ソフトハウスキャラの良さが発揮された内容だった。
・ソフトハウスキャラ復活?
ソフトハウスキャラとBaseSonの合作と言える本作だが、どちらかというと、恋姫夢想のキャラを借りてソフトハウスキャラが作品を作ったと言える内容だった。
自分は恋姫夢想シリーズは第一作目を発売当初にプレイしただけで、今となっては13年ほど前のこととなってしまうため、カリンやケイファなどの一部のキャラは何となく覚えているのだが、細かいストーリーやヒロインたちの性格は殆ど覚えていない。
そのため、本作に登場する恋姫夢想のキャラクターたちがどの程度原作に忠実なのかは殆どわからないのだが、別に本作の登場人物たちが恋姫無双の世界から転移してきたという設定ではなく、物語開始時点では主人公のカズトと魔王カリンは初対面だし、恋姫の知識があることが前提の場面もなかったので、原作の知識なしでも問題なく本作のストーリーを楽しむことができた。
反面、恋姫夢想シリーズのファンが本作を恋姫シリーズのスピンオフ作品として楽しめるのかは自分には不明だったが、主人公の名前は恋姫シリーズ同様にカズトのため、ソシャゲのようにヒロインが他の名前の主人公とイチャついている場面を見せられて妙な寝取られ気分を味わうということはないと思う。
また、どういう基準で恋姫シリーズのヒロインの中から本作のヒロインを選出したのかは謎だが、性格や体形(スレンダーから巨乳まで)が被ることもなく、バランスが取れた選出だと感じた。
恋姫夢想シリーズを知らない人からすると、普通にソフトハウスキャラの作品をプレイする感覚でプレイできる内容で、いい意味でB級で緩い雰囲気の世界観は本作でも健在だった。
また、魔王カリンは復活のために必要な金を集めるためにカズトに迷宮を運営させるが、殺しはご法度という方針のため、アトラクションを運営している気分で迷宮を運営できるので、ソフトハウスキャラの過去作以上に緩い雰囲気だった。
誤解を恐れずに書くと、最近のソフトハウスキャラの作品は手抜き気味でシナリオのボリュームが不足しており、メインパートも日常パートも物足りないものだったのだが、本作はボリュームがしっかりとあり、日常のくだらない(誉め言葉)コミカルな寸劇などもしっかりと用意されていて面白かった。
寸劇があまりに頻繁に入るため、ゲームの方に集中させてくれと思えるくらいにボリュームがあるのは本当に久しぶりで、ソフトハウスキャラの雰囲気を堪能することができた。
それぞれのヒロイン固有のシーンもしっかりと用意されていたのだが、それ以外に複数のヒロインやモブが絡むシーンもしっかりと用意されていて、主要人物とモブたちが集まる麻雀大会とかバーベキュー大会のシーンなどを見ていると、自分もモブのポジションでいいから、こんな職場で働きたいと思うくらいに魅力的に世界観が描かれていた。
恋姫シリーズでは呉に所属している迷宮を攻略する側の面々と、迷宮を運営するカズトや魏の面々との関係も良好で、最初こそ誤解から本気で襲われるものの、迷宮側に害意がないと理解を得られた後はアトラクションとして迷宮に挑みにくる友人みたいな関係になる。
迷宮の宣伝で街に来た時は普通にイチャイチャしたり、迷宮に関わりのないギルドの依頼を共同で解決したりと、和気藹々としたものだった。
本作のストーリーパートを纏めると、自分がソフトハウスキャラに求めている内容そのもので、明確に面白かったと言える時代のソフトハウスキャラが復活したと言える程のクオリティ・ボリュームで満足度の高いものだった。
しかしながら、ソフトハウスキャラとしてではなくKarinProjectというメーカーから出ている本作は、エンドロールを見ていると主導したのはソフトハウスキャラとはいえ、様々なブランドやメーカーの協力の下に作成されたと言える作品であることがわかる。
勿論、本作だけで判断できるものではないのだが、ソフトハウスキャラ単独では本作のような規模の作品を作る力が残っていないのかもしれないと考えると少し悲しくなってしまった。
・周回が楽しい迷宮運営
本作のゲームシステムはソフトハウスキャラの過去作の「その古城に勇者砲あり!」や「その大樹は魔界を喰らう!」にバランス調整を加えたもので、拠点防衛を主とするゲームとなっている。
迷宮は小部屋に分かれており、それぞれにユニットを配置するか罠や施設を建設することができるようになっているという点では同じだが、過去作以上に迷宮の建築や運営に重きが置かれている内容になっていた。
