笑いと萌えのバランスが素晴らしかった。
・シナリオ
ASaProjectはギャグ・コメディの印象が非常に強いブランドだが、今作はアサプロらしいギャグテイストを維持しつつ、恋愛や萌えなどのギャルゲーとしての基本的な部分もしっかりと楽しめる内容となっていた。
もう一つのアサプロの特徴として「変わったコンセプト」も挙げられるのだが、本作のタイトルでありコンセプトでもある「恋愛ロワイヤル」は字面にこそ惹かれるものの、ヒロインたちによる主人公争奪戦というエロゲーではそこまで珍しくはないコンセプトとなっている。
しかしながら、コンセプトの存在感が弱くなったことによって「アサプロが作った普通の学園モノ」という過去作に存在しなかった作品となっており、使い古された学園モノであるにも関わらず新鮮な気持ちで楽しむことができた。
前作から引き続き、アサプロの顔とも言えるシナリオライター兼ディレクターだった天都氏がディレクションに専念し、ライターは八日なのか氏が単独で担当するという組み合わせとなっているため、「かりぐらし恋愛」以前の作品の弱点だったヒロインのルート(担当ライター)によるクオリティの差もなくなっているので、プレイヤーが好きな順番でヒロインを攻略できるのもありがたかった。
本作はギャグやコメディ部分を除けば三角関係や幼馴染との初恋などを扱った驚くほどに普通の青春物語であり、純粋に恋愛ゲームとしても楽しめる内容だった。
また、主人公の過去の恋愛絡みのトラウマの詳細がプレイヤー側には最初は伏せられていたり、ヒロインとの馴れ初めや好きになった理由を小出しにしたりと、先が気になって読み進めたくなるシナリオ構成となっている。
ヒロインも魅力的に描かれており、主人公への好意を様々な形で伝えてくれるし、ふとした瞬間に見せてくれるギャップも可愛かった。
視点もヒロイン側に頻繁に切り替わるため、内面もしっかりとわかる点も素晴らしかった。
物語開始時点でヒロインたちは主人公に惚れているため、個別ルートに入る直前に選ばなかったヒロインたちを振る形になってしまうのだが、落ち込む暇もあらばとアタックを続けてくるので、変に罪悪感を抱くことがないのもよかった。
ギャグ・コメディ部分はアサプロの本領を存分に発揮しており、どいつもこいつも無茶苦茶で非常に面白かった。
また、ライバルを蹴散らしながら主人公にアプローチを仕掛けるというコンセプトからわかるように、ヒロイン同士が会する機会は非常に多く終始賑やかな雰囲気だった。
個別ルートも同様で、選ばれなかったヒロインたちは隙あらば主人公を奪い取ろうとするため、最後まで共通ルートのような賑やかさが続く。
やはりギャグ作品は登場人物たちが少ないと地味になってしまうし、ワンパターンになり勝ちなので、サブキャラ含め登場人物が多いというのは重要な要素だと思う。
真面目に青春や恋愛をしている場面でも一人はふざけたことをしているパターンも多いため、真面目なシーンでも笑えるものが多かった。
アサプロお得意のメタネタもしっかりと健在で、エロゲーやADVゲームならではのネタも多く面白かったと同時に、以前と比べるとメタネタは控えめになっているので、苦手な人でも受け入れることができるのではないかと思う。
登場人物たちはどいつもこいつもキャラが濃く、ヒステリー持ちやぶりっ子、ファッションメンヘラ、あほの子など、現実では地雷でしかない要素をうまくギャグへと転化させていた。
また、面白いだけでなく主人公に対する好意をそれぞれののやり方でしっかりと伝えてくれるため、ヒロインとしても非常に魅力的だった。
まりのストレートさとアホさは絶妙な組み合わせで、アサプロお馴染みの萌えよりもネタや変顔に走ったヒロインかと思いきや、主人公への想いの真っすぐさ、強さを実感させるイベントも多く、その純粋さに心打たれることもあった。
蓮菜は単独では特に面白いということはないのだが、場の雰囲気を無視してぶりっ子全開で主人公にすり寄ることが多いため、修羅場を更にかき回す存在として存在感を放っていた。
しかし、蓮菜のルート自体はコメディ要素は少なくなり、良くも悪くも三角関係を描いた青春恋愛モノとしての要素が前面に出てくる展開で、アサプロに求めるものとは方向性が少し違うものだったので最後には回さない方がいいと感じた。
別に作風を損なう妙なシリアス展開があるわけではなく、全体としてはコメディ寄りで、ヒロインは可愛くストーリー自体も面白かったので、箸休め的に他ルートの間にプレイすることを個人的には推奨する。
汐音は「自分大好き性悪ナルシスト」という公式HPの紹介文には首を傾げたくなるキャラだったが、ポンコツっぷりは非常に魅力的で、主人公へのアピールに空回りして失敗している姿も可愛かった。
サブヒロインの蒼との主従関係も見どころで、普段は主である汐音で遊んだり、汐音は汐音でわがまま放題だったりとロクな主従関係ではないのだが、肝心な部分では助けてくれたり、汐音が蒼のことを大切に想っていることを実感できるエピソードがあったりと、笑いと萌えのバランスもよかった。
