よい子の諸君! この作品は主人公が痛いだのヒロインが可愛いだと言ってられる内が華だぞ! 主人公やヒロインの言動にあるあると頷いたり創作者あるあるネタに共感してしまったりしたそこの君! 君こそ「ハミダシ者」だ諦めろ! 迂闊にこの作品に手を出すと致命傷で済む程度の傷を負うぞ! 長文最初はネタバレなし。ちな個人的攻略推奨順はあすみ→妃愛/詩桜→華乃。
そんな誇ることではないつもりですが、現状二次創作限定であるものの私も創作者、もとい物書きなんですよ。諸先輩から見ればまだまだ若造且つ青二才だとは思いますが、一定の矜持は持っているつもりです。こちらで一式公開しています(宣伝 https://www.pixiv.net/users/4336369
で、本も作ったことがあってコミケが無くても書いてる時は書いてるし、そういう意味では創作者脳的な舵の切り方してる節はあります。というか今年は多分ノベルゲー読んでるより物書いてる時間の方が長い。
まぁそういう意味ではそもそも詩桜は当初の設定の段階からかなーり自分と似通ってるとこもあるよな、というのは正直ありました。あそこまで破天荒では勿論ないですが。でも自分他の全て差し置いて旅好きだしなぁ。
前置きはこんなところで。ということで、お初まどはクリエイターあるあるネタ辺りがあればいいなと思って買ったんですよ。あと初見で華乃が可愛かった。
で、蓋を開けてみれば、キャラゲーのお手本と呼べる内容もですが、何より大元のテーマとキャラが抱えてる、考えてる内容がしっかりルートに組み込まれていたんですよね。
一枚絵は各ヒロイン21~22枚+その他7枚。シーン回想は妃愛6他5ですが、華乃のみ「愛欲の日々」に於けるフェラ自慰が入ってないのでこちらも実質6かなと。
作中BGM29曲+OP曲+各個別ED4曲+あすみルート挿入歌は中々頑張っていると思います。おまけモードで歌曲が一切聴けないこと、OPムービー再生が出来ないことが不満点でしょうか。
あと、地味にサブタイがネタわかると面白いものばかりなんですよね。
個人的には「汚ギャル」「濡れたまんまでイッちゃって!」「#炎上覚悟で嫌いなものを言う」「かいちょうのおしごと!」「ん? 今、なんでもするって」「あだ名は『性的搾取』」「絵が上手い人は絵が上手い」「天使は鼻をほじらない」「72時間働けますか」「この世の全てを置いてきた」「偉い人にはそれが判らんのです」「ひじ・りりりこさん」「この指止まれない」辺りがツボ。
一部大丈夫かそれというのもありますが、ここでそれを突っ込むのは野暮ということで。
ルート構成もとい内容は、大分して妃愛・詩桜と華乃・あすみとに分かれます。前者は共通終了段階までの智宏がどのようにしてこのように至ったのかという理由の説明、後者は智宏がヒロインのやっていることへの手伝いをすることがメインとなります。
なので後述しますが、タイトルでいうところの、前者が「ハミダシ」パート、後者が「クリエイティブ」パートを担っていると言えます。とはいえ、後者も十分「ハミダシ」要件を十二分に満たしていますので、そういう意味では前者の方は少し片手落ちなようにも見えるところではありまして。
前者の方は、キャラが良くも悪くも他ルートでも立っているのも特徴です。後述しますが、よく言えば他ルートでも重要キャラ、悪く言えば個別ルートの必要性が少し落ちるかなと。
本作は、タイトルに偽りなく、「ハミダシた者」による「クリエイティブ」なことが前提となって話が進みます。ですが、別に創作の内容の専門的なことを頭に入れておく必要はなく、寧ろまっさらな気持ちでやる方が楽しめるかなと。
そういう意味では本作、エロゲ初心者にも気兼ねなく勧められる一本です。2020年9月ゲーの内、シナリオ寄りの作品がやりたいならさくレット、キャラゲー寄りがやりたいならハミクリを推せば外さないレベル。なんなら初めてのエロゲにももってこい。
そんなこんなで万人に勧められる作品です。気に入ったキャラがいればそれだけで買いでも問題ないでしょう。但し一つだけ注釈をつけるなら、「ガチの陰キャはやるのやめとけ」ということ程度ですが、ともあれ今年を代表するキャラゲーの優等生かなと。
以下ネタバレ込みでキャラ別感想。攻略ヒロイン組は個人的攻略順に。
和泉智宏
くじ引き(じゃなくて強制的に選ばされた)生徒会長もとい主人公。
個人的には最初の段階でそこまで嫌悪感を感じませんでした。いやまぁそりゃガチャ引くのが妹の金というのはというのはないではないですが、これこそ物語上意図的にやりすぎに見える演出と理解してましたし。
結局、智宏は常に妃愛に引け目を感じながら生活をしていたわけですが、かといってそれを解消できるきっかけがなかったのも事実で。なので、生徒会長は智宏にとっても丁度いい機会でした。
ともあれ、詩桜が「君は『できない』のではなく、典型的な『やらなかった』だけの人間」と評す通り、所謂典型的な「本気を出せばちゃんとやることは出来る主人公」ですが、そこまでは実に紆余曲折。まぁこの辺りは本編やってもらった方がわかりやすいですが。
