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Predawnvagabondさんの愛があれば恋人に催眠術をかけても問題ないよね?の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
愛があれば恋人に催眠術をかけても問題ないよね?
ブランド
Blue Devil
得点
90
参照数
1577

一言コメント

恋人に催眠術をかけるという面白い設定がしっかりと活きていた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

催眠術といえばエロゲーでは一つの定番のジャンルで、大概の場合はうだつの上がらない主人公が、催眠術というチートを使って周りの高嶺の花を汚していくという展開だが、本作はそれとは違って恋人同士の性の悩み解決のためというちょっと変わった動機が端緒となっている。
そのため、序盤は催眠術を使ってヒロインがエッチな行為を拒む理由を尋ねたり、やや気まずい初体験の後は性感開発をしたりと結構地味な内容となっている。
また、性行為の練習のために催眠術を使っているので、成果確認のために素の状態のヒロインとの性行為も時々発生するのだが、知らない間に主人公のスキルが上がっていたり、自身の体が知らぬ間に快感に順応しているのを戸惑うヒロインを見ることが出来るのは催眠モノらしさが感じられた。
中盤からは主人公が催眠術を使うことに対する罪悪感が薄れてきて、自分が楽しむために催眠術を使うこともあるのだが、主人公のヒロインに対する想いは愛しい恋人というのは一貫しているので、多数派である催眠陵辱とは違った作風だった。
他にも、本作の催眠術は比較的制限が大きく、常識を書き換えて素の状態だと絶対に嫌がるようなことをさせたり、対象が元から持っている性質(性癖)を消したりすることはできず、本人自身もある程度望んでいたり、興味が有ることに対して思いっきり背中を押す感じなので、ヒロインが嫌がることを無理矢理している感はなかった。

催眠術で常識や認識を書き換えてヒロインを辱める作品とは違い、本作は催眠状態(所謂ハイライトオフ状態)でのシーンが大半を占めるのだが、定番の無感情棒読みでされるがままのダッチワイフ状態ではなく、しっかりと恥ずかしがったり喘ぎ声を上げるので、どちらかというと二重人格っぽいと感じた。
素の状態では凄く恥ずかしがり屋なヒロインは、実は心の中ではHなことに興味津々なので、心が丸裸になる催眠状態ではエッチなことに従順で、感じたことや思ったことを素直に喋ってくれるので、素の状態との差が明確なのもギャップがあって良かった。
また、低価格の割にHシーン間の会話シーンが長めで、素の状態のヒロインと会話する機会も多いため、催眠術を使ってこっそり彼女とHの練習をしている背徳感を味わうことができた。
序盤は恋人同士の性の悩みを解決するために催眠術を使用するのだが、中盤からは少し雲行きが怪しくなり、フェラチオに抵抗があるヒロインに主人公のペニスが好きになる(フェラチオに抵抗がなくなる)という催眠や、エロ漫画を読ませて淫語を覚えさせたりと、性のお悩み解決だったのが、単に彼女ともっとエロいことをしたいという欲望を叶えるために催眠術が使われるようになる。
他にも、お互いに名字で呼んでいたのを下の名前で呼び合うように暗示をかけたりするのだが、そのくらいは非催眠状態の時に頑張れよと言いたくなった。

本作のタイトルである「愛があれば恋人に催眠術をかけても問題ないよね?」というタイトルはプレイし終わってから考えてみると、バカっぽく見えるが意外と考えさせられるタイトルだった。
本作の催眠術は本人すら認識していない無意識下の願望を表層に引き上げることも可能で、主人公はひょんなことからヒロインのマゾ(+露出癖)の素質を開花させてしまう。
そして、ヒロインの目覚めた性癖についていけなくなるものの、主人公はその責任を取るために無理をしながら彼女につきあうというものや、コントロール不能に陥ってしまうエンディングがある。
勿論、主人公がご主人様役を積極的に楽しむようになり、仲の良いSMカップルとなるグッドエンドもあるのだが、エンディング数4つの内でしっかりとグッドエンドと呼べるのは一つだけだった。
催眠術なんていう安易な手段に頼ったが故に痛い目に遭うというのは面白い結末で、また、恋人同士の性の悩みを解決するという動機に対して共感する部分もあったので、プレイ後に結局のところ催眠術は問題ありだったのかどうなのかちょっと考えてしまった。

本作のHシーン数は全部で17回(回想モード上では18回だが一つはHシーンとは呼べない)となっており、価格から考えるとかなり多めとなっている。
尺の方もしっかりとあるので、ボリュームに関しての満足度は非常に高かった。
中盤までのシーン内容は、初な恋人に催眠術を使ってエッチなことを教えるという内容のため、催眠状態というのを除けば普通のプレイばかりだが、中盤以降(マゾの素質が目覚め出す頃)になってくるとSMっぽいプレイが増えてくる。
イラマチオやスパンキングのようなSM定番のプレイから、目隠し拘束した状態で大人の玩具で責めたり、主人公が図書委員の受付の仕事をしながら机の下にヒロインが隠れた状態でセックスをしたり、変わったものだと、ヒロインのMっ気を調べるために主人公を恋人ではなくただのクラスメイトだと思わせる催眠をした状態で無理矢理セックスするというシーンもある。

CG枚数の方は全部で22枚と、こちらも価格に対してしっかりと満足できるボリュームとなっている。
差分込みだと147枚なので、差分もしっかりしていると言えると思う。
また、立ち絵の服装の種類も多く、恥ずかしがり屋なヒロインらしい地味めで露出の少ない私服から、催眠術の影響で素の状態でもエッチなことに抵抗感が少なくなったせいで、超ミニスカートとへそ出しの露出の多い服装へと切り替わるのが印象的だった。

システム面に関しては、ある程度古い同人作品なので不便なのは仕方がないかと思うが、クリック時に音声を停止するかどうかすら選べないのはやはり不便に感じた。
また、場面が切り替わる時の暗転エフェクトや、鑑賞モードでのページ切り替えのエフェクトなどをクリックでスキップ出来ないのはストレスに感じた。


・まとめ

催眠作品としては、主人公が催眠術を使う動機が恋人同士の性の悩み解決のためというのが変わり種で、一方的な歪んだ愛情や怨恨ではなく、愛し合ってるヒロインに対して催眠術を使用するというのが新鮮だった。
また、全体的なボリュームがしっかりしているので、設定だけで中身は対して他作品と変わらないということもなく、Hシーンの間に挟まれる日常シーンや、徐々に催眠術によって変化していくヒロインが描かれていたので、本作の特徴もしっかりと活かせていた。