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Predawnvagabondさんの深層パラレルパラドックス -並行世界の理想郷-の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
深層パラレルパラドックス -並行世界の理想郷-
ブランド
WitchFlame
得点
70
参照数
2244

一言コメント

陵辱ゲーなのか、背徳感重視なのかわかりづらかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・何でもありの都合の良い設定

平行世界を自由に行き来できるという設定のため、ヒロインがそれぞれ違う世界の住人というのが本作の特徴となっている。
過去、現代、未来のように時代が違うだけでなく、獣人やファンタジーなどの世界も登場するので、一作で色々な服装や世界観を楽しむことが出来る。
とはいっても、ヒロイン5人のうち玖芦と桜以外の3人は主人公の近親者なのだが、どの世界も極普通に近親姦がご法度な価値観の世界で、そこまで価値観の多様性があったわけでは無いのが残念だったので、もう少し何でもありな世界観を利用して、近親姦推奨みたいなぶっ飛んだ世界を登場させても良かったのではないかと感じた。
逆に変わった設定としては、母親が存在する未来世界では単為生殖の技術が進んだために、性に関する知識が皆無になっていて、性産業どころか勃起現象すら一般的ではない設定で、最初の内は性に関する知識が皆無な相手を騙してHなことをさせるのだが、ロリっ娘相手ならともかく、母親相手にそれをするというのは珍しい展開だっと思う。
また、処女独占に異常なまでに配慮したというか、制作側が処女独占に異常なまでに執着しているのではないかと感じるブランドで、独占要素監修まで存在する本作での、未来世界では母親までもが処女という無理矢理な設定には笑ってしまった。

それぞれが別世界に住んでいるヒロインたちだが、お互いが一度も遭遇せず実質別作品の寄せ集めというわけではなく、主人公に連れられて、それぞれのヒロインが他世界に行って別のヒロインに遭遇することもあるため、きちんと一本のゲームになっていると感じた。
また、獣人世界にヒロインが訪れた際には、動物の耳と尻尾が生えるという設定も良かった。
しかし、平行世界が5つも出てくるのに、不必要に細かい部分まで設定が作りこまれていて、説明が長く感じたので、もう少し簡潔な方がよかったと思う。
桜を除く4人のヒロインとは戦闘シーンもあり、前準備に時間をかけたりと結構な労力が割かれており、そうまでして戦闘って必要だったの?と感じた。

ヒロイン5人の内、桃、千恵梨、玲文の三人はそれぞれ主人公の妹、母、姉(最初はヒロイン同士の面識はなし)なのだが、家族としての主人公との関係は良好となっている。
そのため、主人公に犯された後も、何とか主人公との家族としての関係を修復しようと努力し、思い切った反撃手段に出れない内にズルズルと流されていくのが良かった。
幼馴染の桜は血の繋がりこそ無いものの、主人公的には近しい人間ということもあり、展開は他の3人とほぼ同じで、違いはせいぜい犯されている時に血の繋がりを指摘する発言をしないことくらいだった。
玖芦だけは他ヒロインと比べると、かなり違った立ち位置となっていて、主人公の協力者となり、他ヒロインを堕とすのを手助けする役目が与えられている。
そのため、最初の二度の陵辱の後、主人公とは主従関係を結ぶのだが、主従と言ってもかなり緩く、また、陵辱により陥落したわけではなく、主人公の使う不思議な力+他世界の甘味により、自分の主と認めるという展開となる。
主従関係になる前は「くっ、殺せ」みたいな台詞を言ってたのに、一度懐いてしまうとやんちゃで好奇心旺盛な犬のようなキャラに変わり、Hシーンも当然和姦となるので、物語中での立ち位置、Hシーンの傾向共に違うキャラクターとなっている。
主人公は名前を変更可能で、デフォルトのままでも二人称で誤魔化すタイプとなっているが、シナリオが重要ではない抜きゲーなので、問題だとは感じなかった。


・設定を活かしたマニアックなHシーンも

本作のHシーンは全部で67回と、フルプライスの抜きゲーとして標準的なボリュームになっていて、内訳は玖芦以外の4人は13回、玖芦が14回、ハーレムが1回となっている。
尺の方も標準的なので、全体のボリュームはまずまずといったところだった。
全体の傾向としては嫌がるヒロインに無理矢理というのが多いので、陵辱メインと言えるが、ヒロインが苦痛を感じるようなプレイは無いし、陵辱した後も敵意むき出しとまではいかず、ギクシャクした家族程度の関係を維持しているのもあって、そこまで陵辱感は強くなかった。
玖芦以外の4人の場合は陵辱:和姦の割合が大雑把に2:1くらいの割合で、玖芦はHシーン14回中最初の2回だけが陵辱となっている。

