直しようがない一部根幹の舞台設定は置いといて、FDとしての役目は十二分に果たせていたと思います。丁寧な描写そのままに、各ヒロインのその後やifのルートは短くとも見ごたえあり。各々のルートにそれぞれ必見の箇所があるのもいい。ただ一部ルートは別のシナリオ用意してそこに組み込んだ方が見栄えが良かったと思うのも事実。長文最初はプレイ推奨順に関して。
FDで本編前提なわけだし、のっけから各ルートの感想を――と思ったけど先にネタバレなしにプレイ推奨順に関して。ちなみに自分は「陽南→帆乃香→織姫→ころな→美晴→ひかり→沙夜」の順でやりました。
別にどういう順番でもいいといえばいいんですけど、まず前提条件として、以下の事柄が各々共通のテーマとして設定されています。ちなみに全ルート「プロジェクト・スターライトが成功した後の出来事」です。
過去のガイソン彗星の時の記憶:ひかりアフター・沙夜アフター
早乙女美晴が教職を辞した理由:ひかりアフター・美晴ルート(・沙夜アフター)
むつらぼしの会を支える帆乃香:ころなアフター・帆乃香ルート(・織姫アフター)
で、これらを前提として、配布終了した陽南を除き、お勧めのプレイ順序のイメージは、「ひかり→美晴→織姫→ころな→帆乃香→沙夜」ですかね。
まずガイソン彗星ですが、公式粗筋にもある沙夜のバレンタイン云々の話がまずガイソン彗星と絡むので、先に彗星の話を、ということでひかり→沙夜。
美晴云々は、ひかりルートでさらっと流しつつ美晴ルートでがっつりやるのでひかり→美晴、それも美晴ルートはひかりアフター直後にやるのがいいです。沙夜アフターもわずかに触れてるけどあってないようなもん。
そして、むつらぼしの会に於ける帆乃香は、まずは本編同様のしっかりした帆乃香を見て、その後にかわいい姿を見れば極上のギャップ萌えを味わえるので、関連する順に織姫アフター→ころなアフター→帆乃香ルートと。
で、それと別に個人的感想で沙夜は最後に回してほしいですね。別途記述してますがやってもらえばわかるかと思います。兎にも角にも沙夜最後に出来てよかった……。
それと関連してひかりは最初に。ひかりルートが作中のテーマを踏まえた上で様々な人間関係の繋がりをやってるので、本編から繋がる世界観の説明にはぴったりなんですよね。
それらが合わさって上記の順になってます。帆乃香→沙夜はラブコメ的なものが連続しちゃうかなとは思いつつ、でもこの順番が一番外さないとは感じましたね、はい。敢えてひかりと沙夜の位置を完全に逆にしてみるのもいいかもしれないけど、こっちの方がしっくりくるなぁ。
というわけで改めて各ルート感想。折角なんでそのお勧めプレイ順に記述しますか。関係ない(もとい最初にプレイした)陽南は最初に持ってきてます。
山田陽南ルート
期間限定DLだった新規攻略ルート③(現在は配布終了)。
「どうして先輩として暁斗を慕ってくれるのか」という話。むつらぼしの会のみんなは同じ位置で想いを共有する仲間、だけと陽南は立ち位置として追いかける、憧れのような存在。だからむつらぼしのメンバーよりもお互いのことを知っていて、そして惹かれていく様子が見れます。
で、丁寧なんだけど、如何せん冒頭が本編にないオリジナルの状態だから、まず暁斗の現状はどうなの? という点に目が言って、陽南よりもそっちが気になってしまう。
勿論、追加ヒロインにそういうのを求めるのも酷なんだけど、本編で問題なかった整合性が崩れるとどうしても気になる。
まぁ最初にこれやったからというのも大きいでしょうね。基本的には六つプレイしておまけで後からやった人の方が多いでしょうから。
ともあれ、地味に唯一の主人公と同じ星野第一のキャラ故に、「星野第一の天文部」に絞ったシナリオは好印象。故に川中島が一言喋る以外はむつらぼしメンバー(立ち絵あるキャラ)は一切出てきません。
後はやっぱりさをとめのバイトですよね。なんだかんだで覚えるのが早くて、仕事を覚えることに喜びを感じ、そして暁斗も後輩の成長を温かく見守る……なんというか、恋愛感情抜きにしても「いい話」だと思います。別に恋愛感情は言っても不自然ではないし。
これら二つの側面から、しっかりと暁斗と陽南が近づいていく様が描かれます。そのボリュームは、期間限定とはいえ無料の追加シナリオでいいのか、といいたくなるぐらい。
反面、あまりにも二人の話に絞り過ぎて、陽南というキャラの交友関係が弱くなっちゃったなぁとも。流石にころなぐらいは出してもよかったよなぁと。
まぁ単純な話、追加ルート故に攻略ヒロイン関係を出すとメーカーから担当声優へのギャラが増えるという懐的事情ではあると思います。ただまぁ、だとしても不自然さはなくしてほしかったなと。
とはいえその辺りまで流石に求めちゃいかんですね。ただどうせ人気投票サブヒロイン群の中では上位な方だったんだから、初めから入れるとか、作ったらパッチずっと公開とかでもよかったようには思う。
