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Predawnvagabondさんの修羅の痴漢道の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
修羅の痴漢道
ブランド
BISHOP
得点
80
参照数
2522

一言コメント

痴漢っぽさは薄かったけど、しっかりとエロかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・BISHOP作のスタリッシュ痴漢

スタイリッシュ痴漢としての金字塔と言えば、自分の中では最終痴漢電車3で、本作がそれを超えられたかというと首を傾げる部分も多かったが、無駄にカッコいい台詞回しやポエミーな地の文に、バトル作品に登場しても違和感の無さそうな主人公の能力など、スタイリッシュ痴漢と呼ぶに相応しい内容になっていた。
しかも、心の声が聞こえるという主人公の能力は脳にある腫瘍が原因らしく、「夢を夢にしたまま、死ねないだろう?」と言いながら痴漢のために治療しないことを選ぶ(=痴漢に命をかける)という、本来ならカッコいいはずのストイックさも痴漢のためなので、妙にシュールで面白かった。
ちなみに、ヒロインによっては「私が理想の痴態を見せたら、その時は手術を受けてください」という、まるで入院している子供にホームランを約束する野球選手みたいな展開もある。イイハナシダナー。
ただ、鉄道警備隊「レイヴン」とか衝撃波を放つ女帝みたいな、チート主人公に対抗出来るぶっ飛んだ存在が登場しないので、痴漢という犯罪行為をしている割りには緊張感が足りないと感じた。


・情報収集パートは退屈

本作の基本的な流れとしては、お目当てのヒロインをストーキングして情報収集(痴漢コマンド収集)→痴漢という流れで、主人公とヒロインが会話をするシーンが極端に少ない。
ヒロインの日常をこっそり観察するストーキング行為は最初こそ面白かったのだが、痴漢コマンドが全部で175(多分)あるので、ヒロインの日常を除くだけのイベントもそれに見合った回数用意されている。
ヒロイン達の日常の何気ない悩みや、仕事の苦労などを能力を使って聞くだけで、主人公が能動的にヒロインと接触するイベントは非常に少なく、極普通の生活を覗き見るだけなのは、正直に言うと退屈だと感じることが多く、また、ヒロインに魅力を感じるようなイベントも少なかった。

イベント数が異常に多いものの、本作は非常に親切な仕様で、一度見たイベントはクリアした後も引き継がれるので、何度も同じイベントを見る必要も無いし、そのため、30日というターン制限を気にする必要も無い。
また、ヒロインの通勤する時間帯や路線を覚えたりする必要もないので、お目当てのヒロインを選ぶだけのマップ選択式のゲームに近いものだと考えて大丈夫だと思う。
痴漢コマンドにはそれぞれ1~6ポイントが設定されており、ポイントが高いほどヒロインに快感を与えることが出来る。
痴漢シーンでは入手したコマンドを3つ選んで、そのポイントの合計値が9以上、あるいは12以上で次のイベントに進むことが可能、そして12以上あれば全てのイベントを見ることが出来るので、とりあえずポイントの高いコマンドを選んでおけばOKという大雑把なものだった。
そのため、テキストを回収する、あるいは必須イベントを見て他のイベントを解放するという目的以外では、ポイントの低い痴漢コマンドイベントを見る必要はないので、一週してコツを掴んでしまうと二週目以降は効率化するのも簡単だった。
イベントの退屈さも効率面に於いてはいい方向に働き、釈迦力になってまでイベントを見ようとは思わないので、サクサクと効率良く進めることが出来た。


・快楽に弱いチョロインたち

基本的にはされる側は被害者と呼ばれ、当然ながら拒否反応を示すのが普通の痴漢行為だが、本作のヒロインは痴漢イベントが成功した場合、1回目からノリノリでオネダリして、電車内セックスまでしてしまう。
エロゲーだけでなくAVや官能小説などの痴漢もののフィクションでは、そんなのバレないわけねーだろ!と突っ込みたくなるようなシーンがテンコ盛りなのはお約束だが、それでもヒロインは快楽に流されつつも拒否反応を示したり、声を潜めようと努力したりと”痴漢らしさ”を感じる要素はしっかりとある。
翻って、本作では喘ぎ声は普通に上げるし、拒否反応も皆無に近いので”痴漢らしさ”を余り感じることが出来ず、ちょっと特殊な性癖の人向けのラブホテルでのプレイを見ているような気分になってしまった。
特に誰かに見られると興奮する性癖の由宇が顕著なのだが、電車内で余りに普通に性行為に及んでいるので、ヒロインはまるで痴女みたいにも感じられた。
唯一拒否反応を示すのは未亡人の雪穂で、亡き旦那を想って女性器での行為を拒んだり、心までは簡単には明け渡してくれなかったりと、未亡人らしさがしっかりと感じられるヒロインだった。
とはいえ、快楽に流され過ぎて痴漢っぽくないという点は共通なので、単に好みのヒロイン故の贔屓目という部分も大きいと思う。

