ヒロインは悪くないんだけど、ファンタジーを作り慣れていないのか、説明不足な部分が多かった。
・ファンタジー世界でも、HOOKSOFTはHOOKSOFTのまま
これまでの現代学園ものから、本作は大きく変わってファンタジー世界と現代世界の融合した世界が舞台の学園モノとなっている。
ファンタジー世界になったといっても、HOOKSOFTの骨子となっている部分はそのままなので、HOOKSOFTのファンなら、違和感なく受け入れられると思う。
ギャグは今作では従来よりも多めで、バカゲーっぽさはパワーアップしているが、これは、背景設定緩めで、割と何でもありなファンタジー設定だから出来たことだろう。
特に、ヒロインじゃないのなら、スケルトンやリザードマン、果てはデュラハンまで出てきて、サブキャラも面白かった。
世界観こそファンタジーものだが、基本は従来どおりの学園モノで、全ヒロインと同じ寮で暮らしつつ、独特のシステムの学園で学生生活を送るというシナリオとなっている。
また、従来どおりにメインヒロイン6人だけでなく、サブヒロインのミーシャ(要特典パッチ)、パスカル+さっちん先生、ベアトリス(イライザとの3P)と、サブヒロインのルートも短いが用意されているのも嬉しかった。
メインヒロインにはHOOKお得意の幼馴染ヒロインが二人おり、長いこと音信不通で物語開始後に再会した紗彩と、異世界に半ば強制的に移住させられた主人公の姉的な存在だったジルコニアの二人となっているが、ジルコニアは幼馴染と言うのか、姉というのか曖昧で、個人的には幼馴染に分類したが、作中ではジルコニアに対しては幼馴染という単語は使われていなかった。
紗綾の方は幼馴染というのは間違いないのだが、小さいころに唐突に別れてから長い間音信不通だったということで、ヒロインとしては可愛かったものの、幼馴染属性は余り感じられなかった。
他ヒロインも、場合によってはやや過剰とも取れるくらいにキャラ付けがされている場合もあるが、その分キャラクターが被るということもなく、皆魅力的だった。
主人公は割りと熱血タイプに感じられたが、鬱陶しいと感じるほどではなく、ノリの良さ等も含め、ライトなノリの作風にマッチしており、ヒロインのためには能動的に動き(告白は基本的にヒロインからだが)、立ち止まったりすることも少ないので、好感の持てる主人公だった。
ただ、物足りない部分もあり、最たるものが主人公とヒロインの馴れ初めの説明不足である。
作中で明確になっている紗綾や、物語開始後に出会ったレアとイライザの3人は別として、残りの3人と主人公の馴れ初めが語られないまま終わってしまったのは残念だった。
ジルコニアに関しては、幼いころから主人公の姉代わりだったということはわかるのだが、それ以外の部分、どうやって出会ったのかは語られないし、クロエやフィンに関しては、主人公が現代に戻ってくるまでにどんな関係だったのかというのは不明瞭だった。
クロエとはどの程度の仲だったのかもわからないし、何故神託の巫女という重要な職業のフィンが作中でジルコニアよりも主人公に最初から懐いていたのかも謎だったので、物語開始時点である程度関係性の出来上がっていた3人との馴れ初め等の説明ももう少し欲しかった。
とはいえ、全体の評価としては、ボリューム的にも満足のいくものだったし、HOOKらしいキャラ萌え重視のストーリーで、概ね悪く無い出来だった。
・少々物足りない部分も
ボリューム、シナリオともに上述したように、悪くなかったのだが、過去のHOOKSOFTの作品と比較すると少々物足りないと感じる部分もあった。
最たるものがPITライクなシステムが無いことで、HOOKの全作通して登場しているシステムではないのだが、今作ではC3(シーキューブ)なる、魔法携帯電話のようなPITシステムを強く意識させるような小道具を登場させていたので、PITシステムが無いことの残念さがより際立って感じられた。
また、サブキャラクターの出番が少ないことも残念で、ラミア、スライム、ハーピー、スケルトン、デュラハンとか色々と立ち絵まで作って登場させた割には、登場回数が少なくて物足りなかった。
PITシステム内での会話も含めて、サブキャラの掛け合いもHOOKの魅力の一つだと思うので、ポテンシャルを色んな意味で秘めてそうなサブキャラがたくさん登場した割には、活躍する場が少ないのは残念だった。
あと、これは完全に個人的な好みの話なのだが、攻略可能なヒロインは人間かエルフや吸血鬼、天使、悪魔のような、人型のヒロインばかりだったので、攻略可能なサブキャラくらいでも構わないので、ラミアやケンタウロスみたいなヒロインを一人くらいは登場させて欲しかったと感じた。
HOOKに望むようなことじゃないというのは理解しているが、サブキャラなら今後の試金石も兼ねて一人くらい冒険したヒロインを登場させて欲しかった。
他にも、ファンタジー作品を作りなれていないのか、手がそこまで回らなかったのか、世界観の説明が不足している部分が多く、プレイしていた感じた疑問が解消されないまま終わってしまうことがしばしばだった。
例えば、何故吸血鬼であるクロエは血を吸うことを頑なに拒んでいたのかとか、レアのお付の四天王は何者だったのかというのが、顕著なものとして上げられる。