箒星ひかりアフター
本編がSNSによる情報拡散がメインだとするならば、アフターではしっかりと天文のことをやっています。結果的には本作のシナリオの中で一番バランスが取れたルートじゃないでしょうか。
本編中でも大活躍した惑星観察ノートを完成させるためのオルコット彗星の観察がテーマとなります。そこに至るまでに語られるは、ガイソン彗星の苦い記憶や暁斗とひかりのプチ同棲だったり、ひかりの実質的な花嫁修業だったり、ひかりところなの絆や小学生の時三人でやった彗星に関する発表だったりします。そしてその中に所々ひかりとの甘いシーンが入る配分は、キャラゲーとして絶妙です。
特にいいなと思ったのが、旧見晴台駅に於ける球紀の歓迎会を兼ねた観測会。あの場面は、むつらぼしの会ではなく、みかづき天文クラブとしてやったからこそ成せたシーンであります。
かつて、みかづき天文クラブにあれだけ入りたがっていたころな。その活動に、やっと混じれるというころなの高揚感。星に手は届かないものの、幼馴染たちの集まりという、なまじ簡単に手が届きそうなのに、家族がそれを許さないという環境だったからこその感動。
だからこそ、オルコット彗星を観測した後の「冬のアルビレオ」をころなが見るシーンはぐっとくる。はじまりの、その先へと行く一歩を踏み出せたころなの感情が手に取るようにわかる名場面です。
あと、個人的には過去回想で、ひかりが髪を伸ばすようになった理由が明示されてるのもグッド。もうひかりという存在そのものが彗星ってことでいいよねこれ。
それと本文中で、「彗星が太陽に近づくことで、その熱で表面の氷が融け蒸発、コマ(彗星がまとう大気)と呼ばれるガスを発生させる」とありますが、彗星の別名を箒星と呼ぶことと併せて地味にコマ子さんの名前を回収してますね。と思ったら最後の方でちゃんと改めて言ったね、プレイしながら書いてたからこうなっちゃった。
そしてオルコット彗星の大発光(アウトバースト)。三人でまた新たな世界を見上げることが出来た喜びは何物にも代えがたい。多くを語らないからこそ、行間にそれらが詰まっています。
ともあれ、天文をやりつつも、キャラ同士の関係性を深めていく、そんなキャラの成長を感じさせるシナリオでした。
ところで。
ひかり「バイトない時、いつも何やってるの?」
(中略)
暁斗「……そういや俺、バイト以外ほとんど何もしてねーな」
あとは星を観るか天文雑誌を読むか、宿題するか。
たまにタケちゃんから借りたマンガを読んだり、先生と盛り上がらないトランプをしている。
暁斗「俺って、なんて寂しい青春を送ってるんだろう……」
ひかり「待って待って、それカノジョの目の前で言う!?」
ひかり「自身持ちなよ。あんたの青春は最高に輝いてるから、あたしが保証する!」
暁斗「そうかなぁ」
ひかり「あんたには天文があるでしょう? 天文女子に囲まれて、そして、こんなないすばでーで可愛い可愛いカノジョだっている」
――以上箒星ひかりアフター
ここ本気で画面の前のプレイヤー刺し殺しに来てるだろ!
自分は別途本業趣味あるからまだいいけど、女子に囲まれるどころか画面の前でカチカチとエロゲやるだけが趣味(だった)、という状態の人はここで無事死亡するだろうなぁ……。
早乙女美晴ルート
新規攻略ルート②。
変態だ! この処女BBA変態だ! そしてエロシーンだけど勃たねうわなにをするやめ(ry
私のことは気にせず、部長は星の輝きだけを追っていてください、と陽南は言った。だけど、その目指していた星の輝きが消えてしまったら――。
帆乃香ルートに於いて、帆乃香が自分の能力を必要以上に見下すことに対し「それがキャラの性格なんだよ」程度の話しかしませんでしたが、このルートでは美晴がかつてのトラウマを基にプレイヤーに問いかけてるなと。
諦める、もといどこかで一線を引くことはどこかで必要ですが、行き過ぎた引き方は果たしてそれでいいのだろうか? ということをプレイヤーに迫っています。
間違いなくFDで一番やりたかったことであり、且つFDの時系列をここら辺に持ってくるように仕向けた(元からこの辺りぐらいしかないとはいえ)シナリオでもあります。
プロレタリアートの自己欺瞞云々は他の人も割と語ってくれてるというので自分からは何も言わないでおくとして、内容は先生が教職を辞した理由と再就職に至るまで。ルート前半部は割と本気でぐさぐさ刺しに来ます。
惑星観察ノートを巡る顛末。卒業式の日に見た先生の陰の面。結果的に盗み聞きしてしまった先生の悲鳴。晩酌に付き合わされた時の美晴の教職への拒絶の言葉。
あれだけ親や周りから働かないの、と言われても、それだけのトラウマがあれば、というのは実際その通りで、これ以上自身を肉体的にも精神的にも痛めないための逃避というのは、割と仕方ないことだと思うのです。
