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Predawnvagabondさんの添いカノ ~ぎゅっと抱きしめて~の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
添いカノ ~ぎゅっと抱きしめて~
ブランド
戯画
得点
64
参照数
2311

一言コメント

絵は良かったんだから、後は普通の萌えゲーにするだけでそれなりの作品になっただろうに、主人公がダメ過ぎだった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・取り柄は絵だけ

シナリオは面白くないが、グラフィックが優れている作品をレビューする時に「音声つき画集」などの言葉を使うことがあるが、本作はまさにそれで、グラフィック面はよかったが、シナリオは面白くない作品だった。
ヒロインとのイチャラブさえ楽しむことができるのなら、盛り上がりに欠けるストーリーでも「萌えゲー」と呼ぶことができるのだが、本作はそれもイマイチだったので、単につまらないだけだった。
妙にネガティブで直ぐに独り相撲をとる主人公や、ストーリー的に面白くもなければ、ヒロインの魅力を底上げするわけでもない中途半端なヒロインの掘り下げなど、典型的な失敗要素が入っていた。
ただ、それらのネガティブな要素がサクッと終了するため、プレイヤーが「もう堪えられない」となる前に問題解決して次のチャプターに進むのは幸いな点で、音声つき画集と割り切ることはできる程度だった。
それだけでなく、公式HPにポイントとして挙げられている「ヒロインと育む、ゼロ距離の関係」という点が、抽象的過ぎてプレイ中に感じることができず、他作品との差別化に失敗していたので、本作を強調するポイントをもう少し具体的にしたほうがよかったのではないかと思う。
もう一つのポイントである「本編が終わってからも、ヒロインと一緒に」の方も、本編中で使用される添い寝CGを流用して、添い寝しているヒロインとコミュニケーションと取れるというものなのだが、マウスカーソルで突っついたら、体の部位によっていくつかの反応を返す程度のものだった。
一応は「放置すると眠ってしまう」、「一緒に朝を迎える」等ができるようなのだが、どのくらい放置すればいいのかわからず(20~30秒では眠らなかった)、その部分については体験することができなかった。

ストーリーは起承転結をつけようと努力したようで、共通・個別の両ルートで山場が設けられていた。
共通ルートでは本作の象徴的な場所である屋上庭園が生徒会長によって閉鎖されそうになることを阻止すること、個別ルートではヒロインの悩み解決などの掘り下げが山場として用意されていた。
しかし、上述のように主人公が妙にネガティブで、悩みを吹っ切って、絵を描き始めた灯子を見て「もう自分は必要ないんだな」と解釈したり、久しぶりに海外から帰ってきた姉と仲良くしてる夜明を見て「自分は姉の代役だったのか」と勘違いしたりと、色々とウザい性格だったので、ワクワクやドキドキとは程遠い山場だった。
つばめと藍果のルートに関しては、悩んでる二人に的確なアドバイスをするし、勝手にネガティブになったりしないので、マイナスとなる要素の少ない展開だったが、かといって面白くなるような何かがあったわけでもないので、印象に残らなかった。。
本作の特徴的な設定(というと大袈裟かもしれないが)を活かせていないのも残念な点で、「落ちる夢」や「慢性的な寝不足」などという設定と、「添いカノ」というタイトルから想像するようなシーンは少なめで、確かにヒロインと一緒に昼寝(添い寝)をするシーンは多めだったが、テキスト量が少なすぎだったので、もう少し添い寝することに魅力を感じるようにしてほしかった。
主人公の悩みの種である寝不足にしても、屋上庭園を復活させるために規則正しい生活を始めたら直ぐに解消というのは、あまりにも呆気ない解決だと感じた。
ストーリーを動かす役目を果たすことが多い生徒会長が魅力のあるキャラクターなのは、ストーリー上の数少ない美点の一つで、主人公たちの敵(?)となって立ちはだかっても、嫌味に感じる部分がないのはよかった。