でも彼、詩桜ルートでの生徒会長再選の際「他人に選ばれた人生が楽しくなることもある」と語ってますが、他人が敷いたのはあくまで道床だけで、レールを敷いたのは智宏自身なんですよね。これはどのルートでも同じです。
詩桜ルート終盤が詳しいですが、自分がした努力をそれ程でもないと無意識に思っている節があります。ですから、彼が嫌われるとしたらそこでしょうか。「あれ、俺またなんかやっちゃいました?」は俺TUEEEEE系作品での主人公がよく言いそうなセリフですが、智宏もその実言える素質はあります。
結局、幼少期の経験より、人間不信をこじらせてるだけで、コミュ障ではないんですよね。共通で華乃とこっそり話してて、その内容を仮に問われた際の返答として「過去作のゲームの感想求められた」というのは本当に上出来。あれは会話慣れしてないと出てきませんよ。妃愛との会話で素地はあったというところでしょうが。
にしても、こうして見るとプレイヤーは余程自分に自信がない限り自身を投影するには中々危険な主人公です。羨ましいと思うことはあれどクズな主人公として見下す要素は殆どありません。
周囲の助けを得ながらとはいえ、自分が望む箱庭を自らの手で作り上げられるという点で、ある種この作品の主人公足りえるキャラであったように思います。――こうしてみるとガチなハーレム作れた気もするねぇ……それやると人間性が終わっちゃうけど……。
個人的には、生徒会活動をするにあたって、推しが推しであるからという理由で特別扱いしなかった点はだいぶ好印象でした。わかりやすい例が共通に於ける華乃との会話ですね。
ところで、戦デレはどのルートでも実質引退したんですかね。データ一旦消したのは詩桜ルートだけですが、他も上位にいる意味がないということになるなら……いやまぁ話追うだけのエンジョイ勢になっててもおかしくないですけど。話追わないとヒロインとの会話接点消えちゃうもんね、特に華乃。
まぁ共通段階で、「戦デレの魅力の大部分がののかさんのイラストなところあるし、推し絵師と直で会える現実のほうが、今はソシャゲより強いかな」と、ソシャゲと現実どちらだけがうまくいくと出来てると言われた際の空想を仮定した際に考えているので、やがてはエンジョイ勢に収束するのでしょう。華乃がプレイするのを横から見るだけになっててもおかしくはなさそうですな。
聖莉々子
FD要員一人目――というとアレだけど、立ち絵がある割に出演自体は少なかったよなーとか。
基本的に出てくるのがOP前の生徒会顔合わせと共通終盤の熊本県の海岸、それと個別終盤の文化祭程度なんですよね、この人。なのであくまで「どっかの生徒会長」ということ以外の印象がどうしても薄い。
そういう意味ではFD要員というにも弱いかな、という気はします。個人的には生徒会顔合わせの不登校議題の演説の内容的に「政府の介入を望まない熱烈な自由主義者」というのが頭からこびりついて離れず。
せめて、詩桜ルートでもう少し絡む案件があってもよかったんじゃないかとは思いますが、ともあれ、正直語ることはないというのは本音です。
あぁでも、華乃ルートのののかさん認識案件ととあすみルートの「ひじ・りりりこさん」は面白かったですね。となるとFDが出た暁にはオタバレりりりこさん的なシナリオが来るのでしょうか。
新川広夢
コスプレイヤー稀礼でありVTuber雨野葉レマでありと、活動自体は実は攻略ヒロイン群よりも多岐にわたるクラスメート。
男キャラとしては主人公以外では唯一の立ち絵付きキャラでしたが、クラス内の会話以外で出番があったのは存外に少なかったかなと。昨今の男友達枠の不遇っぷりを考えるとこれでも奮戦した方なんでしょうが。
個人的には、雨野葉レマであることがばれるのがあすみルートだけだったのはちょいともったいなかったよなぁと思います。となると明かすのは共通しかないわけですが、レマの顔バレ→稀礼名義でのコスプレの際レマと確信した誰かに絡まれる→智宏が助ける、みたいな流れが一番話としては盛り上がったかなと。で、ノーマルエンドに至った際に更にそれで盛り上げられれば、という感があったんですよね。
最近だと男の娘シナリオもかなり需要が増えてきた感はありますし、問題はなさそうでしたが……まぁブランド傾向に合うかどうかはなんともですが。
ともあれ、サブキャラも十分濃かった本作ですが、それが故に莉々子と併せ、もうちょっと使いようがあったかなと思ったキャラです。
和泉里
元読モの、智宏と華乃と広夢の担任であり生徒会顧問であり智宏と妃愛の従姉。
どうせなら顧問として教頭とバトる図はもっと見たかったかなと。智宏が孤軍奮闘してたのはありますが、他各キャラ、特に顧問としての里の活躍はあってこそでしたから、そこの描写がもっと見たかったですね。
読モの話自体は、天梨と話が間違いなく合うわけですが、その話がなかったのはちょっとなーと。ただ、内容的にやるならそれこそ天梨ルートでしょうから、FDまで取っておくということなんでしょう。
まぁ正直なこと言うと、ノーマルエンドに於ける暴走っぷりと、智宏主観の里の様子を見る限り、FDでルートとかが無ければ、この人一生独身で終わりそうだよなぁとかなんとか。