それを打開する奇策としての、プラネタリウムを見せて、そこで森田さんと一緒に惑星観察ノートを美晴に見せるためのデート。ここまでのパートは、下手に文字に起こすよりも、やってもらって各々が感想を持つ方がいいと思います。
まぁ最初に配られたプラネタリウムのペアチケットは物語を都合よく誘導させたいと思っちゃいましたけどねぶっちゃけ。ここは本編で成功したから○○、みたいなのを特段設定しなかったからこそ成せた技ではありますよね。
とはいえ、再就職できたのも、プラネタリウムのお手伝いという、クレームばかりな子供などは無理して相手する必要がある訳ではなく、且つやることが自身の好きな天文のことだったから、というのは大きいですよね。趣味を仕事にするのは趣味が楽しめなくなる、とはよく言いますが、いざという時に真に助けになるのも、また趣味だと思います。これはいい方向に作用してるんじゃないかと。
ただ、瞬間風速的にはそこまでで、正直それ以降の付き合う流れは一気に下降線というか、相当強引だなと。他レビュー見てても復職したところで大体美晴ルートの感想終わってるのはそういうことかなぁ……と勘繰りたくなります。
先に結論を言えば、正直これはえちシーン付きルートじゃなくて、何かのルートの、先生とはなんもない中でのわかだまりを解くための舞台装置に徹してくれた方がよかったなと。
具体的にはひかりと沙夜とのハーレムルートみたいな奴ですかね。ここでやるのも何なので詳細は追記で。本音沙夜アフターで全て許した……とはいいたいけど、まぁそこはやっぱりちゃんと書き残すべきかなと。
白鳥織姫アフター
織姫の芸能活動がてらとしてハーバータウンでむつらぼしの会と望遠鏡や双眼鏡のメーカーとのタイタップでの活動やるよ! って話。
ごめん、正直殆ど印象に残んなかったなぁってのが本音。一番印象に残ったのがよっしおかー! って結局帆乃香じゃねぇか!
まぁタレント活動の補完に徹したシナリオは、本編でほぼ言及がなかったことを考えるとそれでよかったのかなとも。
個人的には織姫がさっさと「お付き合いしてる人がいます!」ってあの場か何かどこかで借りて宣言しちゃってもそれはそれでよかったと思いますけどね。多分その内どこかでそんな話が浮上するんだし。似たようなのあったな、あれだ、tone work'sの「銀色、遥か」の瑞羽ルートだ。
このルートに当初期待してたことって、帆乃香とむつらぼしの会を見守りつつ織姫自身の成長を見る事だったんですよね。で結果として、織姫自身の活躍は見れたわけですが、帆乃香他むつらぼしの会を見守ることというのはあまりなかったなと。そりゃハーバータウンに於けるわいわいとした活動は見れましたけど、個人的に見たかったのはそれじゃなかった。まぁそれはいいんだけど。
勿論織姫は卒業したわけだから、別に特段おかしい話じゃないし、それをころなルートで全部回収したからそっちでやったんだなというのはわかるんだけど、こっちで織姫と帆乃香の続く親交みたいなのをやるとばかり、だったのでちょっと肩透かしを喰らったような感じ。まぁここは自分の中で勝手に期待して勝手に外しただけだからあまり気にしてはいけない。
ラストの南半球のくだりは必要だったのかどうか。殆どクリックしない内に南半球の星空見上げさせられていたのは、ファンディスクということ差っ引いてもポカーンとした。
なんやかんや幸せにやってる二人、なのはわかるんですが、どうにもシナリオ展開に統一性がなかったなぁ……というのが織姫アフター。
しかし織姫というキャラに対して本編の時からどうしてこう好きになれないんだろう……と思ったけどあれや、同族嫌悪や。ついでにそれに関連した共感性羞恥も。
とりあえずハーバーくんの中に暁斗が入るバイト、これを帆乃香ルートでやったらどうなったんだろうなと。彼氏臭いのに引きつつも無理やり抱き着く帆乃香……やりそうだなぁ。
日下部ころなアフター
ころな「ころなはちゃんとここにいるよ。地球にいきる人間だから」
ころな「いつの日か、宇宙へと旅立っていくかもしれない。でも、今日のことがあるから、ころなは地球を見失わないよ。自分はここに立脚しているんだって、信じられる」
ころな「すごいよね。宇宙って。どうなってるのかわからないほど」
――以上ころなアフターより
この発言通りの、本編のルート内テーマをがっつり引き継いだルート。ころな自身の成長話ということで、まさかここまで帆乃香絡みの話をやってくれるとは思わなかった。
このルートの一番の主題は、本編では織姫ルートが担っていた「サークルの存在意義とそれを支える人の受け継がれる心」であり、帆乃香からころなへと段々とむつらぼしの会の主導を受け渡していくことがメインになります。ひかりアフター同様、「人と人との絆」を主軸に据えてますね。
冒頭一年かけてやってきた流星電波観測。昨冬の流星群以降大きな動きが中々現れずに、何がやりたいのかを見失うころな。
