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Planadorさんのナツイロココロログ ~Happy Summer~の長文感想

ユーザー
Planador
ゲーム
ナツイロココロログ ~Happy Summer~
ブランド
Hearts
得点
64
参照数
1555

一言コメント

君と一緒の夏が始まる――テキパキとまとまっていた本編に比べ、全部が付き合い始めた後のイチャラブは致し方ない面もあるが起伏が少ないシナリオで少し飽きがち。そして肝心のハーレムルートはハーレムじゃないというオチで何がしたかったのかわからなかった案件。結果的に一部方向性が迷子なFDとなってしまいました。しかしその中で鈴アフターは、本編とアフターを下敷きにした上での、ラスト五分のための物語という点に於いて傑作です。長文は一応最初だけ本作のネタバレなし。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 本編では、まず電脳世界に於けるヒロインの挙動でヒロインの新たな一面を知り、それをきっかけに主人公とヒロインの距離が縮まるという、少し短めながらも端的にまとまっていた作品でした。
 だからFDとして出ると聞いた際に真っ先に予想したのはちとボリューム不足になるんじゃないかってことだったんですよね。で実際間違いではなかったわけですが、これをまとまってると見るかボリューム不足と見るかは人によって分かれそうかなと。

 ひとまず各種情報を書いておきますか。
 一枚絵は差分抜きにして51枚+SD絵9枚。値段のことを考えるとかなり少なめと言ってよさそうです。お陰で電脳ハーレムと先生の一枚絵がエロ絵以外ないという。
 まぁ先生はちょいと事情違うんですがネタバレなので後述するとして、あと現実ハーレムもエロ絵じゃないのは公式HPやOPで見れる二枚のみなので買わないと見れない画像はないのはなと。

 音楽は本編既存の曲に新規OP、同インスト、同編曲インスト(タイトル画面の曲)が追加。まぁ初回限定特典のCDで入ってる三曲ですな。新規OPはALVINEらしい溌剌とした感じの曲で、冬乃桜女史の歌い方と相まっていい具合にテンションを上げてくれます。

 シーン数は以下の通り。シーン鑑賞モードの内訳で。

現実ハーレム:2(久遠と綺新の3P、鈴と小都音の3P)
電脳ハーレム:2(クオンとリンの3P・キサラとライの3P)
    久遠:5(久遠3・クオン2)
     鈴:5(鈴3・リン2)
    綺新:5(綺新3・キサラ1・ナギ1)
   小都音:4(小都音2・コトネ1・ライ1)
   香奈恵:3(現実1・電脳2)

 これだけ見ると増えてそうですが、一つ一つのシーンが思いっきり短くなってる(本編であった二回戦と併せて一個、みたいなのはなくそもそも一つのシーンに一回ずつ)ため、気持ち多いとは言えません。
 そして見てわかる通り、ハーレムがハーレムという単語の意をなしてません。3Pといっても、単に順番にイチモツ突っ込んでるだけで、そういう意味では3Pとも言えないよくわからない代物です。以下はネタバレにて詳しく。

 それとおまけでは立ち絵鑑賞モードが入りました。本編で立ち絵があったキャラ全部あるので、主要キャラの他本編久遠ルートだけにいた格闘男・格闘女・格闘王まで見ることが出来ます。
 他方システム面では各種コマンド実行時にエウ君による声が入るように。邪魔だと思ったら消すことも可能なのでお好きなように。個人的には始めはよかったけど段々何に付けても言うからうるさくなってきて途中で切ったという。



以下本作のネタバレ注意



 本作の本編からの追加項目として幾つかありますが、まずはそれに関して。

 まずは各アフターで出てくる新衣装。立ち絵をメインに本編ではなかったヒロインの服装が用意されてますが、それに意味あるキャラが半分、ないキャラが半分でした。
 意味ある方は久遠とコトネ(電脳なので片仮名表記)。とはいえコトネはライがいなくなった代わりに登場したアイドルという記述が本編にあるのでそこはいいでしょう。これで出さなかったらなんなんだって話だし。
 一方の久遠の水色のワンピース。簡潔に言えば、亡くなった久遠の母親セレナさんの形見なわけですが、これを着ているシーンは全てセレナさん関係の補完になります。
 本編補完の意味合いと併せ、これを着ている間の、義人も含めたセレナさんがいた頃の思い出に浸るだとか、元気にやっていますという決意だとかといった、文章にしないそういった想いを「久遠が着るセレナさんの形見のワンピース」という衣装一つに込めたというのはよく出来ているように感じますね。

