共通ルートでのヒロインの好感度の変化がわかりづらいため、告白イベントが唐突に感じられたが、ギャグや個別ルートのいちゃラブは素晴らしかった。
いろんな意味で好感の持てる主人公、バラエティ豊かで魅力的なヒロインに、ギャグシーンは面白いものの、起伏が少なくヒロインといちゃラブするためだけに存在するようなシナリオと、いちゃラブ特化な作品となっているが、メールシステムや、豊富な服装差分など、細かい部分まで作りこんである作品だった。
・主人公が大学生である意義
本作の主人公は、バイトに精を出す大学生という、現実では良くありそうなのに、学園生or社会人と主人公が二極化しているエロゲーには珍しい肩書きとなっている。
ただ、物語のメインの舞台はあくまでもバイト先のベーカリー店であるピヴォワーヌなので、大学生ならではのイベントみたいなものは特に無かった。
それもそのはずで、メインヒロインの内で主人公と同じ大学生なのは、幼馴染である空一人のため、大学生としての描写もほとんどなく、主人公は半フリーターのような感じなってしまっていた。
個人的には、彩里沙か萌実辺りを大学生という設定にしてしまえば、もう少し大学でのイベントも増やすこともで可能だったではと思った。
また、舞台が店舗ということで、良くある文化祭や修学旅行のような、日常の中の非日常のようなイベントが無かったため、元から起伏の少ない展開がさらに単調気味になっていたように感じられたので、物語冒頭の歓迎会以外にも、もう少しヒロイン全員揃ってのイベントが欲しかった。
本作で、主人公が大学生という設定が生かされていた部分は、ヒロインとの半同棲があげられるだろう。
個別ルートに入った後は、最初から同じ屋根の下に暮らしているあゆみや、それに近い状態の空以外でも、主人公がアパートを借りてヒロインがしょっちゅう泊まっていくようになったり、逆にヒロインが住むアパートに居着いたりと、何らかの形で主人公とヒロインは半同棲状態になる。
これは主人公が学園生ではないからこそ可能な展開であり、まさに主人公が大学生という設定をフルに生かした展開だったと思う。
おかげで、ヒロインの色々な表情を垣間見ることが出来たし、ヒロインによっては二人の生活感みたいなものが出ていたので、半同棲は非常に良かったと思う。
・勢いのあるギャグシーン
いちゃラブ重視の本作だが、SMEEの前作同様に、ギャグシーンにも力が入っており、下ネタが多めだが、それ以外も豊富に用意されている。
やはり、登場キャラクター数の多い共通ルートの方がギャグ的には面白く、萌えやいちゃラブよりもギャグの方が好き、という場合は個別ルートよりも共通の方が印象に残るかもしれないが、個別ルートでもギャグ成分はそれなりに残っている。
尻型オナホのネタは序盤から終盤まで、全編通して鉄板ネタだった。
また、細かい部分だが、ギャグシーンにおける効果音も効果的に使用されており、これがギャグシーンを盛り上げる一因だったと思う。地味だが制作サイドからすると、結構面倒な部分だと思うので、そういう部分がしっかりしているのは非常に好感が持てる。
・メールシステムの功罪
本作では、前作のフレラバの会話システムと似たメールシステムを導入しており、ヒロインの好感度を上げるために、一日の終わりに選択したヒロインとのメールのやり取りをし、その時のプレイヤーからヒロインへ送るメールの内容次第で、好感度の上がり幅が変わる仕様になっている。
その他にも、共通ルートで任意のタイミングでヒロインにメールを送ることが可能で(内容はプレイヤー側が指定できるわけではない)、ヒロインと何気ないコミュニケーションを交わす事が可能となっている。
ヒロインからの返信の内容はそっけないというか、簡素なものが多く、もう少し内容を増やす必要があるとは感じたものの、任意のタイミングでメールを送れるシステムは、本作のコンセプトである”擬似恋愛感”が上手いこと表現出来ていたと思う。
ただ、個別ルートに入った後は、メールシステムそのものが無くなってしまうのが残念だったので、個別ルートに入った後も、少なくとも恋人にはメールを送れる仕様にして欲しかった。
メールシステム自体は良かった反面、ヒロインの好感度上昇をメールシステム頼りにしているため、ヒロインの好感度の上昇をプレイヤー側が実感し辛く、告白イベントがかなり唐突に感じてしまった。
メールシステムを除くと、主人公がヒロインの好感度を稼いでいると感じられるようなイベントに乏しいのも問題で、告白イベントの唐突感に拍車をかける結果になっていたと思う。
この傾向は特に空が顕著で、兄妹のように育った幼馴染としての関係がゲーム開始時点で出来上がっているため、それを変えるきっかけとなるようなシーンもないままに、告白→恋人ということになるため、違和感が大きかった。
前作の会話システムは、似たようなシステムだったとはいえ、面と向かってヒロインと会話するわけだし、好感度の変化によって会話シーン導入部の会話が変化したため、好感度の上昇を実感できるようになっていた。
この辺りは、メールシステムが原因とは言えないが、ヒロインの好感度がある程度上がった時点で、何らかの好感度上昇が実感出来るようなイベントが欲しかった。
その代わりといっては何だが、告白シーンは各ヒロインに3つ?ずつ用意されており、全部あわせるとかなりのバリエーションになっている。
ただし、好感度によって派生するため、全シーンを見るには、シーン毎に最初からプレイする必要があるため、かなりの時間がかかると思う。プレイ中に見ていないCGもヒロイン毎にルートクリアすると、すべて回収されるため、全て見ようと躍起にならずに肩の力を抜いてプレイするのが吉だと思った。
