FDと言うよりは続編みたいなもの。本編部分での不完全燃焼な部分もすっきり解消してくれる。この作品無しでは「いろとりどりのセカイ」は完結しない。
・システム
基本的に前作と同じものが使われている。
細かいところまで設定できるし、マウスカーソルのアイコンを紙飛行機にしたりと遊び心もある。
イベント絵が最大で2倍まで拡大できるのもグッド。
ただ、自分だけの問題かどうかはわからないが、セーブデータが破損して、読み込めなくなり、強制終了させられるという事態が2度発生した。
とりあえず該当のセーブデータをフォルダ上から消去すれば、既読フラグや他のセーブデータを消さないで済むが、結構面倒くさかった。
・シナリオ
FDだからイチャイチャしてるだけかと思いきや、良い意味で予想を裏切られた。
むしろ本編の「セカイ」よりシナリオ面は良かった。
「セカイ」が続編ありきで作られたのかどうかはわからないが、前作では説明不足だったり、きちんと風呂敷がたためていなかったのが、今作ではきちんとまとまられていた。
特につかさと鏡の二人は本編では、解明されること無く終わった色々な疑問が、綺麗に解消された。
つかさの出身世界である「働かなくていい世界」の成り立ちや、鏡の兄や祖母との間の家族問題やその本業である。
どちらもFDらしく、恋人になった後のイチャイチャを適度に挿みつつのストーリー進行になるが、各ルート終盤ではシリアスながら感動の展開も用意されており、そこいらのFDと比べ物にならないほどの素晴らしいシナリオだった。
澪と加奈のルートも本編後の話となるが、こちらの出来も素晴らしかった。
加奈のルートは加奈の話でもあるのだが、狐人の蓮が準ヒロインなポジションで、本編で意地悪な神様によって不本意な別れをした、蓮の母親である白の本を探しに色々なセカイを巡る、といういろとりどりのセカイの世界観をフルに発揮した話。
白と蓮の親子愛の素晴らしさに思わず涙しそうになってしまった。
新ヒロインの藍の話は「セカイ」の主人公である悠馬ではなく、本編中では名前くらしか出番の無かった本物の悠馬が主人公の話。
こちらは本編の前日譚で本物の悠馬と藍がお互いに結ばれ、その後悠馬が神様に連れ去られるまでの話。
真紅や藍が自分たちの世界が狂ってしまうまではどんな生活を送っていたのかが良く分かる貴重なシナリオだった。
どのヒロインのシナリオも素晴らしい出来だが、やはり本作で一番良かったのは真紅のストーリーだろうと思う。
真紅のシナリオは大きく二つに分かれていて、最初に本編後のセカイで真紅と悠馬がイチャイチャする話が見れる。
その後他の5人のルートを見た後に、真紅ルート後編が開放される仕組みだ。
真紅ルート後編はほぼ全編がシリアスな割りに尺が長く、更に真紅が涙を流すシーンや苦しむシーンも多くて、色んな意味で勘弁してくれよと言いたくなるかもしれないが、もちろん最後はハッピーエンドになるし、感動もひとしおなので是非とも最後までプレイするべきだと思う。
前作では特に感じなかったのだが、今作ではシナリオ上に一つの明確なテーマのようなものがあった。
それは「言葉が持つ力」だ。
人間が言葉を口にすることにより、当人の世界観が決まるといった話なのだが、誰のルートであってもこのテーマには触れられていて、真紅ルートの後編はそのテーマの集大成といった部分もあるのだが、この全ルート通した共通のテーマのお陰でより真紅ルートの最後の感動が増幅されているように感じた。
・グラフィック関連
素晴らしかった。司田カズヒロを筆頭とする原画の出来がいいのはもちろんだが、塗りの出来も相変わらずで自分の語彙力では素晴らしい以外の言葉が見当たらない。
・BGM