 他方で意味ない方。綺新と鈴。綺新は一応かわいい系の服を、今まで着たことなかったからということで、まぁ意味ないと言い切るのもちょっとアレですが、まぁここは単純にシナリオ上の必然性はないよねという程度で。まぁ綺新は本編でも私服ネタあったしまたかよ感がないでもない。
 で問題の鈴。ただ単にパジャマを着て新衣装ですって、それ本編時点で入れときゃよかったじゃん。しかもそれをずっと着るわけでもなくほぼ一回だけってなんのために用意したのやら。
 パジャマぐらいは、正直本編時点でやるなら各キャラ用意しとけよ感ありますし、少なくとも鈴は全く別の衣装にしてほしかった感はありますね。「お兄ちゃんも初めて見るドキッとする妹の姿」みたいなのだったらよかったなぁ。


 で、恐らく本作一番の目玉であるハーレムルートですが、肝心のエロシーンは現実電脳共に3P×2と、別にそれハーレムルートでやる必然性ないやんというオチが付きます。
 というか、あくまでこの作品に於ける「ハーレム」という単語の意は「その場で多人数でえっちすること」です。――あれ、それハーレムでもなんでもなくね?

 ちら聞きした程度ですが、割とこの作品の他の人の評価が回ってこない中、真っ先に聞こえてきたのはハーレムは駄目、という話でしたが、これは駄目認定されても仕方ないわと。
 これからプレイする方は、ハーレムはプレイしなくても一切問題ない程度の認識でいた方がいいと思われます。



以下攻略順に感想。



電脳世界ハーレムルート
 ルート的にはまずは電脳世界でみんなでクイズ大会に参戦してその後混浴露天風呂で……という流れ。露天風呂で誰に話しかけるかによってエロシーン一枚絵の差分回収が変わるので四人共回収しましょう。

 まぁ現実ハーレム以上におまけ的側面が大きいというのはあるのでしょうがくっそ短いです。いやほんとにこれ以上語る事ないの。
 あ、エロシーンは上記の通りです。3Pだけです。しかもあくまで連続でやってるだけです。

 というかクイズ大会のチャンス問題に於けるヨシトとクオンは何やってんのよ。これさえなければ、というわけじゃないけど、二位になった一番の要因というかなんというか。もう少し一位取れなかったうまい理由思いつかなかったもんかね?
 ちなみにこのルートで一番ヒロインがかわいかったのは物語導入の現実でみんな顔赤らめてるとこ。そういう意味でも段々下降線だったのはなんだかな。



現実世界ハーレムルート
 なんだこのゴミ!?(驚愕

 三日間の喫茶店芦ノ園でのアルバイト。そんな中でみんなとの距離を縮めて、みんなと仲良く(意味深)になっていく――とか思ってたらそういうんじゃないのかよ。

 ともあれ、導入にキャラの簡単な解説が入ったり、ここでOPムービーが流れたりする辺り、最初にこのルートをやってもらうイメージなのかなと思います。別にこれ最初にやらなきゃいけないとかいうこともないからそんな気にすることもないのだけど。

 あとはひたすらのほほんとバイトして、その上でわーヒロインかわいいなーと思うだけ思って――ってあれ、別にみんなから告白されそうとかくっつくとかそういう気配なくね?
 とか言ってたらある時急に服用したもんが媚薬宜しくなんか発情しちゃうという代物で体の疼きが抑えられないよ! どうにかしてよ! ってそれハーレムじゃなくて単に性欲抑えてと頼んでるだけだから!

 ――というだけでも雑だって思ったのにおまけにエロシーン夢オチかよ! その帰結は流石にガッカリだよ!
 というか大真面目にガッカリというか、これで作品そのものを残念判定する人は大多数いそうな気がします。夢オチならやらん方がよかったとは、他の人の感想知らんけどかなり言われそうな気がする。
 そりゃ現実の方で短期間で完全ハーレム作るのは色々厳しいとはいえさぁ――要は先生か、また先生のせいか!

 結局、ヒロイン群の和メイド服が描きたかっただけな正直誰得ルートと化してしまったなと。ラムネで乾杯するより先にやること(意味深)あるんじゃないんですかね。
 (電脳併せ)ハーレムルートの一番の問題点は、別にみんなと付き合うとか、えっちシーンでは特別全員と同時に何かプレイをするとかいうわけでもないのに、安易にハーレムを名乗っている事他ならない。いやハーレムいつも興味ないけど流石にこの偽ハーレムはどうかと思うよ?

