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Predawnvagabondさんのお兄ちゃん、朝までずっとギュッてして!の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
お兄ちゃん、朝までずっとギュッてして!
ブランド
Tinkle Position
得点
80
参照数
1953

一言コメント

間違いなく妹ゲーだが、前作よりも妹らしさが減り、恋人っぽさが増した。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・妹っぽさや家族っぽさを前面に押し出した作品

前作同様に「妹とお家でイチャラブ」に特化した作品で、「お兄ちゃん」と表記しておけば問題ない主人公には名前が無い上に、無駄な描写を省くために学園にも通っていないなど、妹たちと自宅でイチャイチャしたり団らんしたりするだけの内容となっている。
冒頭では妹たちとお兄ちゃんの関係は、あくまでもお互いを深く理解しあっている仲の良い家族の域をギリギリで出ないものなのだが、ハグルールの追加によって徐々に異性としても意識するようになっていく。
ちなみにハグによる免疫向上説は実際に存在するらしく、「ハグ 免疫」とかでググってみると記事がいくつも出てくるし、学術的な調査も存在する(ただし、学術調査は本作とは違って心理学に属する内容)ので、適当なでっち上げというわけではないらしい。
抱きまくらで同等の効果は得られないものだろうか・・・。
ちなみに、家族ルールは「寝る前に10秒以上ハグ」というシンプルなものだが、お兄ちゃんは妹の誰かと一緒に寝ることが日課となっているため、実際にはハグと添い寝のセットである。
いつもの日課となっている添い寝もハグの後だと、ドキドキしたり、ぎこちない雰囲気になることもあれば、逆に家族だからこその安心感を得られるシーンもあったりと、ハグによって揺れ動く兄妹が描かれていた。
しかし、ハグによって変化してく関係性をより実感するためにも、ハグルール追加前の兄妹関係も見たいと感じた。

共通ルートは家族間の関係がよくわかる構成になっており、妹たちが学園に行く前の朝のシーン→妹たちが帰宅した後の家族の団らん→選択肢で選んだ妹&もう一人の妹の3人での兄の部屋で会話→ハグ&添い寝という流れを繰り返す。
3人で会話するシーンは各ヒロインに共通ルート中で3回のハグシーンがあるため、全ての組み合わせの妹二人との会話シーンがあるので、それぞれの妹どうしのやり取りや、姉妹のことをどう思っているのかを聞くことができる。
前作の「お兄ちゃん、キッスの準備はまだですか?(おにキス)」は3人のシーンが少なく、お兄ちゃんが見てないところではどんな雰囲気なのかが見えづらいのが残念だったので、そこが見えるようになったのは凄くよかった。
ただ、共通ルートでは家族団らんが描かれており、ヒロインたちがクラスメートや幼馴染ではなく、家族であるといことを感じさせる内容だったのに、個別ルートに入って一度肉体関係を持ってしまうと、ルートヒロイン以外の妹たちの登場回数が大きく減ってしまうのは残念に感じたので、個別ルートでもしっかりと他の妹たちを登場させてほしかった。
また、Hシーンの間隔が抜きゲーレベルに短かったので、家から出ないという制限下でイチャイチャを描写するのは難しいのかもしれないが、もう少しエロ以外のエピソードのボリュームがほしかった。

本作の特徴の一つとして、「主人公=プレイヤー」というのが強調されている点が挙げられる。
上述のように、デフォルトネームが「お兄ちゃん」ということも理由の一つだが、回想モードで鑑賞できる妹視点のHシーンを除けば、プレイヤーがヒロインの心の声を見聞きする機会がないというのが、プレイヤーを主人公と同じ視点に立たせていた。
例え、妹たちの心の声が聞こえずとも家族である上に、その家族仲が非常に良好で隠し事も殆どしない(できない)ので、共通ルートでは心の声が描写されないことをプレイしていた気づかなかったくらいなのだが、個別ルートになって関係がギクシャクして、お兄ちゃんが妹たちが何を考えているのかわからなくなると、ヒロインの内面が描写されないせいで、プレイヤーもわからなくなってしまうので、お兄ちゃんの気持ちを味わうことができた。


