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PredawnvagabondさんのMaggot baitsの長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
Maggot baits
ブランド
CLOCKUP
得点
92
参照数
1878

一言コメント

エロ(グロ)は嗜好にあわなかったのもあり、おっさんばかりが印象に残った。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・掃き溜めで這いあがく登場人物たち

euphoriaやフラテルニテに続く、どちらかというとHシーン重視のハード陵辱な本作だが、Hシーンだけでなく、ストーリーの方にも力が入っており、中々にハードな内容となっている。
舞台となる架上市は邪法街と化した都市で、登場人物も主人公含めて最低な人間揃いだし、男女問わずガンガン死ぬので、人を選びそうなストーリーではあるが、エロシーンというよりも、もはやスプラッタとかグロテスクという方が、形容詞として適切なシーンの数々を受け入れられるなら、ストーリーの方も問題なく受け入れられると思う。
不死の魔女がヒロインということからもわかるように、本作は現代社会を舞台とするファンタジーで、ファンタジー部分の設定はキリスト教をバックグラウンドとしているのだが、そこまで深く掘り下げられていないので、一般常識程度(魔女狩りとかキリストの最期)に知っているのなら、それ以上の知識は特に必要無いはずである。
何故邪法街では魔女狩りが行われて、魔女がエグい目に合わされているのかとか、首を落さないかぎり死なない魔女の存在とかの背景設定はしっかりと作られており、色々と謎が解けていくのは面白かったのだが、ぶっちゃけると、人間相手には出来ないグロシーンのためというのが、一番大きい理由だったのではないかと感じた。

本作には戦闘シーンもあるのだが、魔女同士の戦闘シーンは以外にも少なく、あったとしてもかなり淡白なものとなっている。
また、血こそが魔女の力の源泉=人体の急所をピンポイントで狙うよりも、流血させた方が効果的という設定のため、必然的に戦闘シーンでも、やたらと流血が多く、ロボットアニメも驚きなレベルで、手足がぶっ飛び、内蔵も破損するような戦闘となっている。
逆に人間同士の戦闘シーンは、戦闘メインの作品と比べると短めとはいえ、力が入っており、描写もしっかりしているので、読んでいて面白かった。


・ヒロインそっちのけで目立つ、むさ苦しい漢ども

エロの絡まないシナリオ部分はハードボイルド調になっており、ハードボイルドが好きな自分に取ってはドンピシャな内容だった。
ヒロインである魔女たちは、掘り下げは少なく、センターヒロインであるキャロルを除けば、公式HPでのキャラ紹介で抱くイメージや、第一印象が変わったりすることは少なかった。
上で述べたとおり、戦闘シーンも淡白で、経験や頭脳で格上の相手を倒したり、不利な状況を覆すという展開はなく、どちらかというと、動物の喧嘩のように肉体スペック頼りの戦闘で、より力の強いものが勝つという当たり前の展開しかなく、面白みに欠ける内容だった。
ただ、これは背景設定上、ある程度は仕方がないことであり、魔女の存在そのものに関して言えば、ストーリー後半部分で大きく印象が変わるので、ヒロイン個々の個性はともかく、ストーリー的には面白かった。

反面、男キャラにはそれぞれしっかりと背景設定が用意されており、それぞれが最悪の掃き溜めの邪法街まで堕ちてきてるだけあって、価値観が根本から覆されてしまうような人生上の敗北を経験したキャラがほとんどとなっている。
それを経てなお、掃き溜めで足掻き続けるという、ハードボイルド作品としては、定番の漢キャラとなっており、キャッチコピーである、「這いあがけ、蟲のように。」という文は、男キャラ側にこそマッチしていたように思った。
ヴィジュアル的にも、少年漫画よろしく10台~20台前半みたいな若い年齢ではなく、洋ゲーよろしく、ガタイの良い、30歳より上のむさ苦しいキャラばかりだったのも良かった。

ストーリーに深く絡んでこない、第三者的な立場の飯河を除けば、主人公の角鹿も含めて掃き溜めの人間だけあって、かなりゲスい性格をしたキャラばかりとなっている。
角鹿は仲間を捨て駒の囮にしたり、味方を試すような選択を迫ったりするし、角鹿のライバル的なポジションであるブライアンは元テロリストの上、仲間を裏切った経歴持ち、角鹿のターゲットである至門は邪法街を牛耳っている割には、小物っぽい癇癪持ち、ヴァレンティノスは異教徒死すべきの狂信者なキャラクターとなっている。
ところが、それぞれのキャラクターはストーリー中で、邪法街まで堕ちてくるに至る経歴がそれぞれの口から語られるのだが、そういった過去を鑑みると、単なるクズではなく、深みや哀愁が増し、魅力的なキャラクターになっていた。
また、それぞれの自分語りの喋り方や、男同士の会話シーンもカッコよく、総じて、ヒロインよりも男キャラばかりが印象に残るストーリーだったので、エロに繋がらない部分では、企画協力の昏式龍也氏が多くを担当したのではないかと思う。