どちらかというと、本作の一番の売りは主人公がヒロインの心の声を聞くことが出来るという部分で、種のわからないヒロインからしてみれば、まるで心を読まれているかのように自分の性感帯を責められて、戸惑いながらも快楽の奔流に呑まれてしまうという展開は良かった。
また、痴漢視点の本作で違和感無く(?)ヒロインの心情まで聞けるというのも、この設定の利点だと思う。
そういう視点で考えると、同じ学生でもテンプレ気味な心優しい小春よりも、エキセントリックな華音の方が面白く、高飛車で潔癖症、更には市井の人々を馬鹿にしているような、見た目以外は萌える要素が殆ど無いヒロインも、心の中を覗けるお陰で彼女の突飛な価値観や考え方を知ることが出来、結果として魅力的なヒロインになっていた。
他にも、華音程ではないが、桐香も他を寄せ付けない雰囲気のキリッとしたキャリアウーマンかと思えば、内面は必ずともそうではなかったりと、心の声が聞こえるという能力は外面と内面に違いのあるキャラクターと相性が良いと感じた。


・ボリュームバッチリで、機能充実のHシーン

本作のシーン回想数は32回+コマンド付きの痴漢が15回となっている。
コマンド付き痴漢は1回につき実質2~3回分のボリュームがあるので、Hシーンに関しては全体のボリュームはしっかりしていた。
ヒロインの内訳は完璧に平等で6回ずつ、そしてハーレムのシーンとモブキャラのシーンが1回ずつとなっている。
猥語修正は無しで、射精カウントダウンと、そのシーンの最後の射精かどうかを示す機能も付いている。
BGVも素晴らしく、一人当たり90前後とバリエーションが豊富で、更にヒロインが実際に喋っているときにはBGVが途切れ、主人公が能力で心の声を聞いている時はBGVはそのまま継続されるという丁寧な作りになっている。
また、コマンド式痴漢のシーンは、その都度コマンドを選ぶのではなく、最初に纏めてコマンドを選ぶので、シーン中は選択肢フリーという実用性の高いものとなっている。
尺もバッチリあるので、上述のようにあまり痴漢っぽく無いという点が問題にならなければ、オカズとしてのレベルは非常に高いと思う。

痴漢と言えば電車を最初に思い浮かべるが、公共の場所なら何処でも痴漢と呼ぶことが可能みたいで、事実、本作でも図書館や学園、公園、病院、果てはオペラハウスなどでのシーンがある。
他にもフィットネスクラブや深夜のオフィスなどの場面もあるのだが、ここまで来ると痴漢と呼べるのかちょっとわからない。
公式HPのキャラ紹介にも載っているように、ヒロイン毎に性癖が設けられているのも特徴の一つで、小春のお漏らしや、雪穂の肛虐、華音の淫具などは特にわかりやすかった。
桐香の男根や由宇の露出に関しては、「痴漢がテーマの本作では皆そうなんじゃないの?」なんて思っていたのだが、実際にプレイしてみると、しっかりと違いを感じることが出来た。


・色々と設定できる立ち絵

本作のCG枚数は全部で115枚と、怒涛の大ボリュームとなっている。
シーン回想数だけでなく、CG枚数の内訳に関しても各ヒロイン平等で、それぞれ22枚となっている。
クオリティも高く、原画、塗りともに素晴らしかった。
立ち絵は細かくカスタマイズ可能で、目パチアニメのOn/Offだけでなく、精液ぶっかけられた状態にしたり、本編で一度見た服装、あるいは裸にいつでも変更することが可能で、台詞自体は変わらないが、擬似的に車内で裸とかナース服を着せることが可能となっている。
立ち絵以外だと、陰毛の有無と吐息、熱気表現の有無も設定出来るようになっている。


・やたらとカッコいいBGM

本作のコンフィグは必要なものは大体そろっていたが、ウィンドウサイズの任意変更が不可なことと、キーボード上でのメッセージウィンドウの消去がスペースバーでもEscキーでもなく、Tabキーなのが少し不便だった。
また、セーブ画面で他のゲームで言うところのスロット1の特等席が、オートセーブに割り当てられているのも地味に不便だった。
主人公の名前はゲーム開始時に設定することが可能だが、以前患者だった主人公のことを知っている雪穂は、テキスト上では主人公のことを名前で呼ぶし、小春もある程度親しくなった後も主人公を「痴漢さん」と呼ぶので少し違和感があった。
本作の面白い機能としては、BGMセレクト機能が挙げられ、ハードにするとHシーンのBGMがボス戦のような非常にカッコいい曲に差し替えられる。
ノーマルでも通常戦闘シーンみたいなカッコいい曲なので、気分によって切り替えて楽しむことが出来ると思う。
痴漢シーンにしっとりしたBGMなんて似合わないし、スタイリッシュ痴漢というカッコいいのにシュールな作風も考えると、これはこれでアリだと思う。


・余り痴漢っぽくないスタイリッシュ痴漢

他の痴漢ゲームと比べると本作は痴漢っぽさは薄く、ヒロインもあっさり受け入れて半ば痴女みたいに感じることも合ったが、主人公の相手の心の声が聞こえるという能力のお陰で、本作にしかない魅力もしっかりとあった。
痴漢コマンドの回収は少し面倒だったが、親切な設計なのでストレスを感じること無くコマンドを集めることが出来たし、満足できるだけのボリュームもあった。