個人的には智宏と妃愛の保護者であり、温かく二人を見守る立ち位置であるからこそ、詩桜ルートで明かすからくりの内訳と併せて、それに徹してほしかったなと思うところです。ノーマルエンドは先述の通り広夢メインで。
竜閑天梨
実名で読モをやる智宏と華乃と広夢のクラスメート兼生徒会庶務。
正直、体験版段階での評価はかなり悪かったです。というのも、自分で思っているより空気読めないのかな、と気付く割にはそれを自省しようとしていなかったからなんですよね。
どうしてそうなるかって、根が実は陰キャなんだろうというのはありました。正確には、自分のペースで物事を運ぼうとするけど、人のペースに合わせるのは苦手という。
内心ではそんな気はない、直せるなら直したい、だけど直し方がわからない、わからないから放っておく――集団の中にいた天梨の内心の想像ですが、こういった葛藤みたいなものはあったのかと。
結果的に、共通段階でハブられているというのは、特段の描写はありませんが、なるべくしてなっているんだろうなというのはあります。良くも悪くも「顔がいいから」で何事も許されている、というような様子であることが窺えた、というのが第一印象です。ちなみに自他共に陰キャと認めると華乃のそれになります。
こういう立ち位置になった理由として、華乃の反応が顕著ですが、共通段階での「集団は怖い」というテーマの先鋒に据え置いたからというのはあると思います。華乃が共通段階で「群れた途端に気が大きくなる集団が苦手」と智宏に語っていますが、華乃からすれば天梨も同じに見えていたわけです。
結果的に、天梨は集団だからと言って気が大きくなるということはありませんでしたが、それはそれとして集団の大小に関わらず自分のペースを貫こうということだけは変わりませんでした。その結果がOP直前の、一枚絵が差し込まれた疑惑のシーンへと繋がるわけです。あの段階では正直評価が地の底でした。
ただ、体験版パート終了後(OP以降)、生徒会活動を手伝い始めてからはだいぶ改善されました。それは、天梨が収まるべきところに収まったからというのが第一にあります。
特に華乃ルートは華乃と波長も合い、今後華乃の手伝いも智宏と併せがっつりやってくようになるのかなと。まぁ、そういう意味では共通のためのキャラであり、共通が一番の見せ場でした。
ルートがなかったのは、やはり「陽キャ集団に混ざれる程度にはハミダシていない」ことが一番の要因ですね。この状況からルートを持って来ようとすると、「陽キャ集団から完全に見捨てられ傷心の天梨に手を差し伸べる」ことからになるわけですが、それは共通からその流れが必要で、そしてそれは不必要に無駄シリアスが増えてしまいます。
とはいえ、率直に言えば、人間性的にハミダシ一直線になりかねないのも事実ではありました。だけどその方向性でやるとほんまに目も当てられない程人間的に悲惨なことになりそうなので、結局はこの塩梅で正解だったでしょう。
ともあれ、FDではコスプレイヤーとして開眼した天梨との、みたいな感じになるのかなとか。まぁこの辺りはFD待ちですね。終わってみればFD要員呼ばわりも納得のサブキャラでした。
鎌倉詩桜
前生徒会長にして作家星しをんの中の三浦大根。
他の人の感想見る限り、全般的に体験版段階ではだいぶ評判が悪かったようですが、個人的にはこの時点では天梨の方が心象が悪かったです。理由は先述の通りですが、詩桜の行動理念が割と納得できるところが多かったのと、発言内容が割と個人的に常々考えていることとの共通項が多かったからのもあります。
まーなんというか、冒頭に書いた通りですが、色々な意味で自分との共通項が多すぎてお前は俺か。詩桜を無能にすると自分になる。勝手に投影してはいけない。
にしても、OP直後の智宏と詩桜の会話は刺さりまくった人も多いんじゃないでしょうか。この辺りは後述しますが、なんというか、作中一番攻撃力が高かった場面です。
みかんカフェでの智宏の行動からの急接近は少し性急かなとは思いましたが、ここは終盤への智宏の印象を語る場面でちゃんと布石が敷かれてたことはわかったのでいいとして。
四国旅行の行先は、共通でもじゃこ天が出てきた愛媛県八幡浜市でしょうね。佐田岬半島の付け根と思しき描写もあるので確定でしょう。先端の三崎から大分県側佐賀関まで船で抜けてみたいですねぇ……。
あと、「無理に名所に行かず好きなように行動する」旅の面白さはガチです。ぶっちゃけ私はそれをするために生きてる節があるから間違いない。
観光客向けの〇〇なんて、ある種のファストフード的な「金太郎飴的観光」になりがちなので、こういう「あてもなくぶらついて地元民向けの店に入る」というのが一番の旅の醍醐味、というのは是非ともここでお伝えしたく……。にしても鎌倉詩桜、この辺りはほんまお前は俺か。
あと強いて言うなら、夏がおすすめと詩桜は言いましたが、個人的にはあの辺りは春がおすすめですかね。春の西予南予の海はとても穏やかな気持ちになれるんですよ……。まぁ春だとシマアジはないですけどね。