基本的には前作の流用だが、いくつかは新しいものや、前回のBGMのアレンジもある。
使用される楽器はピアノがほとんどだが、ピアノの音色が本作の背景や作風にあっていて印象に残るものが多かった。
藍ルートのEDで前作OP曲のアレセイアが使われるのだが、そのタイミングや演出が神がかり的に凄かった。
歌もOP曲、ED曲とグランドEDの3つあり、前作のアレセイアほどのインパクトは無いものの、済んだ声の女性ボーカルが作品にあっていて良かった。
特に真紅以外のヒロインのED曲の「COLORFUL DAYS!!」の出来はハッピーエンドな感じが良く出ていた。
・キャラクター
前作ではキャラクターの掘り下げが不足していた感があったキャラクター達だが、今作ではきちんと掘り下げられていて、真紅以外のキャラクターも好きになる事請け合い。
真紅・・・
誰が何と言おうとも完全無欠にメインヒロイン。前半のイチャイチャ部分での真紅はめちゃくちゃ可愛かった。後半は結構辛い目に遭うことが多くて見てるこっちまで胃が痛くなりそうだが、最後はハッピーエンドなのが救い。
澪・・・
本人のルートの出来も良かったが、他ヒロインのルートでもギャルゲ作るためにスクリプト勉強したり、一緒にヤケ食いして励ましたりと結構活躍してて印象に残ってる。本人ルートでは前作では敵(?)だった、とおるとのやり取りも見ていて面白かった。
前作では他の寮の人間とのやり取りが少ないというか、ちょっとだけ他人行儀(?)な印象があったのだが、今作では澪が寮の人間を凄く大切に思ってる描写が一杯あって、ますます澪のことが好きになれた。
加奈・・・
Hシーンは2つのうち1つは澪との3P(夢オチ)だったり、本人ルートでは蓮に出番を食われてたりして、少し不遇なキャラだったかも。でも、加奈ルートが真紅ルート以外では一番感動できるかも。
鏡・・・
寮のみんなと協力してギャルゲーを作る話。いやマジで。
引きこもりだった鏡がちゃんと(?)学校に通って、寮のみんなと協力して一つの目的に向かっていくのは、鏡の成長が感じられて胸が熱くなった。
終盤では前作では名前しか出なかった、鏡の本物の兄と祖母(ロリ婆)が登場。
兄が鏡に対して冷たい態度を取っていたことの真意や祖母がものすごく可愛い子なことが発覚。ルート中で少しだけ真紅が登場するのだが、登場のさせ方が凄い上手くて、感動した。
つかさ・・・
宝くじで3億円あたってその使い道に悩む話。前作ではあまり多くが語られなかった「働かなくていい国」の真相が分かります。それ以外あんまり覚えてないかも・・・。
その他のキャラ・・・
みんないい味出してたと思います。前作でも人気だった蓮と白の親子はもちろんだが、終わった世界のロボットたちとか、商店街の人なんかの名前の無い人たちも割りと印象に残った。あと、真紅と悠馬の娘が可愛かった。攻略したい云々の可愛さではなく、純粋に。
・回想シーン
藍以外のヒロインは2回ずつ。藍は1回。
尺とかテキストは標準的だと思う。
とはいえ、絵の出来はすばらしいので、それだけでも見る価値はありかと。
夢オチとはいえ、澪と加奈の3Pが見れたのは良かった。
その代わり加奈単独のHシーンは1つだけになってしまうが。
加奈ルートは加奈以上に蓮と白が目立ってるし、今作では結構不憫なキャラ・・・。
・総評
もはやFDの域を超えている出来だと思う。
どのヒロインたちのルートも良かったし、一貫したメッセージ性が伝わってくるのが良かった。そして各ヒロインのルートが最終的に真紅ルートのグランドEDに関わってくるところなんかも良かった。
シナリオ以外の部分でも素晴らしかったし、10年経っても忘れられない作品。