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Predawnvagabondさんのサキガケ⇒ジェネレーション!の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
サキガケ⇒ジェネレーション!
ブランド
Clochette
得点
80
参照数
262

一言コメント

女の子同士の友情が素晴らしかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・シナリオ

Clochetteの作品と言えばファンタジー要素を盛り込んだ学園モノがお約束だが、本作でも魔法技術で作られた五感でプレイできるVRゲームを主軸に据えた作品となっている。
また、物語の舞台となるを田舎が魅力的に描かれているのもClochetteのウリの一つで、本作の舞台となる田舎も魅力的に描かれていたため、ゲーム好きな上に田舎に憧れる自分としては本作の主人公の環境は非常に羨ましかった。
それだけでなく、主人公たちの所属するエンターテイメント研究会は実際にはゲーム同好会と言える活動内容で、登場人物たちはゲームを通して仲を深めていくため、自分としてはスポーツなどの部活を通して絆を深めていく展開よりも、本作の方が仲良くなる過程に簡単に感情移入することができた。
主人公たちがプレイする「Wizard Generation(ウィジェネ)」はアクション性の高いMORPGといった感じで、細かい仕様についてまでは作中では解説されないが、職業同士の組み合わせによる戦略やスキルツリーなどの細かい部分まで作り込まれているような雰囲気はうまく出せていた。
また、ゲームのアバターとして五感を使ってプレイしているが、あくまでもRPGなのでレベルやステータスといった要素が支配的で、プレイヤーは現実世界での能力や才能にモノを言わせて無双することはできず、活躍するためにはレベル上げや連携が必須という点でもMORPGらしさが出ていた。
とはいえゲームのうまい下手や過去にプレイしたゲームの経験は活きるため、ゲーマーの部員がゲーム初心者たちに色々とアドバイスしたり、それぞれが育成方針を相談しながら決めていくシーンなども楽しそうだった。
ちなみに、精神ごとゲーム内に入ってしまうオンラインゲームと聞くと、ログアウトできなくなったりゲーム内のケガや死がリアルの肉体にも及んだりという殺伐とした展開を覚悟してしまうが、本作はそういった殺伐としたことは起こらず、あくまでもゲームの範疇に留まるため安心して見ていることができた。
各ヒロインのシナリオ終盤に存在する騒動も原因は色々あるものの、しっかりとウィジェネに絡めてくるのも素晴らしい点で、理由付けが強引なことも多いがウィジェネでクエストをクリアすれば解決という形に持っていくのもよかった。

登場人物同士の相関図の見事さや仲の良さもClochette作品の魅力の一つだが、本作でも素晴らしいヒロイン同士のやり取りを鑑賞することができる。
杏音と桜花、友梨亜と璃々子の同学年コンビが基本的な組み合わせなのだが、常識人同士の桜花と友梨亜、ゲーマー同士の杏音と璃々子が意気投合したりするシーンもあったりと、ヒロイン全員がそれぞれに仲良く、そして信頼しあっていることが実感できるシナリオ構成となっている。
部活中は基本的に全ヒロインが揃っているというのも素晴らしい点で、みんなで和気藹々とゲームを楽しんでいるシーンは見ているこちら側も楽しい気分になるものだった。
個別ルートに入った後もデートイベントを除けばみんな揃ってゲームをするため、全員が揃ったイベントと二人きりでのイチャイチャイベントの配分も素晴らしいもので、仲間たちに祝福される嬉しさや冷やかされる恥ずかしさもしっかりと堪能できる構成となっている。
ヒロイン同士の中でも特に気に入ったのは勉強嫌いでゲーム大好きな杏音と成績優秀で真面目な桜花の凸凹コンビで、正反対の性格でありながらも互いの気の許した雰囲気はどこか姉妹のようでもあり、見ていて非常に微笑ましかった。
璃々子と友梨亜も凸凹コンビという意味では凄くよかったのだが、桜花と杏音のコンビと比べると二人の視点のシーンが少ないのは残念だった。
ヒロイン中で唯一の三年生であるなつめはサブキャラの桐葉と仲が良く、こちらも正反対の性格なのにいいコンビだったが、あくまでも桐葉はサブキャラなので出番は少なかった。