話を元に戻して、その後の文化祭での智宏による脚本は、ここに関しては智宏の片手落ちかなぁと。というのも、どれだけ「文章を意識的に読んでないか」ということに尽きるんですよね、ここ。
それこそ、ソシャゲの戦デレは、記述を見る限り、ストーリーモードとしてノベルゲー的に「読むパート」があるわけですが、書かれている文章の「方向性」を少し気にしていれば、いやそうはならんやろと思ってしまうとこなのですが。それとも当然じゃないんですかねこれ。
まぁこんなこと言ってると、絵心ない相手に「なんでそんなデッサン狂うのおかしいでしょ?」とかいうのがぶっ刺さって死ぬんですけどね。自分も漏れなくお亡くなり。
でまぁ、正直言うと後半以降の展開は割と疑問符が付くんですけどね。くじ引きのからくりを明かすルートであるが故に、生徒会長としての職務が実行できない状況に持っていくのもどうなのかなとは。
とはいえ、事故のくだりは単体で見るなら実は好きなんですよ。あそこの妃愛の感情爆発は、個人的には妃愛ルートに於ける告白よりも好きです。ただ、文化祭などを差し置いて突っ込むものだったかと問われるとはそれはまた微妙なところで。
くじ引きに至るまでの流れが詩桜も被害者なのはわかったんですけどね。個人的には愛宕さんの話にノリノリで乗っかって、というのが見たかったところもあって。
正直詩桜は実はいい人でした的な感じじゃなくてよかったとは思うんですよね。だって物書きって精神破綻してる人いるとこにはいるし……ソースは自分()
ラストも、無理に生徒会長をするというのではなく、詩桜と同じ大学を目指すという観点から勉強と文学と、というのでもよかったかなとも。何故そうなるって、作家は、智宏でも目指そうと思えば目指せるものだからですね。
華乃ルートでは絵の手伝いを、あすみルートでは配信の手伝いを目指すということをしているに、じゃぁ詩桜ルートでの智宏がなるべき姿として見たかったのは編集者なんですよね。この二つがヒロインを押す役回りを目指すだけに、詩桜も編集者の形で行けたんじゃないのかなーとは。
そりゃ、声優はそれこそ声優自体にも、それのマネージャーにも中々難しいところがあるので、妃愛ルートで妃愛と同じ方向、というのは難しいのはわかるんですけどね。妃愛とはそもそも「兄妹」であることが最優先に置かれるべきですし。
あとはまぁ、ヒロイン四人の中で当人のそれまでの「成果物」が全然出てこなかったよなと。妃愛は散々キャラの声、華乃は個別に至るまでイラストがぽんぽん出てくる、あすみはそれこそ共通から個別まで雪景シキとして活動中。そんな中、詩桜のみ著作の話が全然出てこなかったんですよね。
個別では智宏による台本執筆はあって、それをプロとして添削する、というのはあったとはいえ、結局作家としての内訳は他ルート含めた台本執筆に収まってしまったところが大きいなと。
キャラとしての魅力は、大御所としての俯瞰的に物事を見るというスタンス上、他ルートでの助言乃至核心を突く場面での方が際立っていたというのもあります。そういう意味では、自身のルート外の方が色々と映えてたキャラではあったかなと。もうちょっと突き抜けてくれた方が面白くなった気はします。
ひとまず、八幡浜の背景、あれ八幡浜にちゃんとあるんですかね教えてエロい人。旅好きなら行きゃいいだろと言ってはいけない()
追記:聖地自体は八幡浜市ではなく宇和島市津島町岩松のようで。丁度聖地写真が掲載されているサイトもありましたhttp://matinami.o.oo7.jp/sikoku/uwajima-tusima-iwamatu.htmlが、しかしあの本編記述では八幡浜でしょうに……。
和泉妃愛
今を駆ける大人気声優小泉妃愛その人にして智宏の実妹、生徒会副会長。
なんというか、家庭環境に起因するものではありますが、大人でもなく子供でもなく、実に「少女」というキャラが出ていたなと感じます。
というのも、共通でわかることですが、妃愛が常に追い求めていた幻想として母親の存在が挙げられるんですよね。「もう誉めてもらうことのできない母親に、追いつきたい、でも追いこせない的な憧憬はある」わけです。
勿論幻影的な側面もあります。両親が死んで、親戚の対応を見て大人というものは信用できないものだと知って、その上で仕事上の大人にはいい顔をするも、あくまで期待はしないというスタンスが身に着いた、それが妃愛の人生観です。明文化はされてないですが、早期引退を時折考えていることからも、一種のピーターパン症候群でもあるでしょうか。
ルート的には裏垢の存在がばれたことによる炎上ですね。その上で一言でまとめるなら上記を踏まえた「家族モノ」です。共依存兄妹のシナリオとしては、これ以上の説明は必要ないでしょう。智宏と妃愛が家族であるがための話であり、共通から個別に至るまで、妹は絶対に妃愛一人であってほしいと願うのも頷ける、見事な共依存兄妹でした。
さて、妃愛ですが、基本的には自身の個別と詩桜ルートでの事故場面以外では負の感情をプレイヤー相手にすら見せてません。智宏相手に見せる各種表情は家族としてのそれですが、智宏相手でも基本的には強くあろうとしていました。
