色々なことに挑戦するニトロ+らしい作品。他では出来ない体験が出来るが、好き嫌いは分かれそう。
シナリオだけでなく、演出やシステム等の細かいところまで作りこまれたメタフィクションを主題としたゲーム。
他のメーカーがやらないこと、新しいことに挑戦するというニトロ+らしい作品だと思う。
ヒロインの一人である美雪がモニター越しに、直接プレイヤーに語りかけてくるという他にも、ゲームのシステムに介入して、ゲームを再起動したり、レトロ調なインターフェイスに変えてしまったり、挙句の果てにはセーブデータを消したりと色々と斬新なヒロインだった。
更に、美雪は途中からヤンデレ化し、金属バットで主人公や、アオイを撲殺したりするのだが、それだけでなく、プレイヤー自身にもヤンデレ状態で語りかけてくるので非常に怖い。
効果音の使い方や、瞳に光の無いヤンデレ目の美雪の動かし方が上手かったりと、恐怖心を煽る演出も非常に上手い。
そんな、プレイヤーのトラウマになってしまいかねないヒロインの美雪だが、主人公を監禁したり、プログラムを勉強してゲームのスクリプトを書き換えたりする根本にあるのは主人公、そして何よりもプレイヤー自身に愛してもらいたいという欲求なので、そんな健気な美雪に惹かれ、最後の選択肢では自分は美雪を選ぶことにした。
もう一人のヒロインのアオイも特徴的なキャラで、ただの電波ヒロインかと思いきや、本当にカミサマと交信可能で世界を作り変えたり出来るという、謎に満ちたヒロインだが、その正体は美少女ゲームのカミサマに派遣されたアバターで、CG回収を目的とするメタもメタなキャラで、そのために主人公と美雪をくっつけようと拙いながらも色々と画策する。
そんなアオイだが、2週目では、本人曰くバグってしまい、主人公に恋をし、主人公と恋仲になるのだが、CG回収が存在意義の彼女はCGが回収できないと消滅してしまうという性質のため、不本意ながらも浮気をすることに。
CG回収しないと消滅するなんて荒唐無稽な言い訳を受け入れて、男二人とアオイで3Pをするシーンは主体性の少ない主人公が男気を見せた数少ないシーンの一つだと思う。
かつてない規模でのメタフィクションや演出の他にも本作では意欲的だと感じた部分があった。それは究極的な二者択一である。
普通のビジュアルノベルゲームだと、どのヒロインを攻略しようか悩むことはあっても、せいぜい攻略する順序程度なのだが、本作では片方のヒロインを攻略すると、もう片方のヒロインが攻略できなくなるのである。
自分の場合は美雪を選んだのだが、その場合CG鑑賞モードですらアオイのCGを鑑賞出来ない、ライナーノートのトップ画像でもアオイが存在せず、美雪しかいないという徹底振りである。
もちろん、セーブデータを削除するか、ゲーム本体を再インストールすれば二人とも攻略可能ではあるのだが、少なくとも個人的にはそういう気分にはならなかった。
場合によってはウザイと捉えられかねない仕様だが、前述の特殊なヒロインやシナリオにより、この究極的な二者択一は他では味わえないリアルで(現実では二人の女の子に迫られることなんて無いだろうけども)、特殊な体験だった。
本作では他には無い魅力がある一方で、不満点も多少あった。
物語の核の部分に辿りつくまでのシナリオがちょっと退屈だったり、無限ループを抜けるのが面倒、難しかったりといった部分である。
しかし考えようによっては、前半の割と普通の学園生活のシナリオも二者択一を際立たせるためには必要だし、無限ループにも面白いアイデアが盛り込んであったりもするので悪いことばかりではない。
グラフィックに関しては津路参太氏の絵が割と特徴的なので、多少好き嫌いが分かれるかもしれないが、出来は安定している。
塗りも色鉛筆で塗ったような(パステル調?)独特の塗りが世界観に非常にマッチしていて良かった。
・総評
色々と新しいことに挑戦するニトロ+らしい作品。
クリアするのに面倒な部分もいくつかあるけど、この究極的な二者択一は他では味わえない体験だった。