きらきら笑顔溢れるここが大好き――前作から一年、私以外にも「苦み」があるなどと一部で酷評された前作の反省を生かした、凡もとい普通の、だけどその普通が嬉しいイチャラブキャラゲーになりました。不満もありますが、前作のことを考えれば十分持ち直した方、と言っていいのかなと。長文前半は最初の選択肢までのバレ程度。
基本的に、新規攻略二人+アフター二人という構成なのですが、新規二人は前作ヒロインにシナリオ分量が劣らないよう、予め多く設定されています。大体前作ヒロイン二人が本作アフターと併せた分量=本作のみの新規ヒロインの本作内での分量という具合。
なので、本作は前作FDであると同時に前作の続編です。
それがよくわかるのが冒頭。主人公の祖母が来店し、カルメラを一時的に引き継いでいる主人公と店の様子を身に来る場面から選択肢まで。ここまでの間で主人公とヒロインは誰ともくっついているような仕草を見せません。
で、それらが終わるとりらアフター、りしぇアフター、シエルころん共通とに分岐する選択肢が現れるのですが、ここへのつなげ方が実にうまかった。
ここの描写は、案外力量が必要とされる場面で、ここまで誰と付き合ってるか否かがわからない状況ですが、あくまでそれまでを祖母描写に全振りして、選択肢を通過するまでそういった方向に視線を向けさせません。
そして、選択肢自体も、後輩二人を送る際はまだ共通であるという「そういうもの」というような書き方をし、前作ヒロイン二人の何れかを選んだ場合は、既に個別に入った幸せな二人に瞬間的に変わるんですよね。
これらの描き方は実に見事でした。前作FDであり続編でもあるという微妙な立ち位置をうまいこと具現化した、本作を象徴するパートです。
で、個人的不満点。
その、ばぁちゃんの声正直怖いよ! 抑揚なさ過ぎて恐怖を覚えるよ!
というか、最初に出て来てから選択肢までの間だけで出番終了して正直少なすぎるという。どうせ声と顔面だけでも立ち絵付いたならその後客としてでも訪問くらいあってもよかったでしょと。
まぁ、前作でそこは入れろよな案件でしたので、最初に回収してくれただけでもいいのかなとも思うのも正直な所。
あとは、シナリオがよくはなった分、主人公のなぁなぁの性格がかなり悪い方向で表立つようにことになってしまい、どうにも発展性がないのは、そもそものシナリオとの相性なんですかね。
単純に優しく機微に少し鈍感という、よくいえば普遍的な、悪く言えば差別化が図り辛くパッとしない設定は、シナリオが単体である程度立っていればこそのもの。
不快感こそなくとも、キャラ萌えを前提とした作品では、性格もこうだと、そもそも主人公の名前や自我を殆どなくし、主人公=プレイヤーにするべきだったのではという気もしますが、まぁ本作だけに言っても仕方ない話ですね。
あ、でも食品衛生管理者証明に目を向けてるのはよかったです。今後を考える主人公という、地に足付けた思考が垣間見れたのは好印象でした。
あとは男性常連客ABですかね。基本的にヒロインに手だししない声付きモブなだけではあるんですが、何故かクリスマスのシーンだけ、妙なプレゼントがないか見張る必要がある――って別に主人公と智里さんとでどうにかするがな。
そんな嫌悪感があるとかいうわけではなかったんですが、クリスマスのシーンでだけ言動が浮いてて、突然どうしたご乱心な二人でした。
他要素に関してはあまり特筆すべきこともありません。シエルよりころんの方が一枚絵一枚多い程度の話以外は、BGMも前作から(フリー音源以外は)追加もなく、新規OPEDはりらとりしぇが歌ってるよーというぐらいの話かなと。
以下バレ全開で簡単にルート別感想
星ヶ丘シエル
自称兄妹から普通の先輩後輩関係、そこから恋人になるまで。
私はここのサークルの同人誌を一切読んだことがないので、それらがどのような設定でどういう話の進め方をしているのか詳しくは知らないのですが、それでもシエルに関しては「宇宙人」「兄妹」というのが軸、というのはわかります。
そして、本作の世界観とのすり合わせを行った結果、「宇宙人」は殆ど消え、「兄妹」要素を前面に押し出すことになりました。
正直、シエルが兄妹を殊更に強調するからこそではあるんでしょうが、お互いがお互いを意識し始めて、共に「兄妹であることが崩れそうになる」ことに恐怖を覚えているというのはよくわからなかったですね。実の兄妹どころか従兄弟的な血縁すらなかったわけで。
