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Predawnvagabondさんのグリモ☆ラヴ ~放課後のウィッチ~の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
グリモ☆ラヴ ~放課後のウィッチ~
ブランド
しろいぱんつ
得点
82
参照数
1064

一言コメント

かなりクセの強い作品だけど、オカルト+バカゲーという変わったジャンルで結構笑えるシーンが多かった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・ひと纏まりの作品というよりも、特大ボリュームの短編集

ボリュームは物凄く大きくて、Hシーンだけでもフルプライスの抜きゲー並のボリュームがあるし、それ以外のシナリオ部分にしてもフルプライス並のボリュームがあった。
反面、何でもありなオカルトや、順番を入れ替えても問題無さそうな短編集という本作の構成は人を選びそうだと感じた。


・シュールなオカルト

「素敵な女子(お化け含む)に囲まれた学園生活AVG」と銘打った本作は、オカルトをメインとした何でもありのバカゲーとなっている。
オカルトと言ってもホラーな雰囲気は無く、ゾンビを召喚して死にそうな目にあっても「もう一回やってみようぜ!」と言ってもう一度召喚して死にそうになったりと、お笑い霊体験から本来なら洒落にならない霊体験までを面白おかしく描いているので、恐怖を感じるような話は全く無かった。
全部で220話のエピソードが用意されているらしく、そのため、一話一話は短いのでテンポよく読み進めることが出来た。
一話一話が短くてシュールな本作は、雰囲気は大分違うかもしれないが、例えるなら深夜にテレビでやっていた「オー!マイキー」とか「チャージマン研」のエロゲー版みたいな感じで、笑いの方向性にしても、そういった深夜のシュールな短編コメディみたいな内容だった。

非日常的なオカルトと、同じく非現実的とか奇抜みたいな意味のシュールという言葉を並べると、単にオカルトの一言で表せば良いじゃんと感じるかもしれないが、純粋なオカルト作品の場合、大抵は作中の登場人物が何気なく訪れた場所や取った行動によって、非現実的な出来事に巻き込まれるという、ひょっとすると自分も似たような目に遭うかもしれないという恐怖感を抱くような作品が多い。
しかしながら、本作はオカルトはオカルトでも、何の脈絡もなしにエジプトの古代神とか透明人間、カッパ、犬の校長先生とかが登場するので、現実味が全く感じられない奇抜なストーリーだった。
また、オカルトが題材なストーリーだけあって、中途半端な終わり方というか、「結局あれは何だったのかわからない」みたいな終わり方のエピソードも多かった。
しっかりとオカルト問題が解決する話にしても、センターヒロインであり第二文芸部(実質オカルト部)の部長である柚夏が、呪文とか魔法陣とかを使ってサクッと解決してしまうので、釈然としない終わり方をするエピソードが多かった。
220話というとんでもない数のエピソードがあるので、いちいちエピソード毎にオカルトの理由付けや解決への道筋を作るのは無理だったと思うので、そういう意味ではルール無用のオカルト世界観にして強引に終わらせるというのはありなのかもしれない。


・一切の私生活が不明な登場人物たち

エピソード数だけでなく、登場人物も全部で20人近くと多いのだが、本作の登場人物は主人公にしてもヒロインたちにしても、学園以外での描写が一切存在しない。
そのため登場人物全員のバックグラウンドが一切不明で、普通なら自宅みたいな学園外の場面も描いて、学園とはまた違った一面のキャラクターを見せることで魅力が増したりするわけだが、そういう学外の描写が一切無く、家族構成すら不明という徹底ぶりである。
主人公は一人暮らしらしいというのだけは公式HPのキャラクター紹介に書いてあるのだが、主人公目線で物語が進むにも関わらず、主人公についての学外の情報ですら描写されていない。
何でもありなオカルトなので、実は登場人物全員が学園に気づかない内に閉じ込められているみたいなオチがあるのかと予想していたが、単に描写されていないだけだった。

