みんな気を付けろ! この作品は鬱ゲーだ! もしくは得体のしれない電子ドラッグだ! やってる時の至福感が極上すぎて、終わって現実に戻ってきた際の絶望感が半端じゃない! 全ルートあーん装備は当たり前、手繋ぎ歩きのCGは全員完備、ルートによっちゃ相互あーん、お姫様抱っこ等々取り揃えて確実に萌え殺しにきてやがる! 逃げろ、みんな豚にされるぞ! ここで俺が萌えの波動を食い止めてや――な、なんだ、やめろ、それは俺に効、うわあああああ!!!
ブヒーブヒブヒー
ユニゾンが萌えに特化したとんでもない危険球を投げてきやがりました。
とりあえず未プレイの人はOPムービーを見てください。この中に於ける、公式HPのキャラ紹介にもあるヒロイン四人のあーん絵を見て感じるところがあったら買いましょう。
基本はストレスフリーで出来る萌えゲー、と言えば聞こえはいいですが、その実態は砂糖200%増しにした砂糖ですので、砂を吐く、もとい砂糖を吐き過ぎて窒息死するレベルの危険素材です。吐く前に糖尿病で死んでる。
褒めるとこが多いはずなのに詰問調もとい逆ギレ状態なのもあれなので基本情報でも。
OPはゲーム開始直後ヒロインにコンセプト的な事語らせてすぐに始まります。
でまぁ、なんだかんだ作中の雰囲気はOPを見れば大体わかります。とにかくお菓子。けどその中にヒロインの表情を混ぜ込むといった感じ。
で、先程上げた「ヒロイン四人のあーん絵」は向きなどが完全に作中のルートの概要そのままなのはよく出来てると思ったところ。繰り返しますがOPを見てピンと来る人は買って損はないはずです。
CGは各キャラ20枚。それに加えてSD絵が1~3枚入ります。エロ以外の日常一枚絵が各々9枚ずつ(全体絵が別途4枚)あるので、結構ここにも絵があるんだ、と満足は出来るはず。
音楽はBGM20曲+OP・ED曲。系列のUs:trackの「恋×シンアイ彼女」でも起用した組み合わせを今回も採用しています。
正直なところ、「恋カケ」での浸り系穏やかな日常を演出するのに水月陵氏のBGMは必要不可欠なものでしたが、本作はそれと比較するとパンチが少し弱いかなと。ただ、それでもゆったりとした日常が流れる中のこのBGMは最低限以上の仕事はしてくれています。
シーン数は各キャラ4+本編クリア後のおまけ1の五つ。特別実用性が高いわけではなく、キャラによっては初体験のシーンなどで接合部を意図的に隠してるのもあるので、そこに期待すると割とがっかりするかも。
ここでメインになるのは、「主人公とヒロインが触れ合ってるうちに色々昂るか何かして事を致す」という流れの中でのシーンなので、シチュエーションを重視する人には当たりです。自分がそのパターンだったので個人的には大当たりでした。
個人的には、PULLTOP Airの「なついろレシピ」に於ける個人的不満をそっくり解決させた上で萌え要素をつぎ込んだ作品であると感じました。
先に浮かんだ不満点だけ挙げておくと、パティシエ服に帽子がないこと。何のために着替えてんのかって話なわけですが、髪型強調したいのはわかりつつここだけはどうにかなんなかったのかなーと。
それと気に入ったボイスを登録できるシステム。確かに気に入ったボイスだけを繰り返し聞けるのはいいんでしょうが、そこは該当シーンを見ながらの方がいいという感があるので、あまりいらないかなと。
というより、バックログから登録しようとすると、他作品だとバックログジャンプがあるところに設置されているので紛らわしいことこの上ない(本作にバックログジャンプはありません)。他の方とも話しましたが存在しないバックログジャンプをしようとして誤登録してしまうのはルセットあるある。次回以降このシステム搭載する際は位置は変えて欲しいですね。
ちなみに自分の中だけでは基本ネタに走る人間なので間違えたの以外で登録したのは忠と史郎のネタ発言のみというw
それも含めて以下ネタバレ込みでキャラ+プレイ順に軽く感想。言いたいことは基本最後の総括に。
二宮春馬
ヘタレ――に見せかけてなんだかんだしっかり成長している主人公。
いや実際共通の段階ではヒロインから与えられるだけのことが多くて、この主人公ただの無能ではとちょっと思うかもしれません。カフェ・シャルールを紹介してあげたこと以外はそこまで何かをヒロインのためにしてあげたということはない。
