シナリオは文句なし。バトルパートもある程度良くなっていた。
正直なところを言うと、バルドスカイゼロは個人的には期待通りの作品とは言い辛かった。
評価自体はそれなりに高い点数をつけたものの、それはエロゲー全体からしてみると悪くないで出来だったのであって、バルドシリーズ、あるいはバルドスカイの名前を出した割には期待はずれな部分が多かった。
とはいえ、スカイシリーズ共通とはいえ、独自色も持つ世界観は良かったし、ストーリーの謎にも引き込まれるものはあり、ゼロのプレイ自体はそれなりに楽しめたのも事実である。
転じて今作のゼロツーはどうだったかというと、ストーリーは素晴らしく、前作での不名誉から挽回するには十分な出来だった。
バトルパートに関しても、前作と比べるとある程度の改良が加えられており、それなりに遊び応えのあるものになっていた。
まず、前作で謎だらけ、伏線だらけのままで終わってしまった諸々だが、今作で全て回収される。
前作プレイ終了時には風呂敷を広げすぎて、次回作を作るにしてもきちんと終わらせることができるのが少々不安だったのだが、マレルルート終盤で全部が一本に繋がる展開は非常に良かった。
前作では非常にクセが強く、時には物語について行くのが面倒になってしまいそうだったキャラクター同士のやり取りだが、今作では大分マシになっている。
この辺りは前作ヒロインの咲良やフランが分かりづらい台詞回しを使っていたのが原因の一旦でもあったので、今作ヒロインのマレルとシゼルはそこまで持って回った言い回しを使用しないのも理由としては大きいと思った。
後は単純に、前作のプレイを通して慣れた、お約束的なものを理解できた、というのもあると思う。
それでも、多数の人物や組織が登場し(前作から更に増えた)、独自用語の数が物凄く多い本作は集中して読んでいないと置いてけぼりを食らったりすることは結構あったので、用語集や勢力図が欲しかった。
攻略ヒロインは前作の3人から減ってシゼルとマレルの二人になっている。
共通ルートは前作とは同じ上にヒロインも二人と聞くと、ボリューム不足を心配するかもしれないが、そんなことはなく、二人分のルートだけで前作と同程度のボリュームがある。
リーナや、新キャラのカンヤラットのルートが欲しかったと思わないでもないが、それはボリューム不足等から来るものではなく、純粋に好みのキャラだったからというだけなので、ネガティブな感想に繋がるわけではない。
シゼルルートは割りと前作のルートと似たようなノリで、ヒロインが過去のトラウマが原因で突っ走る→ピンチになる→主人公に助けられて戦友以上の感情を抱くように!という流れは大体おなじである。
とはいえ、バルドスカイ DiveXで発覚した、実はガチガチな軍人ではなく以外と抜けていたり、乙女な趣味をしているという、シゼルの女の子らしい部分を上手く描きつつも、頼れる相棒としてもしっかり描写されており、魅力的なヒロインとなっていた。
マレルルートはグランドルートでもあり、特大ボリュームでこれまでの謎や黒幕の正体が一気に明かされる。
これまでに登場したキャラクターや組織、団体は勿論、新たに登場したキャラクターが複雑に絡み合ったストーリー展開は素晴らしかった。
主人公やマレルの正体も中々に意表を衝くものであり、本作を新規のバルドシリーズとしてではなく、スカイの名前を使ったのかも納得出来る内容となっている。
前作では大虐殺の片棒を担がされたり、バッドエンドの原因の一端を担ったりして、魅せ場無しどころでは済まないレベルでヒドイ扱いだったスカイの主人公の甲だが、今回は(シゼルルートも含めて)しっかり活躍する。
エドと甲の河原で殴りあった後的な男同士の友情も良かった。
シナリオ自体は良かったマレルルートだが、肝心のマレルのヒロインとしての魅力はどうかというと、実は余り印象に残らなかった。
他の部分が物語のウェイトを取ったというのが大きな原因だと思うが、個人的にはエドと甲の緩衝材役の印象が強かった。
全体的な満足度が高かったシナリオだが、不満点が無いわけではない。
本作はAIや電脳症などの、スカイシリーズ共通の世界観により一歩踏み込んだ所まで物語上で言及されるのだが、その一方で、暗黙の了解というか、決まり事をご都合主義で捻じ曲げてしまう展開も存在する。
