ヒロイン毎にライターの特徴が良くも悪くも出ていたが、どれもコンセプトに忠実で恋の巣ライフを楽しめた。
・コンセプトに忠実
こいのす(恋の巣)とタイトルにあることからも想像がつくように、本作は「彼女持ち一人暮らし」をテーマとした作品となっている。
そのため、ヒロインは学園生なのに対して主人公は大学生もしくは社会人という立ち位置で、二人が時間を過ごすのは”恋の巣”である主人公のアパートが専らになる。
タイトル画面から恋人にしたいヒロインを選ぶ仕様や、サブキャラは音声も立ち絵も無しと割り切った部分も多く、コンセプトである「恋の巣ライフ」に全力が注がれている。
とはいえ、開始時点で既に恋人同士でいきなり彼女持ち一人暮らしが始まるわけではなく、短めながらもしっかりとヒロインとのファーストコンタクから付き合うまでの過程も描写されるので、プレイヤーが置いてけぼりを食らうことはない。
プレイ前の自分はやや勘違いをしており、ヒロインと同棲することになると思っていたのだが、どちらかというと通い妻に近い感じで、毎日のように主人公の部屋にやってきて、ちょくちょくお泊りしていく感じだった。
二人の恋の巣となる部屋に対するコダワリも必見で、お互いにしっかりとプライベートな空間が持てるほどは広くないのだが(1LDK?)、狭っ苦しくはない部屋となっている。
背景はリビングから見たもの(寝室が見える)と、寝室から見たもの(リビングとキッチンが見える)の二種類が用意されている。
更に、彼女が部屋に訪れるようになると、徐々に物が増えていき、彼女が普段使う服やカバンがかけられたり、花やカーテンが設置されたり、ペアのカップなどの小物が机や棚に置かれるようになる。
ヒロイン毎に置かれる物が違うのも素晴らしい点で、それぞれの特徴や好みが出ていて面白かった。
本作の設定だと年下ヒロインだけでなく、大学生の先輩などの年上のヒロインというのもありだと自分的には思ったのだが、やはり10台のヒロインの方が人気なのだろうか。
本作で残念だった点は名前が可変式な点で、特にいちかのシナリオではその弊害が顕著に現れていた。
サチの場合は子供の頃に主人公が面倒を見ていたという過去があり、主人公を「お兄ちゃん」と呼ぶために違和感はなかった。
なつめの場合は、単なる年上としての意味で「お兄さん」と呼ぶため、多少強引だとも感じたが違和感は少なかったし、シナリオのラストでそれを利用した演出(台詞)があったので気にならなかった。
しかしながら、いちかの場合は主人公に対する適当な二人称が存在せず、テキスト上では名前で呼ばれているのに音声は「もしもーし」みたいな台詞で代用したり、ひどい場合はテキスト上の名前の部分だけが空白になったりと、違和感が非常に大きかった。
サチの場合は主人公との関係が他とは違うので置いておくとして、いちかとなつめシナリオの違いは、ライターの名前可変式主人公に対する”慣れ”の違いが出てしまったのではないかと思う。
・ライターの違いが顕著に現れるそれぞれのシナリオ
ルートによって主人公の性格が違いすぎて別人に感じるとか、ヒロイン同士の繋がりが皆無で自分のシナリオ以外では登場しなくなるため、低価格作品としてバラ売りしても違和感が無い作品などを、それぞれのルートはまるで別作品のようだと感じることがしばしばあるが、本作の場合は本当に別作品と言っても過言ではない仕様になっている。
主人公はそれぞれのルートで同姓同名ではあるが設定から違うし、ヒロイン同士も全く面識がなく、共通ルートすら存在しないので、コンセプトが共通なだけの完全なる別作品だと感じた。
主人公は設定だけでなく、性格も大きく違う(特にサチのシナリオ)ので、もういっそのことデフォルトの主人公の名前もそれぞれのシナリオで別にしてしまって、3人は同じアパートの別の部屋に住んでるみたいな設定で良かったんじゃないかと思った。
・ストレートに恋の巣ライフを描くいちか&なつめシナリオ
いちかとなつめのシナリオはシナリオライターが別人のため、主人公の性格やHシーンの傾向にある程度の違いは見られるものの、妙にシリアスな展開もなく、普通のラブラブエロエロの彼女持ち一人暮らしライフを描いたシナリオとなっている。