智宏の世話をすることが生きがいとなっている理由は共通と妃愛個別で語られた通りですが、結局妃愛にとっての生きがいは智宏ただ一人のためになんですよね。そしてこれは恋愛感情が芽生えなくとも変わらないですし、ともすれば智宏が妃愛以外の相手を選んでこそ輝くとも言えます。
それが故に、他ルートでの付き合い報告に対する妃愛の反応が光るわけです。あすみルートが顕著ですね。妹離れするのかとしんみりする妃愛に、妹離れはしないと智宏が告げるが早いかテノヒラクルーする図は、智宏が妹離れしたくないからではなく、智宏が妃愛のことを想ってるが故のことです。
結局、妃愛が唯一求めることは「智宏と兄妹で居続けられること」なので、言ってしまえば恋愛感情が一切なくとも妃愛ルート自体は成り立ちます。何より、妃愛ルート以外の方が、智宏と「もう一人自身の強力な理解者を得られる」という点で、妃愛にとっても恩恵はでかいわけです。
そういう意味では、智宏が選んだヒロインとの同居が許されるのなら、その方が妃愛にとっても一番の幸せなんじゃないかなという思いは個人的にはありますね。誰しもが主役級の人生だと持て囃す中、自身は実兄の傍にいられればいい、兄が私でない別の誰かを選んでも、常に脇役として傍に置いてほしいと願う、和泉妃愛はそんな妹でした。自分が実の兄妹シナリオとして一番見たいものを見せてくれたのでその点でも満足です。
錦あすみ
VTuber雪景シキの中の人、生徒会書記。あと元ボイトPのmiasu。
VTuberであることを前面に押し出してますが、その実個別の内容自体は作曲関連のネタの方が比重が大きい節があります。まぁ他に作曲家ヒロインはいないので全く問題はないです。VTuber設定は初期段階では昨今の時流に合わせただけというのはあったのかなと。
ルート自体は割とサクセスストーリー感はあったかなと。実も蓋もないことを言ってしまえば、あすみの何が運がよかったかって、一言でいえば親が金持ちになるくらいに著名な音楽家だったことなんですよね。そうでなければ機材の理解はないでしょうし、何より機材自体が買えないので、Pとしての足掛かりも出来ませんでした。
それとは別に、あすみにとっての一番の幸運は無名の自身のファンに図らずも応援していることを直接的に伝えてもらったことなわけですが、如何せんここで好感度があがりまくってたよなと。もう少し緩やかでもという気はしますが、常に慕ってくれる後輩というのは、ユーザー視点ではプレイモチベ直結する存在ですし、これで正解でしょう。
とりあえず智宏くん! ひょろくてよかったな! あえて脱いだらすごいんです的なものがあったら面白かったかもだけど、流石にそれはいらないか。――BMI値18程度の自分なら認めてもらえますかね? 私事ですが先日の健康診断ではBMI値17.6だったよわぁい! わぁいじゃないが……。
文化祭か名古屋かを選択を迫られる場面では、シリアス案件レマ同様顔バレじゃないんかい! とは思いましたが、あすみの性格的にあすみに負荷をかけるシナリオ構成を避けたのかなと。正直、シリアスの理由があすみに起因するものではなく、本人の責に一切依らないものだったのは如何ともとは思ったところではありますが。
まぁ、VTuberとしての特性を生かすなら、現実の融合と分離でしょうから、結果的にそれを最大限生かした内容にはなりました。ラグを踏まえてというのも、少し考えればわかる話ですが、中々意識出来るものでもないですし、ちゃんと組み込まれてたのはよかったなーと。
そんなあすみ個別ですが、創作者的観点で見るべきポイントは「愚痴を吐き出す相手の重要性」ですね。結果的にあすみは智宏という相手を得られましたが、あすみがこれまで出会った人らが、そういった相手を見つけられたかということを殊更に気にしていました。
これは本当に現実でもその通りで、創作者というのは得てして孤独になりがちです。だからこそ、その実何を差し置いてでも書かれるべきことですし、創作者がすべきことをこうやって突っ込んでくれたのは嬉しかったですね。
キャラ的なモチベを保ちやすいキャラ設定であり、ある種創作者にとって一番重要なことを語っていて、何より他ルートと比較しても胸糞要素が格段に少ない。
そういう意味では、この作品で最初にやるべきルートはあすみかな、とは思います。プレイヤーから見て最初から好感度MAXで、それが落ちることがないので、早い段階からブヒれるんですよね。まぁそれも含めて、ある種一番キャラゲーらしいルートかな、とも感じます。
FDは歌手としての錦あすみデビューになるんですかね。なんだかんだ雪景シキとの二足の草鞋を平気な顔してこなしそうです。
常磐華乃
人気イラストレーターののか当人、生徒会広報。
とにかくキャラ的に何が安定してるって、どのルート行っても限界オタクなこと。ひよりんに初めて面と向かって会えば超絶キョドって、智宏とは陰キャトークで盛り上がって、あすみルートでは歌聴いて自分が聴くことで穢してしまうと言い。
まぁ、とにかく女オタクであり、女オタクであることを恥ずかしく思いながらもそれで食うという、ある種ステレオタイプですがそれが故にいるいると納得するようなキャラ設定です。
