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PredawnvagabondさんのランスIX -ヘルマン革命-の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
ランスIX -ヘルマン革命-
ブランド
ALICESOFT
得点
89
参照数
1357

一言コメント

シナリオは非常に良かった。ゲームパートも一周するだけなら面白い。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前作はキャラクター数が異常なまでに多く、ストーリーも本筋のAL教関連意外にも、幅広く用意されており、早めにやって来たファンディスクみたいな内容だったのに比べると、今作は脇道にそれたりすること無く、ほぼ一本道で、キャラクターも(ランスシリーズにしては)少な目となっている。
その分、メインストーリーは濃厚で、ヒロインもランスモードの6人に特にフォーカスされているため、これまでの作品以上にランスとヒロインの関係が深く描かれている。

シナリオはヘルマン革命一本で、全部で15章+終章となっていて、終章はランスモードのヒロインそれぞれの分が用意されている。
そのため、ボリュームとしては、色々あったランスクエストや、ルート分岐があった戦国ランスと比べると、少な目となっているが、それでもフルプライスの他のエロゲーと比べるとプレイ時間的には多めだった。
以前から、ランスの性格に反して、男キャラが多めで、活躍の機会も多かったシリーズだが、本作はそれが顕著である。
登場キャラにしろ、ユニットとして扱えるキャラにしろ男が多めで、パットンに至っては準主役級の扱いになっており、魅せ場も多い。
かといってランスやヒロインが蔑ろにされているわけではなく、ランスのお陰で窮地を切り抜けたり、逆にピンチになったりしつつ、革命を成し遂げてしまうという、ランスの破天荒な魅力は本作でも十二分に描かれている。
また、ヒロインも、ランスシリーズにしては登場数が少なめなため、ランスモードのヒロイン6人はもちろん、それ以外の登場ヒロインもそれなりに活躍するのも良かった。
総じて、ランスの魅力、ヒロインの魅力、漢たちの友情が上手く交じり合っており、一本道なのもあって、まとまりもあり、非常に優秀なシナリオだったと言える。
反面、意外性のようなものは無く、とんとん拍子に革命が進んで行くのが少し残念だった。
もっと魔人の暗躍とか、アリスの妨害とかがあったほうが、シナリオ的には盛り上がったと思う。
ラスボスもステッセルが散々に存在を匂わせた割りにはあっさりだったので、ステッセル共々もうちょっと見せ場があっても良かった気がする。


ゲームパートはアリスソフトの過去作のママトト(?)と同一のものらしいが、プレイしたことないため、どこまで同じなのかは分からない。
おおよその内容としては、マップはマス目に区切られており、ユニットをマス目に沿って動かし、敵を倒すというものになっている。
登場するユニット数は全部で20人(内3人はほとんど最後のほうで参加するため、2週目以降のお楽しみみたいなユニット)と、ランスシリーズにしては少なめだが、このくらいの人数が各ユニットに特徴を持たせる限界人数だと感じた。
戦闘はシナリオ上避けて通れないものと、自由戦闘の二種類に分かれていて、どちらの場合も勝利条件や敗北条件が多岐に渡るので、戦闘毎に出撃キャラや戦術を吟味するのも面白かった。
特に自由戦闘は、特定条件達成でランスモードでHシーンを見るために必要な猿玉を取得出来るのだが、取得を目指すとなると、結構シビアなバランスになっているものが多く、色々と戦術を練る必要があるステージもあり、パズル的な楽しさもあった。
なお自由戦闘で入手出来る猿玉は、1週目で入手してしまうと2週目では再入手出来なくなってしまうので、ヒロインの攻略を2週目にするなら気をつけないと、自分のように全部で3週する羽目になってしまうかもしれない。

シナリオ上の戦闘のバランスは比較的低めで、○ターン以内に敵を全滅させよみたいなのは何度か失敗することもあったものの、ある程度自由戦闘をこなして、ステータスを上げたり、アイテムを取得していると、ほとんどゲームオーバーになる事も無くサクサク進めることが出来ると思う。
また、育成要素は、戦闘で取得する熟練ポイント(経験値のようなもの)を割り振ってステータスを上昇させるか、アイテムを装備させるかの2択となっているのだが、アイテムによる強化の方がウェイトが大きいので、アイテムドロップ運でも難易度は変わるかもしれない。
ランス6,7,8は用意されていたやり込み要素だが、今作では少なめとなっていて、余程ゲーム部分を気に入って2倍モードとかに挑まない限りは、ヒロインのHシーンやシナリオを回収するためだけに周回をすることになると思うので、少なくとも2週前提の作りになっている本作の場合、もう少し周回の楽しみ(キャラを育てる楽しみ)を増やして欲しかった。


