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Predawnvagabondさんの魔導巧殻 ~闇の月女神は導国で詠う~の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
魔導巧殻 ~闇の月女神は導国で詠う~
ブランド
エウシュリー
得点
80
参照数
1588

一言コメント

モンスター娘の出番が少なすぎる・・・。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

全体的にUIが非常に悪くストレスが溜まる。
特にソートが出来ないのが辛かった。
新パッチが配布されUIが大きく改善されたものの、それでも物足りなく感じた。
パッチが配布されたのがコンプとほぼ同時だったので細かいところまで調べたわけでは無いが、戦闘参加メンバー順が自分で並べ替え出来なかったのが、自分の気に入ったキャラをマークすることにより、参戦キャラ選択時に一番上に来るようになったので、キャラ育成等で長いリストからわざわざ探し出す必要がなくなりストレスは幾分か軽減された。
加えて戦闘速度も上げられるようになったので、周回やキャラクター育成に関してはストレスを感じることは少なくなったと思う。
とはいえ、お気に入りキャラを登録できるようになっただけで、レベル順や、攻撃力等の特定の能力順にソートが出来るようになったわけではないので、やはり不便だと感じる場面もい。
フィールド上を移動するキャラを選ぶ時も移動可能ユニットとそうでないユニットが全部同時に表示されて、移動ユニットを選ぶのが非常に面倒だったのが、移動ユニットのみを表示できるようになって非常に楽になった。
ただ、作戦コマンドで選択する領地がマップ上から直接選ぶのではなく、数十以上の領地の名前が並んだだけの一覧から選ぶ必要があったり(領地の名前なんていちいち覚えてられない)、各領地の建造物の一覧が無かったり、収穫物の逆引きが無かったりと細かいところで不満が残る。
以前の作品ではそういったことが不満に感じなかったので、もしかすると毎年4月発売にこだわる余りに、細部に関しては甘くなったんじゃないかと邪推してしまった。
正直なことろ、パッチで改善された部分程度なら最初から予測できてしかりだと思わないでもないのだが、バグ以外の部分に関してもユーザーの声を拾い素早く対処するエウシュリーの姿勢は素晴らしいと思う。

UIを除くゲームパートに関しても割と不満に感じる部分は多かった。とは言いつつもそれなりにやり込んでしまったので、魅力が無いわけではない。
SLG部分は攻める、攻められる順序がある程度固定されており、プレイヤーは受身になることが多いのが残念だった。
展開のランダム性が無く、プレイヤーの介入無しに、他の国が他の国に占拠されたり(予定調和のものを除く)しないので、戦略SLGとしてのリプレイ性が低いのである。
自領、センタクス、が全体マップの真ん中くらいにあって、西側が自分の所属する国で東側が一番大きな敵国となっている。
4人の元帥が分割して統治してる自国は頭となる皇帝の安否が不明になって結束が緩んでるとは言え、こちらから宣戦布告すると残り二人の元帥からも敵対される。
かといって、東側の敵国に攻め込むと、同盟関係にあるセンタクス北側に位置する獣人族の国も敵対してくるので、2面作戦を強いられる。
結果として無難に南側に位置する魔法国家と戦争するしか無くなるのである。というか、時期が来ると向こうが勝手に宣戦布告してくるので、迂闊に他と敵対してると詰みかねない。

大まかなルート分けとしては、正史ルート、魔法ルート、覇王(ハーレム)ルートとわけられるのだが、正史、魔法ルートは割りと展開が似ており、基本的にストーリーの進行に伴って攻めてくる国と戦争になるか、宣戦布告しても連座で他の国が攻めてくることが無くなるまで待ってから攻めるというのが多くなる。
覇王ルートに関しては全ての国を滅ぼせばOKという非常に分かりやすいものなのだが、何故か自国領である3人の元帥に先に宣戦布告してしまうと、それ以外の国のイベントの一部が消滅してしまい、各国ヒロインを娼館送りに出来ずに回想が埋まらなくなってしまう。
結果として、自国領を攻めるのは後回しにせざるを得ず、自分の思うままの順序で攻めることは出来なくなってしまう。
回想も全部埋まって何も気にすることが無い状態、あるいはオマケの他国モード(他の国の領主となり戦争する)ならば自由にプレイ可能だが、正直なことろ、ゲームパート単体で遊びたいと思うほどの魅力は感じられなかった。

RTSパートもユニット毎の差異や、一度に出撃できるユニット数が3と少なく、ストラテジー、戦略、と言われても首を傾げてしまう。
ユニットにも属性や種類が用意されているのだが、属性を意識する場面は少なく、また剣術、槍術、弓、魔術とユニットにより陣形も色々あるのだが、攻撃範囲が微妙に違う以外に差異を感じる機会が少なくて、3ユニットしか出せない割りにはユニットの組み合わせの工夫が出来る余地は少なく感じた。
あと、どのユニットも攻撃範囲に入った敵ユニットは全部同時に攻撃するので質が数を凌駕するというRTSとしてはどうなの?と言いたくなるバランスになっている。
RTSの個人的なイメージとしては沢山のユニットを同時に出撃させて、地形を利用したりしつつ2面、3面作戦を展開するというイメージだったので、今作のRTSの出来を見てると、わざわざRTSにする必要があったのか疑問に感じた。
今作での経験を生かして次回作ではもっと改良されたRTSがプレイできるとかだったら嬉しいのだが・・・。