で、肝心の個別ですが、堂々のtrueルートでした(妄言 ――いや妄言とは言わせない。
先に一つだけ言うならば、華乃は一番智宏に「近い」キャラです。オタクで、陰キャで、息を潜めて集団をやり過ごす、だけど気の合う人とは一緒にいたいと願うけど、こんなんじゃまず相手に駄目だしされるだろうと諦めてもいる。
智宏と違い、華乃はBLへの造詣もとい興味がガチなので、その点でもつらい面がありました。とにかく「図に乗ると、際限なくいくところまでいってしまう」ということを理解しているが故に、箍が設けられ、そしてそれによって苦しんでいました。
そんな華乃が成長できたのは、ひとえにクリエイターとして、誰よりも自分に妥協しない性格だったからということに尽きます。自分に厳しい人って、自分のことをどうすれば律せられるかということを理解しているという意味で、自分を知っているんですよね。
で、共通までの段階では、妥協しない性格というものは、対人関係には振られてこなかったものです。それが、智宏との再会と生徒会活動を通して雪解けへと向かうわけですが、それでも共通終了段階ではまだ生徒会面々にしかそれが出来ていない状況でした。
そんな華乃の転機は、個別突入直後の修正線引きにあったことは間違いありません。勿論共通段階で智宏が気になる相手になっていたのはありますが、あそこで即駆け付けたことこそ、華乃の智宏への好意を決定づけた場面でしょう。そこに、恋愛には理詰めはいらないと言う華乃にとっての恋愛の理想形がありました。
そして、生徒会活動から連綿と続く流れではありますが、人を信じるということを華乃は覚え始めます。まずは天梨。続いてクラスの一部の人。クラスの人は、バニー喫茶の提案の際に、華乃も含めて女子で盛り上がっていたという記述より、恐らく天梨の紹介でしょうが、一部の人とは打ち解けられるようになっていたと見ていいはずです。
そしてそんな華乃を支える智宏が実に主人公してるんですよね。共通段階から妃愛が最優先というのは変わりませんが、それを踏まえつつも、少なくとも華乃からすれば「自分のために動いてくれている」という行動を逐一起こしてくれています。水風呂での潜水チャレンジでの場所貸しも、中々頼まれて承諾できるようなものでもありません。
これらは最初は「智宏はひよりんを絶対に裏切らない」というところからくるものでしたが、やがては智宏自身への信頼へと変わっていきます。相手が自分にとっての核爆弾のスイッチを所持していることを忘れなくても、それを押す気が一切ないと信じるに値するまでに華乃からの信頼を勝ち得たのは、ひとえに智宏が文字通り真っすぐだったからに他なりません。
何より、冒頭で「新しい生活が始まると期待しつつ転校してきた」というのをその後もずっと覚えてたのは中々に強い。ここは、「俺のせいで台無しになった」というのが付け加わって、且つこの段階では既に付き合っていたからこそではありますが、ともあれ「人を信用するということに妥協しない」ことに華乃が舵を切れたのは、智宏の一つ目の大きな功績です。
そんな華乃の成長を一番感じさせたのはバンド演奏に関するクレームに関して「金額」を提示して押し黙らせたとこ。
対人関係が嫌いになる理由の一つに「理不尽な物言いがある」というのは現実でもそうだと思いますが、華乃はいつか受けた理不尽な物言いを目の前の相手に転嫁するのではなく、根拠と明確な尺度を持って理不尽を制しました。対人関係の嫌なところを、逃げるのではなくて真っ向から立ち向かったわけですが、オタクと思われたくなかったという心理からの脱却がありました。
そして、このルートは智宏の成長も著しいです。それがよくわかるのが生徒会中の出し物チェックの際。正しくチェックしたところを逆恨みされそうという妃愛に対して、「なので、対人関係の案件は俺が担当する」ってすごくナチュラルに言ってるんですよね。
これ、対人関係の面倒事は智宏一人で処理するって考える間もなく宣言しているわけなんですよ。集団をやり過ごすことばかりを考えていた智宏が、人間が関係する面倒事を自分から片付けに行っているんですよね。
勿論生徒会長だからだとか、妃愛には行かせられないというのはありますが、それを一切おくびにも出さないどころか怖くもないという態度で臨んでいるところに、他ルートにはない成長を見れたように思いました。
そして、それらを抜けた先にある智宏の独白が、「残りの1年半、華乃と二人で、学生らしい学園生活を送るんだ」に繋がるわけです。正直ここは感動しましたね。昼休みに二人で弁当をつつくことだとか、放課後のデートだとかを、全てが終わった後の楽しみに据えているんですよ。
そんな中、ED直前のメイド服華乃は、今まで相手をするのも嫌がっていたクラスのギャル集団から可愛い連呼されています。こういった相手からブス呼ばわりされたのがトラウマだったのに、恋する乙女として可愛いを繰り返し言ってもらえた。この時に初めて、華乃の集団恐怖症は解消したと言っていいでしょう。
