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Predawnvagabondさんのひとつ飛ばし恋愛の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
ひとつ飛ばし恋愛
ブランド
ASa Project
得点
80
参照数
537

一言コメント

ギャグの勢いは落ちたものの、萌えに関しては強化されていた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今作では前作と比べると、ギャグやネタの部分に関しては勢いが落ちたように感じた。
自分なりに理由を分析してみると、ひとつ飛ばしというコンセプトによるところが大きいんじゃないかと感じた。
今までの作品だと、女子寮に女装して潜り込んだり、家族交換で女性しかいない家庭の一員になったりで、共通、個別問わず主人公の周りには沢山のキャラがいたので、ギャグに勢いがあったんだと思う。
ところが今作ではひとつ飛ばしということで、主人公と攻略ヒロイン、そして攻略ヒロイン毎に存在するサブキャラの3人の組み合わせや人間関係が強調されているので、他のヒロインが一同に会して騒ぐということが無いのである。
まあ、他にも純粋にネタに走るキャラが減ったというのもあると思うけども。
マジキチ枠(?)のリサは共通、個別問わずに立派なネタキャラだったが、他はそうでもないことも多かった。

とはいえ、ギャグの勢いが落ちたことも悪いことばかりでは無かった。
萌え部分は大いに強化されていたと感じた。
ヒロイン同士の横のつながりが弱い分、個別ルート突入後は主人公とルートヒロインとその友人の3人以外が登場する機会が激減するので、大いにイチャラブしまくりで萌えるシーンも多かった。
ギャグもいくらか勢いが落ちたとは言え、面白いことには間違いないので、とても楽しめた。

共通ルートは短めで、今までお互いのことを知らなかったヒロインを主人公が攻略する上で最低限は必要であろう好感度を稼ぐ程度の部分で終わってしまい、主人公によるヒロイン攻略作戦は基本的に個別ルート突入以降になる。
(攻略)ヒロイン同士の横の繋がりが非常に薄い本作では、共通ルートをダラダラと続けるのもあれだろうし、早めに個別ルートに移行するのは良い判断だと思う。
あと、シリアスな場面や、シリアスになりそうな場面でのヒロイン、主人公の即断即決さは素晴らしかった。
夏芽が主人公の姉のメグに自分に内緒で主人公と付き合っていたことを責められた後、次のシーンでは放送室をジャックしてメグに隠していたことを謝るという行動の早さには笑った。
面白くないシリアスは不要というメーカーに求められているものをメーカー側がちゃんと把握していているのだろう。
それと全体の総量に関してなのだが、フルプライスとしては少なめだと感じた。


個人的には碧理がキャラ的にもルート的にも一番好きだった。
というか碧里は相当に優遇されているキャラだった。碧里ルートが天都氏が担当したと見て間違いないと思う。
碧里はギャグと萌えのバランスが一番良かったキャラで、個別ルートは笑えるシーンが多いのだが、ネタにばかり走るわけでは無いので、しっかり萌えることも出来た素晴らしいキャラだった。
ストリートファイトに明け暮れ、自らをシャドーウルフと名乗る碧里の弟(重度のシスコン)が登場したりと、他ルートよりも登場するキャラも多めで笑えるシーンも豊富だった。
何よりも、ひとつ飛ばしという作品のコンセプトが上手く描けていたと思う。

リサは面白かったがあまり萌えなかったというのが正直なところ。
付き合いだすのもノリというかギャグみたいな展開がきっかけだし、付き合いだしてからもバカばっかりやってるので、たまにイチャつくシーンがあっても素直に可愛いと感じるのはちょっと難しかった。
でも凄く笑えるキャラで印象に残る。

夏芽は可愛いけど、ルートの出来はイマイチ。
普段はキリっとしてるのに、主人公が気になりだしてからのヘタレ純情乙女っぷりは凄く良かったんだけど、基本的に周りからネタ振りされないとギャグに走らないキャラなので、個別に入ってからは割と普通のお付き合いという雰囲気で、ASaProjectの持ち味をあまり出せてなかったなと感じた。
それと夏芽の友人であり、主人公の姉である、メグのキャラもあまり好きじゃなかった。
メーカーがコンセプトとしている、ひとつ飛ばすことに対しての後ろめたさみたいなのも感じなかったし、どこまで本気で言ってるのかは不明だが、本人が言及しているように自分が面白ければそれで良しな性格はどうも好きになれなかった。

桜は個人的には今作のダークホースだった。
共通ルートでの印象は正直なことろ良くなかった。
主人公のことを、桜とその幼馴染の千乃の間柄を邪魔する人物、あるいは千乃を狙っている悪い虫扱いしてくるからだ。(とは言いつつも文化祭の準備委員会に主人公を誘ってくれたりもするのだが)
ところが個別ルートに入り、徐々に主人公との仲も深まってくると印象が変わってくる。
レズ疑惑(疑惑じゃないかも)が浮上するくらいに深い千乃への愛情と同等の愛情が主人公にも向いてくるので、俄然、献身的なヒロインになるのである。
また、桜ルートも笑いという点でも碧里ルート同様優れていて、プレイ後の桜に対する好感度は凄く高くなった。
千乃のキャラも非常に良くて、如何にも(?)女の子同士な友情を桜との間に築きつつも、主人公とは家族、あるいは同性の友人のように漫才を繰り広げるようなキャラで、天然ボケな桜との3人の関係性は非常に良かった。


グラフィックは立ち絵は良かったのだが、一枚絵、特に裸体に関してはイマイチで、違和感を感じる絵もいくらか見受けられた。
頭の大きさに対してガタイが良すぎたり、その逆だったりするのが何枚か。
それと女性器は全体的に違和感を感じた。モザイクもパンツ脱がす前から掛かってるのがあったりと割と適当(?)なように思った。
特に夏芽にその傾向が顕著に現れていた。シナリオもイマイチだったし、全体的に夏芽は恵まれてなかった。
桜は体の部分に関してはそこまで違和感は無かったが、Hシーンでの表情がイマイチだった。
逆に碧里のCGは全体的に良く、特に表情が素晴らしかった。
普通のイベントCGは基本的には全員問題なかったと思う。

Hシーンは各ヒロイン4回。
Hシーンの良し悪しはCGに依存する部分が多いので、オカズに使えるか否かというと微妙なものが多かった。
いっそのことネタに走るのもありだと思うのだが、ネタに走ることはほとんど無かった。
あまりHシーンに期待するタイプの作品ではないので、作品の感想や評価に影響を与えることはほとんどないのだが、やはりある程度の質は期待してしまう。


・総評
前作と比べるとギャグの勢い、量は少なくなっている。
萌え部分が強化されたことは嬉しいのだが、それが笑いとのトレードオフで得たのかもしれないと考えると素直に喜べない部分も・・・。
個別ルート毎の質の差が大きいというメーカーの弱点もある程度は克服されているものの、依然として差は存在する。
ゲーム全体の量も少なめだったし、期待を裏切られたとは言わないが、期待通りの出来では無かった。
とはいえ、芯の部分はちゃんとしてると感じたし、間違いなく面白い部分もあるのでプレイする価値は十分あると思う。