・素晴らしきいちゃラブと、バラエティ豊かなヒロイン
告白が唐突に感じられた反面、恋人になってからのいちゃラブは素晴らしく、先に述べた半同棲と相俟ってヒロインをとても魅力的に描けていた。
デートをしたり、一緒にバイトしたりするだけでなく、料理を作ったり、作ってもらったりと言った、特別な出来事は無いけれども、ヒロインと過ごす日常がしっかり描かれているため、コンセプトである擬似恋愛感が良く出ていた。
本作のヒロインは、学園が舞台ではなく、バイト先の店舗が舞台なため、ヒロインの年齢や肩書きがバラエティ豊かとなっており、その辺りも恋人となった後のヒロインと主人公の関係性にも影響してくる。
一番顕著なのは、主人公より一回りほど年上の志帆で、また、金銭的にもかなり余裕があるため、主人公に高級な服をポンと買ってくれたりと、年上のお金持ちと付き合う上での妙なリアルさが出ていたと思う。
勿論、金に物を言わせるというタイプでは無いし、ギャグテイストを交えつつなので、厭味なヒロインというわけでは全く以って無い。
他にも、萌実は年の離れた妹と、弟がいるフリーターという、エロゲーとしては変わった肩書きを持っていたりと、ヒロインとの関係が学園の後輩、同級生、先輩という単純な関係では無いのも面白かった。
予断だが、本編ではエピローグのようなものが全ヒロイン通して用意されておらず、少々物足りなかった。
家族関係のちょっとした良い話とかで、やや強引に物語を締めくくりエンドロールという展開になっているのだが、エンドロール後にエピローグがありそうな終わり方をしつつエピローグが用意されていないという、拍子抜けの終わり方だったため、読後感が爽やか!という感想にはならず、あれ、これで終わり?と感じてしまったので、エピローグも設けておいて欲しかった。
・細かい部分にまで気配りが行き届いている立ち絵
本作のCG枚数は全部で80枚とフルプライスとしては順当なボリュームを備えており、質も安定しており、配分としてはキャラ毎に完全なイーブンで、各16枚となっている。
CGで特筆すべき部分は立ち絵で、バイト先の制服、振袖、複数の私服等、服装バリエーションは各ヒロイン豊富に用意されており、髪型も服装や状況に応じて変わるのも非常に良かった。
イメチェンとまでは行かないが、髪型が変わると雰囲気も結構変わるため、服装だけでなく髪型にもバリエーションがあるのは非常に嬉しかった。
更に、付き合い始めると、ヒロインの瞳のハイライト?も変化して、キラキラしたエフェクトが加わるのも、恋人関係になった主人公を目を輝かせて見つめているように感じられるのが良かった。
また、立ち絵は瞬きするようになっている。基本的に瞬きだけなため、e-moteと比べると地味な動きだが、e-moteの動きを不自然に感じて好きではない自分でも、瞬き程度の動きなら違和感無く受け入れることが出来、瞬きだけの動きでも、立ち絵への注目度がグッと増えるために、細かい部分まで変化する立ち絵に気づく機会が増え、バリエーションの豊富さとの相乗効果もあった。
他にも、テキストウィンドウを消した状態で、ヒロインをクリックすると、ヒロインがクリックした部位に応じて喋るようになっているのも面白かった。
好感度に応じて台詞が変わるので、ある種の好感度チェッカーとしても使えるのだが、恋人になった状態でつついた時の台詞は中々の破壊力だった。
個人的に嬉しかったのは、一人称視点の添い寝CGが用意されていることだった。更に、ヒロインよっては単純に横に寝ている状態ではなく、主人公の上に乗っかっていたり、膝枕をしてもらっていたり(それも一人称視点で)と、添い寝CGとは呼べないかもしれないが、何にせよHシーン後のCGが用意されているのは嬉しかった。
ただ、どういうわけか、シナリオ中で空の添い寝CGを目にする機会が無く、空だけ添い寝CG無いじゃん!と思っていたらCG回想にはしっかり載っていた(プレイ中に見ようが見まいがクリアすればCGは全部埋まる仕様)。
念のため、違う告白シーンを経ての空ルートを見てみたが、シナリオ中では空の添い寝シーンだけは登場せず。
・可もなく不可もなくのHシーン
Hシーンは全部で23回で、彩里沙と萌実のみ4回、他は5回となっている。
ただし、CG枚数が全キャラ同じことを考えると、ほぼ同じ程度のボリュームだと考えて問題ないと思う。
Hシーン自体の出来としては、萌えゲーとして標準レベル程度で、特筆すべき点は無く、プレイ内容も普通のものが多かったが、あえて挙げるとすれば、あゆみのアナルセックスと彩里沙のソフトSMくらいだろうか。
・カオスなテストボイス
システム関連は必要なものは一通り揃って揃っており、快適にプレイすることが出来た。
キャラ毎の音声ボリュームの差が大きめだったが、個別に調整できるため大きな問題ではなかった。
また、Hシーン中で中/外の選択肢がほぼ毎回発生するが、コンフィグで事前に選んで置けるので、自分の好きなように設定してしまおう。
余談だが、キャラ毎の音量を調節するときのテストボイスの音声がカオスな内容となっており、開始する前に色々設定をする段階から、速攻で笑いを取りに来る姿勢は素晴らしいと思う。
・まとめ
共通ルートのギャグは面白く、個別ルートはしっかりといちゃラブが描写できていた。ただ、ヒロインの好感度の変化を実感し辛く、告白が突然に感じられたのは残念だった。
メールシステムや、立ち絵クリックで喋る、立ち絵の細かい変化等、細部までしっかりと作られていた。