本作には迷宮にもレベルの概念が導入されており、迷宮が得られる経験値は侵入者の満足度によって増減するため、単に侵入者を撃退するだけでなく楽しんでもらうことも重要となっており、単純に強い罠を大量に設置するのではなく、「面白さ」や「強さ」、「迷宮充実度」を考えて建設する必要がある。
迷宮充実度は同じ施設を二つ以上建設しても上昇しないため、必然的に複数種類の施設を建設することになるので、自分なりに効果的な組み合わせを考えるのも楽しかった。
また、過去作ではユニットを殆ど無制限に雇うことができ、ダンジョンの小部屋全てを戦闘部屋にするというゴリ押しができたのに対し、本作ではリーダーユニットの数(6人)しかユニットを配置できないため、最終的には13まで増える小部屋の内、半数以上を戦闘部屋以外にする必要がある。
なお、ソフトハウスキャラお馴染みの魔物たちは本作ではリーダーユニットの配下としてリーダーに装備される形で登場するが、魔物ユニットたちも重複せず各リーダーユニットが異なるユニットを装備するため、リーダーユニットにマッチするスキルを持つ魔物を吟味するのも楽しかった。
本作はユニット数が過去作よりも少ないため、周回を繰り返す内に成長が頭打ちするのではないかと危惧していたのだが、全エンディングに到達するために10週した程度では、一部の配下ユニットは最大レベルに達することはあったが、リーダーユニットが最大レベルに達することはなかったので、最後までユニットを成長させる楽しみはあった。
総じて、過去作以上に迷宮建築の際に考慮する必要のある要素が増え、また、単調なゴリ押しができなくなったので、迷宮建築におけるトライ&エラーの楽しみが大きくなっていた。
余談だが、ストーリー的にも迷宮の運営が目的達成のための手段だった過去作と異なり、本作では迷宮の運営が目的とも言える内容なので、ストーリー内でも迷宮についての会話が多く、そういった意味でも迷宮を運営している気分になり、より迷宮運営を楽しむことができたと思う。
ソフトハウスキャラの作品と言えば、周回を重ねてどんどん強くなっていって、今まで倒せなかった敵を簡単に倒せるようになるのが大きな楽しみなのだが、本作も周回を重ねる楽しみは健在だった。
本作で引き継げる要素は全ユニットと所持アイテム、羅針盤の3つで、迷宮の状態や所持金は引き継ぐことができずリセットされてしまう。
ただ、羅針盤による迷宮強化は引き継ぐことが可能なため、ある程度のダメージや経験値のボーナスは引き継ぐことができる。
迷宮関連がすべてリセットされるというのは一見面倒そうに見えるかもしれないが、作った迷宮を引き継げてしまうと迷宮の設計が固定されやすくなるのに対し、周回でリセットされてしまうと迷宮を必然的に再設計することになり、自然と前週の経験をフィードバックすることになるので、プレイ当初に自分が思っていたよりも面白かった。
また、迷宮のレベルが上がることによってボーナスとしてお金や残りのターン数が増えていく仕様になっており、周回時は強化されたユニットのお陰で中盤までは迷宮レベルがどんどん上がり、お金がかなりハイペースで入ってくるので早いペースで迷宮を発展させることができた。
ただ、建設できる施設もリセットされてしまうのは面倒な点で、お金もあるのに建設したい施設が建設できないのはストレスだったので、一旦解放された施設は周回時には最初から解放された状態にしてほしいと感じた。
・グラフィック、エッチシーンに文句なし
本作のCGボリュームは91枚+SD4枚(フルコンプしたわけではないので誤差はあるかも)となっており、フルプライスとして満足できるボリュームとなっている。
ヒロインは10人いるが、カリンは若干多めとなっているものの、それ以外のヒロインは迷宮運営側、冒険者側共に同程度の枚数が割かれていた。
クオリティは高いもので、原画、塗り共に素晴らしかった。
また、ヒロインの数が多いにも関わらず通常のイベントCGもきちんと用意されているのは嬉しい点だった。
本作のエッチシーン回数は全部で31回(多分)で、内訳はカリン、フウ、ミンメイ、シシュン、レンファが3回ずつ、カロン、ケイファ、シュンラン、シュウラン、シャオレン、ミダリとシッポが2回ずつ、シュンランとシュウランの3P、ケイファとカリンとの3Pが1回ずつとなっている。
卑語修正のピー音はそれなりに煩かったのは残念だったが、モザイクはギリギリを攻めており、面積は小さくて薄いのはよかった。
各シーンの尺は並み程度だがテキストはよかったので、オカズとしてもそれなりに優秀なものだった。
