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Planadorさんのアインシュタインより愛を込めての長文感想

ユーザー
Planador
ゲーム
アインシュタインより愛を込めて
ブランド
GLOVETY
得点
73
参照数
289

一言コメント

全てが終わって、還る先が独りきりの部屋だとしても、誰かが『想ってくれる』と知っているだけで、それは幸せなことなのだと。ロミは、七年もの間、ずっと周太を愛していたのだと。ちょっとの長文は「ロミ視点のグランド」についてと雑感の箇条書き。また、Us:trackの『恋×シンアイ彼女』のネタバレを含みます。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 大層にSFチックに語ったところで、語りたかったものは結局ロミ→周太の純愛なんですよね、本作。周太→ロミの感情は恐らくAPOLLOCRISISで出るのでしょう。
 でまぁ、グランドラストは、周太からすれば確かに恋人がどっか行った、となるわけですが、少なくとも『恋カケ』のそれよりかは悲観的なものではなかったかなと。

 というのも、小笠原でどさくさに紛れて音信不通、ではなく、あくまでアインシュタインを修理する、ということで離れて行って、そして郵送してるからなんですよね。
 確かに、周太からは連絡が取れるような状況ではないです。だけど、少なくともロミからは連絡がよこせる状況にはなっていると。
 それこそ『恋カケ』での星奏が洸太郎相手にやってたことと図式自体は一緒ですが、少なくともロミが直ったアインシュタインと共によこした手紙からは、恋カケに於いて星奏がよこした別れの手紙のような、悲嘆な雰囲気は感じられませんでした。

 というより、ロミはどう考えても周太の元に帰る気満々なんですよね。でなければ、「君にとってはつまらないと思える日常でも、しばらくは静かに受け入れてみて下さい」なんて書かないですよ。しばらく、の後に来るものは、勿論いつかのロミの出戻りです。
 なので、それも含めて恋カケ時のような悲壮感はなかったです。発売段階でAPOLLOCRISISの発表はまだありませんでしたが、全く出なかったとしても、本作プロローグ時同様に、また出会ったんじゃないかと妄想したとは思います。またいつかの、夏の夜の丘の上の公園で。

 ロミ視点から本作を俯瞰した時に、本作はひたすらに「掛け替えのない周太を守り抜くためのロミの決意」が裏テーマとして敷かれています。個人的には、それが余命幾ばくもない病に侵されたヒロインではなく、頭脳と知見と繋がりを以てして救おうとするという一点が珍しく、また個人的に好きな話でした。普通繋がりが云々というのは一ヒロインだけが説教するものではないですからね。
 というより、ロミがひたすらに街に灯りをともせ、と言ってたのは、例えば宮沢賢治が言うところの「因果交流の光」です。これはロミ自身の経験に依るところが大きいですが、インドの大学生とやり取りをしたなどという記述がありましたが、顔を知ってか知らでか、そういった繋がりを持つことで自身という個を確立させるものが人間です。そして彗星病の克服は、そのロミがしていることが直接的な解決法でした。
 周太は、彗星病を抜きにして、放っておけば若くして「無敵の人」になるところではありました。なので、「因果交流の光」を持て、と周太に問うことが唯一にして最適解でした。なので、どの道渡りに船だったんですよね。

 そしてロミが七年ぶりに帰ってきました。周太を守るために。周太の隣にいるために。周太に好きと伝えるために。
 結局、ロミも七年の間、周太のことだけは忘れられなかったんですよね。父親の死と共に七年前の記憶を封じ込めた周太とは対極的ですが、周太の境遇を考えるとこればかりは致し方なく。
 だからこそ、本作は「七年もの間周太を想い続けたロミによる周太救済劇」であり、それ以上でも以下でもありません。そして全てが終わって、また始まり、APOLLOCRISISへと続いていきます。

 他の諸々は各種レビューで既に語られてるので置いとくとして。APOLLOCRISIS読めばまた感想が変わるかもなので、まずは続編を走ってきます。クソデカ感情期待してるぜよ。
 下記は本編内容に関係あったりなかったりする本作への雑感です。他の人が語ってたり語ってなかったり。でも気持ちあまり語られてない辺りで。

・意図的に感情移入を「させない」ようにしているのは見て取れたので、各種描写が薄いのは仕様というか、これでいいとは思います。でも流石に唯々菜ルートとロミルートはもうちと恋心関係記述があってよかったと思うわよ。

・2ndOP、楽曲としてのAnswerは好きだけど2ndOPのムービーがいるかと言われると、1stOPと演出の仕方だとか使用CGだとかが丸被りで必要あったのかこれ状態に。どせい氏にはもうちと捻って作ってもらいたかったとこ……いやそもそも別んとこ頼んでくれた方がよかったですわね。曲も歌詞も完璧なのに本当にムービーだけはどうしてこうなった。寧ろ過去編EDにしてくれるのが一番よかったかな。それだ。

・星まりすだとか野上の動きだとかがこれ寧ろ周太刺激するでしょ悪手でしょさっさと銃殺とかじゃないとアカンでしょと思ってたら言わんこっちゃねー! さてはお前ら、アホだな?

・アインシュタイン=父親だったんだよババーンからのタイトル回収後側グランドEDの流れは、巫女が出てる時点でぶっちゃけあとは蛇足のようなものなんですよね。だってエクス・マキナなんですもん。ついでにモーメントはデウスなわけですから、繋げればデウス・エクス・マキナ=機械仕掛けの神なわけで。こうくれば物語を強制的に終わらせるというのは一発でわかります。そういう意味では、あのタイトル回収はそれこそ新島氏の「天啓」のそれであり、後付けだったんじゃないかなぁと。正直ロミのクソデカ感情と比較してしまうとちゃちいちゃちい()

・本作、メシアだとかミコだとか、伏線が伏線の体を成してなくて、ただ後で記述しますという宣言にしかなってないんですよね。流石にもうちと書きようというか、あ、出てきた的な感じにしかさせないのはちょっとどうなのと。

・エロシーンが質量共にあの体たらく、以上に戦闘描写があの出来なのは流石に頂けないなと。星まりすの躍動感とかが完全に消えてて流石になぁ、これはなぁ。

・豪華限定版の冊子にあるラフ通り、学園制服はラフ時の青基調のシンプルなセーラー服の方がよかったわね。決定デザインもいいけどたまにはリアルで全く違和感ないドシンプルな制服が見たかった。あとロミはこっちの方が似合ってたかなって。

・片桐過去話はあれ本編に入れないのは駄目でしょ、まぁ入れたら入れたでじゃぁ攻略ヒロインにしろよって声が上がっただろうけど。

・私と一緒に死んでほしかったと語るヒロインしゅきなの……幼馴染なのでバフもいっぱいかかっちゃう……しゅき……。