どちらかというと抜きゲーに分類される本作では、初Hまでの過程はサクッとしており、早々にラブラブエロエロな性活を楽しめるようになっている。
いちかシナリオの場合は、主人公が行きつけの喫茶店でバイトをしているいちかと知り合うところから始まり、テンポよく、それでいて仲良くなる過程の初々しさをしっかりと堪能できるように、恋人になる部分までが描かれる。
主人公は今風の大学生で、公務員を目指そうとする安定志向の持ち主という余り特色のないキャラクターとなっているが、性的に無知ないちかに様々な猥語を教えたり、イメージプレイ(?)として言葉責めをする場面もあり、性的にはアグレッシブな部分を見せることの多い主人公だった。
いちかは年下なのだが相当な甘やかせヒロインで、Hシーンでは授乳手コキだけでなく、ママと呼ばせるようなシーンも存在する。
最近流行り(?)のバブみという程には年齢が離れているわけではないが、家事もしっかりできるので、日常シーンも含めて癒される、甘えたくなるヒロインという点では一番だった。
箱入り娘に近い育て方をされたためか性的な知識が最低限にしか存在しない彼女だが、そういったことに忌避感があるわけではなく、むしろ主人公となら色々としてみたいと考えているようで、お願いすると色々してくれるという母性と無垢さを兼ね備えている。
最初はエロいことは何も知らないので、非常に初々しく色々なことに挑戦するのだが、無知さ故のアグレッシブさもあり、アイスを口に含んだ状態でのフェラチオみたいな変わったプレイを自主的にしてくれる場面もあった。
性的なことに対する羞恥心も少なく、お願いされると躊躇せずに猥語を言ってくれるので、自分色に染めていく感覚を体験することができた。
猥語もいちからしい可愛らしいものが多く、”おちんちんさん”のような彼女らしい言葉のチョイスも良かった。
最終的にはエロい自撮りを送ってくるほどにエッチなことに積極的になるのだが、本作はHシーンの数が多いので、そうなっていく過程もしっかりしていた。
なつめシナリオの主人公も、いちかシナリオ同様に大学生だが、自炊を含めて家事もしっかりとこなせるし、勉強を教えるのも上手と、基礎的なスペックはこちらの方が高いと感じたが、単に家事万能で勉強もできるいちかのスペックが高すぎるだけかもしれない。
付き合う前の状態でもなつめが落ち込んでいるのを見抜き、話を聞いてあげる積極さや、半徹夜状態のなつめが遅刻しないようにカバンの中に目覚ましを仕込む茶目っ気があり、本作で一番好感の持てる主人公だった。
主人公だけでなく、なつめも自分が一番好みだったヒロインで、非常に賑やかで、考えるより先に行動するタイプなので、年齢相応に大人びた主人公と学園生らしい元気ななつめは素晴らしい組み合わせだった。
ヴィジュアル的にも、目立たない程度のピアス(?)やマニキュアなどをしており、今風の学生らしいファッションが彼女の元気さとマッチしていた。
なつめは主人公の隣の部屋に住んでおり(近くの実家と半々くらい)、そのため、付き合う前から気軽に主人公の部屋に勉強を教えてもらったり、ご飯を食べに訪ねてくる。
他にも一緒に買い出しに行ったりと、知り合った当初は気になる異性というよりも妹ができたみたいだった。
それが徐々に気になる異性としてお互い意識するようになっていく過程は短いながらも素晴らしく、付き合う前の甘酸っぱい雰囲気はなつめシナリオが一番だった。
エロに関する知識は年齢相応にあり、女性雑誌で情報を仕入れたりしているので羞恥心もいちかよりはあるが、積極性はしっかりと持っているので、二人でエロサイトを見て色々なプレイに挑戦する展開になっている。
なつめシナリオのHシーンで特徴的なのは玩具を使ったシーンが多いことで、バイブやローターのような一般的なものだけでなく、尻尾アナルバイブのようなマニアックなものもあった。
・クセの強いサチシナリオ
上述した2つのシナリオと比べると、サチのシナリオは好き嫌いのわかれそうな主人公や終盤の妙なシリアス展開など、クセの強いシナリオだった。