シーン内容は設定を活かしたものが多く、マニアックなシーンが多めなのが良かった。
各ヒロインに妊娠ENDがあるため、全ヒロインに妊娠状態でのHシーンがあるし、髪コキやパンツを被せて手コキ、精液を口に含んだままでの騎乗位、飲尿させるシーンもあった。
主人公は「対象にとってありえない事をさせる」という精神汚染能力を有しているため、ヒロインに猥語を言わせたり、オナニーさせたり、更には無理矢理愛液や潮を吹かせるシーンもあった。
特に変わったものとしては、主人公が空間を移動する扉をどこにでも作れるという能力を利用して、下半身だけをヒロインのいる所に出現させて犯すとか、いわゆる壁穴から下半身あるいは上半身だけ出ているシチュエーションに、能力を使って同時に両方出ている状態にして犯すシーンもあった。
思わず笑ってしまったシーンとしては、魔法でヒロインが五体投地みたいな姿勢で飛んでいるのを後ろ(上)から挿入というのがあった。

事前選択は可能で、BGVもあったが、事前選択に関しては例外も多く、完全にHシーン中での選択肢フリーというわけでは無いのは残念だった。
他に残念だった点としては、エンディングが各ヒロイン二種類あって、中に出したか外に出したかで分岐するため、途中で事前選択の設定を変更する必要があることで、ちょくちょくコンフィグ開いて設定を変えたりしていると、この機能そもそもいらないんじゃない?と感じてしまった。
基本的には攻略したいヒロインを選んでいき、最後の方で事前選択を解除すれば簡単にコンプリート出来るが、何故か千恵梨のみ玲文を先に陥落させておかないと見れないシーンがった。


・判然としないジャンル

本作の展開は玖芦のシナリオを除けば、主人公が陵辱を繰り返すことによりヒロインを陥落させるものだが、ヒロインが堕ちるのがかなり唐突に感じられたのが残念だった。
陵辱と言いつつ、上述のように比較的マイルドな内容だったことや、ヒロインの数が比較的多いというのもあるのかもしれないが、もう少しヒロインの心理描写を書くなりして、丁寧に過程を描写して欲しいと感じた。
試しに公式HPのジャンルを確認してみると「数多の世界を渡り、各世界の身近な女達のその全てを支配する関係破壊・再構築・進撃調教ADV」という良くわからない、やたらと長いジャンルとなっている。
「関係破壊」に関しては家族として良好な関係を築いているのを、主人公が己の欲望を満たすためにヒロインを陵辱するという展開がまさにその通りだったのだが、「再構築」に関してはちょっと首を傾げたくなる内容で、再構築を謳うなら戦闘は最初だけにして、その後は力づくではなく、もう少しヒロインとの駆け引きに重きを置いてほしかったと感じた。
例えば、主人公の欲望に理解を示して、手や口で処理してあげるからみたいな展開で、徐々に心理的な垣根を取っ払っていくみたいな内容の方が良かったと思う。
「進撃調教」に関しては最早言葉の意味すら理解できず、あの流行りの漫画から何となく持ってきたとしか思えなかった。
結局のところ、純粋な陵辱ジャンルとしてはヌルく、それ以外のジャンルとしても端的に言い表すのが難しい作品だった。
とはいえ、必ずしもジャンルが明快である必要はないと思うので、判然としないジャンルそのものが悪いというわけではない。
特に本作は変わり種の設定なのである程度仕方ないとは思うが、個人的な好みとしては、陵辱を前面に押し出した作品なのか、それとも身近な女性と無理矢理関係を持つ背徳感を押し出した作品なのかはもう少しハッキリとしてほしかった。


・凝った立ち絵

CG枚数は全部で80枚となっていて、フルプライスとしては標準的なボリュームになっている。
原画は単独原画のため統一感があり、原画、塗り共にクオリティも高かった。
ただし、ペニスに関しては大きさにバラつきがあったり、モザイク越しでも違和感のあるものが散見されたので、モザイクがかかるとはいえ、もう少ししっかりと描いてほしかった。
戦闘シーンが妙に多いためか、服がビリビリに破れている状態のCGも多かった。
また、吐息演出があり(on/off可)、他作品と比べても特に進化しているとかは無いのだが、本作の絵との相性は非常に良かった。
本作は立ち絵が凝っており、処女喪失直後の状態だと、股から血と精液が滴っていたる立ち絵が用意されている。
また、立ち絵を常時処女喪失状態や裸状態などに出来るパッチも配信されていて、立ち絵を好みに変えられるようになっている。

コンフィグに関しては、設定したいと思う部分は大体設定できるようになっていて、個別の音声音量調節も出来るようになっている。
中か外の事前選択が出来るようにはなっているが、上述のように完全に選択肢フリーでは無いのは残念だったが、次文が音声テキストかどうかをアイコンで知らせる機能があるのはありがたかった。


・ちょっと変わった設定が好きなら

平行世界を自由に行き来できるという変わった設定により、色々な見た目や価値観のヒロインを一つの作品で楽しめるのが良かった。
その反面ジャンルが判然とせず、陵辱作品なのか、身近な女性(特に近親者)と肉体関係を持つことによる背徳感を押し出しい作品なのかわかりづらく、やや中途半端な内容だとも感じた。
フルプライスとしては標準的なボリュームだけれども、グラフィックに関しては原画、塗りともに優れているので、本作のちょっと変わった設定が気に入ったならプレイする価値はあると思う。