今作のHシーンは、今まではヒロインの数が多いために、各キャラ1,2回で、魔想さん好きや、ランスⅥではヒロインのはずのウルザでも2回くらいだったりしたことに血の涙を流した人には嬉しい仕様で、ヒロインである、ルシアン(シーラ)、かなみ、志津香、チルディ、ピグ、ミラクル、戦姫の7人に焦点が当てられており、それぞれ、大体5~6回のHシーンが用意されている。
もちろん、Hシーン以外のシナリオ部分でも登場回数が多いので、キャラクター的、人間的な魅力も今までの作品以上に掘り下げられている。
ヒロイン以外のキャラクターももちろんHシーンが用意されており、公式ページに載っている大体の女性キャラクターのHシーンは、各1回ずつ用意されている。
Hシーンがありそうで無いのは、ハンティと、あとパメラくらいだと思う。ミネバも無いので安心して良い。パメラはシナリオ上には陵辱イベントがあったのに、Hシーンとして存在しないのはちょっと残念だった。

Hシーンの内容はヒロイン毎に傾向が違い、戦姫がSM、チルディが調教、ピグはネタ、ミラクルはちょっと変わったシーンが多めとなっていて、残りの3人は割りと普通のHだった。
それと、ルシアンのみは、ルシアンバージョンの他に、シーラバージョンも用意されており、CG上は髪の毛や肌の色、表情の差分程度の違いでしかないが、テキストは全く別物が用意されており、ルシアンは悲哀の奴隷といった印象が強いが、シーラだとラブラブな感じになっており、CGはただの差分でも実質は別のもののHシーンと言えるものなので、ルシアンとシーラを別々に数えるなら全部で約10回のHシーンが用意されていることになる。
ピグのネタというのは、女体盛り、逆レ、更には10人以上に分裂(分裂すると小さくなる)して、ランスを縛り上げてのガリバープレイ(?)等、笑えるHシーンが多く、オカズとして使えるHシーンは少なかったが、個人的には面白くて好きだった。
ちなみに、ピグルートも革命そっちのけなネタルートとなっていて、こちらも面白くて好きだった。

また、7人のヒロインにはそれぞれ、バッドエンドの陵辱シーンもあり、アリスソフトらしい、かなりエグイ内容だった。
陵辱イベントの条件を満たしても見る、見ないは任意なので、ランスが実行する軽い陵辱はともかく、ヘビーな陵辱が苦手なら回避ということも出来るようになっている。
なお、シーラのバッドエンドの陵辱シーンの、シャブ漬けにされるバッドは鬼畜王ランスの時のシーラの末路である。鬼畜王では、回避不能だったシーラのシャブ漬けがどういう扱いをされるのか(正史扱いされるのか否かで)実は少々不安だったのだが、こういう形で回収されるとは思ってなかった。
ランス9では、シリーズ通してツンデレヒロインだった、かなみがついデレ、同ツンデレヒロインだった、志津香もデレ(?)て、シリーズの顔のヒロインの二人との関係に一応の決着がついた所を見ていると、ランスシリーズもついに次回で最後なんだなと実感が沸いて少し寂しくも感じた。

CG枚数は回想モードで割り振られているシリアルナンバーで見ると125枚となっているが、差分でも別の番号が割り振られているものもあるので、実質はもう少し少なめだが、それでも満足行くだけの十分な量が用意されていた。
グラフィックの質も満足の行くもので、前作以上に素晴らしいものとなっている。
ただ、戦姫のHシーンのCGは、立ち絵と比べると、別に崩れているとかじゃないのだが、別人に見えるようなCGが多く、違和感があった。


ランスシリーズというと、数々の名BGMを生み出したことでも有名であるが、今作は印象に残るBGMは少なかった。
基本的には、戦闘、会話パートのBGM共に悪くは無いのだが、ここ一番のBGMが存在しないのである。
ラスボスを除き、他のボス戦や、重要な戦闘でも、通常戦闘と同じBGMが用いられており、盛り上がりに欠けるのが非常に残念だった。
肝心のラスボスのBGMも素晴らしいものだったのだが、実はママトトで使用されていたshade氏が作曲したもののアレンジバージョンだったので、もう少しここ一番でのBGMは頑張って欲しかった。
ランス10は一応シリーズ最後となるわけだし、是非ともshade氏も作曲に参加してほしいと思った。

システム面では設定できる項目は十分にあり、快適にプレイすることが出来た。
システム面で特筆すべきは、デュアルモニター環境下で、サブモニターで他のことをしていても、メインモニターでプレイ中のランス9が最小化されないように設定できることだった。
デュアルモニターを使用しないと実感できない地味な設定項目だが、これは普通のコンシューマーゲームでも、そうそう見ることが出来ない機能で、デュアルモニターでゲームをプレイするたびにいつも煩わしく思っていたので、非常にありがたいものだった。


・総評
ストーリーは非常に良く出来ており、破天荒なランスの魅力、漢同士の友情や今までのシリーズには少なかったヒロインの掘り下げが高いレベルでまとまっている。
ゲームパートはやり込み等はやや物足りないものの、一周する分にはしっかりと楽しめる。