正直なところ、動機を考えると仕方ないかなと思う節もあります。以下に抜粋。
陽南「ころな必死すぎ。そんなに部長のことが好きなんだ?」
ころな「元々アキ兄が好きで、天文に首を突っ込むようになったんだし」
陽南「……動機が不純すぎる」
陽南「でも、悪くはない。きっとそういうのって大事だと思うから」
――以上ころなアフターより
はい、はっきり言って不純な動機ですね。どっからどう見ても不純ですね。ですが、陽南同様これを自分は一切否定しません。
いつも自分が言ってることなんですけど、趣味でもなんでも、何かを始める同機は人それぞれ。ぶっちゃけ、このころなのように、憧れの人を追っかけて何かを始めた、別にそれでいいと思います。
それで、少しでも興味をその何かに向けることが出来れば、そこから自身の世界がぐっと広がるように思うのです。これは個人的な経験則で言えるのでそんな間違ってないはず。自分じゃないけどそれで人生変わったの実際に何人か見てるから。
お金に関しては、単純にテント購入だけに徹したのはよかったです。ころなが当初提案した少しグレードの高い食料関係は、その後が続かないと殆ど意味ありませんもんね。
それに続くテント設営の練習からの後輩指導。後輩に何か受け継いでいけるのかと不安になるころなの気持ちもわかるんです。星に手が届かないのと同様に、人の気持ちなんてわかりっこない。
だからこそ、二回目のえちシーン後、午前三時に改めて二人が春の大三角とを見上げてころなが出した無意味じゃないという結論は同意できるところです。見えないからこそ、知りたくなる、それは星空であれ、人の心であれ。
そういやPULLTOP前作「ココロ@ファンクション!」は主人公が心が読めるようになっちゃったんでしたっけ。本編水菜ルートほぼ全部体験版しかやってないけど、それに通じるところもあるんですかね。
そして帆乃香のインフル騒動。受け身とはいえ、急遽観測会の陣頭指揮に立たされて、やっと真にやりたい事を見つける。それらを乗り越え、最後に帆乃香がやってきた。そして先輩から後輩へと繋がるラインが紡がれる。
先の不純な動機と、本編でのルートと併せ、ころなはそれを体現しています。それこそ、不純な動機がきっかけだったけど、それで人生がほぼ決まった瞬間ですね。
もしかしたら、またころなはやりたいことを見失うかもしれない。だけど頼れる人はいっぱいいて、その上でみんなを導く力を手に入れた。だから、再びそのようなことになっても、きっとまたその時もやりたいことを見つけられる。
ころな自身の始まりから、いつか様々な人を動かすようになるまでの物語。人と触れ合い、意見を周りから募ることで、人として成長していくころなを見れるシナリオでした。
だが一点。幾ら何でも一枚絵少なすぎ。SD絵抜きで、普通のとエロとで差分抜き12枚(ひかりと沙夜)とは言わないけど、織姫帆乃香美晴と10枚あってそれで7枚はおかしいでしょ。それ追加パッチのひなみんの枚数だから。普通のが三枚は後から見返しては? となった。しかも一枚目差分ないし。
ちなみにSD絵入れても9枚です。完全に分量がひなみんと同一。今回ルートがある七人の中では人気投票の順位が六位だったからといってこれはあんまりっすよあんさん……。
吉岡帆乃香ルート
新規攻略ルート①。
やばい久々に萌え転がった。何このかわいい生き物。個別シナリオを前提とした単純な萌えキャラとしては個人的総合TOP3に余裕で入賞しますわ。
いやね、本編時点で幼馴染三人とくっつかない場合、暁斗と一番くっつく可能性高いのって帆乃香だとは本編やってから常々思ってたんですよ。それもあって本編感想では織姫ルートは殆ど帆乃香に置き換えても違和感ないと書いたわけなんですが。
まぁ特にひかりと沙夜に対して、何らかの気持ちに気付く方が先かなとは思うので、限りなく可能性低い上で、ではあるわけですが、相当低い確率の中で、ヒロインもそうだけど暁斗自身の誰かに対する恋心というのも相当無自覚になるだろうと思うんですよね。
そう考えると、そこら辺で似た者同士であり割と対等な関係性である帆乃香が、幼馴染以外で一番可能性高いというわけです。むつらぼしの会の会長と実質的にそれを補佐する役割ということで、シナリオ展開によっては幼馴染押しのけてもおかしくなかったわけで。
とはいえ、実際に自身に鈍感だとすると、FD追加、もといプロジェクト・スターライト後のタイミングでこういう展開というのでも、確かに正しいのかなとは思います。そういう書き方すると織姫ルート全否定になっちゃうけど、まぁしゃーない。
まぁ本編で先に恋心に気付いた暁斗が告白したら一切自覚どころか意識もなくて返事保留にして悩みまくる帆乃香ってのも見てみたかったけどね! だけど沙夜アフターの描写みる限り帆乃香無自覚に相当前から恋心ある奴だよ! でも自覚したら泥沼!