・グラフィックは素晴らしい

本作のCG枚数は74枚+SD11枚+3枚(初回特典のオマケシナリオ)となっており、フルプライスとしては標準的と言えるボリュームだが、グラフィック面しか褒める部分の見当たらない本作に限って言うなら、もう少しボリュームが欲しいと感じた。
原画家がヒロインの数だけ存在するが、立ち絵が並んでも違和感はなかった。
グラフィックのクオリティは素晴らしく、特に夜明と藍果の二人の原画&塗りが印象に残った。
灯子の場合はイベント絵では顔がやや不安定に感じるものもあったが、立ち絵やキャラデザはよかったので、特にマイナスポイントと評価するほどではなかった。
タイトル通りに添い寝のCGが全ヒロインに用意されているのが嬉しい点で、主人公の一人称視点のオーソドックスな添い寝のCGだけでなく、膝枕されているものや、ヒロインが主人公の肩を枕にして居眠りしているCGなどが各ヒロインに用意されていたのは流石だと感じた。


・セクハラ親父と化す主人公

本作のHシーン数は全部で20回で、各ヒロイン平等に5回ずつとなっている。
ピー音タイプの猥語修正ありで、標準レベルの修正だとは思うのだが、最近は一瞬音声が途切れるタイプや、本当に一瞬だけのピー音で修正しているものが多いので、思ったよりも耳に残った。
尺は結構長めで、構図とグラフィックも素晴らしかったが、テキストがエロくないのが残念な点で、本作は本当に声のついた画集なんだなと感じた。
Hシーンで一番印象に残ったのは主人公の暴走っぷりで、地の文がテンション上がりすぎな上に、セクハラ発言やデリカシーに欠ける発言もポンポン飛び出すので非常にウザかった。
特に夜明とつばめのHシーンのテキストが顕著で、夜明の初Hのシーンでおっぱいが揺れていることを指摘し、「揺れないように、僕が支えてやろうか?」と言い出した時には流石に爆笑してしまった。
主人公の発言や地の文が特にヒドイのだが、ヒロイン側の発言も変なものが多く、イジワルされた主人公に対して「悪魔将軍」と罵るのも面白かった。
他にも、Hシーンそのものとは関係ないのだが、ヒロインたちと一緒に遊びに来ているのに二人で隠れてセックスし、それが他ヒロインにバレるも気づかないふりをしてもらうという展開もどうかと思った。


・充実のコンフィグとお遊び機能

本作のコンフィグ機能は異常なまでに充実しており、細かい部分まで自分好みに設定できたので、非常に快適にプレイすることができた。
個人的に一番ありがたかった機能はデュアルモニターを意識した設定項目が用意されていることで、「フルスクリーン時にマウスカーソルが画面から出ないようにする」や、「フルスクリーンに時にフォーカスを切り替えた場合に最小化する」などが設定できるのは便利だった。
他にも「サムネイル画質を粗くしてセーブ時間を短縮する」、「再生中のボイスが終わるまで、次のボイスメッセージに進行できなくする」などの項目もあり、業界大手&老舗のエロゲーメーカーは流石だと感じた。
一番驚いたのは、他の戯画作品のコンフィグ設定を引き継ぐことができるようにもなっていることで、自分の場合は「BALDRBRINGER」の設定を引き継いで開始したのだが、特に設定項目の多い戯画のエンジンではありがたい機能だった。
本作独自の面白い機能として、クリアしたヒロインのマスコットをプレイ画面の好きな場所置ける機能があり、置こうと思えば4人全部のマスコットを配置することもできる。
実利的な機能ではないのだが、ヒロインを攻略する度にどんどんプレイ画面が賑やかになっていくのは面白かった。


・まとめ

グラフィックは素晴らしかったのだが、ストーリーは面白みに欠け、特に主人公が大きく足を引っ張っていた。
主人公を当たり障りのない性格にしてイチャラブに特化すれば、グラフィックの強みを活かすことになり、もっと楽しめたのではないかと思う。