 というより、そもそも誰か一人を選んでそのヒロインと純愛を楽しむ趣向である作品と考えると、ハーレムとはかなり噛み合わせが悪いのは間違いないのだ。それを無理やり組み込んでみようということをしてしまった結果、作品全体の質を下げる事態にまでなってしまった。
 というわけで、純愛にもハーレムにも舵を切れなかった最悪の中途半端ルートが本ルート。ハーレム目当ての人の場合真面目に作品として0点付ける人いるんじゃないかと思うぐらいにはアレな話でした。

 で、夏場なわけだけど、あの和メイド服着ててヒロイン群は暑くなかったんだろうかという素朴な疑問。



梅宮香奈恵アフター
「義人と恋人同士になったものの、教師と生徒のギクシャクした関係はそのままで……。あの夏休みのその後を描くコミカルな恋愛実験。」

 付き合い始めた二人が、香奈恵が開発したプライベートモードの効能を色々試してみる話。

 そんなこと言いつつも結局は生徒×先生の禁断モノという意味では良くも悪くも普通の出来。ただ、本編が短めだったため本作アフターと本編同ルートの長さは大体同じか、下手するとこちらの方が長いくらいにはなっています。

 しかしこのルートの一番のメインディッシュは間違いなく椎菜のネコ耳メイド服姿なのであった! エロ絵込みでこのルートは一枚絵差分抜き五枚と、他ヒロインより少ないにも関わらず、内一枚がこれです。
 余談ですが、残る四枚の内、三枚はエロ絵で、あとの一枚は一般絵……って温泉入ってて乳首丸見えでやっぱり駄目だ! もうちと一般絵作れよ! 幾ら他ヒロインよりおまけとはいえさ!

 で、このルートで気になったところといえば、温泉でのぼせたところ。本編時点で体への影響そんななんかあったっけ?
 というのも、本編プレイ時点で気になってたのは、「電脳空間でエッチした際に、処女膜などには影響はないようだけど、性分泌液はお互い出てるんじゃね?」ということなんですよね。男的には早い話が夢精みたいなこと起こってるんじゃないかと。
 処女膜みたいな外部要因でどうにかなるものは影響なくとも、温泉でのぼせるってことは、身体が温まるといった内部要因には影響ある事だろうから、同じく内部要因となる性分泌液は恐らく出てるはずで……つまり下着がですね、その際大変なことにですね。これ以上はいけない。

 閑話休題。

 そして禁断モノの一番の醍醐味関係性がバレる時……って思いっきりスルーするんかい! いやなんで突如一年経たせたのはいいとしていつの間にか黙認もとい部内での公認になってるんねん。

 このルートの一番の問題点は、先生が電脳用のアバターを用意しているわけじゃないから、やってることが電脳でも現実でもどっちでもいいじゃんとなってしまうことですね。それを除けば、それなりによく出来ています。
 本編での長さの事を考えると、先生狙いの人なら十分当たりなんじゃないでしょうか。恋愛実験という表題にはピッタリの話でした。

 どうでもいいけど義人が風邪引いて咳してる時の音が思いっきりリアルなんですけどこれスタッフで録っただろw



七国小都音アフター
「あの夏休みの思い出から一年後、再び始まった恋愛シュミレーションでもう一度出会った2つの心。新たな一歩を踏み出した、初々しく甘酸っぱい恋愛模様。」

 ライが小都音からつながってるけど抜け出して三人で色々楽しむ話。だと思ってたら違った(ぇ

 このルートは大体三部構成に分けられて、まずは二人+ライとでデート。
 はい! 本編でライ消えたんじゃなかったっけと思ったそこのあなた! その指摘は正しい! だけど突然出てきたんだよななんだってー(AA略
 ちなみにその理屈。

ライ「さぁ? ライも気がついたらここにいたから、どうしてなのかよくわからない」(七国小都音アフター

 アッハイ
 けどまぁ、ライは「愛の奇跡」で出てきただけだったそうです。強い想いは願いを叶えるっていうのは使い古されたネタだけど、それをバリバリ電脳のSFちっくな学園モノでやるのもどうなんだとは思うけど。

 ライが消えて中盤の現実での花壇いじりは正直ほぼ語る事ないのでカットして、後半は、ライから引き継いだ、電脳アイドルとしてのコトネの姿。
 ――いや正直もうちょっと見せ方ってもんがあるでしょう。本編ラストで新たな電脳アイドルコトネとか言われてそれでFDってなったらまずはコトネのことを軸にするでしょ。
 それに加えて、ヨシトとコトネの視点が短時間でかなり入れ替わって、そのせいで全然感情移入だとかも出来なくてこれはいけない。


