作品の持つ優しく透明感のある雰囲気が良かった。細かいところまで作られていてスタッフのやる気を感じられる作品。
幽霊と人間が共存している特殊な学園が舞台の物語。
全体を通して作品の持つ雰囲気が非常に良く、共通ルートでは幽霊と人間の差異や共存における注意事項について言及しつつも非常に暖かい雰囲気を持っていてプレイしてて暖かい気持ちになれる。
個別ルートでは一転して作品の持つ優しい雰囲気を損なわないながらもシリアスな場面も増えてくる。
登場人物たちは幽霊と人間が付き合うことの難しさや、幽霊の存在の儚さ(幽霊は死ぬ前の未練を叶えると成仏してしまう)故に幽霊との距離感に悩んだりするのだが、それを主人公と克服して行く過程は丁寧に描かれていたし、ヒロインの心情の深いところまで描写されているのでヒロインのことがもっと好きになれると思う。
また、ヒロイン毎にシナリオの内容の差異が大きいので、プレイしていても飽きが来なかった。
・まつり
明るい性格で本当に幽霊なのかって言いたくなるキャラクター。
勝手に人の部屋に上がり込んでテレビを見たりすることもあるが、自分が幽霊であるということはきちんと弁えており、幽霊が見えない一般人の前では喋りかけなかったりと、気遣いも出来る。
幽霊ながら色々なことに主人公と共に挑戦していく内にお互いが惹かれあっていく。
幽霊と人間の恋愛について丁寧に描かれており、お互いがつき合い出してからも、一般人には見えず、両親にも紹介できないお互いの関係を悩みつつも、二人の中が深まっていく過程がとても良かった。
まつりのみエンディングが3つ用意されており(1つはバッドエンド)、願いかなって成仏してしまうエンディングと、成仏しないエンディングに分かれているのだが、まつりが消えずに残るエンドの幸せそうな二人はとても良かったし、まつりが消えてしまうエンディングも悲しいながら、読後感は凄く良かった。
・雪花
まさかのヤンデレ。でもルート的には一番良かったかも。
凄く内気でいつも一人なのだが、それを気にかけた主人公と二人で友達を作ろうと努力するのだが、色々あって、主人公さえいればそれで良いというヤンデレ思考に振れていく。
実は生前にいじめで自殺という暗い過去を持っていて、雪花の生前を模した夢の世界に主人公を連れ込み、夢の世界でいじめられながらも主人公と恋人生活を送る。
夢の中の主人公の選択次第で、現実世界に帰るか、現実世界では寝たきり状態になり、夢の世界で雪花と生き続けるかというエンドに分かれる。
一応現実世界に帰るのがグッドエンド扱いなのだが、夢の世界に永遠に二人きりという退廃的(?)なバッドエンドも良かった。
まつりと違いグッドエンドは選択肢が無くて消えてしまうエンドしかなく、涙無くしては見れないのだが、雪花が消える前に見せる笑顔がとても魅力的で印象に残った。
・奏菜
人間のヒロイン。共通ルート、他ヒロインルート共に登場回数が多い。
いつも笑顔で面倒見も良いが、奏菜本人のルートではクラスメイトの幽霊が目の前で消えてしまうのを目撃してしまい、それ以降幽霊との距離感で悩むことに。
・雛菊
素晴らしきツンデレ。ツンが多めだが、ついつい人の良い主人公をかまってしまう。
主人公だけでなく全方位でツンツンしてるのだが、根は良い子。
霊感を持つ自分を受け入れてくれる場所が今まで無かったため、それを探しに学園にやってくる。
学園でも友達は少なかったが、主人公と関わるにつれて素直になりデレることも多くなってくる。
とりあえず、ツンデレ具合が素晴らしかった。
・杏
ヒロイン中で唯一幽霊が見えない人物でお兄ちゃん大好きな主人公の義妹でパジャマ姿が可愛かった。
学園も違う上に幽霊も見えないので本作にはそぐわないかと思いきや、そんなことは無かった。
主人公が幽霊のせいで危険な目にあったことがあり、そのせいで主人公が幽霊と共にいることを快く思っておらず、主人公を地元に連れ帰ろうとするなど、以外とアグレッシブな面もあり。
家事もでき、進学校で主席という万能さを誇るが、兄のこととなると暴走気味になったりと、どストライクな妹キャラだった。
・その他のキャラ
いくら何でもサブキャラが本編中での出番が少なすぎる!と思っていたら、ちゃんと出番がありました。
おまけシナリオでは何故にスタッフが由梨と名付けたのかがわかる、由梨がメインのちょっとコミカルな話もあったし、エンディングコレクションから見ることが可能なグランドエンドは、すみれ先生と学園長の蘭子がメインのシナリオだったりと、ちゃんとサブキャラにも光が当てられている。
主人公もプレイしていても不快になる言動、行動がなくて非常に好感の持てる、作風にあった優しい性格をしていた。
このゲーム、キャラクターに関しては性格も素晴らしかったし、シナリオ毎にヒロインについて掘り下げられていたしで、凄く良かった。
CG枚数は全部で81枚(内SDが3枚)。
出来に関しては抜群と言って良いと思う。
ただしエロさよりも可愛さが先だって、Hシーンでの実用性はイマイチか。
Hシーンは絵が可愛い系なのもあるし、テキストも可もなく不可もなくなので、実用性は今ひとつと言ったところ。
あまりそういうのに期待してなかったので特に気にならなかった。
ただ、グラフィックの出来は素晴らしいので、Hシーンの絵があるのは嬉しかったかな。
内約はまつりと雪花が3シーンずつ。奏菜と雛菊、杏は4シーンずつ。それとおまけシナリオの3Pが1つ。
幽霊の方が若干少ないのは、幽霊は現実世界ではお互い触れ合うのが難しいからか。
BGMは数こそ取り立てて多くは無いものの、質は凄い良かった。
作品の雰囲気に合致した優しく、透明感のあるものが多く、プレイ後に特典のサントラで聞いてても色々と本編の情景が思い浮かぶ。
細かいことだが、エンディングコレクションのページで各ヒロインの名にちなんだ花やその花言葉の説明を読むことが出来るのだが、こういう細かいところまで色々作ってあるのはスタッフの作品に対するやる気が感じられて良かった。
システムに関してはちょっと使いづらかった。
ボイスカットのon/offや音声の個別調整等はあり現在のゲームの標準レベル程度には色々と設定出来るのだが、右クリックでウィンドウ消去が出来ない上にウィンドウメニューですらウィンドウ消去が出来ないので、ウィンドウを消すために説明書を読む必要があった。
ウィンドウ消去はQキーのみ(多分)なので不便だった。
(ウィンドウ上にマウスポインタを置いた状態だと右クリックで消去できるみたいです。自分の勘違いでした)
後、クイックセーブとロードはSキーとLキーだった。
・まとめ
作品全体が持つ優しい雰囲気が素晴らしかった。
シナリオも幽霊と人間の関係性について丁寧に描写されているし、キャラクターも魅力的で深いところまで描かれていたと思う。
また、細かいところまで作られていて、スタッフの作品に対する愛情を感じることが出来る。