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PredawnvagabondさんのPriministAr -プライミニスターの長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
PriministAr -プライミニスター
ブランド
HOOKSOFT(HOOK)
得点
75
参照数
2102

一言コメント

千里ルートは最後にプレイするべき。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まずシステム面だが、キャラクターによってボイスの音量がバラついていて、調節が非常に面倒だったのだが、新パッチを適用することにより問題が無くなるようである。残念ながら自分はパッチが来る前にクリアしたので、恩恵に与ることは無かったのだが・・・。

前作のStrawberryNautsから搭載された、主人公が通う学園の関係者のみが書き込めるネット掲示板を閲覧できるPIT機能だが、こちらは進化して非常に使いやすくなった。
以前はPITを見るためにはわざわざPIT画面を開く必要があったのだが、今作ではプレイ画面の右側に表示するように設定できるようになったのでプレイのリズムが乱されにくくなった。
ただし、場面が切り替わると、PITのログが消えてしまうのは相変わらずなので、纏めて後で読もうと思っていたら、ログが消滅しているということもあるので、ログは古いものから順に消える仕様にして欲しかった。
そしてPITを常時表示できるようになったことにより、メーカー側も気軽に内容を増やしても大丈夫と思ったのか、PITの文章量が大幅に増量しているのだが、これは善し悪しだと思った。
PITの内容は某巨大掲示板の雑談スレ、あるいは某動画投稿サイトのノリで、最初は面白いのだが、個別ルート突入後もノリは変わらないので、終盤になってくると飽きてくる。
また、シナリオとは全く関係の無い雑談も多く、HOOK独特の起伏の少ない(悪い意味ではない)シナリオと相まって、PITを読んでる内に肝心の本編の流れがぼやけるということが何度もあった。

シナリオは共通シナリオは、大体いつも通りのHOOKだったと思う。
今作ではヒロインの他にもモブの女の子にもモテモテの主人公だが、着ぐるみを着た状態でバク転とか出来る身体能力に、何でも出来る器用さ、そしてイケメンな性格と三拍子そろっているので、モテるのも頷けるといえば、頷けるのだが、幾らなんでも持ち上げられすぎだろと感じることもあった。
シナリオ全体の出来としては、千里ルートを除き、前作のストロベリーノーツの方が出来が良かったなというのが正直なところ。
今作では、前作では丁度良いバランスだった、個性的なモブキャラや、主人公たちが繰り広げるドタバタ劇が過剰で空回りしている印象だった。

個別ルートは千里以外の4人は、起伏の少ない、割りといつも通りのHOOKのシナリオなのだが、千里のシナリオのみがシリアスな内容でビックリした。
別に救いが無いシナリオと言う訳ではないのだが、ヒロインが近い将来に失明するという大病を患っており、千里ルートのメインの部分は、近い将来に失明してしまう前に色々と出来ることをしようという内容で、徐々に色が識別できなくなったり、視力が落ちていく描写や、主人公に自分を特別扱いしないように戒めたりと、幸せな恋人関係を送りつつも、やり取りの端々で、思わず胸が締め付けられるような部分が多々ある。
また、病のために心を閉ざしていた千里を主人公が持ち前のお節介により、救い出したという過去や、千里の二人の思い出があれば失明したあとも生きていけるという発言など、千里攻略後に他ヒロインを攻略するのは物凄く胸が痛んだ。何というか、他ヒロインは主人公と結ばれなくても、将来的には青春時代の良き思い出として、幸せな人生を送れそうなのだが、千里のみは主人公で無いとダメという部分が強いので、千里を差し置いて他ヒロインを攻略するのは罪悪感が凄かった。
ただし、千里ルートの内容がHOOKらしくないことを除けば、千里ルートの出来は素晴らしく、他ルートと比べても、主人公も一番好感が持てるし、最後は病で目が見えなくなるという悲しい終わりではあるのだが、主人公はもちろん、良き友人や両親に囲まれているので、必ずしも不幸なことばかりではないというのは大きな救いだった。

千里以外のキャラクターも魅力的だったと思うが、やや掘り下げが薄いかなという印象も抱いた。
また、前作では立ち絵のあるキャラクターは大体攻略出来たのだが、今作で攻略できるサブキャラは流々子と、初回パッチを当てることにより出現する幽霊のみである。
ロリっ娘の由芽や小糸なんかは魅力的だったし、主人公に好意を寄せてるのは一目瞭然だったので、是非とも攻略したかったのだが、残念だった。まあ、小糸は何故か小学生であると作中で明言されていたし、由芽も小糸の同級生のなので、攻略できたら出来たで問題になった気もするけども・・・。
でも、せめてつばさの友人の花蓮やミステリアスな小糸の保護者の萱野さんは攻略したかった。


グラフィックのクオリティは素晴らしかった。
原画家はストロベリーノーツと同じ原画家を起用しているが、塗りは前作より良くなっていた。
CG枚数は全部で89枚。何故かつばさが一番多く、センターヒロインのかのこは一番少ない。
メインヒロイン全キャラに添い寝CGが用意されているのだが、物凄くよかった。

Hシーンは全部で26回。内約はかのこが4回、残り4人が5回、流々子と幽霊が1回となっている。幼馴染でセンターのかのこがなぜか不遇。
他にも、おまけモードでヒロインとのその後をちょっとだけ見ることが出来る、俺の部屋でCG使い回しではあるものの、Hシーンがヒロイン毎に2シーン鑑賞できるので、萌えゲーとしては量は多めだと思う。
内容も前戯等にも力を入れており、中々のクオリティだった。


・総評
前作のストロベリーノーツと比べると劣る部分も多いが、千里ルートを除けば、深く考えたりせずに気軽に楽しめる作品だと思う。
HOOKソフトのメーカーカラーからは外れるが、ある程度シリアスなシナリオでも大丈夫なら、千里ルートも出来は良いのでお勧めできる。それと千里ルートは最後にプレイすることを推奨する。