 ということでまとめ。コトネの活動に絞れよ! ライいらないというか窮地の時限定で中から出てくるとかでよかったから!
 どうせなら現実世界でもコトネ宜しくアイドルデビューさせてみてもよかったんじゃないんですかね。検索しなくてもツイッターとかでアイマスのアイドルとプロデューサーとの恋愛モノ二次とかよく回ってくるわけだけどみんなそういうの好きだからなんでしょ。え、違う?
 ともあれ、普通にアイドル活動する小都音(コトネ)とプロデューサーとして支える義人の図が普通に見たかったぞこれ。本編ラストでの発言から想起される展開をどれも中途半端に扱ったせいでほぼほぼ良さを殺している。
 ライのエロシーン入れなきゃとかそういうのはわかるんだけど、本作に関してはライが正直足かせになったと言わざるを得ない。コトネのアイドル活動を期待してた身としては完全に期待が外れた格好となりました。

 余談。滅茶苦茶穿った見方ですけど、ラストの辺りは全く持って現実でどうしてるかが出てなかったわけですが、別に電脳世界に二人してこもったとかってことはないよね?
 いやね、せめてプロポーズくらい本編久遠ルート宜しく現実で見たかったというか、電脳世界でアイドル、現実ではこれ、みたいな二足の草鞋を見たかったんですよ。ラストなんで諸々電脳だけで済ませちゃってんの。

 もう一個。本編レビューで小都音のエロは数多いように見せて冷遇と書いたけど、ライと併せてこっち四つ(ライ本番一つ、現実フェラ一つ、本番一つ、電脳コトネ本番一つ)は今度は単純に数が少なすぎやしませんかね。
 これこういう風にした方がよかったと思うところが多かったのはかなり残念でした。エロシーンで大人のおもちゃとか使ってたけどそれワンシーンだけだしそれやるより先にやることがですね……。



名城綺新アフター
「悲しい思い出を乗り越え祝福された恋人同士。不器用ながらもつきあい始めた綺新と義人。あの夏休みのその後を描く不器用ながらも甘い恋愛模様。」

 ゲームプレイヤーだった義人が制作側へと回る話。

 冒頭はあれですね、とりあえずうまくやってるんだねという感想。けどもうちと父親その後も出してよかったと思うぞ最初だけかよ。
 とりあえずあれだ。椎菜はいつもあれだけ女ネタでいじられてたら、そりゃこんなひれ伏せ愚民共というような魔法ばりの妄想抱えてたっておかしくない。

 それ以外はあまり不器用そうには見えずとも程々にイチャラブしてて、毒にも薬にもならないシナリオであまり感想も何もないのでマジで語ることもないのであった。お前先輩キャラいつもそうなってるだろとか言わない。

 けど物申したいのは最後の一枚絵。正直どうしてこれでゴーサイン出した。ヒロインの顔を見せることに専念しすぎて、背景もとい周辺情報がからきし入ってこない。文章も意図的に簡略的に書いてるからこそ、この一枚絵は情報があまりにも少なすぎる。
 ラストCGだからヒロインの顔を大きく見せたいのはわかるんですけどね。だとしてもこれはちょっとなぁ、もう少し背景情報どうにかならなかったのか。

 まぁ、なんというかほんと毒にも薬にもならないシナリオでした。いや他もそうなんだけどさ、ただこのシナリオは一番その気が強かったかなって。悪いわけじゃないんですよ。個人的には印象にも中々残らなかっただけの話。

 とはいえ、ナギのエロシーンがあるのは素直に評価します。いやさ、本編ではなんでヒロインの(電脳でのキサラとは別に)別の姿があるのにそれもエロシーン組み込みがないのよって話だったわけで。
 まぁ、そもそもメイド姿の願望丸出しとしてのキサラを出すよりナギをそのまま出して、「あれ見覚えが?→なんでこんな甘えたがりなの!?」って方が絶対ギャップ萌え出来たと思うんだけどさ。これについては今更言ったところでしょうがないけど。

 ともあれ、本編の方のレビューで言った「ブラック企業とかでも私がやらねばと本気になって取り組んで享年25とかになる人」にはならなそうになってたのはよかったよかった。
 不器用だったかはともかく、狙ってた方向性は打ち出せてたんじゃないかと思います。



