ソフトハウスキャラらしい日常会話が少なかったのが残念だったが、ゲームパートはそれなりに遊べる内容だった。
・あっさりしたシナリオ
ソフトハウスキャラの過去作のシナリオは、主人公(とヒロイン)が何らかの目的を達成するための行動を描いたメインパートと、随所に散りばめられた日常会話のサブパートで構成されていた。
本作はサブパートにあたる本筋に関係のない日常シーンは殆どカットされており、存在感を放っていたモブキャラも登場しなくなってしまったので、”過去作と比べると”シリアスな雰囲気になっていた。
しかし、メインパートのボリュームが増えて骨太になったわけではなく、体感では過去作と変わらない程度のボリュームだったので、全体のボリュームは減少しており、良く言えばあっさり、悪く言えば物足りない内容だった。
登場人物にしても、主人公サイドの確定メンバーは主人公、プリムティーネ、エレオノーラの3人だけで、カリンとファリナセアはどちらかしか仲間にならないし(ゲームパートではクローンユニットとして使用可能)、メインキャラ扱いで紹介されているアードベルトに至っては、ファリナセアルート以外では全く登場しないので、道中かなり寂しいと感じてしまった。
ソフトハウスキャラは2ライン体制になってからも、程度の差はあれど、どちらのチームでも日常シーンや敵との馴れ合い(褒め言葉)がコミカルに描かれており、それが魅力の一つだったので、それがなくなってしまったのは残念に思ったし、それを補完するものがシナリオ面で見当たらないのはどうなのかと感じた。
クリア後に開放されるオマケシナリオでは、収録されなかったと思しき会話の一部(?)を鑑賞することができるのだが、未収録の会話シーンはソフトハウスキャラらしさの感じられる内容だったので、本編に収録されていないのは残念に感じた。
未収録の会話は単に面白いというだけでなく、説明不足な世界観や背景設定を知ることもできる内容だったので、ストーリーに直接関係ない会話とはいえ、本編中にもっと日常シーンなどを入れることで、物語に深みを持たせることができたのではないかと思う。
主人公の性格も過去作と比べた場合大きく違い、性豪で経験豊富だった過去作の主人公たちと違い、本作の主人公は童貞で、淫魔という生い立ちを拗らせたために性的なことに忌避感すら抱いているという、およそエロゲーの主人公らしくない性格をしていた。
とはいえ、淫魔設定はしっかりと活かされており、精液に限らず体液には媚薬効果があるので、童貞と言えどヒロインを快感で蕩かすことができるし、自身の能力を使って捕虜を仲間に引き入れることもある(主にサブキャラクター)。
しかし、女好きというわけではなく、あくまでも淫魔の力は捕虜を仲間に引き入れるために使用するというスタンスで、自身の快楽のために能力を使うことはなかった。
それだけでなく、ヒロインと肉体関係を持つのは個別ルートに入ってからで、ストーリーからほぼ独立しているその他の魔物娘たちを除くと浮気もしないという、ソフトハウスキャラのヒロインにしては珍しい展開だった。
ストーリー自体について言及すると、次期魔王の候補たちがバトルロワイヤルを繰り広げる中で、弱小勢力であるプリムティーネと、その軍師となった主人公が魔王となるべく奮闘するというわかりやすいものになっている。
単にバトルロワイヤルが描かれるというだけでなく、亡くなった前魔王の娘でもあるプリムティーネは父の死についても疑問を抱いていたり、カリンは弟の仇を探していたりと、面白くなりそうな要素は一通りそろっていた。
しかし、魔王を決める10人の魔王候補のバトルロワイヤルという設定はスケールが大きいはずなのに、敵対するキャラクターも基本的に一人ずつしか登場しないので、スケールが小さく感じてしまった。
ヒロインとの仲を深めるシーンも必要最低限で、「いつの間に惚れたの?」とはならないものの、登場人物が少ない割に掘り下げは浅くて物足りないと感じた。
・ゲームパートは勇者砲と殆ど同じ
本作のゲームパートはフィールド移動、防衛戦闘、内政の3つにわかれており、フィールド移動パートを除けば過去作の「その古城に勇者砲あり!」と大体同じ内容となっている。
フィールド移動は単純に炎樹城を移動させるだけなのだが、他の魔王候補はマップ兵器を持っているし、マップ上には雑魚敵シンボルや湧きポイントがあるので、その辺りを考慮して動かす必要がある。
マップ兵器は城に直接ダメージを与えるもので、一撃なら堪えられるが、連続で食らうとゲームオーバーになってしまうので、回避しながら移動する必要がある。
雑魚敵はシンボルと接触すると即戦闘になるわけでなく、迎撃するかはプレイヤーが選べるようになっており、複数のシンボルを同時に相手にすることも可能で、その場合はリスクが上昇するものの、獲得マナ(お金)や経験値にボーナスがつくので、効率よく稼ぐことができるようになっている。