恋愛感情覚えてその時は暁斗フリーだったけど結局沙夜とくっついて泣きを見る帆乃香とかある種見てみたいけどここまでくると昼ドラや。ひかりと沙夜ところなと帆乃香で暁斗取りあいとか面白そうだよね。しかし帆乃香って性格的に恐らく暁斗が誰かとくっつかないと自身の恋心に気付かないタイプっぽいから、茨の道やでぇ……。
これらはやる気なら自分で二次創作書くしかないのか……。まぁ色々妄想が捗るけどまぁそれはともかく。
それと通い妻をやめるという沙夜の描写、本編で描写があった織姫ルートではひかりが海外でしたが、今回はひかりが既に帰国済みとあって割とさらっとやってます。沙夜の人気はそこの描写という声も大きいでしょうが、自分はこれくらいが好き。泣きつける親友が傍にいるかいないかの違いは大きい……。
ちなみにひかりと沙夜に打ち明けた時の描写は、「彼女なら割と接点はあったからわからないでもない」という見解です。個人的には暁斗が帆乃香に惹かれてたかどうかというと、ひかりがいつの間にと言ってた通り描写だけでは分かりづらい節があったとは思うので、そこだけ。
何はともあれルートは基本的にラブコメ全開です。流石に宛名間違えの帆乃香の気持ち全筒抜けは笑った。本編と通算で一番笑ったんじゃないだろうか。次点で沙夜アフターでのひかりのチョコの破壊。
付き合い始めるまでの帆乃香の暴走はほんと「ディスプレイに時々映る俺の顔きめぇwww」となることは請け合い。それまでが割とのんびりした感じだけあって帆乃香が恋心に気付く前後の落差が非常に激しいからこそのにやにやです。
とはいえ、帆乃香に対して発破をかけるのが一から十まで織姫の役目、というのは賛否両論別れるかなと。もう少し自発的に暴走する帆乃香が見たかったという思いはないではない。
まぁ「おのれ、純粋無垢な吉岡さんをこんなに焚き付けるなんて、ありがとう心の底から感謝します」の一文で爆笑したけどね! 大体それで許した。
けど流石にむつらぼしの会のみんなに付き合ってることを報告することだけは自発的に。勿論みんなに大体察せられてます。
ってえっちしちゃってることだけは秘密にしちゃってますねってそんなこと公言する奴いるかー! 絶対帆乃香は頭のネジが飛んでるというより元からネジ穴が一つ二つ開いてないよ……。
というわけで、最後まで暁斗くん、帆乃香さん呼びにならなかったのがなぁ、とは思うものの、ラブコメとしてはほぼ完璧でした。だからこそ、本編感想でも言ったけど本編時点で攻略したかったのは織姫じゃなくて帆乃香なんだよおぉぉぉ!
いやこれ冗談抜きで本編攻略キャラ違ってたらそれだけでここの評価恐らく中央値2点ぐらい上積みされてたよ? なんで両手胸の当たりに上げる立ち絵本編の時点で実装しなかったの? 本編ヒロイン織姫にするより絶対いいの書けたよね? 今からやらない?
ただまぁ、ラスト直前の織姫との回想は入れるにしてももう少し前に入れられなかったのか。てか殆ど織姫が新興宗教教祖の域になってて帆乃香の今後が心配だ。織姫にずっと盲目的なら逆に大丈夫かもだけど。
天ノ川沙夜アフター
誰かを立てることを優先して、自分を後回しにして、だけど時々毒を吐く、天ノ川沙夜はそういう少女である。本文中で明確な理由は書かれませんでしたが、恐らく両親の離婚に端を発したと思われる自罰的な性格は最後まで治りませんでした。だけど、そんな彼女だからこそ、唯一無二のお姫様にしてあげたい、そんなシナリオ。
だからこそ、ひかりアフターでは本編の内容に即した天文の事柄をやりながらひかりを含めた様々なキャラの成長を描いたのに対し、こちらでは幼馴染という時間の積み重ねを軸に暁斗と沙夜の成長と関係性の深化を描くことに特化しています。本編が家出騒動などであまり甘々が描かれなかった分、ここでの甘々描写は中々のもの。
まぁ沙夜が甘えすぎてなのかどうかはともかく前半はかなり恣意的に「萌えキャラ」という記号的キャラになってるのは否めません。あっくん相手だからってチョロい女っぽく意図的に描写されてるのが嫌という人はいるかもしれない。個人的にはその気がちょっと強いかな? とは感じた。
のっけから、「私が通い妻ちゃんでいいんだよね」という発言に万感が込められているというのを感じます。他ルート、特に本編織姫ルートであそこまで通い妻をやめなきゃね、ということの語り方だけでも、このルートが描きたい真意はわかるかと。
けどその後の自転車二人乗りくらい一枚絵付きで書いてくれよぉー! 本編ひかりルートで三人乗りあったけどそういうんじゃないんだよー! 二人乗りで寒い寒い言いながら会話するとこ見たかったよー!(ただの駄々こね
で、バレンタイン前にみんなで示し合わせたかのようにチョコをあげる女子群を見てジト目になる沙夜はかわいい。その後の義理チョコ騒動で笑った直後のえちシーンが実に煽情的なのは絶対図った奴。
球記にバレンタインのチョコの作り方を教わりながらの心情吐露の場面は、沙夜のキャラが端的に表れている。
あぁ、やはりこの子は誰よりも他人、特に親友を優先する子なんだ。自罰的すぎるかもしれないけど、間違いなく「いい子」だと。好き嫌いが分かれるかもですが、それらをひっくるめて「いいキャラ」だと思うからこそ、それらのずっと仕舞っていた記憶が、素直にプレイヤーに染み入る。
積み重ねてきた想いをこれに。甘すぎるのは嫌いだって言ってたから、苦みとしてガイソン彗星の記憶をアクセントに。だけど後輩に話を聞いてもらって口どけを柔らかく。怖がることはない、渡す相手は片想いの幼馴染ではなくれっきとした「彼氏」なんだからと。