その後、事故で父と兄を亡くしていることが語られますが、だったらその話をもう少し早くやってほしかったよなぁとは。そうすれば多少なりとも「そういう相手が欲しかった」として納得出来たでしょうし。
とはいえ、少なくとも胸糞展開なく話広げてるし自称兄妹から恋人までの関係性の深化がちゃんと見れたので悪くなかったです。
稲枝ころん
話としては生後四ヶ月の捨て猫をころんが拾い、それを主人公の部屋で飼うことになる、というもの。シエルが学校での邂逅が多かった分、ころんは猫のモカがいる主人公の部屋で二人きりというシチュがメインになります。
とにかく猫に関することばかりまずはころんが喋りまくってたせいで、途中今一猫意識なのか主人公意識なのか分かりかねるところはありましたね。
猫好きじゃない振りをしていたのが、過去世話した猫がどうなったかわからないというのは、シエルの兄の行よりかは位置が不適当ということもなく。
あとは文化祭に於けるカップルファッションショーですね。あれは、二人の友人以上恋人未満の関係性をうまい具合にブーストかけるイベントに出来ていたと思います。
いやまぁこの手のイベントって、一旦出場して優勝というのはテンプレな流れで、一旦優勝しちゃうと何かあった時に滅茶苦茶気まずいと思うので、まぁ切っ掛けの別れたカップルは別れといて正解かなとも思うんですが。。
総じて、不満点としては学校生活での学内の会話が結構少なくなっちゃったこと。これは猫の関係がメインなので仕方ないのですが、前作が学校描写が少なかったので、全体的に多くしてくれた方がというのがあったので。
まぁ正直、シエルが当初キャラ設定的にも良くも悪くも色物枠で、そういう意味では話の展開をシエル比較させ辛かったため、無難な話運びに終始してたかなという気もします。
ですが、色物枠ではない、素直に慕ってくれる後輩枠としては純粋に可愛さがありましたね。
汐ノ宮璃貝
前作ルートあるし長さとしてはこんなもんかなーと。前作がアレな分やっと二人きりの時間を邪魔されず満喫できました。
けど前作悪役枠羽田くんりしぇルートですら完全に存在消されてるのは申し訳ないけど笑うから。余程批判食らったんだろうなぁ……残当。
で、このルートの特筆すべき点としてラストのキスシーン一枚絵。これ、りしぇの顔を主人公の顔で覆うようにして、お互いの顔面が一切見えないようにしているんですよね。
これ、個人的にこういう演出が好みというのもあるんですけど、それ以上に前作Hシーン②での情事描写前の、主人公とりしぇの顔面が共にわかるようになっている一枚絵との対比という側面が大きいと思っていまして。
やっと前作の鬱憤を、というのはさておき、そういう細かい対比が出来ているのは個人的にすごく好きでした。
庭坂莉良
基本はりしぇアフターとあまり相違はないものの、遊園地デートを中心とした怖いもの苦手な側面と神崎さんとの仲直り後の描写が少しとってのが主な違い。
ただ、正直前作いじめ主犯だった神崎さんとはもう少し会話シーンを多くしてほしかったですね。仲直りしたというなら、そういう場面乃至主人公と併せて三人で会話とかをして仲がいいのを示してくれればというのがあったので。
それ以外は特にないんですが、まぁ総じて一番好きですかね。本作キャラの中では元から一番好きだからそこの補正なんですが。
しかし借り物競争で主人公連れて来て公衆の面前で「朝凪くんはイケメンです!」という羞恥プレイェ……。まぁ彼女ならとも思いつつ、りらの色眼鏡で見た主人公ってどうなってんだろうなーとは。
総括
前作がいらんシリアス大量で酷評気味だった分、それらを思いっきり削ぎ落し凡乃至普通ながらもその普通が素直で心地よいイチャラブキャラゲーになりました。まぁ前作がああだと本作やる前のハードルがそもそもくぐれないぐらいには思いっきり低くなってただけともいう。
基本的には前作より進化はしているのですが、進化のポイントであるとりあえずおばあちゃんは声の抑揚付けた上でもうちょっと要所で出しましょとは。
まぁ正直それ以外は話すところも特にないですね。一応本作で展開は終わりらしいですが、神崎さんと智里さんのルート要望はあれば出したいみたいなことも言っているので、もしかしたらもう少し続くのかなーとは。
りらとりしぇは、主人公と共にかるめらを引き継ぎ共に歩むと決めた姿勢を。シエルところんは付き合い始めて道を決めた主人公と共に歩み始めた姿勢を。
そういった普遍的な、けど安心してその経緯を見ていられる本作は、前作で不満覚えても、キャラ自体が好きな方にはしっかりやってもらいたいところです。