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Predawnvagabondさんの催眠術4の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
催眠術4
ブランド
筆柿そふと
得点
76
参照数
1992

一言コメント

いつも通りの催眠術シリーズ。控えめな催眠術と背徳感を組み合わせた内容だった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

過去の「催眠術シリーズ」をプレイした人からすると、登場人物が変わっただけで、良くも悪くも大体同じだと感じる内容で、催眠術の使い方は控えめにして、幼少期から一緒に過ごしてきた人と肉体関係を持つことによる背徳的なエロを主題としていた。
催眠術作品ばかり出しているブランドだけあって、単純に催眠術で好き放題する作品をプレイしたい人向けには「催眠学園シリーズ」が用意されているので、催眠術を主題としつつも、方向性はブランド内でしっかりと棲み分けができているのは流石だと感じた。
また、筆柿そふとの前身である「Black Rainbow」時代から、監督兼シナリオ担当のNATORI烏賊氏は近親相姦を扱ってきただけあって、段階的に主人公が大胆になっていく過程を丁寧に描くことや、ストーリー冒頭で主人公の幼少期から現代までの回想を挿むことで、主人公にとっての姉や幼馴染の大切さをプレイヤーにも実感できるようにすることで、身近な人間と関係を持つ背徳感をしっかりと演出できていた。
主人公が最初に催眠術を使用する目的は、エロいことをするためではなく、姉や幼馴染に近づく男たちから遠ざけるためなのだが、深層意識への刷り込みの際にちょっとしたミスを犯し、綾菜から積極的なアプローチを受けるようになってしまい、姉たちを異性として意識するようになってしまう。
幼馴染の方も似たようなノリで、催眠術を使用した際に、トランス状態の無防備なヒロインを見ている内に、ついエッチな悪戯をしてしまったことをきっかけに、催眠術でエロいことをするようになっていく。
ちなみに、ヒロインに告白した男たちは、その後主人公に催眠術をかけられ、一切登場しなくなってしまうし、主人公の他に催眠術を使える人間が絡んでくることもないので、寝取られの心配を気にすることなくプレイできた。
唯一、主人公に催眠術を教えてくれた初老の男性は催眠術を使えるが、実は彼は過去作の登場人物のその後の姿で、一部のルートで協力者としてちょっと再登場するだけなので、こちらも寝取られの心配をする必要はなかった。
ただ、寝取られは存在しないが、バッドエンドは幼馴染それぞれに用意されており、しかも、通常のエンディングを見た後でないと開放されない仕様のため、幼馴染ルートを後回しにした場合、最後はバッドエンドを見て終わる可能性が高い。

本作のシナリオの分岐は大別して二つになっていて、姉二人のルートと、幼馴染二人のルートに分かれている。
そこから更に細かく枝分かれし、それぞれの個別ルートと3Pルート、幼馴染の母親にも手を出すルートと分岐している。
そのため、姉と幼馴染とを同時に手を出すルートはなかった(味見程度はするが)。
主人公の催眠術の使い方はルートによって異なり、綾菜や翼のルートなんかだと、割とイチャイチャしながら普通のエッチばかりしていた印象が強かった。
綾菜の場合、弟への愛情が家族としてのものだけでなく、異性としてのものが加えられるものの、それ以外は殆ど変わらず、ただの恋人同士だった。
もう一人の姉の涼菜は、綾菜と反対に父親ポジションということもあって、実践形式のエッチの手ほどきを目的として、主人公とエッチなことをする。
特殊なプレイこそなかったものの、姉が実践的な形で性教育を受けるという異常なシチュエーションゆえに、催眠術らしさはあって良かった。
姉との3Pルートは主人公にショーツを確認してもらうとか、ストレス解消に疑似授乳プレイをするとか、内容的にもシチュエーション的にも催眠術作品らしいものが多かった。
幼馴染の翼の場合、性的なこと(男女の機微)にとことん疎く、主人公のことも単なる幼馴染としか認識していないので、エッチなことを単純な遊び(勝負)だと認識させて、先にイッた方が負け等の条件をつけてのエッチが多かった。
翼にはもう一つルートが用意されており、そちらの場合は、トランス状態で本人が知らぬ内に性感開発を行い、主人公への好感度(肉欲?)にブーストをかけた後に告白し、その後は普通に恋人としてエッチなことをするという流れになっている。
片方のルートでは翼の天真爛漫さを残したまま、エッチなことをするという催眠術の使い方をし、もう片方では翼の乙女な一面を見せるというのは良かった。。
翼ルートも基本的には綾菜ルートと似たような雰囲気で、普通に恋人同士でエッチしている雰囲気に近かったが、本人が知らぬ間に性感を開発するという展開は、ドキドキ感があってよかった。
もう一人の幼馴染の真琴の扱いだけは他3人と異なり、「催眠学園シリーズ」に近い扱いで、性的快楽を得るためだけに催眠術の対象とされてしまう。
主人公のクズっぷりも他ルートとは段違いで、翼との3Pルートでの扱いも酷いため、少々本作のコンセプトから外れているのではないかと感じた。
真琴の場合は、基本的に本人の常識自体は変えず、肉体を操るという展開が主で、特に母親にも手を出すルートの場合、正気な娘の前で母親におまるに排泄をさせたり(母親の方は認識が歪められている)と、鬼畜な内容が多かった。
翼と真琴の3Pルートでの扱いも酷く、翼とは恋人として付き合う傍ら、真琴は翼には認識できない状態にされて、当て馬のようなことをさせられるという展開だった。
真琴が主人公や翼を興奮させるべく奉仕しているのに、真琴を認識できない翼は主人公と二人でエッチをしていると認識し、真琴を完全に無視するという異常さは催眠術作品らしいものだった。