マップ移動は選択肢が多いかと思いきや、そもそも取れる経路は2~3しかないので、手堅く各個撃破するかボーナス狙いで纏めて倒すか程度の要素で、場合によってはマップ兵器によって移動が制限され、好むと好まざるに関わらず、複数シンボルと戦闘する必要に迫られることがある程度でしかなかった。
内政は城の拡張や設置できる部屋の種類を増やすための研究、戦闘中に捕獲したユニットの雇用、城内の防衛施設(ユニット配置部屋や罠)の建設の3つで構成されている。
3つ全てでマナを使用するのだが、基礎となる研究に必要なマナは指数関数的に増えていくため、一箇所に留まって稼ごうとすると膨大な時間がかかるので、湧きポイントから新たに敵が湧くのを待つくらいなら、フィールド上の敵や湧きポイントを潰してサッサと次のマップに進んだ方が効率が良いと感じた。
とはいえ、マップ上の移動はターン制になっているもののターン制限は存在せず、効率を気にする必要はないので、深く考えずに気軽にプレイすればいいのではないかと思う。
防衛パートが本作のメインと言える部分だが、戦闘中にプレイヤーができることは多くないので、内政と合わせて一つのパートと言えるかもしれない。
基本的には城内に配置したユニットが戦闘するのを眺めているだけなのだが、最大で5種類ある「スペシャルコマンド」を1戦闘につき1回だけ使用可能となっている。
また、あえて何処にも配置しないユニットをリザーブしておくことで、戦闘中に随時配置することもできるのだが、戦闘の頻度を考えると現実的ではないと感じた。
本作の場合はユニットが戦闘中に撃破されてもペナルティは全く存在せず、撃破されたとしても活躍した分の経験値もしっかりと入るが、逆に一旦引っ込めて回復させたり再配置することはできないようになっている。
スペシャルコマンドは雑魚戦では主人公の経験値&収入アップスキル一択なのだが、ボス戦では他のヒロインのスペシャルコマンドも選択肢に挙がる。
しかしながら、現在マップ上に存在する全ユニットに効果を及ぼすものばかりなので、基本的にユニット数が多い最序盤に使用するのが一番効果的だと感じたため、戦闘開始時に使用して後は放置というスタイルに落ち着いてしまったので、もう少しスペシャルコマンドは中盤以降に使っても輝くようにしてほしかった。
防衛戦闘というとタワーディフェンス的なものを思い浮かべるかも知れないが、本作の場合はユニットの再配置ができず、スペシャルコマンドの効果的な使用タイミングが制限されているため、戦闘中にプレイヤーができることが少なく、タワーディフェンスとは感覚が違うものだった。
・やり込み要素は良かったが、UIには不満あり
本作の引き継ぎ仕様は所持ユニットとその育成状況、研究の進み具合、城内の建設状況など全て引き継ぐことができるので、周回していればいずれはクリアできるし、分岐条件もわかりやすいので、通常モードをクリアするのは苦労しないバランスになっていた。
ただ、自軍ユニットの経験値は敵とのレベル差によって変化し、事実上「敵のレベル+2~4」くらいまでしか上げることができないようになっている。
その上、敵のレベルもこちらの状況に合わせて上がっていく(通常モードだと敵のレベルは50くらいで頭打ち?)ので、単純にレベルアップするだけでクリアできるわけではなく、どちらかというと、金を稼いで数を揃えるという戦略が有効なバランスになっていた。
また、一定以上のレベルのユニットを引退させることで、他のユニットにスキル引き継ぎ&ステータスアップさせることができるので、奥が深いとまでは言わないが、ユニットを育てて数値を上げるのが好きな人は楽しめるようになっていた。
逆に言うと、敵も自軍に合わせてレベルが上がっていく仕様上、引退を活用することで、レベル以上にステータス値の高いユニットを育てる必要があると言うことができる。
本作のゲームパートをガッツリ楽しみたいという人向けには、「Hモード(ハードモード)」も用意されており、より数が多い&レベルの高い敵との戦闘を楽しむことができるようになっている。
通常難易度では一番難しいプリムティーネルートをクリアできる程度の戦力だと、最初のステージすらクリアできないレベルで、引退システムの活用が必須だと感じた。
自分はプレイしていないので詳しくはわからないが、ハードモード専用のシナリオも用意されているようで、更には全END達成後もCG枠が全部埋まっていないため、専用のCGも用意されていると思われる。
ハードモードに挑戦するためには、メインヒロイン4人+サブヒロイン10人のエンディング(サブヒロインは条件を満たせば纏めて達成可能)を見る必要があるのだが、サブヒロインのエンディング開放の条件は純粋にレベルアップや撃破数なので、少し時間がかかるかもしれない。