ED後は、二人して一緒の大学に行きたいとまで華乃に言わせてます。あれだけ集団恐怖症だった二人が、自ら集団へと飛び込もうとしている。これだけで、華乃ルートがtrueルートであることは疑いようがありません。本当に素晴らしい成長物語でした。
ちなみに、妃愛が兄がいないなら学園より仕事優先しようか考えていたけど、あすみがいるならちゃんと卒業するとあすみに語ってるのも華乃ルートだけです。やっぱり華乃ルートが一番円満な終わり方してるじゃねぇか。
さて、このルートの主題を一つ上げるとするならば「融和」というのが正しいでしょう。
華乃はかつて自己紹介の失敗で、絵で、漫画で、クラスという集団から迫害されました。そして、それを踏まえてですが、華乃は主に陽キャ集団への「偏見」を持つようになったのは確かです。最初は天梨をいけ好かない視線で見ていたのは代表的で、それ以外にもサッカー部への対応などがその一例として挙げられます。
ですが、智宏の出会いを、生徒会活動を通じて、華乃がまず覚えたのは「偏見をなくしてみる」ということでした。そしてこれらは、全て智宏と歩調を合わせて行ってきたことでした。なので、智宏と華乃が見ている視界は限りなく同一で、そしてそれは多少揺さぶられてもずれることはありません。
あすみルートは不登校のテーマを、「先輩が手を差し伸べてくれたから」としています。華乃ルートでは、智宏がいることに加え、周囲に自分を認めさせるという付加要素が付きました。それは、自分が嫌な思いをしていても心配することをやめなかったあすみではそれは発生しえず、無意識に自分が付き合える相手と付き合えない相手とを線引きしていた華乃だからこその成長です。
智宏は推しと運よく付き合えただけかもしれない。華乃は波長の合う相手と付き合うことが出来ただけかもしれない。だけど、久々に出会ってから、この二人は正に二人三脚で歩みを進めてきました。ですから、この二人が付き合うのは摂理であって、必然です。
あとこれは個人的にはなんですが。「創作物にはプライドがあるから、自分のイラストを自分の顔だと思って堂々としていたい」というのは全力で頷いてましたね。
創作物なんて、誰かからすれば低評価にはどうしてもなってしまうものです。だから、どんなに質が悪くても創作者である自分だけは自分の作品を愛してやらなければいけない、その矜持が見えたのはすごくよかったです。自分の創作物を自分が愛さなければ、それはある種の孤児としかなりえないのですから。
まー華乃ルートに関して不満があるとするならば。初体験シーン、他三人は全員完全に脱がせてるのになんで華乃だけソックス履かせてるんですかそこは完璧に脱がせましょーや。
あとおまけの北条氏康のコスプレエチ。折角北条綱成のコスプレさせた一枚絵があるんだから、なんでそっちでエロシーン突っ込まないのよ。もしくは文化祭のメイドか一つ目のシーンのワガハイ制服コスプレ。
エロゲの着衣エロって、「立ち絵や別の一枚絵で着せたことのある衣装が淫らに脱ぎ散らかされる」からこそエロくなるもんだと思うんですよ。ぽっと出の初めから脱がされてる衣装は興味ないんですわ。
いやまぁそれ言い始めると、この作品地味に水着えちなかったから一人ぐらいあってもよかったんじゃないんですかねとかなり始めるけどさ。枠としては水に浸かる練習してた華乃だろうなとは思いつつ。もしくは背中水着で流してたあすみ。
と、逆に満足してしまうと見たいとこが増えまくるのは大好きな話だったということの証左ということにしてもらうとして。
ということで、ルートもキャラも華乃が『圧勝』でした。あすみも好きだけど智宏の嫁としてはもう華乃しか見えん。
――ところで華乃の彼氏要件として「『柩』のコスプレ漫画版アニメ版劇場版それぞれしてもらう」ってのがあったけどその話個別ではなかったわね。エロシーンというとこ含めてFD要件なんだろうなぁ。でもFDには是非とも双方完全全裸セッをですね。
追記:妃愛視点で半年~一年後ぐらいの華乃ルートアフター書きましたので宜しければ。「うっちゃりなんて望んでないし」
Pixiv:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14050703
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まとめ
共通のテーマであり、各個別終盤で再び出てくる本作の裏テーマは、狭義では不登校、広義では「ハミダシ者の生き方」です。どのヒロインも個別終盤に一回は「自分はハミダシ者である(要約」と発言し、また自身のハミダシた生き方に折り合い、もとい着地点を見つけます。
元から唯我独尊だった詩桜はともかくとして、生徒会が終われば、誰かしらがいなければ学校通っても、となっていた華乃とあすみはそれが特に顕著で、共通からの流れとしても、この二人は自身のルート外でも友人が出来たという事実だけでいい方向に持って行けたというのは言えると思います。
とはいえ、攻略ヒロイン群は、確かに学園生活が合わないという理由もありますが、それより「手にある職が忙しいから」という理由が主で不登校であったので、所謂引きこもりのそれとはまた違っている点に留意する必要があります。