それが変わってくるのが試験終わりの土曜のスイーツ巡りです。以降は共通内の個別パートも出て来て、段々とヒロインに寄り添うようなシナリオが展開されていきます。
後述しますが、二宮家の両親事情がほぼ語られないので、春馬の性格の理由づけなどに関しては謎というには違いますが、もう少し語って欲しかった気もしはしますね。まぁ余計な情報も多く入ってきそうなのでこれがいい落としどころではあるでしょう。
こうは言ったものの、真面目な好青年という意味では嫌悪感を持たず、万人に好かれそうな性格という点に於いて、この作品の主人公にはぴったりのキャラ設定です。
忠・史郎
モブ友人枠ですが、もうちょっと空気読まないくらいには出してもよかったかも。砂糖の塊食べてる時はせめて水くらいのみたい位の感覚で。
特に史郎は学校別の彼女がいるとのこと(颯花のおっぱいは確かに憧れという発言より胸はそんなに大きくない?)なので、デート中に街中で史郎のカップルとばったり、とか一つでもあると面白かったかなと。
颯花ルートのSD絵一枚だけなのは正直勿体なかったとは思うんですよね。後述しますが、個別内に於けるルート外ヒロインは、実質的に友人キャラであり極論一種のモブとも変わらないので、その中に友人づきあいとしての惚気話を聞かされる役回りなどあったら楽しかったなと思います。何が言いたいって立ち絵がほしかった。
まぁ立ち絵まで行くと中々難しい話(制作コスト面というよりユーザビリティ的観点から)ではあるんですけどね。主人公との絡みなどをもう少し見たいと思った友人キャラ二人でした。
梶浦洸・聖兄妹
よいアドバイス役に徹するカフェ・シャルールを運営する兄妹。聖は攻略したいって思った人も多そうだけど、移植でもあったらルート出来るんじゃないだろうか。
正直語ることはいうてないんだけど、その分キャラ付けも不満はないし、しっかり各所で出番は用意してもあくまでサブという位置付けなのは頑なに守るという意味では、立場をよく弁えてるキャラだなと。
しかし洸さん、ののかルートやってて思ったけど本人ルート外だったらこれ美絵瑠とくっつくのが一番幸せなんじゃないだろうか?
勿論作中内でやられても困るけど、美絵瑠は毎日プロのケーキが食べられて舌が満足、洸さんは常に試食してもらえて腕が磨けて満足と双方win-winなことを考えるとなぁ。
かりん先生
頼れる先生であると同時、ののかと美絵瑠ではキューピッド役も果たしています。
というより何かにつけても「きっかけ」を作るのが先生の役回り。そういう意味ではみんなを見守る保護者、乃至は先生としての役回りとして完璧なキャラです。
そして、その実作中で一番挑戦的だったキャラでもあります。
いやまぁ、男の娘キャラそのものは別に昨今の情勢的には普通だと思うんですよ。正直私がやる作品の中ではあまりいないのだけど。
ここで問題になるのは、「以前勤めていた世界的製菓を、LGBT的価値観の否定により辞めてやった」という経緯ですね。よくもまぁさらっとその手の話を突っ込んできたなと。
まぁ、とはいえ、別に実際問題深く考える必要なんて恐らくなくて、話のタネ程度に書いたんだろうなぁとは容易に想像できます。言ってしまえば男の娘である必然性もなかったんじゃないかとは思いますけど。女性キャラの上で同性愛か男の娘かを検討して男の娘にしたんじゃないかってくらい。
ですが、ここだけ切り取って見れば、作中の雰囲気からは明らかにここだけはかなり浮くんですよね。作品が違えばルート用意して本気で色々書き込むくらいには。
作品の雰囲気にそぐわないからこそ深く突っ込んでないのは正解ではありますが、なんだかんだそこだけでもガッツリ色々書けたとは思うので、どこかで補完とかがあると嬉しいなと思ったり。
白崎リゼット・久典夫婦
実はテンション↑アゲ↑アゲ↑な夫婦。特にリゼットさん、タガが外れると色々とアカンってこれ。
まぁ特別いうことがあるわけじゃないんですが、共にすごく娘想いなのは見てとれました。
というか美絵瑠は明らかに「様々な人の寵愛を受けている」ことが根底にありそうだなぁ。まぁその話は次に。
白崎美絵瑠
天才的な味覚を持つロリ系同級生。
自分が子供っぽいとわかっているからこそ、自分が恋愛をする姿が想像出来なくて。
