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Predawnvagabondさんのフタマタ恋愛の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
フタマタ恋愛
ブランド
ASa Project
得点
88
参照数
460

一言コメント

シリアスな背景設定の追加により、恋愛描写がより掘り下げられていた。その分コメディ要素は少し減ってしまったが、それでもアサプロの持ち味はちゃんと維持されていた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・シナリオ

AsaProject特有のぶっ飛んだシチュエーションや癖の強すぎる登場人物たちによるラブコメディは本作でもしっかりと健在で、まさに恋愛ADVと言えるほどに恋愛要素を前面に押し出しつつもASaProjectらしいコメディもしっかりと楽しめる内容だった。
三角関係や多角関係も最近のASaProjectの特徴で、本作はその極致とも言える二股を軸にしたストーリー展開となっている。
時間差ダブルデートや二股相手同士の遭遇など二股ならではのピンチが次々と訪れるのだが、プレイしている側は冷や汗をかくのではなく、思わず笑ってしまうシーンばかりで非常に面白かった。
舞台が学園から大学へと変わったのもよかった点で、登場人物たちは十代のように恋愛に対して夢見るだけでなく、現実的な(ひねくれた?)価値観を持っており、より恋愛というものをプレイヤーに深く考えさせるものだった。
また、主人公たちが住む自治寮もエロゲーらしいヒロインと一つ屋根の下の生活を都合よく実現しており、ASaProject特有のドタバタした日常も非常に楽しかった。

今作もASaProjectらしいコメディ作品だった反面、主人公とヒロインの一人である宮子の背景設定は過去作にはないシリアスなものになっており、プレイしている途中では重い気分になってしまうことがあった。
具体的に言うと二人とも親からネグレクトを受けており、大学生になった段階で殆ど縁を切った状態となっている。
ストーリー上に必要性のないシリアスな要素を入れる「誰得シリアス」というスラングがあるが、本作の場合は誰得シリアスとは正反対のもので、個人的にはASaProjectのストーリーにシリアスな要素を入れることは反対したいのだが、本作に関しては納得せざるを得ないものだった。
主人公と宮子のシリアスな背景を描写することによって、主人公のどこか投げやりで他人事な二股や、友達とも恋人とも言えない宮子との微妙な距離感が綺麗に納得のできるものになっている。
また、主人公の背景を描写することで、二股クズ野郎にも関わらず主人公に振り向いてもらおうと奮闘する煌の姿は応援したくなるものになったし、ついつい主人公の世話を焼いてしまう瑠衣のダメ男製造機っぷりにも共感することができた。
本作にシリアスな描写があると先ほどから書いているが、実際にはそこまで力を入れて描写しているわけではなく、ネグレクト故に罵倒や暴力を振るわれるシーンもないどころか、親が喋るシーンは一言も存在しないため、主人公の過去回想を聞いてもそこまで精神的なダメージを受ける要素もなく、尺も必要最低限だったのでプレイにおいて覚悟するほどのものではないと感じた。
事実、個別ルートは宮子ルートを含めてシリアスな要素もなく終始イチャラブしているだけだったため、暗い雰囲気のシーンは共通ルート中盤~終盤にかけての一部のみで、全体の数%しかなかった。
ただ、自分の場合は頭空っぽにしてコメディ作品を楽しむ姿勢でプレイしていたため、純愛ものだと思っていたらNTR作品だった時のような衝撃を受けたので特に印象に残ってしまった。
加えてASaProjectは過去作でも主人公、あるいはヒロインに重い過去を持っているような演出をしておきながら、蓋を開けてみるとしょうもないというネタを何度かやったこともあり、本作もネタの前振りだと思っていたのもダメージが大きかった要因だった。

