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Predawnvagabondさんのあいりすミスティリア!R ~少女のつむぐ夢の秘跡~の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
あいりすミスティリア!R ~少女のつむぐ夢の秘跡~
ブランド
AUGUST
参照数
836

一言コメント

キャラクターやシナリオ、BGMなどの素材は確かに素晴らしかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「運営チームの体制を全面的に刷新することで問題を改善しつつ、シナリオやキャラクターなどの素材の良さを十分に生かせるようなゲームを作ってまいります。」
これはDMM GAMESが本作を大規模リニューアルのための一時休止を決定した時に出したメッセージの一部引用である。
本作の他にプレイしたことのあるブラウザゲームは、数時間プレイしたものを除けば「艦隊これくしょん」しかプレイしたことがないため、比較することは難しいのだが、オーガストが製作しているだけあって、キャラクターの魅力やグラフィック、シナリオ、音楽など、通常のエロゲー(ADVゲーム)でも求められるものは非常にハイレベルな出来だった。
それに比べるとゲームパートはお粗末の一言で、全く楽しくない作業でキャラクターのステータスを上げ、戦闘は殆ど見ているだけというものだった。
戦闘時の各アイリス(ユニット)の行動は、建前上はある程度制御できることになっているのだが、戦闘傾向を調整するのも中々思い通りには進まず、ようやく調整が完了したと思っても、HP満タンのアイリスに回復する、バフ・デバフを効果が切れる前にかけ直すというおバカっぷりだった。
唯一の救いはゲーム難度自体はブラウザゲーとしては(艦これと比べて)簡単なことで、素材を楽しむのに大きな苦労をしなかったことだろう。
余りに単調で暇なためにExcelでデータを収集して、生まれて初めて攻略Wikiの編集(情報提供)をしたりと、自分なりに楽しんではいたが、半年後にもプレイしているかというと疑問だったので、今回のリニューアルは妥当な判断だと思う。
もはや二週間ほどでリニューアルのために休止するわけだし、個人的にもゲームパートについての所感を残しておきたいとも感じないので、ゲームパートについてはこれ以上は記述せずに、シナリオやキャラクターなどの素材に焦点を当てたいと思う。

本作の特徴は何と言ってもキャラクターが多いことで、現時点でヒロインが20人+1人、他にもキーパーソンが何人か存在し、総勢で30近いキャラクターが登場する。
世界観や設定もそれに負けずに壮大で、主人公(プレイヤー)である冥王は世界を作った天上人の一人だし、シナリオも世界樹の種子を巡って世界中を冒険する中で、最大領土を持つ帝国を裏で操っている他の天上人の存在が露見したりと、続きが非常に気になる展開だった。
これだけ豪華な作品を作れるのは、やはり通常のエロゲーとは事情が違うブラウザゲーだからこそなのだとは思うが、個人的にはエロゲで出してほしいというのが本音で、その場合はシリーズ化が必須だろうから、オーガストの製作速度では残念ながら難しいかもしれない。
ヒロインが多い&それぞれのイベントで尺を取れないというブラウザゲーの都合上、現状ではメインシナリオや季節イベントで一部のヒロインが掘り下げられているだけなのだが、掘り下げのあったヒロインに関しては、それによってヒロインについて深く知ることができたために魅力が増したので、今後シナリオが進むに連れて、ヒロインたちは更に魅力的になっていくのではないかと思う。
20人もヒロインがいるのに誰も埋もれていないのも素晴らしい点で、それぞれのエピソードが短いのに、かなり早い段階から名前と顔が一致するようになったのは地味に凄いことだと思う。

テキストが出るのはメインシナリオやイベントシナリオが読める「出撃」、ヒロインとの会話やヒロイン同士の掛け合いが読める「学園」、そして親愛度が上がると開放されるエピソードと、聖装毎に用意されているエピソードを読める「名簿」の3つがある。
本作は設定上はヒロイン20人全員が最初から学園に所属しており、ガチャから出てくるのは聖装と呼ばれる衣装で、その衣装にノーマル、レア、SR、SSRとレアリティがつけられている。
一般的なエロゲーに例えるなら、出撃がメインパート(特定ヒロインを選ばないグランドルート)、学園が日常パート、名簿が個別のイチャラブシナリオに該当するのではないかと思う。

「出撃」は上述したように、ヒロインの掘り下げや種子集め、帝国との戦いが描かれており、名作になりそうな予感はあるが、如何せん量が少なくて、きちっとした評価をすることが難しいのが現状である。
「学園」の方は現時点でも評価できるだけのボリュームがあり、10クリック未満で終わってしまうエピソードばかりだが、500以上の数が用意されており、ヒロインの日常を垣間見ることができる。
また、20人全ての組み合わせのペアエピソードも1つずつ用意されているため、ヒロイン同士の関係を知ることもできるのも良かった。
レアリティに関係なく聖装毎にエピソードが3つ用意されているため、リアルマネーをつぎ込むことなく(ノーマルとレアの聖装しか所持していなくても)8割程のエピソードを鑑賞できるのも好印象だった。
「名簿」から鑑賞することができる聖装エピソードの方は、レアリティによってエピソード数によって違いがあり、ノーマルとレアが聖装毎に1エピソード、SRが2エピソード、SSRが4エピソードとなっており、SSRにのみHシーンが用意されている。
SSRは現状4枚+2枚(イベント限定)しかなく、その上、課金を煽るような要素が現状ではそれしか存在しないので、「大丈夫なのか?」と思っていたが、やっぱりダメだったようである。
聖装エピソードはレアリティが高ければ高いほどヒロインの好感度が高い(時系列が最近)ため、例えば、ノーマルの制服だと制服を初めて着用したシーンで、レアの制服は学園エピソードのちょっと長いバージョンとなっている。
親愛度エピソードは冥王とヒロインとの出会いから初セックス、その後までが描かれるイチャラブ要素がより強いものになっていくと思われるが、親愛度50以降(最大で100)はエンドコンテンツ扱いのようで、親愛度を最大まで上げるには大量の好感度アップアイテムが必要なため、自分はまだ鑑賞しておらず、初セックス以降のエピソードは開放できていないので詳細は不明である。

グラフィックも素晴らしく、残念ながら現状では枚数自体は少ない(代わりに立ち絵の数は多い)のだが、相変わらずのオーガストクオリティで、塗り・原画共に素晴らしいものとなっている。
特に本作は完全なるファンタジー作品のため、服装のバリエーションが非常に豊富なのも嬉しい点だった。
ただ、オーガストの原画家のべっかんこう氏と夏野イオ氏は筆が早い方ではないので、リニューアルしてあいりすミスティリアが軌道に乗ったなら、供給速度は間に合うのかという懸念や、何よりも普通のエロゲーはもう作らないの?という疑問はどうしても出てしまう。

オーガストといえばBGMも有名で、本作でも専属の音楽プロジェクトであるActive Planetsが担当している。
Active Planetsらしさは本作でも存分に発揮されているが、それだけでなく、会話を邪魔しないのが前提の普段のエロゲーのBGMとは違って、前面にBGMを押し出してシーンが多いので、普段よりも豪華(?)になっていたと感じた。
「穢翼のユースティア」以来のファンタジー作品だが、あちらは終末の世界を描いた作品で、かなりシリアス寄りな作品だった。
それに対して、本作も世界の運命は止まりつつあり、更には悲惨な境遇のヒロインも結構いるのだが、全体的に明るい雰囲気のため、同じファンタジーでもユースティアとは大分違った趣のBGMだった。