まず主人公だが、浮き沈みが激しい性格で、ハイテンションになったかと思うと勝手に落ち込んだりと、設定上は唯一の社会人なのに一番落ち着きの無い性格だった。
また、父親とは仲が悪く、そのために奨学金で大学に行って、卒業後は奨学金を返済しながら社会人として頑張っているというのは立派なものだとは思うのだが、文章の端々で父親に対するコンプレックスが垣間見え、端的に述べてウザいと感じた。
付き合う前の時点からサチに対する気持ち悪い妄想をメモ帳に書き込んでおり、更にそれを本人に見られるという失態も犯すのだが、そこに関しては、サチも恥ずかしい主人公との妄想やしたいことリストを書いていることが発覚するので、変態なのはお互い様と言えなくもない。
しかし、大の男が変態妄想をしているのと、可愛い女の子が変態妄想をしているのでは、当たり前だが印象が違い、正直に言ってしまうと主人公はアイドル相手に性的な妄想しているキモオタに通じるものを感じた。
シナリオもクセが強く、付き合うまでの過程がやたらと長い上に、単なる甘酸っぱい展開ではなく、サチの現在の学校で友達が少ない問題や、イジメられて不登校だった過去など無駄に重い設定があり、単なる青春を楽しむ学生カップルとは違った雰囲気だった。
終盤の展開もいわゆる誰得シリアスで、一年間サチと離れ離れになったり、父親へのコンプレックスも主人公が人間として一皮むけるための伏線だったりしたのだが、果たして本作にそんな展開が必要だったのだろうかと言いたい。
同じような展開だと飽きるだろうという配慮なのか、単なるシナリオライターの趣味なのかはわからないが、個人的には本作ではもっとストレートなイチャラブを描いて欲しかった。
ちなみに、途中の選択肢で「どんなシリアスも一瞬で乗り越えられる」を選ぶと数クリックで終盤のシリアスパートが終わるので(自力でフルコンプのためには両方見る必要がある?)、制作側もコンセプトから外れているという自覚はあるのかもしれない。
主人公やシナリオだけでなく、ヒロインのサチも他二人と比べるとクセのあるヒロインで、性的行為に興味はあるものの、人並みかそれ以下の知識しか無かった二人と比べると、ド変態と言っても過言ではない変態っぷりを発揮するヒロインとなっている。
ただ、シナリオや主人公は作風やコンセプトとの組み合わせが悪く、ネガティブな方向に働いていたのに対し、サチの変態さはいい方向に作用しており、他ヒロインと比べるとディープな雰囲気だった。
主人公とサチは根っからの変態カップルとなるため、最初は普通で徐々にハマっていく他シナリオとは違って、お互いに好奇心や性欲が最初から前面に出ており、より尺が長くてネットリとした内容が多いと感じた。
しかし、プレイ後に回想モードでCGを眺めていると、CGだけで見るとサチはむしろノーマルなHが多いと感じ、他と比べて変態チックな部分はお漏らしが多いことくらいだったので、サチの持つM性やシーンの尺の長さ、それにテキストによる印象が大きいのではないかと思う。
・大ボリュームのCG
本作のCG枚数は全部で91枚+SD絵18枚+背景CGにヒロインを合成したCGが6枚と大ボリュームとなっている。
また、追加DLCが無料(無料なのは期間限定?)で配布されているので、更にボリュームは増えることになるだろう。
基本枚数だけでなく、CGの差分や立ち絵の服装差分も非常に多いので、ボリューム面に関しては大満足だった。
本作はシナリオによって季節が違い、なつめとサチは夏、いちかは冬の設定で、夏の服装の方が露出が多い反面、冬服のいちかの方が凝った服が多くて彼女のキャラクター性をしっかりと感じることができた。
クオリティの方は安定しているだけでなく、エッチ中の表情は非常にエロく、風呂上がりや風呂での立ち絵では髪がつやつや(しっとり?)していたりと、細かい部分まで丁寧に作らていた。
それぞれのヒロインには添い寝CGが用意されており、同棲している感を演出するのに一役買っていた。
また、それぞれのエロ写メのCGもあり、どんどん主人公とのエロいことにハマっていくヒロインが上手く演出できていたと思う。
・エロシーンは殆どが恋の巣で
本作のシーン数は全部で94回というCG枚数以上の数となっており、内訳はサチが32回、いちかが35回、なつめが27回となっている。