登場するキャラクターは個性的で魅力的だった。
ただし個人的には大きな不満が一つあった。そう、モンスター娘たちの登場数が圧倒的に少ないのである。
追記しておくと、ユニットとして扱えるモンスターの種類はむしろ従来より多いくらいなのだが、全部汎用ユニット扱いでイベント等が存在しないのである。
ファンタジー作品ではおなじみのエルフや獣人を除くと、Hシーンやイベントがあるのは竜族が一人と竜人族(ナーガ族、下半身が蛇)が一人、それと娼婦の館で抱くことの出来る天(ただしイベントや立ち絵は無し)の3人だけである。
エウシュリーの顔と言っても過言では無い(と自分が勝手に思っているだけだが)天使や睡魔族がシナリオに全く関わってこないのは非常に、物凄く残念だった。
その代わりなのか知らないが魔導巧殻の4人はイベントも多く、前面に押し出されてはいたが、Hシーンも無く、見た目もサイズ意外はほとんど普通の人間なので、如何に魅力的とはいえ、モンスター娘の変わり足り得ないと感じた。

エウシュリーとしては初めて男キャラにもボイスが付くと言うことで張り切りすぎたのか、おっさんキャラ達がヒロインを食い気味に存在感を放つのは好き嫌いが分かれるかもしれなが、戦争もののストーリーだし、自分はありだと思った。
とはいえ、男キャラの存在感は別としてもメインヒロインポジションのリセルや、敵対国としては最大の規模を誇り、描写次第では主人公のライバルポジションを獲得できたかもしれないユンガソルの三銃士とかはもっとイベントがあっても良いと思った。
リセルと主人公の二人の関係はゲーム開始時点で既に熟年夫婦の域に達しており、そしてそれが徒となってしまい、目立つ機会が減ってしまったように思えた。
三銃士はユンガソルの王の存在感の影に隠れすぎてしまっていたのが、個人的には非常に好みなキャラだったこともあり、残念だった。
逆に魔法国家の誇るお姉ちゃんのフェルアノや、商業国家アンネローツェの主従のように、優遇されていると感じるキャラもいた。
ただ単に自分の好みのキャラで、陰に隠れてしまうような濃い男キャラがいなかったからなだけかもしれないが。

シナリオは戦略ゲーとしてはオーソドックスなものだと思うが、正史ルートではエウシュリーとしては珍しく重要キャラが死亡したりもする。
なので割と後を引く終わり方だったりもするのだが、鬱展開とまでは行かないと思う。
その代わりというのはアレなのだが、正史ルートの終盤の展開は熱く、盛り上がった。

CG枚数はアペンド、イベントCG等も含めて169枚。差分込みだと1336枚。回想数は61。
こうしてボリュームを調べてみると今まで書いた批判的な内容が全部ぶっとびそうなくらいのボリュームである。決してエウシュリーが手を抜いたわけではない証拠と言えるだろう。
グラフィックに関しては唯一(?)手放しで褒めることが出来る部分だった。
原画、塗りともに前作と比べても格段の進歩を遂げており、素晴らしかった。
体感だが、CG、回想の回収は以前の作品と比べると大分楽に感じた。

Hシーンは大きく分けて、正史ルートの普通のHと、覇王ルートの各国を占領後に捕らえたヒロイン達を娼婦の館送る発生するHの2種類。魔法ルートはどちらでも可。
キャラ毎の内約は、エイダが何故か一回だけなのを除けば、どのヒロインも大体平等くらいに感じた。
正史ルートのほうのHは可も無く不可もなくと言ったところ。
グラフィックは素晴らしいものの、尺の長さにややバラツキがあった気がする。
覇王ルートのほうは少し中途半端に感じた。
キャラクターが多いので、一人当たりに割り当てられる覇王ルートでのHシーンが多くても2回くらいしかないので仕方無いことだとは思うのだが、魔法を使ってサクっと従属させてしまうか、娼婦の館に送って、調教が大体完了したところを抱くだけという展開が多かった。
頑張って(と書くと大げさかもしれないが)戦争に勝利して、高潔な騎士だとか、姫だとかをものにしても、あっさりと堕ちてしまうのは物足りなく感じた。


・総評
パッチで改善はされたものの、UIが使いづらくストレスが溜まりやすい。また、SLG、RTSともに深みが足りないと感じた。
キャラクターに関してはモンスター娘の登場数が少ないのが物足りなく感じたが、登場するヒロインは所属国家によっては男キャラの濃さによって若干影が薄いヒロインもいたが、概ね魅力的だった。
グラフィックは特筆すべき素晴らしさだった。
まあ、何だかんだ言いつつも3週してほぼコンプリートするまでプレイしたので、ゲームパート単体だけの出来はイマイチでも総合的に見ると十分魅力的な作品だった。
エウシュリーがSLGを出すのは久しぶりだし、これを叩き台として今後更に面白くなったSLGを出してくれることを望みたい。