個別ルートではそれぞれのヒロインの魅力を十分に描写できており、ヒロインと付き合うまでの過程もしっかり描写されているため、恋人未満ももどかしい雰囲気も楽しむことができたし、その後の付き合いだしてからのイチャイチャも素晴らしかった。
Clochetteお馴染みの実妹ヒロインである璃々子のシナリオは、Clochetteにしては珍しく妹であることを実感させる内容となっており、倫理的な壁を乗り越える過程が描かれていて、妹と関係を持つことを避けようとする主人公相手に頑張る璃々子の姿は普段は消極的な性格だけに想いの強さを感じることができた。
主人公が妹と付き合うことに対する部員たちの反応も戸惑いながらも後押しをしてくれるもので、妹と関係を持つということを実感させてくれるものだったが、あくまでもClochetteの作品なので背徳感を感じるほどではなかった。
友梨亜は素直になれないタイプかと思いきや、告白は友梨亜の方からしてくるし、好意もストレートに伝えてくれるのが魅力だった。
なつめはエロゲ的には珍しいタイプの幼馴染で、子供の頃からお隣同士なのだが勝手に家に上がり込んで家事をしてくれる家族みたいな距離感ではなく、仲はいいけど一定の距離感のある現実寄りの設定の幼馴染となっている。
そのため、幼馴染のお姉さんキャラとしては弱いのだが、頼られる、求められると応えたくなるという性格が彼女の特徴で、なつめのルートでは逆に周りが助けてくれるというギブアンドテイクの展開がよかった。
しかしながら、なつめの求められたら応えたいという性分はなつめルートでは悪い意味で面倒くさい方向にも作用してしまい、また、なつめの両親がゲームなどの娯楽をくだらないものと考え、娘の話に耳を貸さない独善的な性格なため、当然ながらなつめと両親はシナリオ中で激突することもあるのだが、娘の話に耳を貸そうともしない両親というのは読んでいてい気分のいいものではなかった。
センターヒロインの杏音は主人公と似た者同士なこともあり、非常にいいコンビだったし、ある意味理想の恋人関係と言えるものだったが、良くも悪くも無難な組み合わせすぎてあまり印象に残らなかった。
桜花は本作で自分の一番好きだったヒロインで、桜花の存在だけで本作をプレイしてよかったと言えるレベルに素晴らしいヒロインだった。
物語開始時点で唯一主人公に惚れているヒロインなのだが、色んな意味で素直になれず好意を伝えることができないのだが、その理由も乙女チックなものや生い立ちが合わさった複合的なものとなっている。
恥ずかしがり屋で周囲に冷やかされたりするのが苦手な反面、二人の世界に入り込んだ時の周囲を顧みないバカップルっぷりや、下の名前で呼ばれただけで幸せになるというピュアさも物凄く可愛かった。
委員長気質のキャラで付き合いだしてからも生真面目ではあるのだが、強く押されると流されてエッチしてしまうチョロさも素晴らしかった。
桜花の唯一の問題点は最初から主人公に惚れているため、主人公が他ヒロインと結ばれる=桜花失恋という構図になってしまい、更には主人公の知らない場所で桜花が失恋を悟り落ち込むシーンがあるのは非常につらい点だった。
桜花の想いの強さを知ってしまうと桜花を振るのはさらにつらくなってしまうので、個人的には桜花ルートを最後にプレイする方がいいと感じた。


・グラフィック

本作のCG枚数は85枚となっており、フルプライスとしては標準的なボリュームとなっている。
グラフィックはClochetteの最新作と比較しても遜色のないハイクオリティなもので、最新作よりも目が若干大きいのだけは少し前の作品であることを感じさせた。
魔法や異能が絡んでくるClochetteの作品には戦闘シーンが存在するのだが、大抵の場合は敵役が立ち絵すら存在しないため、戦闘シーンが音声とエフェクトだけの味気ないものなのに対し、本作では敵役であるモンスターのグラフィックがきちんと描写されているため、戦闘シーンは他作品よりも迫力があった。
喋りながらも立ち絵の差分を切り替える演出の先駆け的存在と言えるブランドだけあって、手のかかった高頻度の切り替え演出によってキャラクターは感情表現豊かになり、単純な会話シーンも目で楽しむことができた。
立ち絵だけでなく、一枚絵(特にエロシーン)の差分枚数も多く100枚超えもざらに存在し、立ち絵同様に喋りながら切り替わるのもよかった。


・エッチシーン

本作のエッチシーン数は26回となっており、璃々子のみ6回、それ以外のヒロインは5回の内訳となっている。
卑語修正は通常のピー音修正だが卑語の使用頻度は低いため気にならなかった。
モザイクの面積は非常に小さく、場合によっては無修正かと一瞬勘違いするくらいだった。
エッチシーンは丁寧に作られたハイクオリティなもので、それぞれのシーンで前戯から本番までがしっかりと描写されており、また、汗などの水滴や濡れた状態の下着の描写、かかった精液が次のCGでもきちんと描写されるなど、グラフィック面も非常に丁寧に描かれていた。
各ヒロインのエッチ時の服装の種類も豊富で制服、私服、水着、ウィジェネのコスチュームでのシーンがあるのも嬉しい点だった。
エッチの内容自体はオーソドックスなものが殆どだが、体位や構図が同じヒロインでは被らないようになっているためマンネリになることはなかった。


・システムとコンフィグ

今作のコンフィグは細かい部分まで設定可能だったが、ウィンドウサイズのプレイ時にはウィンドウサイズを自由に変更できず、フルHDモニターの場合は1280*720のサイズしか実質的に選択肢がない状態だったのは残念だった。
シーンジャンプという機能があるが、シーンの区切りが細かい上にジャンプ機能のレスポンスが悪いために普通のテキストスキップとあまり変わらない程度でしかテキストを進めることができないものだったので、どうせなら普通の選択肢ジャンプ機能も搭載しておいてほしかった。
攻略自体は非常にオーソドックスなもので、ヒロインの好感度が上がりそうな選択肢を選べば簡単に目当てのヒロインのルートに入ることができるし、選択肢自体もわかりやすいものとなっている。


・まとめ

主要人物が集う場面が非常に多く、みんなで和気藹々とゲームをするという雰囲気を楽しむことができた。
個々のヒロインも魅力的だったが、ヒロイン同士の関係性が素晴らしく会話を見ているだけでニヤニヤできるもので、相乗効果でより魅力的になっていた。
グラフィックも素晴らしく、エッチシーンも回数自体は多いとは言えないものの、それぞれの質は非常に高く満足できるものだった。