人間と共存する吸血鬼が吸血行為を拒むというのは、かなり頻繁に見かける設定ではあるが、大概の作品では理由が説明されている。然るに本作ではクロエが吸血行為を何故嫌がるのかという理由が説明されない上、クロエルートでは結構重要な要素として扱われていたことなので、しっかりと説明して欲しかった。
更に言うなら、もっとマクロな部分でも説明不足な点が多く、エルフとかサキュバスみたいな典型的な種族だけでなく、天使や悪魔なんかも登場するのにファンタジー世界側での各種族の関係性等も分かりづらかった。エルフのジルコニアと吸血鬼のクロエは昔からの知り合いみたいだが、エルフと吸血鬼はどういう関係なの?とか、基本的に色んな種族が深刻な諍いも起こさずに仲良く暮らしている世界観なので、出来ればもう少し背景設定に関しても説明して欲しかった。
とはいっても、基本的にギャグテイストな作品なので、ファンタジー作品で有名なエウシュリーやアリスソフトのゲームみたいに、背景設定の説明が不足しているからといって、作品の魅力を著しく損なうというほどのことではないので、細かいところまでの説明は必要無いとは思うので、大雑把なもので良いから背景設定説明が欲しかった。
・複数原画家はやっぱり違和感が大きい
本作はCG枚数は96枚(3枚は特典パッチが必要)と、攻略ヒロインが比較的多くても、各ヒロイン毎の枚数に不足を感じることの無い、満足の行くボリュームとなっている。
立ち絵も瞬きしたりと、少しだけ動きがあるのも、よりヒロインと向かい合っている気分にさせてくれ、素晴らしかった。
反面、本作ではヒロイン6人に対して、全部で5人もの原画家を起用しており、違和感が大きかった。
そのため、全体的なクオリティに関しては言及しづらいが、塗りは原画家に関わらず、しっかりしていたので、一枚絵のクオリティに関しては基本的に問題なかった。
また、ナイトスクールとかいうご都合主義的イベント(褒め言葉)を用意し、ファンタジーRPGで登場するような冒険者風の服装も各ヒロインにしっかり用意してあるのも嬉しいポイントだった。
気になった点といえば、HOOKSOFTの顔とも言える、松下まかこ氏の原画がちょっと変わった(?)ことで、立ち絵は文句なしに素晴らしいのだが、一枚絵の方は顔のパーツか中央に寄り気味(口のみが中央に寄っている?)で、違和感があった。
ジルコニアはそうでも無かったが、紗綾の方は特に顕著で、Hシーンではないイベント絵は概ね問題なかったのだが、逆にHシーンのCGでは違和感の大きいものが多かった。
・Hシーンは萌えゲーとしてはしっかりしている
Hシーンは全部で27回で、内訳はメインヒロイン6人が4回ずつ、さっちん先生&パスカルの3Pが1回、ベアトリス&イライザの3Pが1回、ミーシャが1回(要特典パッチ)となっている。
Hシーンは尺はしっかりとしており、メインヒロインは6人とも、冒険者の服を着た状態でのHシーンが1回用意されている。
公式HPのコンセプトでは、他種族独特のイチャイチャ、特殊なHを楽しむことが出来ると書いてあるが、特殊なHらしきものは見当たらなかった。
内容は概ね普通だが、年上ヒロインのジルコニアには母乳は出ないが、授乳手コキ、ちょっと気怠げな女王様っぽい吸血鬼のクロエには足コキ、イタズラ好きのレアにはフェラチオで起こされたりと、キャラクターの性格に合致したHシーンもあるのは良かった。
・選択肢ジャンプが無いのは痛い
コンフィグに関しては細かい部分まで変更可能で、快適にプレイすることが出来た。
中/外の事前選択も可能なのも良かったし、バックログからのクイックバックがあるのも個人的には嬉しかった。
不便だった点としては、選択肢ジャンプが無いことで、ヒロインの選択肢イベントをしっかりと見ようと思ったら、ヒロインの数だけ、つまりメインヒロイン6週+サブヒロインと全部で7週+αする必要があり、かなりの文章量をスキップする必要が出てくる。
文章スキップ機能もそこまで超速ではない上、結構頻繁に選択肢が出てくるため、スキップモードで放置という方法も使えず、結構な時間を浪費することになってしまう。
最後の選択肢に戻る機能は実装されていたのに、なぜか次の選択しにジャンプが用意されていないのは凄く不便だったので、次の選択肢にジャンプも用意しておいてほしかった。
メッセージウィンドウ上にセーブ、ロードのアイコンが無く(クイックセーブ、ロードはある)、オプション画面に飛んでからセーブ、ロードを選択する必要があるのは少し手間だったが、選択肢ジャンプの件に比べると大した問題ではなかった。
目当てのヒロインを攻略するのは基本的に、選択肢が出たときに目当てのヒロインを選ぶだけでよいので簡単だが、ベアトリスだけはややトリッキーで、イライザルートをクリアしないと開放されない+イライザルートの途中から分岐する展開のため、ベアトリスとイライザの両方の好感度を上げる必要がある。
・萌えゲーとしては押さえるべき部分は押さえてある品
説明不足だったり、せっかく立ち絵まで作ったサブキャラがイマイチ活躍していなかったりと、物足りない部分があったことは事実だが、全体としてみると良質の萌えゲーでボリュームもしっかりとしている。
ライトなノリのファンタジー学園モノで、笑える面白いシーンも充実しているので、気軽に、それでいてしっかりと楽しめる作品となっている。