ちなみに蒼とのエッチシーンも存在するのだが、蒼のルートが用意されているわけではなく、汐音ルートの途中でエッチをする流れとなる。
個人的には蒼のルートもあれば嬉しかったのだが、蒼と汐音の関係性や汐音の性格を考えると不自然になってしまうため、汐音ルートの中にエッチシーンを入れるのが一番自然だと感じた。
乃々香は共通ルートでは他ヒロインと比べると存在感が薄めだったのだが、乃々香のルート自体は一番ぶっ飛んだ内容だった。
妹の想いを受け止めて恋人になるという展開ではなく、失恋した主人公が妹に誘惑されて逃避先として選ぶという萌えゲーにあるまじき展開となっている。
乃々香もメンヘラだが独占欲があるというわけでもないために謎な部分が多く、それも乃々香の魅力の一つだった。
失恋しておかしくなってしまったのか、共通ルートや他のルートではサイコパスっぽさが殆ど感じられない主人公だが、乃々香ルートでは兄妹揃ってサイコパスっぽくなるのも面白いポイントで、愛と主人公がエッチする経緯も中々に最低でアサプロっぽさが出ていた。
サブヒロインたちは上述したように愛と蒼の二人はエッチシーンがメインヒロインのシナリオ中に存在するのだが、由奈、育代、千弥(仮)の3人はそれぞれにシナリオが用意されている。
とはいえ、育代と千弥の二人はシナリオと呼べるようなものは殆ど存在せず、エッチシーンのみと言えるようなもので、千弥はともかくとして、ぶっ飛んだキャラばかりの中での貴重な常識枠のキャラだった育代にはもう少ししっかりとしたルートがほしかった。
逆に由奈はサブヒロインにも関わらず、主人公の価値観に重要な影響を与えた存在でもあるためメインヒロインと同じくらい存在感があるし、由奈のルート自体もメインヒロインの半分程度のボリュームがあった。
・グラフィック
本作のCG枚数は74枚+SD絵10枚となっており、SD絵で補っているとはいえフルプライスの作品としては少しボリューム不足に感じた。
クオリティはいつものアサプロと言えるもので非常に安定していたが、同時に特筆すべき部分もないものだった。
ヒロインの変顔は本作でも健在で、変顔枠のまりの表情が一番面白かったが、他ヒロインにも変顔が用意されているのはよかった。
頻度は低めだが、テキスト読み進め以外のタイミングでも音声に合わせて表情差分が変化するのもよかった点で、特に普通の表情からいきなり変顔になるのはインパクトが凄かった。
メインヒロイン4人にはピロートークCGがあるのも嬉しい点だった。
・エッチシーン
本作のエッチシーン数は全部で30回となっており、まりが7回、汐音と乃々香が5回、蓮菜が6回、由奈が3回、育代、千弥、愛、蒼が1回ずつの内訳となっている。
卑語修正は標準的なピー音で、モザイクも非抜きゲーとしては標準的なもので、目障りとまではいかないがフェラシーンなどでは邪魔だなと感じる程度だった。
エッチシーンでは良くも悪くもネタに走らないことが多いが、いくつかのシーンではアサプロらしいネタ感の強いシーンもあり、特に初エッチで主人公が勃起せずに未遂で終わる場面は滅茶苦茶笑ってしまった。
バリエーションも思っていたよりも豊富で、ばれないようになどのシチュエーションだけでなく服装の種類も多かった。
プレイ自体はオーソドックスなものが多いのだが、乃々香だけは夜の公園での放尿やスパンキングなど、乃々香のシナリオ同様にぶっ飛んだプレイがあった。
個人的にはヒロイン問わずにエッチシーン中のキスが多いことと、夜通しエッチした後のヒロインの焦点の合ってない表情がエロくてよかった。
・コンフィグ・システム
本作のコンフィグは必要な項目は一通り揃っており、快適にプレイすることができた。
機能面ではバックログジャンプやスクリーンショット、前後の選択肢へのジャンプもあって周回も快適だったが、ジャンプした後やロードした時にバックログがリセットされて消えてしまうのは少し不便だった。
あまり見かけない機能だがイベント鑑賞機能は非常に便利で、エッチシーンのみならず全てのシーンを回想モードのように見ることができるだけでなく、選択したシーンから継続して最後までプレイすることもできるようになっている。
共通ルート、各個別シナリオが20シーンずつくらいに分割されてシーンタイトルもついているため、目当てのシーンを探すのも簡単だった。
また、システムボイスがきちんと用意されていたり、タイトル画面が複数種類用意されていたりと、細かい部分まで作り込まれていると感じた。
・まとめ
ギャグ作品として面白いのは以前のアサプロ作品と同様だが、本作はそこに恋愛や萌えなどの要素が素晴らしいバランス感覚で盛り込まれているため、恋愛ADVらしいドキドキとバカゲーらしい笑いを同時に堪能できる作品となっている。
また、各ヒロインの個別ルートもそれぞれに作風を損なわない範囲で方向性が異なるため、ダレることなく最後までプレイすることができた。