・妹と恋人のあいだで

前作と今作を比較した場合、自宅から殆ど出ない主人公という設定は同じものの、実家の仕事を継いで働いていた前作の主人公は妹たちの保護者のような存在でもあった反面、本作の主人公は小さな頃に重篤な喘息を患っていた過去があるため、妹たちが「お兄ちゃんを守らないと」と考え、お兄ちゃんに過保護に接するため、兄と妹の立場は前作と入れ替わっており、マンネリを感じなかった。
主人公は通信制の教育を受けてはいるものの、要するにニート生活をしているわけだが、血液データが医学的に貴重なサンプルとなっており、外出や家での娯楽(ストレスのかかりそうなゲームなど)の制限も結構厳しい生活をしているようなので、単純なニートというわけではなく、プイレイヤーは罪悪感を感じることなくニート生活を堪能できる設定となっており、ダメ兄に尽くす妹たちという雰囲気がないのは良かった。
また、長女が順当に一番しっかりしていた前作と比べると、本作の長女のそらはスペックは低くないものの、基本的にポンコツなキャラなのに対し、天才と言われている次女のあかねや、しっかりもので家事を取り仕切っている三女のこはくなど、相対的に下の妹たちがしっかりしており、前作と似たような作品ではあるのだが、妹のキャラクターや関係性が違うため、こちらもマンネリは感じなかった。
しかしながら、そらは相手の肩の力を抜かせる包容力のようなものがあり、時にはその包容力で落ち着かせてくれたり、家族が悩んでいる時には一番先に察して背中を押してくれたりと、しっかりと長女らしさも見せてくれるのがよかった。

前作と今作、あるいはブランドのコンセプトの一つとして、「妹であり恋人」というものがあると個人的には考えているのだが、本作はかなり恋人寄りになっていると感じた。
共通ルートではあくまでも兄妹であることを強調するようなシーンが随所で挿入され、特定の妹を選んだとしても、その妹を特別扱いするわけではないと言われるのだが、実際には個別ルートに入ると、妹たちの目を偲んでエッチしたりイチャイチャすることも多いので特別感(恋人っぽさ)が強かった。
近親関係については”比較的”常識的なこともあって、良くも悪くも普通の萌えゲーの妹ヒロインに近く、お互いに異性として意識しているので、単なる兄妹のスキンシップが徐々にエロくなっていくという雰囲気は薄かった。
しかし、制作サイドはヒロインが”妹である”ことが肝要だというのは理解しており、二人は色々と悩みつつも「妹であり恋人」という関係に最終的にたどり着くので、「妹目当てでプレイしたのに、これじゃ単なる恋人同士じゃないか!」ということにはならないと思う。
妹によって妹成分と恋人成分の比率に違いがあり、次女のあかねは一番恋人っぽさが強く、三女のこはくは妹っぽさが強いと感じた。
長女のそらはその中間で、末っ子のすみはそもそも性的な行為や近親相姦、男女の機微を理解していないため、妹成分100%だった。
個別ルート一本分のボリュームのハーレムルートも用意されているのだが、個別ルートでは肉体関係を他の家族に隠しているのに対して、全員と同時セックス(処女喪失)を行ってからハーレム状態になるため、家族相手に隠し事をすることもないので、家族団らん(?)とエッチを同時に楽しめる展開だったのだが、エロシーンが殆どで、日常シーンが少ないのは残念だった。


・細かい部分にまでコダワリを感じるグラフィック

本作のCG枚数は90枚となっており、フルプライスとしても少し多めのボリュームとなっている。
原画、塗り共に非常に素晴らしく、髪の色の塗りは特に良かった。
公式HPで本作のポイントの一つとして挙げられている「添い寝立ち絵」だが、最初は何のことかわからなかったのだが、恐らく立ち絵同様に喋りながら表情などが切り替わることを言っているのだと思う。
言われないと気づかない程度の要素ではあるが、顔がアップ状態の添い寝CGのため、確かに表情豊かに感じられた。
また、本作を象徴するシーンである添い寝やハグは、妹それぞれに添い寝もハグも2枚ずつ用意されているのも嬉しい点で、ハグも添い寝も何度も行うのに、2枚ずつ用意されているお陰でマンネリ感は薄かった。
日常シーンのCGとエロシーンのCGを差分で兼用しているCGも多いため、日常シーンのCG枚数も実際以上に多く感じた。

本作は細かい部分にまで気を配って制作されており、その気配りはCGにも現れている。
服装によって髪型が二種類用意されていることもそうだし、妹が着ているエプロンに「LOVE my Brother」と書かれていたりと、細かい部分まで楽しむことができた。
他にも、上述したように「お兄ちゃん=プレイヤー」を意識した部分が多いためか、一人称視点かそれに近いCGが多かった。
また、ふくらみかけの胸や、Hシーン中で服は全部脱がした状態でも靴下は履いたままだったり、マフラーだけは装着したままだったりと、制作側のコダワリ(性癖?)を感じる部分が随所にあった。