個を持たない異種知生体であるはずのAIなのに、個を持つAIが出てきたり、主人公サイドも敵側も割りと良い様に(主人公サイドはAIが自主的とはいえ)AIを使ったり、挙句の果てにはネット上で戦死した仲間が蘇ったりと、ガラパゴステクノロジーの名の下に結構やりたい放題である。
AIのキャラクターとしての魅力とかは置いておくとして、この辺りはスカイシリーズの世界観を都合の良いように捻じ曲げているように感じられた。
バルドスカイDiveⅡでもネット上で死亡したキャラクターが生き返る展開はあったが、あれは特殊な状況下で相応の代償を払っていたわけだし、蘇ったキャラクターはエピローグでちょっと登場するだけなのでそこまで気にならなかった。
対して本作では代償も無くワイヤードゴースト化や死者蘇生を行ったりと、ガラテクを次から次へと開発していくクラリーチェは正に国民的に有名な猫型ロボットを髣髴とさせる。というかマルタが猫の格好をしているのは狙ってやっているとしか思えない。
ゲームパートに関しては大筋に関しては、前作と大体同じだった。
印象に残る変化といえば、必殺技が任意のタイミングで出せるようになったのと、勝手に発動する必殺技の代わりに3つの攻撃ボタン毎に装備できるチャージブレイクシステムが追加されたことくらいだった。
チャージブレイクシステムはゲージが貯まると勝手に発動するが、無駄な演出等が入らないので、邪魔にならないし、移動速度が上がったりHPが回復したりという補助的なものもあるので、中々に使い勝手が良かった。
多少は追加されたとはいえ、武器の数が少ないのは相変わらずで、前作からデータを引き継いだ場合は、シゼルルートが終わった辺りで武器の育成も終わってしまうだろう。
近接攻撃は一切使わなかったので、ゲーム難易度の細かい部分までについては言及できないけれども、射撃武器のみでゲームを進めた場合、武器を6つ装備できたとしても、リロード時間の長さが結構ストレスだったので、もっとリロード速度を早くして欲しかった。
それと一部ボスの攻撃力が異常な高さで、ノーマル難易度でもHP最大状態から3回程攻撃を食らうとゲームオーバーというのはしんどかった。難易度を下げれば良いだけの話なのだが、下げると今度は簡単すぎて盛り上がらなくなってしまったので、もう少し細かく難易度調整できるようにしてほしかった。
それと前作からの症状で、自分だけの症状なのかは分からないのだが、ダッシュボタンを押してから発動までにワンテンポあるのが非常にストレスだった。ボスの難易度がストレスに感じたのはこれも一因だと思う。
他にもチャレンジモードが50ステージ程用意されており、真面目にプレイすればかなりのやり応えだとは思うのだが、正直言って面倒でほとんどプレイしなかった。
CG枚数は前作でも使用されていた分も併せて98枚。
回想数は11回となっていて、内約はシゼル、マレルが3回。極秘妄想ファイル(オマケ)で前作ヒロイン3人とリーナ、クラリーチェ(相手はドミトリー)が1回ずつとなっている。
極秘ファイルでカンヤラットとレインが無いのは非常に残念だった。
シゼルは人格まで変装した状態の主人公に陵辱されるシーンあり。
相手は一応主人公とはいえ、主人公側もシゼル側もお互いを認識してない、というかシゼルは幼児退行した状態での陵辱なので、陵辱感はばっちり。むしろオカズにならないレベルかも。
他は普通のHシーンばかりだが、尺はちゃんとしている。
グラフィックは前作と同程度のクオリティなので、前作が好みだったなら問題は無いと思う。
パッケージのマレルがマレルらしからぬ表情をしているのは路線変更ではなく、意図的であり、伏線なので気にする必要は無い。
システムは設定できる項目部分に関しては不満は特に無し。
細かいところだけれども、ジョイパッドのボタン設定がやり易くてよかった。
・総評
バルドスカイゼロでの汚名(大袈裟かも)を返上できたかといえば、イエスと言える作品。シナリオはご都合主義な部分が多少は見受けられるものの、全体的な出来としては非常に良かった。
ゲームパートはいくらかの調整が行われているものの、根本の部分に大きな変更は無い。とはいえ、やり応えは大幅に上昇していた。