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Pollux_xxxさんの蒼の彼方のフォーリズムの長文感想

ユーザー
Pollux_xxx
ゲーム
蒼の彼方のフォーリズム
ブランド
sprite
得点
85
参照数
1684

一言コメント

ところどころ違和感や納得できない部分はあるものの、僕の目には眩しく映る青春モノの作品であった。あとフライングスーツでの着衣エロが少なすぎると思います。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 最初に書いた通り、色々と思うことはあるのだけれど、スポーツを絡めた青春モノというのは僕自身とあまりにかけ離れた所に位置するがゆえに好きな類のお話であり評価は甘めの点数となってしまっている。

 購入参考についての話を最初に軽く触れておくと、この作品の主軸はフライングサーカス(以下FC)という架空の競技についてのお話であるので体験版時点で全く興味が持てなかったという人は見送った方がよいかと思う。どのルートに入ろうとも練習と試合の場面というのはそれなりのウェイトを占めているので間違いなく続かない。
加えると主人公が選手として復活して大活躍みたいなことを期待しすぎている人(自分もそのような展開があれば熱いなあと思ってはいたが)は低評価になるんじゃないかと思う。





 それはそうと、僕は倉科明日香というキャラクターを直視できない。
僕が直視できないのは好きなことに努力し続けられること、折れそうだと思っても挫けずにいられること、好きでい続けられることという心のあり方――後天性のものであるし、そうあろうとする意思という方が正しいか――だった。
折れそうになるという点で頑強な人、本編の言葉を借りるなら化け物ではないのだろうが、このことを実際に実行しようとすると難しい。
「上を向くこと、頑張り続けること、元気でいること。そして、好きなものに真っ直ぐであること」というセリフをそのまま引用するが、僕にはとてもこんなことはできなかったし、今後何か熱中することができたとして実行できるか、と言われたらできないと言ってしまうがゆえに明日香というキャラは僕にとって眩しく見ていて辛くなってしまうこともあった。

 対照的にみさきは(というか主人公もそうだが)、自分では絶対に敵わないと思ってしまうような才能を前にして立ち向かうことができずに逃げてしまう。
自分より能力が劣っていた人が短期間で気付けばあっという間に自分を抜かして遠いところを見ている。そんなことはよくあるわけだけれど、実際に起こると自分の今までやってきたこととはなんだったのか、自分がやっても仕方がないという思いは生まれてしまうし、逃げてしまうことだってある。みさきルートにおいての二人は共感しやすいと感じた。勿論ヘコみっぱなしでは物語になるわけもなく、立ち上がって復活するというお話になるのだが、挫折した者同士で、という形は綺麗だと感じた。

 ここで違和感の一つについて語ると、みさきルートを先にやっただけに明日香ルートで平然な顔をしてみさきが部活に残っているところがとても違和感を持った。みさきは一人でどうやって心に折り合いをつけたのかが僕にはいまいちわからなかった。明日香ルートよりも心が折れるような出来事の回数が少なかったと言われればそうなのかもしれないが、真白ルートでも部活は一旦離れているしどうにも納得できなかった。

 明日香とみさきはFCの技術という点では優れているのだけれど意識がとても対照的だった点で比べてしまった。この二人に関して言うならどちらも乾沙希と試合をして勝つという目的というものが練習中に存在するし、才能がずば抜けていた明日香とみさき、そこまで突き抜けたものはない真白と莉佳という分け方に(とても大雑把だが)なってしまうのだろうか。

 参考について軽く触れていた主人公の復活という点。FCに再び関わるようになったことが復活への兆しで最終的に競技者として空に戻り活躍する、そんな姿を作中で見たいと思っていた人は一定数いたと思うし僕もその一人だった。
結局のところ、戻ることを決意したルートはあるものの、本編中では活躍が描かれることはなく、主人公がジュニア時代伝説の強さを持ったという設定はあまり活かされないまま終わってしまったという感は確かにそうだし、派手さに欠けるという点で減点をしてしまう気持ちは理解できる。
 確かに主人公だけを追っていくと作中ではひたすらコーチとセコンドに徹してるだけで何が面白いんだと思ってしまうだろうし劇的(主人公最強モノみたいな)快感はないなと感じた。
ただどちらかといえばメインヒロインの成長劇という面の方がこの作品は大きいのかなと感じた。明日香に関してはあまり精神的に云々ではない気がしたが成長はしているし。(主人公も最初の状態からFCに復帰しようと思うまでの心境の変化を考えれば成長したと言えそうだと思える)
少女たちが空を駆け、恋をする物語というフレーズの通り、主人公が主軸の物語ではなかったのかなぁとなんとなく思っている。

珍しくハイペースで一気に読み終えたのだが、読後した後は好きなことについてもうちょっと頑張ってみようと思える眩しい話だったなと感じる終わりだった。
また、架空競技であって1から10まで知りつくして見ることができないスポーツであるものの、読んでいて面白いと思えるように書いていたことは評価したいと思った。

 理屈や何かがあったり、再読を重ねたわけでなく、思ったことをなにとなしに書いてきた駄文ではあるが読んでくれた人には感謝を。

 あとなんでフライングスーツがこんなエロい格好なのにフライングスーツ着衣でのシーンが莉佳の1つしかないことに僕は大層ご立腹です。



 どうでもいい余談なのだけど、発売前に知り合いと(お互いに体験版プレイ済)フォーリズムがどんな話か、ということを説明しようとした際に、何かにたとえようとしていてあるライトノベルの名前を僕が挙げたのだが、結局本編をやり終えてもある程度イメージを捉えられていたんじゃないかという思いがなんとなくだが残った。全く関係ないチラシの裏的内容であるが備忘録代わりに。