臣苗鈴アフター
「兄への想いを打ち明けた鈴。兄妹であり恋人同士という一つ屋根の下での甘い生活。あの夏休みのその後を描く兄妹同士の甘い甘い恋愛模様。」

 兄妹の秘密の恋人関係を悶々としつつも楽しむ話。

 まずは鈴の裸で始まります。いやほんとですって奥さん。導入エロシーンじゃないけど裸立ち絵というか朝チュンなんですって。
 まぁどうせ夢オチなんですけどね! 現実ハーレムのようにエロシーン夢オチとか言い始めたわけじゃないからまぁいいとしよう。

 電脳空間でのデートを楽しむ傍ら、義人が鈴との関係について悩むパートは、とりあえずさらさらとでいいですが、鈴の発言は一部頭に入れつつ読んでほしいですね。多分初見だとなんか無駄シリアスだなーと感じる人もいそう。

 アンナフィアーレの四日間デートは、「島丸ごとテーマパーク」といいながら水族館のことを演劇より尺とって話すのは他でもいいじゃんってなるし、城のお姫様は小都音シナリオのライ同様オカルト出すならそれより単純に別のことというか、もう少し現実に即したのにすべきだったんじゃないかなと。
 それと、可能なら演劇の演者のある会話で二人の内のどっちかがはっとするようなのが欲しかった。水族館なんて幾らでも可能だけど、演劇テーマは中々見ないし、独自色が出せたように思うのだけど。
 というか、鈴の新衣装パジャマじゃなくてそれこそアンナフィアーレに着てく服でよかったんじゃないんですかね。いやまぁ帽子好きにとっては鈴のエロシーンいいなぁ感あったんでそれ入れてくれてよかったんですが、義人もまともにみたことない余所行きの服着せるチャンスだったでしょこれ。

 ということで、そのあと(一年後)また夏祭りに行ってるなーと思いつつ、本編の出来がよかった分どうにもパッとしないシナリオだなぁと感じてました――ラスト五分までは。

 いやぁ、最後の最後でぶっこんできましたね。自分が近親相姦モノのシナリオの際に求めるモノであり長さであり密度が全てここには揃ってました。
 その上で、電脳空間でのプライベートモードで叫んだことと、パジャマエロの直後にあった言葉が、ここにきて刺さるのです。


リン「リンは、お兄ちゃんだけのアイドルだもん!!」


鈴「……あのね、お兄ちゃん」
(中略)
鈴「……でも、それって、いいね……」
鈴「ふたりで、どこか遠いところまで……だぁれも、お兄ちゃんと鈴の関係、知らなくて…………」
――以上、二つとも臣苗鈴アフターより


 その上でこれまでのシナリオを思い返してみると、全部ではないものの、それなりに繋がるのだ。あぁ、確かに鈴が望んでいた通りだ。特別なことは無いけれど、その特別がないということが、彼らにとっては一番の特別な事だったんだんだと。


鈴「それに……お兄ちゃんは、神様にお願いしなくても、鈴を幸せにする力……持ってるんだよ。知ってる……よね?」(臣苗鈴アフター


 願いごとを人に喋ってしまっても、この願いはきっと叶うのだと。そもそも神様に願いごととして託さずとも、この想いを成就出来ますように。
 これ以上は説明するより読んでほしいですね。OPムービーにあった「未来、探しに」という文言が一番似合うルート。
 結論から言えば、完全にコンセプト詐欺ですありがとうございました。



常磐久遠アフター
「両親からの祝福をうけ、付き合い始めた久遠と義人。あの夏休みの思い出から一年後の幼なじみ同士の照れくさい恋愛模様。」

 本編久遠ルートに於いて義人が久遠の誕生日にプロポーズする場面がありましたが、その前後のお話。

 義人は本当の気持ちを伝えるためであった本編同様、またバイトしてます。今度はネックレスじゃなくて指輪。本編翌年誕生日で送ったアレね。
 まぁバイトも義人にご奉仕したい久遠も、電脳イチャラブも海水浴も、割と単純にイチャラブしてるだけといえばだけなのでさらさら流れる感じで進んで行きます。二人にとってはそのさらさら感が当たり前という意味に於いて大事なのだけど。