総じて、本作は真琴パートを除けば、催眠術らしいぶっ飛び具合は良くも悪くも控えめな内容となっていた。
勿論、催眠術作品ならではのシーンもしっかりと用意はされているのだが、基本路線は催眠術で気になるヒロインを和姦で落とすというものだった。
ヒロインの主人公に対する好感度が高い(異性として好きかは別として)のも、そう感じる理由の一つで、例えば、主人公がキモい男だったり、ヒロインから嫌われていた場合、内容が同じでも印象が変わり、催眠術作品っぽさが更に出たのではないかと思う。
ただ、過去作やNATORI烏賊氏の他の作品もプレイしている身としては、期待通り、予想通りの内容だったのも事実で、少なくとも過去作を知った上でプレイするのなら、期待を裏切られることはない内容だった。


本作のボリュームは回想モードの枠で数えると95となっており、内訳は綾菜が15、涼菜が13、涼菜&綾菜が9、翼が20、翼&真琴が3、楓が9、真琴が14(母親との3P含む)、エピローグが12となっている。
しかし、エピローグ等の回想の一部にはエロが無いこと、シーン1回につき1枠割り当てているわけではなく、CG1枚につき回想1枠を割り当てているため、体感でのシーン数は50~60回くらいだった。
何れにしろ、価格相応のボリュームなので、全体のボリュームに不満は無かったが、翼が優遇されすぎだったのは個人的には残念な点で、4人を平等にとまでは言わないが、せめて姉と幼馴染の配分は同じにしてほしかった。
エッチシーンに絡む残念な点としては、猥語のピー音修正があることで、特に、催眠術で敢えて下品な単語を使わせるため、通常の作品以上に猥語を言わせるのに、修正があるのは耳障りだった。
反面、モザイクの面積が非常に小さいのはよかった。
NATORI烏賊氏がシナリオを担当している作品の常として、相変わらず軽度のスカトロはあったが、あくまでも排泄させるだけで、口に入れたりはしないし、数も多くはないので、スカトロに興味がなくても流せるレベルだった。
また、ヒロインそれぞれに長尺のキスシーンがあるのもNATORI烏賊氏の特徴だが、本作もそれぞれのヒロインに最低1回は用意されているのは嬉しかった。

CGボリュームの方は90枚となっており、フルプライス作品としては少し多めのボリュームとなっている。
クオリティは原画、塗り共に良かったが、微妙に古臭い、あるいは懐かしいとも感じた。
古臭いと書くと悪く見えてしまうが、あくまでも好みの問題の話で、むしろ現代のクオリティで作成された懐かしさを感じるCGは貴重なので、本作のウリと言うことができると思う。
陰毛は設定不可で陰毛あり固定となっているが、その分、オン・オフを設定可能な取って付けたような他作品の陰毛と比べると、クオリティは高めだった。
公式HPのサンプルを見てもある程度予想できるように、抜きゲーとしては主人公の顔出しCGが多いのも特徴の一つと言えるかもしれない。
キモ男というわけでもないので、邪魔ではないが、構図的に顔を描かないと違和感のあるものは別として、そうでないシーンでは顔をなるべく映らないようにしておいてほしいというのが正直なところだった。

コンフィグやシステム周りは、同世代の他作品と比べるとイマイチで、最低限の項目しか調整できなかった。
登場人物の音声ボリュームを個別に調節することができない(個別にON・OFFは可能)し、ウィンドウサイズを調節できないのも不便だった。
また、コンフィグの変更を確定するためには、右クリックではなく、決定ボタンを押してコンフィグ画面から抜ける必要があるのだが、右クリックで抜けても警告が表示されないため、変更したつもりなのに変更されていなかったということが何度かあった。
他にも、自分の環境が原因だとは思うのだが、デュアルモニターでプレイしていると、どう頑張ってもメインモニター側でフルスクリーン状態にすることができず、勝手にサブモニター側でフルスクリーン状態になるという不具合に遭遇した。
Windows側の設定でメインとサブを入れ替えても、自分がサブとして使っているモニターに最大化されるという徹底ぶりで、最終的には「表示画面を複製する」に設定することで、メインとサブのモニターに同じ内容を表示させる方法に落ち着いたが、いちいちプレイする度に設定を切り替えるのは面倒なことこの上なかった。
自分のPCだと筆柿ソフトの全作品で同様の現象に遭遇するので、流石に誰にでも発生する不具合だと修正が入るだろうし、おま環の不具合なのだと思う。

全部で12のエンディングが用意されており、ヒロインそれぞれの個別エンド以外にも、姉二人同時に手を出すルート、幼馴染それぞれの母親にも手を出すルート、更にはバッドエンドも用意されている。
そのため、コンプリートするのはやや面倒だった。
エンディングの数の割には選択肢が多くないので、総当たりでコンプリートすることも可能だが、特定のエンディングに狙って到達するとなると、翼だけはエンディングが2種類あること、バッドエンドに到達する選択肢は、該当ヒロインの他のエンディング到達後でないと表示されないなど、ややトリッキーな部分もあった。


まとめ

過去作の催眠術シリーズと似た内容のため、それを知った上でプレイするのなら、期待を裏切られることも、逆に上回ることもない内容だった。
ストーリー的な繋がりはないので、催眠術で好き勝手する作品ではなく、催眠術を使って家族や幼馴染と背徳的な関係を持つというコンセプトに惹かれるのならシリーズ未プレイで手を出しても楽しめると思う。
また、催眠術要素が薄めだとは書いたが、催眠術作品らしいシュールなエロもあり、催眠術作品としても楽しめることは楽しめるので、催眠術&子供の頃から知っている人と肉体関係を持つ背徳感を同時に楽しめる唯一のシリーズかもしれない。