そしてバレンタイン当日のハーバータウンでのデート。それまでの関係性と、その途中と、終わってまでと関係性の三変化が見れるパートだったなと。
通い妻じゃなくてこうなったらいいね程度の感覚で新妻やってみたり、彼氏の人気に妬いてチョコ破壊したりするような初々しさ(本編沙夜ルート暁斗は当初それを望んでいたとはいえ)はどこかに消えて、すっかり隣に居る事、いられることが全く不自然じゃなくなった、真の意味での恋人関係。
ウィンドショッピングで家具とかを見て、具体的な沙夜との将来を考えられる。今だってさをとめの居候で、少し前までは家なき子として学校に住んでて未来というものを考える余裕がなかったからこその、成長したなと思えるように仕上がっている。
だからこそ、その後のプラネタリウムが光るわけです。そりゃプラネタリウム入る前に空を雲が覆うってのはまぁ物語的都合よさはありますが、やっぱりちゃんとアルビレオの下で渡したかっただろうという暁斗の想像と実際の沙夜の想いが共通していたということがわかればいい。
いや空が晴れてて二人がプラネタリウム来なかったらどうしたんだろうねとかとは思うけどさ。誰も来なくて放置されるひかりの図を想像すると……ごめんそうだとするなら笑うわ←
で、これを最後にすべきとした最大の理由がED後の結婚式。これのおかげで自分はすごいほんわかした気持ちで終われました。
直前に、挨拶回りをしながら、沙夜との出会い、ひかりとの喧嘩別れに端を発する別離、祖父逝去後の再接近、そして付き合い始めてからの「お姫様にする」きっかけまで様々なことを回想する。
そして、それらの日々を懐かしむかのように、又は過去のものにするかのように、大々的に教会で行われる結婚式。正直ここはすごい胸にじんわりきました。
暁斗と沙夜の境遇って地味に似てるんですよね。暁斗は両親の早逝により親族間の盥回しで友達も作れない。沙夜は両親の離婚と都会での馴染めなさで同様に友達が出来ない。その二人が三日月村で出会えたことは、奇跡と呼ぶには安易ですが、幸運と呼ぶには十分であったと思います。それは仮に沙夜ルートに入らなかったとしても。
その上で、二本の尾を揺らす親友を幸運の星かもしれないと言ってるのを始めとして、「沢山の幸運の星に祝福」されたからこその幸せそうな描写は「君の目の輝きから目を逸らさな」かった結果だとするならば、それはもう二人の行動の賜物ですね。これ以上はもういいかな。
ちなみに、最後に流れる「Winter Diamond」が、ひかりアフターはショートver.なんですが、沙夜アフターはフルもどきver.(正確にはOPで流れた二番を飛ばしたバージョン)なんですよね。その場面に於ける歌い出しの歌詞がどっちの方が合うか、という話ではあるんですけど、フルもどきver.だった沙夜アフターの方がオーラスエンド感が出てた。やっぱりメインヒロインは沙夜だよね(過激派再び
このルートと毛色が似ている帆乃香ルートとの最大の相違点は、二回目のえちシーン辺りまでは帆乃香ルート同様「ラブコメ」だったのが、段々と「コメ」の成分が減っていって、ハーバータウンでのデートが終わる頃には幼馴染との純愛だけが残ったことです。
これが他のルートだったら多分特には何も言わなかったでしょう。だけどこれは、幼馴染ルートだからこそ必要な時間の積み重ね方、であると感じます。
無論幼馴染の定義ガーというのはありますが、ここで大事なのは、沙夜がひかり同様「暁斗の真の意味での初めての友達」であるということです。上記の通り、出会えたことがまず幸運ですが、ひかりのお陰もあるとはいえ、その二人が仲良くなれたのは、境遇の面も大きいと思います。
でもやっぱりルートに入る云々までは各々が行動するからこそですね。思い返して、あの時ああだったね、と思い返せる夫婦って素直に素敵だよなと。そうなってればいいなと思います。
そういや沙夜アフター終わってからなんか聴きたくなったのが、1983年の曲ですが松任谷由実の「ダンデライオン~遅咲きのたんぽぽ」。幼馴染とか関係あるような曲ではないけど、「とても幸せな寂しさを抱いてこれから歩けない 私はもうあなたなしで」とかこれ終わってから聴くとすごい沙夜の心理っぽく聴こえるのでおすすめ。
「ダンデライオン」といえば、当時自分が生まれてないから、主題歌として提供された原田知世主演のミュージカル「あしながおじさん」も見てないんだよね、ジーン・ウェブスターの原作小説だけでも読もうかな、というのはともかく。
前半はみんなでわちゃわちゃしながらも、段々と二人で人生を歩むことを決め、ひかりが引き立て役となって二人の間にあるものが恋から愛情になるまでの、いい二人の成長物語でした。沙夜 is ゴッド。ゴッデスだろという野暮なツッコミは入れない。
どうでもいいけど最後の結婚式一枚絵の沙夜がAugustの「夜明け前より瑠璃色な」のフィーナに見えたのは自分だけじゃないはず、未プレイな内は首突っ込まん方がいいね、うん。
総括
流石に本編感想で突っ込みまくった舞台設定に今からどうこう言いませんけど、本編感想では舞台設定さえ中途ではなくしっかりと作り込んでくれれば真に出来がいい作品と言えたのに、と書きました。
今作は、丁寧な心理描写の基礎が本編で出来てた上で、さらに上を狙った甘々、又はラブコメを目指した結果、本編の補完以上の働きをしてくれたと感じます。
「はじまりの、その先へ」というキャッチコピー通りだったルートはひかりところな。各ルート毎に「はじまり」が設定されているわけですが、そこから踏まえた上でそれらをやってくれたのはこの二編でした。