このルートは美絵瑠を一人の「女」へと成長させるルートです。だけど、そのきっかけは、あくまで仲の良い両親を見ていたからという、ある種少女漫画に近い作りと言えるかもしれません。
このルートの面白いところは、聖さんがいう所の「恋愛が気付けば始まってる」ところです。
このルートは、春馬・美絵瑠共にお互いが好きになったという明確な地点が存在しません。共通内に於けるの美絵瑠個別パートだけでは中々に進展が見られず、ほんとにルート入ってんのとか、極論美絵瑠これ相手誰でもいいんじゃないかとか思ったのは本音です。
だけど、個別入ってからの美絵瑠の盗み聞き辺りから精神的な急転直下を迎える。聖さんが二人に対して言った辺りで、山を登っていて雲の中から雲海の上に出たかのような、そんな錯覚を覚えます。
そして告白に至るわけですが、それでもやっぱり美絵瑠は自分が面倒くさいという自覚をしていて、故に相手に迷惑をかけられないからと否定する素振りを見せる。美絵瑠にとってはそれが無自覚ながらも最大限の好意の見せ方をしているわけです。
だからこそ、美絵瑠の返答も、そこだけ切り抜けば実に返事は曖昧です。
美絵瑠「じゃあ、あとちょっと……家まで、送って」(白崎美絵瑠ルート
この後、ちゃんと返事が欲しいとは春馬が言い、美絵瑠もちょっと待ってというものの、その時点で恋人関係になったと認めているためか、その後美絵瑠が春馬に好きという場面は作中一回も登場しません。
ここに至るまでの流れは、その実この作品で唯一頭を使う必要があるかもしれません。ですが、寄り添うようにして読めば、あぁやっぱり彼女は彼を好きになるのは必然だったんだなとわかる場面です。
あと語っておくべきはガレット・デ・ロワのパートですね。いやお菓子そのものではないんだけど。
ここで注目したいのは、「美絵瑠の家庭はいっつも幸せそう、対して春馬の家は冷え切ってるとは言わないけど普通」という点です。
まぁ正直な所、二宮家の家庭事情を語らないのは主人公視点からすれば意図的な切り抜きでありますし、語ったところでしょうがないのですが、それでもここまで殆どの情報をシャットダウンするのは珍しいです。
まぁ、颯花ルートで「両親共に休日も出勤だから家には夜までいない」ということが語られているため一種の不在ではありますが、それでも姿どころか息遣いすら見つからないようにしたのは中々見ない。
こうも言うのは、二宮家がエロゲでよくありがちな「両親乃至は片親の不在・逝去」という設定でないにも関わらず、二宮家の他の事情を一切語らないから。
その結果が美絵瑠の甘えん坊な性格なわけではありますけど、却って美絵瑠に関してはぐーたらな性格の理由づけが出来ている。けど自身が両親みたいな恋愛を出来るのか疑問に思ってるのは当人の性格由来なのであまり関係ないかなと思いつつ。
何が言いたいって、「主人公の家庭事情に深入りせずにヒロイン乃至はヒロインの過程の深掘りに成功している」ってこと。普通はヒロインの家庭事情に踏み込む前提のルートは主人公側の家庭事情にもどこかで踏み込むか、もしくはヒロイン側の家庭事情だけ掘ろうとして失敗してるかのどちらかが多いですよね。
まぁその辺りはkeyのCLANNADがとにかく強いわけですが、あれも今から考えると相当古典的というか、使い古されたネタにも近いわけで、そんな中こういった開拓の仕方を成功させたことが素直にすごいなと。
そんなこんなで、美絵瑠風に言うなら「なにそれ意味わかんない」なルートでありますが、恋愛なんて殆どそんなようなもんで、明確なイベントを敢えて設置しなかったからこその、ふんわりとしたわたあめに包まれたかのような甘さと心地よさがいい、そんなルートです。
大園柚姫
秀才系お嬢様。完璧超人のように振る舞ってるつもりもないけど、周りからはそういう扱いをされて、だけど誰かに不器用な自分を見せたくて。
このルートは、作中一番の古典的作り方をしているように思います。いやほんとに古典的というなら設定がタカビーお嬢様にはなるんだろうけど。まぁこれも片面的な古典的手法であるのは間違いないと思います。
とりあえずこのルートで突っ込んどかなければいけないのは、賛否両論わかれそうな海外留学の話。違いますが別に海外留学が元で離別するとかいうのは他作品ではよくある話というか、それを持ちだしたら完全にルート上の肝となることが多いです。古典的作り方ではありますが、色々そっちのけでそれに時間を割きすぎることもどうしても多くなってしまいがちなので、私自身は特別好きではない作り方でした。