物語の世界観同様にヒロインたちも色々とぶっ飛んでおり、設定上はモテモテの魔導書のせいでヒロインは発情(サキュバス化)してしまい、主人公はエッチなトラブルに巻き込まれるという流れでエロシーンに突入するのだが、普段から色々とアレなせいで、ツンデレの柚夏を除けば残りのヒロインは本当に魔導書のせいなのかと言いたくなるヒロインばかりだった。
生徒会長の魅優と風紀委員長の七水は特に顕著で、魅優は誰彼構わずおっぱいを揉みまくりで、セクハラ幽霊騒動の犯人が実は魅優だったり、真面目そうな七水はエロサイト巡回でスマホや生徒会の備品のパソコンをウイルスまみれにしたり、学園でオナニー常習疑惑があったりとデフォルトで発情しているようなキャラなので、ぶっちゃけ魔導書がなくても似たような展開になりそうなヒロインだった。
緋凪にしても、図書委員の物腰柔らかで面倒見の良い先輩という感じのキャラクターだが、実は執筆家でライトノベル(?)やエロ小説を書いており、創作が行き詰まると全裸で校内を徘徊するようなとんでもない性癖を持っているので、どこまでが魔導書のせいで、どこからが素なのかわからなかった。
残りのヒロインにしても、柚夏を除けばオカルトな力で発情させられているとはいえ、エロい事に非常に積極的なので、普通なら魔導書が無ければ中々そういう関係になれないヒロインと関係を持てる的な役得は薄いのではないかと感じた。


・どちらかというと短編集みたいなエピソード

全部で220話もエピソードがある本作は、その多さからそれぞれのエピソードが殆ど繋がっておらず、魔導書や新キャラ登場、最終盤のような一部のエピソードを除いて適当にシャッフルしても何の問題も無いような内容になっている。
おそらく実際の執筆もそんな感じで、それぞれのライターがエピソードを書いて適当に繋げたのではないかと思う。
誤字脱字が非常に多かったり、エピソードによってはオカルトに対する登場人物のスタンスや時系列がおかしかったりと、校正をしっかりとする時間が無かったのかもしれない。
ゲーム内の時間経過を感じさせるような服装の変化、季節柄のイベント等が皆無で、ヒロインとの仲が物語の進行に合わせて縮まったりしないので、作品を通してプレイしても纏まった一つの作品という印象は殆ど無く、ユウマという主人公の目線を通して描かれるぶっ飛んだ学園の日常風景を描いた短編集のようだった。
220話と言われてもピンと来ないかもしれなが、かなりボリュームで、エロシーン以外のエピソードは平均して5分もかからないくらいだが、それでもエピソード数は多いし、エロシーンが回数が多いのにそれぞれのシーンの尺もしっかりしているので、計っていないのでプレイ時間はわからないが、標準的なフルプライスの倍はあるのではないかと思う。

短編集の一つの弊害として、上述したように個別にヒロインと仲良くなるという甘酸っぱい展開は一切存在せず、また、学外でのデートや買い物みたいなイベントがも存在しないことが挙げられる。
登場人物全員が割りと物語の序盤から関係が出来上がっており、主人公も最初は文芸部に所属しているわけでもなく、生徒会役員でもないため、碧唯以外のヒロインとは初対面なのだが、生徒会に入った直後から生徒会長や風紀委員長の二人とも普通に会話している(馴れ馴れしいわけではない)ので、物語の序盤からHシーンの頻度が増えてくる中盤までですら、ヒロインと主人公の距離の縮まりが無いとは言わないが感じづらかった。


・グラフィックは少し安っぽい

本作のCG枚数は78枚とCG枚数に関しては、ストーリーの長さの割にはフルプライスとしての標準的なボリュームになっている。
プレイ開始当初は少し体の比率(?)がアンバランスかなと感じたが、恐らく全ヒロインが爆乳だからアンバランスに感じただけで、慣れてくると普通に感じるようになった。
グラフィックは少し安っぽく感じられたが、これは塗りのせいではないかと思う。
アニメーションもそれなりの枚数あるのだが、クオリティ自体はイマイチで、動きに違和感があったが、任意でオン・オフにすることが出来る。
登場人物が多めの本作だが、キャラクター紹介で登場しない人間は「かまいたちの夜」みたいなシルエットの立ち絵になるのは、恐怖感を煽るためなのだろうか。
逆に人間以外に関しては、ゾンビやピエロなど結構気合の入った不気味な立ち絵が用意されていた。
本作のCGで少し変わっている点としては、ゲーム解像度が1280*720なのに対して、イベントCGのサイズが1280*853というサイズ(アニメーションは除く)なことで、マウスを使って上下に動かすことが出来るようになっている。
CGによっては大して意味がないものもあるが、逆に上下に動かすことによってパンツや挿入箇所がしっかりと見えるようになる(逆に頭が見切れる)CGもそれなりの数があって、これは面白いアイデアだと思った。


・透明人間のエロシーン!?