基本的には和姦シーンのみと言えるものなのだが、シシュンのみはカズトとの最初のエッチに凌辱色がある(誘い受け的な部分もある)ことと、スライムに襲われるシーンがあるのだが、後に緊縛プレイに目覚めてしまうための布石ということもあり、本作ののんびりとした雰囲気を損なうことはなかった。
個人的に印象に残ったのはケイファとカリンの3Pで、ケイファルートのエッチシーンの扱いのため、カリンは抱き合いながら見ているだけという状態なのだが、敬愛する魔王さまに目の前で乱れる姿を見られるケイファというシチュエーションがよかった。
・システム周りは並み
BaseSonの作品は初代の恋姫夢想以外はプレイしたことがないので断言はできないが、本作のコンフィグやシステム周りはソフトハウスキャラのシステムを使用しているようで、大きな不満を抱くこともなかったが、逆に素晴らしいと言える程でもない標準的なものだった。
デフォルトではフルスクリーン化するとWindows側の解像度が変更される仕様になっているが、F10キー、もしくはコンフィグの詳細設定から開くことができる環境設定でフルスクリーンの設定を変更することができる。
ウィンドウサイズも完全に可変ではないが、いくつかのサイズから選ぶことができるために不便は感じなかったが、マルチモニターに対応していないのは残念な点で、フォーカスがサブモニターに移ると勝手に最小化してしまう仕様だった。
エッチ以外のシーンも全て回想に登録されて後から見ることができるのだが、全部で605もの回想数となっていることもあるためか、本編プレイ中にテキストウィンドウ上にある☆マークをクリックすることでお気に入り登録をすることができるので、もう一度見たいと思ったシーンはお気に入り登録しておくといいかもしれない。
とはいえ、周回プレイが前提のゲームなので、過半数のシーンは何度もプレイ中に目にすることになるため、わざわざ回想モードで閲覧することは少ないかもしれない。
シーンスキップ機能は周回プレイが前提の本作では非常に便利な機能で、現在見ているシーンをワンクリックでスキップしてしまうことができる。
寸劇の連続で構成されている本作では、もう一度見たいと思っていたシーンを誤ってスキップしてしまうこともないし、それでいてストーリーパートをサクサクと進めることもできるありがたい機能だった。
本作のヒロインの攻略は単純明快で、攻略したいヒロインと会話イベントを進めるだけな上に、イベントを進めるための大雑把な条件も表示されるので、基本的にヒロイン攻略に苦労することはなかった。
また、会話を進めていると唐突にエンディングになってしまうこともなく、事前に明確にわかるように配慮されているので、次週への準備もしっかりと行うことができるようになっていた。
ただ、レンファとシャオレンの登場条件にカリンとの会話イベントをある程度進める必要があること(その5まで?)が書かれていない点と、カリンとの会話イベントが進んでいると(その6?)迷宮レベルが60になった時点でカリンが完全復活してしまい、他ヒロインとの会話イベントが発生しなくなるのは注意すべき点で、自分の場合、レンファとのイベントを進めている最中にカリンが完全復活してしまい、余分に一周することになってしまった。
また、フウはカリン完全復活前にエンディング条件を満たした状態にしておくと、カリン完全復活後に真エンドを見ることができるのもゲーム中には記載されていなかったので、カリン攻略時には留意しておくと無駄にもう一周することなくエンディングを回収できる。
自分の場合、一周でヒロイン一人攻略という方針でプレイしていたため、最終的に10週することになったのだが、こちら側のユニットが強くなりすぎて最後の方は作業になっていたことや、ターン制限にはかなり余裕があるため二人くらいは同時に攻略できるので、ある程度ゲームに慣れたらシシュンとミンメイ、レンファとシャオレンのようにセットで攻略できるヒロインは同一周回で攻略してしまった方が楽だと感じた。
・まとめ
ソフトハウスキャラの魅力である緩い世界観と恋姫夢想の登場人物たちの融合は成功しており、ソフトハウスキャラの世界観に馴染んでいると感じた。
ストーリーを楽しむための寸劇も満足のいくボリュームが用意されており、10人というヒロインの多さにも関わらず、埋もれることなくどのヒロインも魅力的に描かれていた。
ゲームパートもソフトハウスキャラの魅力と言える周回によるユニット強化の面白さに加え、過去作から改良された迷宮運営は周回を重ねて自分なりに改良していく面白さを味わうことができた。