・妹視点も用意されているエッチシーン

本作のシーン回想数は35回となっており、妹それぞれ7回ずつ、ハーレムも7回となっている。
ハーレムは5Pが3回、残りの4回が3Pで妹それぞれが2回ずつ登場するという、完全なまでに平等なボリューム配分となっている。
猥語修正はありだが、気づかないレベルに一瞬音声が途切れるだけの仕様なので気にならなかった。
Hシーン中にもハグクリックモードが挿入されるのが面白い点で、オカズとして使用している場合は著しくテンポを乱されるかもしれないが、本作独自のシステムをHシーンにも使用するというのは面白い試みだと思う。
結構マニアックなプレイが多く、アナルセックスや腋コキなどの珍しくはないマニアックプレイだけでなく、「こたつに入って向かい合った状態で男性器に靴下を被せて足コキ」、「全身がこたつに入った状態の妹に挿入」、「69中に妹に顔に放尿される(故意ではない}」、「電動歯ブラシで股間を責める」など、余り見かけないプレイが多いのは素晴らしかった。
全妹に家族がいる近くでエッチをするシーンが用意されているのも見逃せない点で、家族団らんしている場でこっそりエッチなことをするのは背徳感があって良かった。
また、体位の種類も豊富だったので、プレイ内容のバリエーションは非常に豊かだった。

TinklePositionの作品の特徴として、回想モードに妹視点が用意されている点が挙げられる。
上述のように妹の心の声が聞こえない本作で、唯一妹の心の声が聞けるのだが、表面ではツンツンしているけど、中身を除いてみるとデレデレみたいなキャラはおらず、基本的には以心伝心な関係のため、心の声は単純に恥ずかしがっているか、お兄ちゃん大好きの二つが大半を占めているので、妹の声を聞いても新しい発見は特になかった。
妹視点モードの最大の利点は、通常は地の文で説明されるような細かい動作の内容や実況がヒロインの音声つきになることだと思う。
好き嫌いの分かれそうな実況も、ヒロインの心の声として描写されると、違和感なく受け入れることができるのではないかと思う。
妹視点で不満を挙げるとしたら、回想モードでしか見ることができない点で、できることなら本編でHシーンに入る前に妹視点に切り替えるか否かを選択できるとか、お兄ちゃん視点のHシーンが終わった後に妹視点も見るかを選択できるなどして、プレイ中に妹視点も見ることができるようにしてほしかった。
流石にクリア後に一気に見る気にはならないし、逆にシーンが終わる度にタイトルに戻ってみるのも面倒だったので、その辺りは何らかの対策を行ってほしいと感じた。


・コンフィグ・システムには細かい部分で不満あり

本作のコンフィグ項目は必要なものは一応揃っているが、マウスカーソルの自動移動をオフにできなかったり、クイックセーブ/ロード時の確認ダイアログの表示を設定できないなど、細かい部分では不満を感じた。
セーブ/ロードをしたり、コンフィグを開く場合にはマウスカーソルを画面右端に持っていてポップアップメニューを表示する必要があるのも地味に面倒だった。
個人的な好みの問題だが、キーボードのスペースキーに割り当てられている機能が、テキストウィンドウ消去ではなく改ページな点や、バックログで1画面に表示されるのが2テキスト(2クリック分)だけなのは不便に感じた。
また、Enterキーで読み進めることも多い自分としては、Enterキーを押しっぱなしにすると強制スキップ状態になるのも不満点で、頻繁に強制スキップが発生することがあった。
コンフィグ等に細かい不満はあったが、逆に他の面では細かい部分まで作り込まれており、エンドロールでは声優も含む制作スタッフ達の「憧れのハグは?」という質問の回答が載せられているし、エンディング曲もルートそれぞれ(ハーレムルート含む)に用意されているのも良かった。
前作同様にコンフィグ内にあるコード入力画面から、声優や制作スタッフのツイッターやブログで見つかるコードを入力することで、声優のオーディオコメンタリーやOP・EDを閲覧できるようになっているのも、面倒だといえば面倒だが、制作側の細かい部分まで楽しんでもらいたいという思いを感じられるものだった。

本作独自のハグシステムはハグタイム中にゲージが満タンになるまでクリックを押しっぱなしにするか、満タンにならないように押したり離したりを繰り返すかで、強めにハグをするか優しくハグをするかを選択するだけだが、通常の選択肢よりは雰囲気が出るものだった。
ただ、ハグはやろうと思えばずっとしていられるのだが、同じセリフを繰り返すため不自然に感じたので、もう少し台詞にバリエーションを持たせる等の工夫がほしいと感じた。


・まとめ

前作と比べた場合、家の中で妹とイチャイチャするだけというのは同じだが、恋人っぽい雰囲気が強くなっていた。
ストーリーがやや短めなのは残念だったが、短いながらも姉妹や兄妹の関係はしっかりと描写されていたので、妹作品として必要な要素はしっかりと用意されていた。
コンセプトの「妹と添い寝でハグ」に関しては文句なしの出来で、ハグや添い寝をしている時の家族ならではの安らぎや、その反対のドキドキがしっかりと描写されていた。