・グロテスク表示のオフは違和感が非常に大きい

CG枚数は全部で97枚となっており、フルプライス作品としても、多めの枚数となっている。
大雑把に数えて、戦闘シーンとか、男のみのCGが20~25枚くらいなので、ボリューム的には、フルプライスに近いHシーン+ミドルプライス程度の尺のシナリオといった感じだった。
イベントグラフィックはウィンドウ消去時には、拡大表示することも可能で、更にその状態でウィンドウを再表示すると、拡大表示したままでプレイすることも可能となっていた。
比率は16:10という、比較的珍しい比率だが、16:9比率のモニターの面積を大きく無駄にすることなく、4:3比率に近い感覚で制作できるということで、この比率は今後、徐々に増えていくのかもしれない。
塗りは、CLOCKUP独特の塗りだが、クオリティは非常に高くて良かった。
原画の方も、単独原画のために統一感があるし、それぞれの質も高かったので、グラフィック面に関する満足度は非常に高かった。

本作では、設定でアヘ顔、陰毛、グロ描写をオンオフ可能となっている。
アヘ顔は完全に白目を剥くようなものは無く、常識的な(?)レベルとなっているので、比較的受け入れやすかったし、陰毛にしても、おざなりな取ってつけたようなものではなく、しっかりとコダワリを感じられる描き方で、髪色と陰毛の色が違うにも関わらず、違和感も無かったので、こちらもオンの状態で自分はプレイした。
反面、グロ描写オフの場合、血(口から血が流れているとか軽微なものも含む)が表示されなくなり、内臓とか断面とかの、人体の中身が見えている部分は黒塗りで見えなくするというもので、euphoria等と較べても激しくスプラッタな本作では、CGの半分くらいが黒塗りみたいな自体も珍しくなく、違和感が非常に大きかった。
また、テキストはそのままだし、ヒロインは変わらず泣き叫ぶので、ストーリーが面白そうだけど、グロテスクなのは苦手ですというような人でも、プレイ出来るかというと、首を傾げざるを得なかった。


・エロの内容は嗜好に合わなかった

Hシーンは全部で56回と、純粋なる抜きゲーとして考えるとやや少ないかもしれないが、シナリオも含めたボリュームとしては、多かったと思う。
内訳はキャロルが15回、グロリア5回、ウィルマ4回、残りはその他が22回、フタナリ特化のバッドルートのシーンが10回となっている。
カーラとエドナの二人は、完全なるヤラレ役となっており、ストーリーには一切関わってこないキャラクターとなっていたのは少々残念だったが、Hシーン回数はカーラ3回、エドナ4回と、ストーリーにもしっかりと関わってくる、ウィルマやグロリアと比べても、遜色は無かった。
基本的には全キャラに陵辱シーンはあるのだが、アイリーンのみ例外で、陵辱シーンが無い代わりに、知らぬ間に舞台から退場させられていたりと、ストーリー的に美味しい役割も無かった。
キャロルだけ物凄く多く感じるかもしれないが、15回の内、7回は角鹿とのHシーンで、陵辱シーンは全部で8回となっており、フタナリルートでは、登場回数が少なめなことも考慮すると、キャロルの陵辱シーンが物凄く多いわけではなかった。
システム面では、ピー音は当然無しで、モザイクもかなり頑張っており、それは公式のサンプルCGでも確認することが出来る。
カウントダウン機能もついており、絶頂までのクリック数を30~3回、もしくは全部(エロシーン開始時点から)まで設定可能なのが良かった。