この作品では、それが「限られた時間の中で可能な限りイチャラブしよう」というブーストをかけるための役割を担っている。春馬の答えは至極単純で、「楽しんでおいで」でした。
故にコンセプト通りではありますがシリアスが一切入らない。それどころか期限付きになってしまうイチャラブを盛り上げる役割を付与し、却って深みを出している。
正直告白シーンが長さと柚姫の独白の素晴らしさとで頬の筋肉が気持ち悪い動きしてた以外に、この作品だからこそとしての語ることはあまりないのですが、柚姫というキャラは、一種の古典的テンプレでありつつも、優等生というキャラと不器用なキャラとの使い分けがとにかくうまい、の一言に尽きます。
端的に言えば、不器用なキャラ性は、春馬の前とか、共同作業をしている時とか、そういった時にしか出さないので、「ヒロインを独り占め出来る」という感覚を味わえるんですよね。春馬の前でしか不器用じゃないからこそ強く感じるように出来ています。
で、このルート、終わり方が面白いんですよね。普通ヒロインが海外に行っちゃう系作品って、そのまま離別か、もしくは帰って来て空港で再会ENDが多いと思うんですけど、本作の場合はEDムービー前に空港で見送り、ED後「海外を満喫している彼女」で終わります。
いや、正しいんですよこれ。留学の話が出た時点で、シリアスを入れず、楽しんでおいでと言い、実際にそれを実行しているからこそ、安易に会いたかったENDでは意味が無いのです。柚姫が海外を楽しんでいることが、一番のストレスフリーなわけで。
ですので、「柚姫が留学を楽しみ、また菓子も作ったり食べたりして楽しんでいることを主人公に伝えるEND」である本作は、実にコンセプト通りという以外にありません。イチャラブという前提だとすると、本当は帰国後にイチャイチャすることまでやるべきなのでしょうけど、敢えて本作はそれをしなかった。
なんでそうしたかって、ここは「ヒロインとの未来は明るいんだ」ということをやりたかったのでしょう。確かにこれなら萌えゲー以外でも時々ある「その後別れてそうだよね」的感覚がない。それを結婚END以外で少しも思わせないこの締め方は中々に秀逸。
勿論帰国すればイチャラブ再開するんでしょうし、製菓も含めて色々やるんでしょうけど、ここでそれを語るのは確かに蛇足でしょう。古典的手法を逆手に取った新たなルート構築という観点からは、実に興味深いルートでした。
鍵由颯花
ほんわかおっとり系経営者一族の娘。だけど芯は強いという、柚姫に負けず劣らず頑張り屋なキャラです。おっとりというのも、おどおどしてるわけではなく、目を閉じて何かを熟考しているような、そういう印象を受けます。
先に「かぎや」の代を継ぐ方法って、一商店というよりもう大企業に於ける一族経営からの刷新のそれという感はあります。個人的にそこだけ物語都合はあったかなと思いつつ。まぁ柚姫もそうですが、学内でもなんでも、身近に有名人がいるような状況でも、環境によっては普通に他の人と変わらず話すってのはよくある話なので、(ほぼ大企業状態の)大規模和菓子屋跡取りだからといって普通に接してるのはまぁそんなもんだよなーと思ったり。
個人的にこのルートで面白いと思ったのは駄菓子の扱い方。他の三人が全て洋菓子を扱う中、実家の関係上否が応にも和菓子も扱うことになるこのルートですが、そこまで踏まえた上で和菓子が好きとかたまの洋菓子が好きとかじゃなくて、好きもとい憧憬を感じるのは駄菓子って言うんですよね。
で、駄菓子を小さい時の思い出話とか、食べ歩きだとかそういった場面で使ってくる。確かに菓子だけど、駄目か無駄か、「駄」菓子と呼ばれるように高くはないもの。それをちゃんとシナリオに絡ませた上で扱ってくれるのは、個人的に何となく嬉しかったです。
まぁ駄菓子そのものという意味では多分柚姫の方がお嬢様だからこそ的な親和性は高かった気もするけどね。けどたまにしか食べてなかったからこその幼馴染シナリオバリの憧憬的描写は見ていてほんわかします。
あと特筆すべきは颯花の「柏餅みたいなあれ」の扱いですね。Gカップもある胸があったら確かに色々と遊びたくなりますよね。言ってしまえば、颯花の柏餅みたいなあれの扱いはキャラ系ラノベでのそれに近いです。