ひかりはひかりアフターの始まりと暁斗とひかりが出会った物語そのもののはじまり、そこから連なる人間関係の「その先」を。
ころなはころなアフター開始時点での「何がしたいのかわからなくなってしまった」という、本編ころなルート冒頭の状態へと逆戻りしてしまった地点からの「再出発」というのを、みんな色々な経験を積んで見つけるものだということを。
ラブコメは文句なしに帆乃香。純粋に甘いのは沙夜アフター後半。辛酸を舐めたからこその深みがあるのは美晴ルート前半。これは他人事のようには思えないですからね、特にこのご時世では。
その他シナリオ面は上記の通り。ただ、追加ルート三人は、本編で別に誰ともくっつかないバッドエンド的なものがある訳じゃないから、各々でどうして各ルート開始時点でフリーなのか、ということの説明が欲しかった。ラブレターをひかりに返却して本編に於ける幼馴染組行き共通第二部へは行かなかったと明言した帆乃香ルートだけはまぁいいとして。
自分の中ではラブレターを素直に返し、その後織姫とプラネタリウムにも、ころなとの約束にも行かなかった、と解釈していますが。あ、でもそうだとするところなが無理やりにでも暁斗攻略しにかかりそう、まぁいいや。
キャラ面では、この作品の最大の功労者は吉岡帆乃香、それだけは間違いないです。自身の追加ルートに加え、ころなルートでは重要な引き立て役を演じ、みあげてという作品になくてはならない存在まで推しあがったように思います。やっぱり織姫はいらなかったんや……!←
他のキャラも、ルート内外で嫌味にならない程度にギャグを担ったりシナリオ進行の役目を負ったりと必要に応じて配置されてるのはよかったです。一部出ずっぱりなキャラもいたけど。
まぁ新たに配置するのも難しいとは思いますが、折角天文カップルの話がころなルートで出たのだから、むつらぼしの男勢最低一人はカップル作らせてもよかったとは思う。個人的には田尻さんと加納さんがくっつくところ見てみたかったですね。消去法かもですけどこの二人って地味に共に性格いいし大人の恋愛的なことやってくれそう。
ともあれ、本作はよくも悪くも舞台設定が各シナリオの本筋に殆ど絡まなかった。そしてそれらを丁寧な描写と甘々に全振りした結果の出来であると思います。本音美晴ルート後半いらんかったけど。
「はじまりの、その先へ。君と終わらない旅を続けてく」、本編よりも完成度の高いFDであると感じました。また幼馴染主体のガッツリとしたシナリオ作ってくれればいいな……今度は幼馴染一人にして完全にメインで。
追記
ここだけの話、本編感想であれだけ書いて、しかもひかりと沙夜の両ルートこっちの方がいいんじゃない? と提案紛いのことまでしてこっちで全く持ってその展開のまんまじゃこっちこれできないでしょ、という展開になってないかどうかヒヤヒヤしましたが問題なさそうで何より(汗
というわけで本編の感想は存置した上で、本編のこっちの方がいいなぁ的雑感からこれにつなげてほしかった、とだけ。別に不可能ではない。
追記Ⅱ
「世の女子たち」という想像で関係ないもの扱いされる美晴先生
追記Ⅲ
美晴ルート後半の展開と、追加ルートとして存在させることの難しさについて。
この作品のtillwinkさんによる「アラサー女性の処女はない」から始まる感想がこれの下にありますが、一緒にいるのを幼馴染に見られて仲間内に拡散されて、そんなストーリー年下学生ヒロインとやれや! というのはもうほんと全力で同意しますね。これのせいでぐぐっと評価が下がっちゃったのはなぁ。
まぁなんでもかんでも処女ってのはやっぱりelfの「下級生2」に於ける柴門たまきショックが大きくて未だに業界全体がその尾を引いてるというのはあると思うんですけどね。プレイするどころか発売された2004年なんて自分はまだ小学生だったから当時の騒動なんて知りようもないんだけど、ちょくちょく「この作品のこのキャラ処女の方が不自然だろ」という話を聞くたびに事件名を聞くと、やっぱりそうなのかなとは思ったり。
ともあれ、知り合いからこれは最後に回すべきと言われてたけどそうしなくてよかった。これ最後にしてたら不完全燃焼感半端じゃない。
美晴ルートの一番の問題点って、美晴本人が輝くパートが、別に美晴ルートという形を取らなくても出来たことだと思うんですよ。美晴を攻略キャラにしてよかったのかっていう。
勿論しょうがない節はあります。この作品と追加シナリオの制作にあたり、一位から順に沙夜、帆乃香、美晴、ひかり、陽南、織姫、ころなと続いた人気投票の結果を受けたものということであるのは想像に難くありません。それだけ美晴が人気キャラであることが大きいのは事実ですし、追加ルートとして作る必要があったのはわかります。
ただそれで、いい感じに作ったけどお後が宜しくない展開のルートと、それこそルート内に入らなかった場合の沙夜じゃないですが、ルートはないものの徹底的に美しく輝く場面を作るのとだったらどっちがいいかって話なんですよね。正直自分は後者だと思います。勿論ルートとしてあった方がそのキャラ推してる人は嬉しいでしょうが、全体的な人気はやはり後者じゃないかなと。
そりゃ人気投票って一つの明確な尺度ですし、何かを作る時にそれを参考にするのが一番手っ取り早いとは思うのですけど、それまでのルート以外の場面でのキャラの動き方がやっぱり大きいと思います。ですが、少なくともルートがあるヒロイン的にはキャラ≠ルート人気なわけでして。
ではここで人気投票一位の沙夜を例に見てみましょう。何を持っていたから彼女は人気投票で一位になれたのか?
