ギャグからコメディ重視に路線変更していたが、ここ最近のアサプロ作品では一番面白かった。
・ASa Projectの一つの完成形
ASa Project(アサプロ)の作品と言えば、特徴的な設定と笑いに特化したシナリオがセールスポイントのブランドだが、本作もアサプロらしさを楽しめる作品だった。
それどころか、弱点だった個別ルートの出来のバラつきや、ここ数作で苦慮していたように感じられた萌えと笑いのバランスがしっかりと取れていたので、総合的な面白さとしてはアサプロ作品では一二を争う内容だった。
最近流行り(?)の人材レンタルサービスが題材というのも流石の一言で、独自性があるだけでなく、アサプロが得意とするドタバタ劇にマッチした題材だった。
レンタルの依頼主が実はクラスメイトだったり、バイト先や予備校で一緒になってしまったがためにレンタルバイト外でも関わるようになってしまい、プライベートでも愛人や恋人のふりをする必要が生じたりと、カオスな状況に陥ってしまう。
ヒロイン側も最初は一度限りの嘘のつもりだったのに、思惑が外れてどんどん取り返しがつかなくなり、ドツボにハマっていくのが面白かった。
個別ルートに入った後も他ヒロインやサブキャラがしっかり登場するため、最後まで賑やかなのも嬉しい点だった。
また、個別ルートそれぞれに特徴があり、三角関係を扱った八純ルートと絵未ルート、下ネタ満載の泉姉妹ルート、他ヒロインとのレンタルバイトを継続する椿ルートがあるため、最後まで飽きずに楽しむことができた。
三角関係の二人のルートは選ばれなかった方のヒロインが諦めて身を引くわけではなく、勝手に敗者復活しようとするため最後までアサプロらしいドタバタをを楽しめたし、プレイヤーが罪悪感を感じづらい展開でよかった。
泉姉妹のルートは三角関係ではなく、ちなつが恋人、こなつは肉体関係ありの妹という形で3人の関係は落ち着くが、姉妹も何だかんだ抜け駆けしようとするため、多少の主人公の取り合いはあるが、どちらかというと下ネタの印象が強かった。
泉姉妹のレンタル契約内容が「兄」のため、実妹の月の登場が多めなのも特徴と言えば特徴で、兄の恋愛を応援し見守る他ルートよりもハジけた月を見ることができた。
椿ルートは他ルートの絵未と八純、こなつとちなつのような対となるヒロインはいないが、想いが通じ合ったあともしばらくは愛人関係を続けることもあり、主人公はレンタルバイトを続けるため、他ヒロインが幅広く登場した。
また、主人公が年齢の割に尊大な話し方のため(作中ではぶっきらぼうと表現されていた)、椿以外のヒロインとの会話ではどうしても偉そうにしている印象が拭えなかったのだが、椿だけは社会人ということもあって、主人公の態度が他ヒロインとは違ったため、ヒロイン単体の魅力は置いておくとして、主人公とヒロインの組み合わせという点では椿が一番だと感じた。
メインヒロイン5人の4ルート構成となっているが、一応は咲希と桃子にもHシーンは用意されている。
ただし、ストーリーと呼べるものは皆無で、絵未と八純の三角関係の真っ只中の時に選択肢をミスる(?)と、二人のどちらかと場当たり的に肉体関係を持ってしまう。
絵未と八純に真剣な想いを伝えられた後だけに、主人公のクズっぷりが半端なかったので、サブキャラのHシーンがあるのは嬉しいのだが、もう少しシナリオをは考えてほしかった。
過去作と比較した場合、本作はアサプロの特徴の一つだったメタネタや下ネタが減っていることが違いとして挙げられる。
特に下ネタが減ったのが印象的で、ヒロインたちが時にヒロインらしさ(乙女らしさ?)を投げ捨てて下ネタに走っていた過去作と比べると、今作は一貫してヒロインからヒロインらしさを感じられた。
ただし、泉姉妹は過去の下ネタ満載のアサプロ作品が好きだった人のためのヒロイン、シナリオと言える内容だったので、過去作と比べた時の寂しさのようなものは本作をプレイしていても感じなかった。
他のアサプロの特徴であるヒロインの変顔も、多少はあるものの非常に少なくなってしまったが、無いなら無いであまり気にならなかった。
また、ヒロインの主人公に対する想いがアサプロ作品の中では一番強く感じられたのも本作の美点で、それもあり、ヒロインとしての魅力は本作が一番だと感じた。
過去のアサプロの大きな弱点の一つとして挙げられるのが個別ルート毎のクオリティの差が大きいことで、最近はマシになりつつあったが、ディレクター兼メインシナリオライターの天都氏が担当した共通ルートおよびセンターヒロインルートと、それ以外のルートで面白さに差があった。