本作の回想数は71回と、ストーリーよりも抜き重視のエロゲーと比べても遜色ないボリュームとなっている。
回数が多いだけでなく、それぞれの尺も長めなので、Hシーンのボリュームに関して不満を抱くことはないと思う。
逆にボリュームが多すぎて、どちらかというとストーリー部分を期待していた自分にとってはテンポが悪いとも感じた。
猥語修正は無しだが、BGVも無かった。また、エロ関連の一部のSE(特にクンニのSE)で違和感があった。

シーン内容のバリエーションは豊かで、アナルプレイ(特に緋凪に多い)や3Pもある。
また、Hが全て学園内で行われるので、近くにいる生徒にバレそうなシチュエーションや、逆にオカルトパワーで真横を他の生徒が通り過ぎる中、バレずにセックスするシーンもある。
オカルトらしさ全開のシーンも多く、最もぶっ飛んだものだと透明人間とのHがある。
しかもプレイヤー側にだけ見えるように半透明になったりもせず、完全に透明人間のままでフェラとか対面座位(?)をするので、CG上では主人公の男性器だけが露出している状態に、喘ぎ声とかチュパ音が聞こえるため、バグにしか見えない状態だった。
他にも制服着用で制服だけ浮いているような状態でフェラするシーンもあり、こちらもバグにしか見えないシュールさだった。
とはいえ、本当に透明人間とのシーンのためだけにCGや回想数を割いているわけではなく、途中から莉桜が加わるので実質的には莉桜のシーンみたいなものだった。
莉桜は吸血鬼なので、他にもフェラ中に男性器から血を吸うシーンがあるのだが、早い話が歯を立てるわけで、ちょっと勘弁してほしいと感じた。
他のオカルトらしいシーンとしては主人公が女体化したり、顔に張り付いたスライム(霊感の無い人には見えない)を剥がすために魅優と七水におしっこを顔にかけられるシーンとかもあった。
ネタみたいなシーンばっかりでオカズに使えるの?と思うかもしれないが、シーン数は71回もあって、その内の一部がネタ的な内容というだけで、普通のHシーンもきちんとあり、尺もあるのでヒロインが気に入った場合は使えるのではないかと思う。


・コンフィグ周りはイマイチ

本作のコンフィグ周りは設定出来る項目も少なく、機能面でももう少し頑張ってほしかった。
コンフィグ設定ウィンドウを開くにしても、ウィンドウメニュー上のシステムコンフィグアイコンをクリック→アニメーションのオン・オフとテキストウィンドウ透過度調節バー、そして設定ダイアログを開くボタンのある画面が表示される→設定ダイアログのボタンをダブルクリックという二度手間な上に、設定ダイアログもWindowsのプロパティウィンドウみたいなお世辞にも使いやすいと言える代物ではなかったので、設定項目の少なさだけでなく、UIに関しても不満があった。
登場人物が多いのに音声ボリュームが個別で調節できないので、声が小さいキャラクターにあわせると他のキャラクターの声が少しうるさく聞こえたりと、妥協点を見つけるのにも苦労した。
また、バックログを表示すると現在再生中の音声が途切れるのもやめてほしかった。
バックログからジャンプすることは出来ないのだが、バックスキップなる機能が存在し、各章の最初に戻れるのだが、全部で220章もある本作では使う機会が何度かあった。
コンフィグ面とはあまり関係のないことだが、誤字修正パッチを当てたにも関わらず、誤字脱字が多くて、場合によっては多少意味合いの変わってしまうようなものもあったので、自分の頭のなかで修正して読み進めるにしても、気になることが多かった。
選択肢は200話以上を読み進めた終盤で発生するが、一度クリアした後は好きな場所から本作を開始することが可能なので、選択肢でセーブを忘れたとしても、膨大な文章をエピソード毎にストップするスキップ機能を使いながら再び読み進める必要は無いのは良かったというか、最低限搭載されてしかるべき機能は搭載されている。