正直、本作の作風だとラノベ的な描写の仕方があったらそれはかなり噛み合わせが悪いと思います。しかしながら、柏餅みたいなあれを使うのは、あくまで要所要所に於けるギャグかイチャラブパートだけで、ラノベ的な描写をしていたとしても、それが一切嫌らしく感じない。
それはもう所謂バブみだとか、腕組み歩きをしながらのあーんだとか、そういった場面に於いて「柏餅」は重要な役割を果たしている。単純に巨乳スキーとかそういうのではなく、巨乳というキャラ設定を生かしたイチャラブのためのシナリオ作りが出来ているのは大したものです。
このルートは、個別の中では一番「静」です。しかしながら静だからこそじっくり二人の関係性の変化を見ていられる。ある種一番「深愛」という言葉が合うシナリオ故、後々他ルートより印象に残りやすいルート。
実際春馬も颯花も落ち着いてるんですよ。だけど、秘めてるものはいつもあって、それが次第に隠せない程大きくなって。そして少し動いた時に、プレイヤーの心がトクンと動く、そんなルートです。
橘ののか
元気系幼馴染。いやまぁ語弊があるんだけど、意外とうまく性格を説明できないのがののかというキャラです。
にしても、別に私はこの作品の制作に参画してたわけはないですよ? なんですかこの自分好みのシチュの詰め込み方は。
幼馴染という属性を有利なように使わないと聞いてたのでどういうことなんだろうと思っていたんですが、終わって中々に納得しました。
いやこれぶっちゃけ再会系幼馴染ルートとしてはあるべき姿じゃないんですかね。
というのもののか、あくまで一同級生として当初は接して、後から春馬の過去語りを聞いて幼馴染だと判明するというパターンなんですよね。
これを他作品でよく使いうるのは個別に入って暫くしてから。本作でそれが判明するのは共通ルートの段階でですが、これが他では中々に見ない。
普通幼馴染設定というのは、物語開始時点で幼馴染か、久しぶり~で共通最初で再会するか、もしくは「記憶の中のあの娘」が実は攻略中のヒロインだったと個別がある程度進んでから幼馴染と判明するかの何れかで九分九厘を占めます。
しかしながら本作での幼馴染バレは共通中盤。純粋な再会系としては遅いし、「ごん、お前だったのか、あの時カップケーキをくれたのは」ばりに後から気付くには早いというかなり微妙なタイミングです。
既に選択肢を一部経由しているので既にルートの選択は実質終わっているのですが、幼馴染であることがルート選択、ひいては共通パートの進行の邪魔をしないというのは、ありそうで中々なく、特筆すべき点です。
ここが大きいのは、ののかルートに入れば確かに幼馴染的描写も始まるのですが、他のルートではその場で流して終わって、以降一切その情報がルート進行の邪魔をしないということですね。
普通個別に入っても、そういった情報は「でも彼女は主人公の幼馴染なんだから」とか何かにつけて言うことも多いですが、本作はそういったのを完全に排除。授業等で他ヒロインも勿論出てくるとはいえ、そういった場でのヒロインは忠や史郎といった男友人と実質的には同列です。
つまりルート内のキャラとの萌えをルート外ヒロインに邪魔されない。これは相当大きなポイントであると考えてます。
話を戻して個別の話。
ののかルートの告白シーンは個人的歴代TOP5の美しさを誇ります。シーンとしてもそうなんだけど、とにかく一枚絵が卑怯。
絞り値をF1.8とかにした一眼で撮ったかのようにののかだけを日の丸構図で写したこの一枚絵は、構図もだけどとにかく背景の処理が秀逸。書き込むんじゃなくて、意図的にぼかす。
しかも光線の描き方的に春馬から見てののかは逆光になるんですよね。写真とかやってるとわかりますが、逆光というのは人物を浮かび上がらせるにはぴったりです。
逆光+背景のボケによりののか単体を浮かび上がらせ、ののかの表情と喋り口だけに意識を集中させてくれることによって、プレイヤーも春馬になりきって告白を聞くことができる、この場面のなんと美しいことか。お互いが自身を抑えきれなくなったからこその、昂りを感じられる場面です。
そしてシナリオそのものは、先述の通り再会系幼馴染としては秀逸な部類。その点に関してはうまく口じゃ説明できないからあとはやってくれ!
