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Pollux_xxxさんの恋×シンアイ彼女の長文感想

ユーザー
Pollux_xxx
ゲーム
恋×シンアイ彼女
ブランド
Us:track
得点
70
参照数
803

一言コメント

正直なところ、よくわからない。新島氏が全てを担当したであろう星奏ルートに理解を示せないわけではないのですが、いまいち心に響かなかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まず、作品全体の評価としては平凡の域を出るものではないなと感じました。
特にゆいルートが大きな動きの際には何をするにも花壇が核になっていて当人自体の魅力がどうにも伝わってこなかった事や、一つ一つのイベントがどうにも面白くない。加えて元々いまいち会話が噛み合わない、思考がズレているのを天然でやっているタイプのキャラクターがあんまり好きじゃないという僕個人の趣向も合わさって辛かった。
会長ルートと彩音ルートはヒロインのキャラクターという点では良かったのですが、彩音ルートに限っては主人公である洸太郎君の言動が気持ち悪すぎるというのが読み進める上で非常にネックでした。彩音は主人公にまっすぐに好意を向けてくれるかわいいキャラクターであるにも関わらず、主人公が気持ち悪くてダメというゆいルートとは真逆のようなルートとなってしまい素直に受け入れられないのは口惜しい。


さて、発売直後は賛否両論で荒れていた星奏ルートなのですが、ヒロインに負の感情を強く感じるといったことはありませんでした。しかし主人公の洸太郎を含め、この二人の想いの湧きどころがよくわからない。
幼き日に星奏が告白の返事をしないままに居なくなってしまったこと、夏の学園祭での出来事をきっかけにして再び居なくなってしまったこと、どちらも、特に前者はしかたがない出来事だったと思います。星奏がどれだけ洸太郎のことを好きだったのかを推し量ることは僕には難しいけれど、たとえその想いが夢や仕事より大きかったとしても、夢や仕事を捨てることも周りの動きに反することも難しい、ましてや子どもなら……ということは容易に想像はつくのですから。

しかし作中の数年後に星奏がただ登場するだけではなく、スランプを脱するために利用したという意を込めた文章が明言されてしまうというのは中々に酷というか、良い印象を持たれはしないし僕にしても若干思うところはありました。しかも再び星奏はいなくなってしまうというのはその場面における洸太郎にとってはさらに酷であったとも思います。もちろん後に理由は説明され、一読者の僕としてはしかたがないことだと思うわけですが。
ただ、結局のところ洸太郎君は利用されたんだ、大嫌いだと一度は口にしながらも星奏のことをそれこそ幼い日からずっと想っていたのは間違いなくて、それは一つのシンアイの形なのでしょう。ならばそれは既に僕が踏み込む領域ではないとも思います。


……とはいえ、洸太郎君がなぜそこまで星奏のことを強く想っていられるのかというのは僕にはよくわからない。
星奏がどれほどの想いだったのかも、彼女が多くを語らないからよくわからない。
結果として洸太郎君から星奏へ向かうベクトルのシンアイだけが根拠がわからないまま示されてしまっていてどうにも響いてこなかったなあというのが最終的に感じたことです。
このあたりを僕自身が自ずから、もしくは作品の表現が変わることで上手く飲み込むことができるようになれば良く感じられたのだろうと思います。



と言うものの、(主に星奏が)話し合ったりすればもうちょっとなんとかなったんじゃないか、とか思っちゃうような場面が多々あって、そのあたりもモヤモヤする理由だったりします。