キャロルの和姦やフタナリルートを除くと、内容はHシーンやエロシーンというよりも、グロシーンというのが正しい内容で、血を見ないシーンは非常に少なかった。
エグい内容の場合、人体解体ショー、体中に焼き鏝、クロスボウダーツの的、ローラーで潰す等、かなり酷い内容となっている。
他にも、中世の拷問、処刑道具も登場し、アイアン・メイデン(改良版)、ファラリスの雄牛等が登場する。
更に、魔女は首を落さないかぎり不死というのを忘れてはいけない要因で、不死性により、普通は死ぬような目に合わされても死ねないため、例えば上述のファラリスの雄牛の場合、重度の火傷を負い、皮膚が爛れ、溶けても魔女は死ぬことを許されず、最期は骸骨になってしまうとか(ここまでいくと、逆にシュールにも感じたが)、ローラーで潰す場合も、潰された後に再生させられ、もう一度潰されたりと、ただでさえエグい内容のプレイが、更にエグくなっていた。
euphoriaがヌルく見えてくる内容で、監査機構のアウトのラインを見極めるべく、独りチキンレースでもしてるのかと言いたくなるようなレベルの内容だったので、自分的にはグロシーンを見るのは平気でも、オカズとしては使えなかったというのが正直な感想だった。

妖蛆とかいう、触手メインのグロい生き物も登場し、これなら自分でもオカズに使えるんじゃないかと一瞬期待したのだが、当たり前のように、触手で腹部を貫通したりだったので、やっぱり自分の嗜好には合わなかった。
血が出ないシーンも少しはあるのだが、それらも、腹ボテ状態だったり、耳や鼻から触手を突っ込んでの脳姦、四肢切断された後に動物の脚部をくっつけられていたりと、人を選ぶ内容だった。
序盤に発生する、バッドエンドルートのシナリオはフタナリ特化で、唯一本作では血を見ないルートなのだが、そのフタナリにしても、金玉付きの物凄い巨根(セルフフェラが出来るくらい)だったり、場合によっては2本生えたりと、やはり人を選ぶ内容だった。
なお、フタナリルートに関しては、本筋に関わってこないので、興味が無いなら、スキップしてしまうことも可能となっている。

自分の嗜好には合わなかったエロシーンだが、単にちょっと特殊な嗜好のプレイヤーを満足させるためだけでなく、ストーリーを際立たせる上でも重要なファクターになっていると感じた。
人体解体ショーを大笑いしながら楽しむような鬼畜や、魔女の腹を掻っ捌きながらレイプするようなゴロツキどもを登場させることにより、邪法街という物語の舞台の苛酷さを強調したり、あるいは人間の持つ邪悪や残虐さを際立たせることにより、逆説的に人間の持つ強さや善性、角鹿とキャロルの絆をも強調しているように感じた。
・・・単に考え過ぎなだけかもしれないが、その場合はその場合で、物語にそれだけの考証をさせるだけの面白さがあった証拠だということにしておいて欲しい。


・パッチはプレイ前にしっかりと当てるべし

コンフィグに関しては、設定できる項目は圧倒的な量となっており、更には、簡易モードを設けることにより、細かいところまで設定するのが面倒な人に対する配慮も万全なものとなっていた。
搭載されている機能としては、次は音声ありアイコン、ボイス登録、バックジャンプ、シナリオ既読率表示があり、非常に快適にプレイ出来た。
音量調節にしても、BGMや効果音が通常シーンとHシーン別々に調整出来るだけでなく、ボイス音量も通常ボイス、Hシーンでの背景ボイス、背景フェラボイスの3つを別々に調節することが出来る。
これらの音量調節は、キャラクター個別でも調節することが可能で(男の場合、通常とHシーンでのボリュームのみ)、音量調節に関しては、不満に感じることはまず無いだろう。

パッチで修正されたのだが、自分の場合、二つのBGMが同時に鳴るというバグに遭遇した。
この感想を書いている段階で、公式からパッチのVer1.03が出ているのだが、パッチを当てるとセーブデータが全部ぶっ飛ぶ仕様となっている。
単にセーブデータが飛ぶだけでなく、コンフィグの設定や、登録されたCG、シーン、そして既読フラグ等の全てが白紙に戻ってしまい、設定項目の多い本作では、パッチを当てる前の設定に戻すのが結構面倒だったので、プレイ前にパッチを当てるのを強く推奨する。


・グロテスクなのが平気なら、嗜好が合わなくてもプレイする価値あり

エロシーンというよりも、グロシーンな本作のシーンは自分の好みでは無かったが、それを差し引いても、シナリオの出来は素晴らしかった。
一般的にエロゲーに期待されるジャンルとは大きく離れているかもしれないが、挫折を味わった漢たちが、最悪の掃き溜めで這いあがくという、ハードボイルドで純愛なストーリーに惹かれるなら、プレイする価値はあると思う。