ユーザーインターフェイスには不満を感じる部分が多いのは残念な点で、100体を超えるユニットを管理するのは面倒だった。
ソートオプションこそ豊富に用意されているが、同時に表示できるユニットは10体程な上に、シークバーを使用してユニットを探す方式なのだが、一覧の移動がかなり遅くてラグも発生するので、該当ユニットを探すのが大きな手間だった。
せめて、ソートオプションを充実させるだけでなく、任意のグループを作れるようにしてほしいと感じた。
引退システムを本格的に運用するようになると、ユニット管理の面倒さをモロに感じるようになり、ハードモードを自分が途中でやめた大きな理由の一つだった。
各ユニットには装備品の装着もできるのだが、100体以上いるユニット相手に装備品を渡すだけでも面倒なのに、装備品の更新なんてやってられないというのが正直なところで、ネームドキャラ以外は最初に渡した装備を更新しないままだったので、装備品システムはもっと違う形式にしてほしかった。
・グラフィックのクオリティは文句なし
本作のCG枚数は全部で80枚となっており、フルプライスとしては標準的なボリュームとなっている。
約60枚がメイン原画家の紅村かる氏が担当しており、残りのサブキャラ10人を5人の原画家が担当するという内訳になっている。
サブキャラ担当の原画家は誤解を恐れずに言えば玉石混交で、同人っぽいCGも散見され、塗りの雰囲気も違ったので、原画と塗りを纏めて外注が担当しているのかもしれない。
紅村かる氏が担当しているCGは原画・塗り共に素晴らしいの一言で、それだけでも本作をプレイする価値はあると思う。
・量より質のHシーン
ソフトハウスキャラの過去作では短いHシーンを大量にという配分だったが、本作では180度変わって、1回あたりの質を高めて回数は少なめという配分に変わっている。
Hシーン専用の回想枠がないことと、自分がコンプリートしていない(コンプリート率92%)ため、個人の予想も入るが、メインヒロインが各4回、サブキャラが各2回となっている。
回数としては36回なのでボリュームはあるはずだが、Hシーンの配分が中盤に集中していたことや、サブキャラのシーンがあっさり気味だったこともあって、Hシーンの割合は少なめだと感じた。
その代わり、メインヒロインのHシーンは尺が長めで、満足度の高いものだった。
所謂ほのぼのレイプシーンはメインヒロインにはなく、サブキャラ10人は捕獲されたところをレイプして仲間に入れるという流れで、プレイ途中から和姦となるほのぼのレイプが多かった。
メインヒロインのプレイ内容で印象に残ったシーンは少なかったが、プリムティーネの足コキは一番最初のHシーンということもあって、印象に残った。
・中身は古臭いままのゲームエンジン
今作からはDL版が同梱している(要Dlsite.comアカウント)のはよかったが、逆にディスクでインストールしてもネット認証を通す仕様になった。
通常のスキップ機能に加え、シーンスキップ機能が搭載されているのは、何度も同じシーンを見ることになる本作では非常にありがたかった。
ウィンドウサイズも完全な可変ではないが選択できるサイズは多く、1980*1080より上のサイズも選ぶことができるが、ウィンドウサイズやフルスクリーンの仕様変更は通常のコンフィグからではなく、F11キーを押すと出現するオプションから変更する必要があるので、ソフトハウスキャラの仕様に慣れていないと気づかないかもしれない。
過去作と比べると設定できる項目は増えているし、インターフェイスも改善されているのだが、個人的に不満に思っているBGMの音量調節がしづらい仕様はそのままだったのは残念だった。
デュアルモニターに対応していない(?)のは本作のコンフィグ面での一番の不満で、フルスクリーン状態でプレイ中に、サブモニターにフォーカスが移ると最小化するのは非常に不便だった。
見た目こそ進歩しているが、一部の重要な設定の方法がわかりづらかったり、ボリュームやメッセージ速度が15段階(10段階)調整なこと、デュアルモニター環境に対応していないなど、インターフェイスだけでなく、中身もしっかりとアップデートしてほしいと感じた。
・まとめ
シナリオはソフトハウスキャラらしさが薄く、魔王の座を巡るバトルロワイヤルが淡々と、そして真面目に描かれている。
日常シーンが過去作と比べて減った割に、それを補填する重厚なストーリなどが存在しないので、テンポが良いというよりは物足りないと感じた。
ゲームパートは過去作の「その古城に勇者砲あり!」と殆ど同じで、城内を改築してユニットを配置して防衛するというシンプルなものだが、本作ではハードモードも用意されており、より長く楽しめるようになっていた。