一つだけ言うなら、ルート内唯一ののかがLe Premier de la Patisserieに参加する際に、残ったヒロインとでペアにならないという意味では特異というか、ある種パッケージヒロイン的存在感があります。
じゃぁののかとペアで何かをすることはないのかというとそういうわけではなく、突発的なウェディングケーキの作成などをしているわけですが、このルートのみ「共同作業は付き合ってからのみ」であるのは特筆に値します。
それを踏まえると、ウェディングケーキもそうですが、ののかルートは作中一番「ヒロインとの未来を見据えたルート」です。
――いやほんとこれ以上は説明出来ねぇ! 一行感想に書いたことがこのルートは全部ある! 結論から言えば最高だったからみんなやったやった!
総括
「本作は物語としての起承転結の構造は残しつつ、それ以外はシリアスシーンを徹底的に削ぎ落したイチャラブ特化作品です」とは本作コンセプトの談。
結論から言えば正にコンセプト通り。萌えって、こうあるべきだよねってのがよくわかったというかなんというか。ともあれ存分に癒されたよありがとうありがとう……。
なんというか、それこそこの作品は目分量ではなく「きっちりルセット通りに作られた作品」であることが伺えるんですよね。
こういうと身も蓋もないですが、料理を作る際に、女性はその時々で微妙な分量が変わるから、手作り的、家庭的な店の味(俗に言うおふくろの味もこの範疇)になりやすく、男性はきっちり分量を量って料理をするから、店のいつもの味を出したい際に向いているようなのですが、それに則れば、ある種この作品の作り方は男性的な作り方をしているように感じます。
ですが、目分量で作らなかったからこそ、糖分マシマシのイチャラブが楽しめた。シリアス排除の起承転結が伴ってるイチャラブは、片手間には作れないよう職人技にも近いものがあります。
ここで大事なのは、イチャラブが欲しいからといって単純に砂糖をどさっと入れればいいってわけじゃないんですよ。それをやると、どこかで描写もとい会話内容が薄くなって、上辺だけの会話をしているようにしか見えなくなってくるんですよね。
本作はそれがない。あくまでゆっくり関係性が描かれるからこそのちゃんとした厚さ。個別がもう少し長くてもよかったかなと思いつつ、それでも告白シーンまでの長さは必要であり、また冗長と思わせない描写はよく出来ています。
もう一つ、上記の事ともつながるのですが、この作品で特に評価したいのは各ヒロインの告白シーンなんですよね。全部パターンは違えど、そのどれもが一つの様式美を形どっています。
美絵瑠は敢えて明確な返事を返さない、颯花は思いがけない中でありつつも満を持して、柚姫は失言からのその場の流れと勢い、ののかは抑えきれなくなった感情の放出と、それぞれ特色があります。
様式美とはいったものの、これは共通をしっかり時間を取って関係性を描いていたからこその各シーンであるので、必然ではあるんですよね。
正直な所、告白シーンだけでおつりがくるレベルの作品と思うレベルだったので、ヒロインとの嬉し恥ずかしなシーンが好きな人はこの作品完全に当たりです。いやほんと今すぐ買ってこい案件。
うん、すごいぶっちゃけるとこの作品の萌え方は滅茶苦茶言語化するのが難しいんだ。これ以上言語化しようとしても豚の鳴き声しか出てこないのだよブヒーブヒー。
ということでまとめちゃうと、「全てのシナリオと設定をルセット通りに作り、ストレスなく萌えられるようにした萌えゲーの一つの手本」が本作評。
精神的に疲れた時に定期的に摂取したいような作品でしたので、時々再プでもしてまた癒されにでも来ようかと思います。