 で、その中で個人的に好きなのが海水浴えっち後の岩場での会話シーン。いや単純にイチャラブというよりイチャラブからイチャ抜いた感じのが好きなんですが(伝われ)。
 けど、イチャラブからイチャを(半分くらいだけだけど)ここでは取り除き、その上でかつて久遠が落ちかけ義人が怪我をした岩場で語らせたことによって、久遠と義人がどれだけ想い合ってるのかを測ることが出来た。
 まぁそんなこと考えるの自分だけだろうけど。だけどその傷跡をなぞるという行為に、久遠が義人に対して込めてる想いの全てが込められている、そう感じるのです。

 そして、このルートメインになるだろうセレナさん関係補完。
 カトレアは本編で言及してたか思い出せないのだがどうだっけ。ひとまずカトレアは周年花とはいえ基本は最盛期が10月~2月だから夏場に花として描写するには正直どうなんだと思わなくもない。
 ともあれカトレアの花言葉が「優美な貴婦人」「成熟した大人の魅力」だからセレナさんにはぴったりよねーとか思ってたら念レス成功したという。
 要は本編翌年誕生日で語られたことをエレナさん関係で拡充したという話なんですが、素直に補完出来てると感じたので、個人的には満足。故に逆に語ることないのだけど。

 そしてラストは子供欲しいよねーってお前らまだ学園三年生だろ! ご懐妊四年後だとはわかってるけどというより思いっきりいつでも懐妊するようにしてたな! 避妊なんてくそくらえだよ!

 というわけでセレナさん関係以外はどうってことはないけどイチャラブとしてはそれなりに安定感あるシナリオでした。まぁ、表題も間違いじゃないね。十分照れくさがってるとは思うし。
 けど、なんか久遠の性格が変わってるというか、思いっきり恋愛脳というか、熱しやすく冷めやすいような感じの描き方になってるのが違和感あったのが本音。そもそも義人も妙に久遠限定ですけこましだし、久遠も一々それで赤くなってるのはどうなんだと。
 まぁ幼馴染の離れてた期間を取り戻すように、ととりあえず解釈しとけばいいけど。本編でのプロポーズした誕生日の時点では落ち着いてたわけで、まぁ付き合い始めの盛ってる時期と考えておくことにします。



総括
 うーん、金を産む作品ではあると思うのだけど、ちと手を抜いてるように見えてしまったのが本音。手を抜いてるというか、本編の時ほどの本気が見られなかったというか。

 ルートとしての出来は断トツで鈴でしょうね。いや正直最後以外は、と思わなくもないのですが、けど最後のあれを際立たせるためにあの構成にしたとみるならば、素直によく出来ている以外の感想が出ません。
 本編で鈴同様よかった久遠と香奈恵はまぁ起伏は少ない分本編には劣りますが、一つの筋もといテーマに絞って物語を進めていたので、本編同様安定したシナリオ運びをしていました。
 小都音はもうちとテーマを絞るべきでしたね。電脳ではアイドル活動に専念し、現実でもそれを見越した二人の動かし方をすれば、もうちと見栄えが良くなったように思います。折角アイドルとしてのシナリオだっていうのにこんな勿体ないことは無い。
 逆に本編よりよかったのは綺新。本編でのいらないシリアスがご退場し、素直にイチャラブ出来るように設計されたシナリオは、確実に非凡でなくとも安心感はあります。過労死しそうになくなっただけでも大きい。

 という感じで各アフターは本編前後の補完としての役割としてなら問題なくやれてたのですが、それらを邪魔な二つのハーレムのせいで評価を落としています。
 いや繰り返すけどなんでこんないらないルート入れたのよ。それするなら各キャラえっちシーン+1(小都音は+2)する努力位しなさいよ。
 まぁそんなこと言ってますが、正直上記の通りアフターもこうすればよかったのにというのがかなりあるので素直にいいとも言い切れず。特に小都音、主題にすべき軸がなんかずれてる。

 けど、よかったところとして、エロシーンで「電脳空間でしか出来ようがないプレイが複数あったこと」は上げておきたいですね。具体的にはクオンとライの水中セックスとリンの浮遊セックス。
 絶対に現実じゃやりようがなかったからこそ、そういったものに挑戦してみるのは、本作が持つべき「近未来」というテーマを生かしていてよかったです。
 付け加えるなら、クオンはその後久遠との現実での水着プレイもあったわけですし、丁度いい比較にもなりました。無理に小都音におもちゃなんて使わずともよかったんや……!


 というわけで、「駄目じゃないんだけど力の入れ方が妙にずれてて出来がピンボケしてしまった作品」が総評。本編通りの力の入れ方なら十分良作を生みだせるように思うので、次回以降期待したいところです。