同時に、恋愛には不慣れな可愛い一面もある年上という印象だった。ところがいざ付き合いだしてみると妄想癖の激しさが露呈し、初セックスの時点で二人の関係が夫婦だと信じ切っていたりと身の危険を感じるレベルだった。たまにホストが客の女性に刺されるみたいなニュースを見かけるが、自身の妄想の世界にトリップする由依子はまさにそういうタイプに見えた。
●シナリオ
抜きゲーのためストーリーはかなり簡素なもので、公式HPのストーリーページに書かれている「文芸部を守るためにコンクール入賞を目指す」という部分以外にストーリーについて語ることは大して存在しない。過去作と比較した場合、ヒロイン同士が同じ部活に所属していることに加え、昔からの友人と言うこともあり横の繋がりが強いのが特徴と言える。過去作では全ヒロインから好意を寄せられつつも、ヒロインが同時に登場するシーンが少ないためハーレム感は薄かった。それに比べ、今作はヒロインが同時に登場し主人公を取り合う場面も多くハーレム感を味わうことができたのがよかった。
●グラフィック
本作のCG枚数は80枚というフルプライスとしては標準的なボリュームとなっている。クオリティは過去作同様に素晴らしいもので、原画・塗りともに素晴らしいものだった。吐息や熱気、光の演出も素晴らしくエロさや淫靡さを感じさせるものだった。反面、解像度が未だに1280x720なのは残念な点で、自分のWQHDの解像度のモニターだとフルスクリーン時には若干引き延ばした感が出たのでもう少し解像度を上げてほしかった。
●エッチシーン
エッチシーンの総数は62回となっており、内訳は瑛巳と莉愛が17回、史乃亜が16回、由依子が9回、ハーレムが3回となっている。モザイクは特別薄いというわけではないが、面積が小さくてモザイクのかけ方が丁寧なのは好印象だった。機能面も充実しており、エッチ効果音の種類ごとの音量調節、射精箇所事前選択、カウントダウン機能があり便利だった。恋人ルートでは甘い雰囲気にオーソドックスなプレイが殆どなのに対し、淫欲ルートでは淫靡な雰囲気に加えマニアックなプレイもあった。史乃愛の貞操管理も印象的だったが、エッチシーンとして特に印象的だったのは莉愛の大人のおもちゃを使ったプレイや瑛巳たち他ヒロインに向けてのハメ撮り配信などのアブノーマルなプレイだった。
●システム・コンフィグ
本作のコンフィグ項目は比較的充実しており大きな不満なくプレイすることができたが、テキスト速度が5段階でしか調整できない点が唯一の不満点だった。攻略は良くも悪くも一昔前のエロゲーを彷彿とさせるもので、各エンディングに到達するだけならそこまで難しくないが、エッチシーンをコンプリートするとなると少し面倒な仕様になっている。攻略は会話シーンでの選択肢次第で、選択肢に対応したゲージが上昇するというオーソドックスなものなのだが、恋愛ゲージ、淫欲ゲージに加え独占欲ゲージという3種類のゲージがある。この独占欲ゲージがくせ者で、独占欲ゲージによって恋愛ルートに入れずノーマルエンドになってしまったり、淫欲ルートのエッチシーンが分岐したりする。結局、自分は途中で面倒くさくなって攻略サイトを参考にさせてもらったが、この妙な面倒さは同時に懐かしくも感じた。
●まとめ
年上の積極的なヒロインたちによるハーレムというアトリエかぐやのBARE&BUNNYブランドの特色は本作でも健在。ヒロインたちの個性が強かったのもよかった点で、それぞれ異なる方向性で主人公を篭絡しようとしてくるため、最後まで楽しんでプレイすることができた。また、メインヒロインそれぞれに二つのルートを用意することで、共通ルートで見せた押しの強い姿と恋人になってデレデレになった姿の両方を堪能できるのもよかった。