プレイ後に回数をカウントしてみるとヒロイン毎に明確に差があるのに気づいたが、特になつめがいちかと比べて少ないとはプレイ中には感じなかった。
しかし、サチはそれぞれのシーンの尺が長かったので、エロ以外のシナリオも含めてサチが一番ボリュームがあった。
猥語修正は無しで、BGVもあるのだが、クリックで通常音声が停止する設定でないと通常音声にかぶってしまうので、両立させるためにはBGVの音量を小さめに設定するなどの工夫が必要だった。
シーンの尺は平均するとかなり長めで、その上に回数が多いので、総プレイ時間はかなりのものだった。
CG枚数よりもシーン数の方が多いということは、当然ながら使いまわされるCGも結構あるのだが、各ヒロイン1、2回はアパート内以外でのシーンもあるのだが、残りは全てアパート内という似たようなシチュエーションのため、目の前のCGが使い回しなのか新規なのか判断がしづらく、殆ど気にならなかった。
3人のシナリオで共通なのは、系統は若干違うが猥語が非常に多いことと、エッチ中のキスが多いことで、エッチ中のキスが好きな自分としては非常に嬉しかった。
・オカズが決まらない夜の友、秘めくりカレンダー
本作のコンフィグ周りに関しては、必要十分な項目は揃っており不便だとは感じなかった。
ウィンドウサイズ可変で、DL版も付属(要DLsite.comで無料のアカウント登録)しているので、光学ドライブがなくても簡単にインストールできる。
かなりプレイ時間の長い作品だがフルコンプボタンが搭載されているので、好みではないヒロインのシナリオはプレイせずにHシーンだけを鑑賞することも可能となっている。
攻略に関しては、タイトル画面からヒロインを選択するタイプなので、攻略も何もあったものではないのだが、その割には選択肢が多めで、選択肢次第で一番最後のHシーン辺りから内容が若干変わるようになっている。
ネタっぽかったり、変態行為に走る選択肢を選ぶかどうかで分岐するのだが、全体のボリュームからすると誤差程度にしか違わない上に、選択肢ジャンプ機能が無いので正直言って回収するのはちょっと面倒だった。
ただ、上でも書いたようにフルコンプボタンがあるので、面倒だと感じたらフルコンプ機能を使ってしまえばいいと思う。自分は存在を忘れていたので、回収にやや時間がかかった。
本作に搭載されている面白い機能に「秘めくりカレンダー」というものがあり、ヒロインを攻略するとそれぞれのヒロインの秘めくりカレンダーが開放されるようになっている。
内容自体は単純なもので、秘めくり(日めくり)カレンダーのように、クリア後も続く二人の恋の巣ライフの一日を描くというものになっており、短い日常シーンの後にランダムで選ばれた本編のHシーンが始まるという内容になっている。
本編のHシーンはプレイ内容はともかくとして、シチュエーション(場所や雰囲気)は大体同じな上にシーン数も多いため、一度見た内容でも既視感が少なかった。
ちなみに、日常シーンの方は秘めくりカレンダーと本編の重複が無いので、それも既視感が少ない理由なのだと思う。
そのため、本作のHシーンが趣向に合う人は、秘めくりカレンダーがプレイ後にもオカズとして強い味方になってくれるだろう。
更には、秘めくりカレンダーのショートカットを作成することも可能となっていて、アイコンをクリックするだけで起動することができるようになるので、正に日めくりカレンダーをめくるノリで起動することができるようになっている。
・まとめ
「理想の彼女持ち一人暮らしライフ」というコンセプトに忠実な作品で、余計なキャラクターやイベントを極限まで省くことにより、ひたすら恋の巣でのラブラブエロエロな恋人性活を楽しめる作品となっている。
ヒロイン毎(ライター毎)に主人公や物語の雰囲気が大きく変わってしまい、特にサチのシナリオはクセが強いのが欠点といえば欠点だが、コンセプトから外れているわけではないので期待を裏切られることはないと思う。
また、単調になりがちなシチュエーションを逆手に取り、「秘めくりカレンダー」というプレイ後にも楽しめるモードが搭載されているのも素晴らしかった。