登場人物たちは非常に魅力的で、ヒロインだけでなく主人公も上述の掘り下げがあることもあって印象に残るキャラクターだった。
とはいうものの主人公に不快さはなくてもやっていることはクズだし、女の子の泣き顔が好きというヤバい性癖もあるため、立派な(?)二股クズ野郎だった。
ヒロインたちもキャラクター性が魅力的なのはもちろん、印象付けるのもうまく、謎めいた部分があったり、喜怒哀楽が激しかったりとどのヒロインも強い存在感を放っていた。
心の底を中々見せてくれない結愛や宮子に翻弄され、瑠衣に世話を焼いてもらい、そして煌からストレートに好意を伝えられる共通ルートは非常に楽しかった。
個別ルートではそれぞれのヒロインが新たな一面を見せてくれるようになり、特に付き合う前は素直ではなかった宮子や結愛との甘々な恋人生活は特に印象に残るものだった。
また、ヒロイン同士の横のつながりも非常にいい感じで、最初は顔見知り程度だったのがストーリーが進むにつれどんどん仲良くなっていき、互いに考え方や口癖が移ったりと影響を与えあっているのが実感できるのもよかった。
今作の個別ルートは過去作よりもイチャラブ要素が強めだったため、よりヒロインの魅力を堪能することができた。
反面、イチャラブに多くを割いているため、コメディ要素が少なめなのは寂しく感じた。


●CG

本作のCGボリュームはイベントスチル73枚+SD絵11枚で、フルプライスとしてはちょっと物足りないものの標準の範疇のボリュームだが、メインヒロインに加えサブヒロイン4人分のエッチシーンもあるためか、印象的なシーンにも関わらずイベントスチルが存在せず、物足りなく感じることが何度かあった。
クオリティに関しては最高レベルとは言わないまでも、原画・塗りともに高いレベルで安定していた。
過去作ではヒロインたちに顔芸をさせていたASaProjectだが、本作では多少はコミカルな表情はあるものの、顔芸と呼べるようなものはなく、この点からも本作は笑いよりも恋愛を強く推しだしていると感じた。


●エッチシーン

本作のエッチシーン数は30となっており、内訳は結愛が5回、煌と宮子が6回、瑠衣が7回、精華とレイラが2回、瑠那となごみが1回となっている。
メインヒロインは回数こそ違うものの、総合的なボリュームは同等だった。
真愛を除くサブヒロインにもエッチシーンがあったのは嬉しかったが、シナリオのようなものは殆ど存在しないのは残念だった。
現在のエロゲーの標準から考えるとモザイクの面積は大きめで、卑語修正はピー音による修正で耳につくものだったので、修正はもう少し頑張ってほしかった。
今作は今まで以上にネタ要素の少ない普通にエロいシーンが多く、各シーンの尺もしっかりしていたため、オカズとして使うことも可能だと感じた。
妊娠を意識させるようなセリフが多いのが特徴の一つで、快楽のための生セックスを無責任セックスと称し背徳感を煽っていた。
個人的によかったのはディープキスが多かったことで、ヒロインを問わず印象に残るシーンがあった。
プレイ内容もオーソドックスなものから青姦、泥酔状態でのセックスなどバリエーションが豊富なのもよかった。
瑠衣のエッチは癖が強く、舐め犬からの後頭部押さえつけ後背位セックスや首絞め背面座位などハードなプレイが多く、後半のラブラブなエッチがあまり印象に残らないくらいだった。


●コンフィグ・システム

本作のコンフィグ項目には必要なものが揃っており快適にプレイすることができた。
また、ボイス登録や選択肢前後のジャンプなど機能面でも充実していた。
イベント鑑賞モードも非常に便利で、細かく分割されている任意のチャプターを鑑賞するだけでなく、そこからゲームを再開することもできる優れモノだった。
不満点をあえて挙げるならロード時にバックログがリセットされることで、中途半端なところで中断してしまうと再開した時に話の流れを遡れないのは少し不便だった。
攻略はどの選択肢を選べば目当てのヒロインのルートに入るか簡単にわかることに加え、選択肢ジャンプやイベント鑑賞モードなど、セーブを忘れても簡単にやり直せるので周回も非常に楽だった。
共通ルートをプレイしているとどのヒロインから攻略するか迷うかもしれないが、瑠衣は例外として二股した以上はどの順番でプレイしても選ばなかったヒロインに対する罪悪感はあるし、個別ルートにクオリティの差もなかったので、好きな順でプレイすればいいと感じた。


●まとめ

ASaProjectらしいラブコメディ作品だが、過去作とは異なり登場人物たちのシリアスな背景が描写されているため、主人公やヒロインの言動が説得力や納得感のあるものになっており、ストーリーや恋愛面がより強化されていると感じた。
その分コメディ要素は薄れてしまっているが、笑えるハーレムな日常や癖の強すぎる登場人物たちなどの魅力は健在で最後までしっかりと楽しめる作品だった。