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Predawnvagabondさんの幻創のイデア ~Oratorio Phantasm Historia~の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
幻創のイデア ~Oratorio Phantasm Historia~
ブランド
3rdEye
得点
97
参照数
955

一言コメント

戦闘シーンは少なめだけど、しっかりしたシナリオに魅力的なキャラクターが合わさった魅力的な作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

いわゆる厨二ものだが、思ったよりは戦闘は少なめで、どちらかというと、キャラクター同士の関係の構築や心の繋がりや動きに重きが置かれたシナリオ。
設定や世界観は無駄に凝り過ぎたりはしておらず、丁度いい塩梅なので、厨二設定な世界観に馴染みやすかった。

キャラ同士の繋がりがメインということで、キャラクターの魅力が非常に重要である本作だが、キャラクターはサブキャラクター含め、深みのある性格のキャラが多いので、プレイしていて作品の魅力に惹きこまれた。

本作は完全な一本道のシナリオになっており、それを二人の主人公の視点から進めるという流れになるのだが、プロローグと最後のクライマックスの部分意外はどちらの主人公の視点で進めるかを選べるので、頻繁なキャラクターの視点の変更のせいで、テンポが乱されるということは特に無かった。

主人公の一人である優真はプレイ開始直後とプレイ後では評価が大きく変わったキャラクターだった。
軟派な性格で、プレイしていて最初の方の印象はそこまで良くは無かったのだが、世界観や優真の過去を知り、その性格の奥にあるものに触れるにつれ、最終的には非常に魅力的な主人公になった。
非人間的なまでにポジティブであろうとする性格も、物語や色々と行き詰ったヒロインを牽引するキャラクターとしては相応しいものだと感じた。

もう一人の主人公の赫も魅力的な主人公だが、こちらは優真と違い、人間じゃない設定もあって、何があっても動じないタイプの大人な印象の主人公。
こちらは最初から最後まで印象は大きくは変わらないのだが、ピンチや盛り上がるシーンでも落ち着いたまま(少なくとも表面上は)なので、やや盛り上がりに欠けることも。

この二人の主人公(ヒロインもだが)は、ラストの部分意外はほとんど会うことも無く、会話も無いのだが、個人的にはむしろそれが良かった。
一緒に協力しあうなら、主人公が二人いる必然性が少ないと思うし、何より今までお互いのことを知らなかった主人公二人が、最後の土壇場で協力し合うシーンは凄く盛り上がった。
主人公には二人とも声がついているのだが、主人公視点のときは自分の声がつかず、たまに発生するヒロイン視点や、ラストの部分を除けば、声の無い部分が圧倒的に多いので、主人公の台詞全部に声が付くのは鬱陶しいと感じるかもしれないが、もう少し、脳内再生が出来る程度には声が欲しかった。


ヒロインは主人公毎に二人、ひょっとするとココロもエピローグではHシーンがあるので、優真側のヒロインとしてのカウントに入れてもいいかもしれない。
ヒロインは複数存在するが、ルートは固定でヒロインの個別ルートは存在しないのだが、一応各ヒロインに焦点を当てたシナリオがある(その間はもう片方のヒロインはほとんど登場しない)ので、ヒロインが魅力的なのにも関わらず、個別ルートが存在しないという不満は少なかった。
なお、本編クリア後のオマケのエピローグで、各ヒロインEND後的な話が存在するが、あまりに短かったので、もっとエピローグの尺が欲しかった。

なる・・・
優真ルートのメインヒロイン。自覚のある厨二病患者。人間が大好きなイデアで気遣いも出来る良い娘だったのだが、中盤で故郷が人間に滅ぼされていたことが発覚し、本物の厨二病的な台詞を言うようになる。故郷で滅ぼされた他のアルラウネ同様、薬の材料とするために攫われたところを主人公の優真に心身共に助けられるなど、彼女に関するシナリオは比較的ストレートな内容だった。

リノン・・・
優真ルートの2番手ヒロイン。二重人格(途中から3重人格)というちょっと変り種のヒロイン。大きく性格や口調の違う3人のキャラクター(しかも3人で争ったり、脳内会議を開いたりする)を見事に演じた声優の桃井穂美さんは凄い。主人格のリノンはツンデレ的なキャラクター。エピローグのリノン可愛すぎだろ。

ノエル・・・
赫ルートのメインヒロイン。赫が他の女性と喋っただけで浮気を疑い、探偵をけしかける嫉妬深いヒロイン。赫ラブで、彼のためなら命すら投げ出すくらい愛しているのはわかるのだが、開始時点で夫婦のような深い関係を築いているので、出来ればもう少し二人の過去についても描写して欲しかった。

美月・・・
赫ルートの2番手ヒロイン。メインヒロイン4人の中で、彼女のみ(純粋ではないものの)人間。素で厨二病な発言をかまし、人を寄せ付けない性格なのだが、無類の紅茶好きで、紅茶に関して語り出すと止まらない。フールと呼ばれる、特殊な能力が使える人間で、そのことで友達や母親に化け物扱いされ、捨てられたというトラウマを持つ。心を閉ざしているのもそのせいであり、彼女のシナリオはトラウマからの脱却が主軸となる。

サブキャラ・・・
サブキャラも癖の強いキャラが多く印象に残る。単純に悪だとは断じれない、優真のナンパ仲間の零二や、変わった価値観を持つ探偵の江神など、男キャラも印象に残る。ひまわりも子供らしい天真爛漫な良いキャラだった。そして、出来ればルージュにもHシーン無くてもいいからエピローグが欲しかったところ。


グラフィック枚数は戦闘時の武器のCGや立ち絵流用なども全部含めて125枚という大ボリューム。
グラフィックのクオリティも素晴らしかった。

Hシーンはグラフィックは良かった反面、回数は少なかった。
回想上はメインヒロイン各4回になっているが、実質はノエルは3回で残り3人は2回ほど。ココロは1回。
グラフィックは素晴らしく、キャラも魅力的でHシーンのテキストも悪くは無かっただけに回数が少なかったのは非常の悔やまれる。

BGMも秀逸でお洒落なものが多く、戦闘シーン、日常シーン問わず良いものが多かった。


・総評
バトルものかと思いきや、戦闘シーンもちゃんとあるが、意外にも人と人の繋がりに重点を置いたシナリオの厨二もの。
キャラクターにも深みがあり、グラフィックやBGMも非常に良かった。