攻略ヒロインは全員、ハミダシ者でありながら、それでも一芸に秀でているだけあって、元々一本以上筋を通した生き方をしています。残酷な言い方をすれば、不登校であるからと言って、ただ漫然と毎日を過ごしているわけではないのです。
ヒロイン群は、言うなれば「同年代より一歩先に大人の世界に踏み出している」わけですが、精神まで大人になりきっているわけではありませんでした。それはあすみの自己卑下、妃愛と華乃のトラウマ、詩桜の自己中行動などに表れています。
そして、そんなヒロインを導くのは我らが主人公智宏くんなわけですが、智宏自身が大人でない、そもそも物語開始時点では智宏は誰よりもクズ、という扱い(両親死後の扱いに依るとこも多いので擁護は出来る)なわけで、そもそもがヒロインより子供なわけです。そこから、強制くじ引きの生徒会長就任で眠っていた本気が呼び起され、と書けばある種の異世界転生モノラノベですが、実際智宏からすれば同じようなものでした。
智宏は、基本的にやればできる子として描写されています。それは目の前に大量のアメがあって、ムチはそこまでないというおいしい状況というのもありますが、それらの前に「筋は通す」ことが第一にありました。それが詩桜ルートでのみかんカフェ手伝いであったり、華乃ルートの徹夜であったりするわけです。
つまり、そもそもが義理人情に篤い人物であり、それは常にだれか人のことを考えてなければいけないという、物語開始時点での印象とは真逆の結論になるんですよね。ではどうしてそういう状態かって、一から十まで妃愛のことを考えていたから、というのが唯一にして絶対の理由になります。あとは共通での過去と現在の描写の通りです。
ともあれ、智宏は妃愛がいたからこそ、人間関係に関しては冒頭から「大人な認知」でいられていました。そしてこれは過酷な経験からきたものなので微妙ですが、それでも僅かな機微を読み取ってそれを生かすのは本来は至難の業です。そんな状態で不登校ヒロインと話すわけですが、生き方は筋が通ってるのに言動は対人関係にキョドる人見知りな引きこもりのそれなんですよね。いやそれはなんというか美化しすぎている……!
でまぁ、それらを踏まえて智宏は作中で成長をしていくわけですが、その前にこの作品はプレイヤーが作中キャラ以上に『大人でなくちゃいけない』んですよ! 本作を「ガチの陰キャはやるのやめとけ」と先に書いた理由はこれになります。正確に言うならば「精神年齢18歳未満の自覚ある人はやるのやめとけ」なんですけどね。
それが故に、この作品はCS化はしてはいけない作品だと感じます。だって18歳未満がプレイしたとして、この感覚を理解できる人が少なすぎるんですもん。まだ18禁で対象を絞った方が被害は少ないんじゃないかと言えるかと。
あと、これはまぁ、おまけというか、人によっては追撃的な話になるんですが。
華乃ルートやあすみルートで、「(戦デレキャラなど)二次元よりかわいい(攻略ヒロイン群らの)三次元」的な智宏の独白がありましたが、めちゃくちゃメタなことを言えば、雪景シキのキャラデザがののかで、全員が同じ原画に見えるということは、この世界の三次元はののかによってデザインされた(正確には宇都宮つみれ氏)世界だと言えるわけです。
いや、それならそれでいいと思います。二次元世界に於いては、その世界が三次元なわけですし、何より別に私は「二次元世界がリアルなこいつらウラヤマシス」とは特に思ってないんですよ。ぶっちゃけ私個人は二次元は二次元のものとしてリアルとは分けて俯瞰して見てるつもりですし、可能ならリアルで結婚などもしたいし。
ですが、二次元作品を読んでいるはずなのに、作中では「目の前の二次元世界が主人公によって否定されてる」わけなんです。つまり何が言いたいって、「一面的には二次元萌えを否定してる」んですよね、これ。あくまで作中世界内での尺度ではありますが、読んでる側からすれば急にその尺度が読んでるこちらに押し付けられるわけで、いい思いをする人は、まぁそんないないんじゃないかなと思います。
先述の理由で私はこっちのダメージはないんですが、これのダメージがでかい人はまぁ多そうで。二次元萌えさせてるはずなのに真っ向からそれの否定入りましたからね。なんというか、挑戦的だなぁとは思いました。
ということで本作、一番言いたかったことって、実際問題「受け身でいるな、能動的にやれることを見つけろ、なんなら創作しろ」ってことだと思うんですよね。まぁそれ自体は私は一応クリアしてるんでいいんですが……。
で、これは本質情報を繰り返すんですが、この作品、真の陰キャはやっちゃ駄目ですわ。自分からすれば、「一人のエロゲ―マーが自身がはみ出し者であることを理解させられ癒えない傷を負うまでの物語」でした。
欲を言えば、華乃みたいな同級生と知り合って、目標に真剣に邁進して、恋仲となって、同じ大学目指して、その前に卒業まで二人で学校生活を楽しむような青春がほんましたかったわけで……。
――ほんま、人生、せめてリセマラぐらいは出来ねぇかなぁ……。