個人の想像でしかないが、ギャグ作品というのは作者の感性に依る部分が非常に大きく、例えディレクターがある程度の物語の流れを事前に用意し、それなりのライターを起用したとしても同等のシナリオを作成するのは難しいのだと思う。
しかし、本作では天都氏はディレクターに徹し、シナリオライターを八日なのか氏に一任する人員構成になっているため、全体のクオリティが安定していた。
八日なのか氏の作風とアサプロ作品の作風も似ているため、安定しているだけでなく、上述したようにどのルートも期待通りの内容だったので、天都氏はディレクションに専念するというのは一つの正解だと感じた。
批評空間のデータを見ていて気づいたのだが、八日なのか氏は以前「Eclair」というブランドの「恋春アドレセンス」という作品を担当しており、アサプロ作品と似た作風で面白かったので、「第二のアサプロができた!」と喜んでいたのに、その後Eclairからは作品が出されることはなく非常に残念に思っていたので、再び八日なのか氏の作品をプレイできたのは嬉しかった。
総じて、本作はギャグ路線からラブコメ路線に変わったというのが個人的な感想で、それでありながら、アサプロらしさがしっかりと楽しめる内容だったので、笑いとヒロインの可愛らしさの両面で満足できる作品だった。
・グラフィックとHシーンは可もなく不可もなく
本作のCG枚数は74枚+SD絵10枚となっており、フルプライスとしては標準の範囲内のボリュームだった。
クオリティの方は特別に凄いというわけではないが、原画、塗り共に安定しており、同じ原画家をずっと起用していることもあり、過去作からの進化は感じることができた。
立ち絵の動きがあるのはよかったのだが、頻度が少なめなのは残念に感じた点で、特に本作は1テキスト内でのテンションのアップダウンが激しいため、もっと立ち絵を動かしてほしかった。
Hシーンの方は全部で26回となっており、内訳は絵未と椿が5回、八純と双子が6回、咲希と桃子が2回ずつとなっている。
卑語修正がピー音で入るタイプなのはともかく、モザイク面積が大きく、かけ方も雑なのは残念な点で、パンツを脱ぐ前からモザイクがかかっているのは流石にどうかと思った。
内容は過去作と比べると双子を除けばネタ要素は薄めで、良くも悪くも普通よりのHシーンが多かった。
絵未と八純のCGは特に構図や表情がエロく、アサプロ作品の中では一番エロかったと言えるが、他ブランドの作品と比べた場合は特別にエロいということもなく、エッチシーンの印象は可もなく不可もなくというのが正直だった。
・便利なイベント再生機能
本作のコンフィグ・機能面は最近のフルプライス作品としては標準レベルで、大きな不満なくプレイすることができた。
ウィンドウモードでプレイ時のウィンドウサイズは4種類から選ぶタイプで完全な可変ではなかったが、1600x900のサイズがあったため個人的に不満は抱かなかった。
バックログからのジャンプや次の選択肢へのジャンプ機能もあったが、選択肢ジャンプの場合はバックログが生成されないため、シーンを覚えていない場合、どの選択肢が目当てのヒロインに繋がるかわからない場合もあった。
Enterキーを一瞬でも押しっぱなしにするとスキップされてしまうのは残念な点で、Enterで読み進めている場合、意図しないスキップをすることがちょくちょくあった。
本作で特に便利だった機能はイベント再生機能で、エッチシーンだけでなく任意のイベントを再生可能なので、もう一度見たいシーンだけを見ることも可能だし、そこからゲームを再開することも可能だった。
Ver1.01時点で自分が遭遇した不具合としては、システム設定画面からタイトル画面に戻った時、あるいは戻った後に鑑賞モードやイベント再生モードを選択した時にクラッシュする不具合で、かなりの頻度で遭遇したが、発生条件が限定的な上に、タイトル画面に戻る時は基本的にセーブした直後なため大きな問題はなかった。
・まとめ
ややコメディ寄りに路線変更したものの、アサプロらしさがしっかりと感じられる笑い満載のシナリオに加え、従来の弱点だった個別ルートごとのクオリティ差も解消されていた。
ヒロインの主人公のことが好きだという想いもうまく描けていたため、アサプロ作品の中では一番ヒロインが魅力的な作品でもあった。