まずは幼馴染三人の過去描写の丁寧さ。ここでキャラをとにかくしっかり作り込んでます。ひかりに暁斗もそうですが、特に沙夜はまずは不相応なサングラス、それを外すとオッドアイが現れるというギャップを用いた導入は、他の美少女ゲームを見渡してもそうそうありません。
次に通い妻設定。これが思ったより人気が出たと本編付属の設定資料集にはあります。単純に家が隣だとか、同じ学校に通う腐れ縁で校内で熟年夫婦と呼ばれるだとかそういうようなことはなく、敢えて接点をそのようにした「意外性」、ここに人気が出たのは間違いないです。
そして外せないのが他作品でも幼馴染特有となっていると言えるだろう振られた時の描写。本編では沙夜は織姫ルートで恋慕を強制的に諦めさせられるシーンとかがありましたし、今作でも一応ながら帆乃香ルートで少しそんな話をしていました。特に本編織姫ルートに於ける「もう通い妻は卒業だね」の破壊力は、確かにルート以上に沙夜というキャラが輝いた瞬間であろうことは認めざるを得ません。
通い妻設定もそうですが、沙夜に人気が集中した理由は、そこが大きいと思うんです。ここに上げた三つはいずれも基本的には沙夜ルートでの描写とは別になります。キャラ≠ルート人気のわかりやすい例ですね。
美晴ルートに戻って考えます。
美晴は、かつては先生としてみんなを見守る役、現在では早乙女家のただのニートというわけで、本編ではルートがありませんでした。だからルートに於ける人気、みたいなものは美晴には元々ありません。
じゃぁ美晴の本編での人気はどうしてかといえば、やはり「恩師だった元先生が今では自堕落なニート生活」という一種の「意外性」であると思います。だけど時には暁斗の力になり、暁斗のことを考えてくれ、でも森田さんには頭が上がらない、そんなキャラです。
自分が好きかどうかはともかく、人気が出ることはすごいわかるんですよ。だけどその人気は、ルートに根差したものではなかったからこそ、ルートを作る人気とは違ったんじゃないかなぁとは思います。
沙夜と同じこと言ってるようにも見えますが、沙夜と美晴の決定的な違いは、「沙夜はひかりとの裏表みたいなルートの作り方が出来るのに対し、美晴は出来ない」ことです。沙夜ルートがないとひかりルートも、ということになっちゃいますが、美晴ルートはあってもなくてもなんですよね。自分は、ルート後半が前半とはかけ離れた内容・出来であったことを見るに、別のルートで美晴ルート前半の内容をやるべきだった、と思うわけです。
で、それを踏まえた上で、美晴ルートを総合的に見た時に、「美晴の教員時代のトラウマを解消させることをのみが目的となっていて、他がないがしろにされてる」という風に感じたのが本音です。
一番わかりやすいのが、このルートでは少なくとも沙夜は一切「諦めさせられた」ような描写がない。本編ではひかりに対して初恋の人と言いふらすな、と言い、結婚『させられちゃうの』、と怪訝な顔をした沙夜に誤解を解くのに必死になっていたわけで、そういうのもあったのに、「まぁ先生なら……」となってるのはちょっと考えづらいんですよね。
そりゃ苦しんでた先生だから、という考えもなくはないですが、帆乃香ルートを見る限り、誰ともくっつかないなら沙夜は今だ通い妻をやってる(≒暁斗に恋慕の情がある)わけで、そうすんなりと先生に明け渡すようにも思えないのも事実。帆乃香は事後報告でありそれまでの触れ合いの多さでそれなりに納得してる印象。陽南は全く描写がないからわからない。
ひかりが見つけて即メッセージを飛ばさなければ、という話なんですが、あの後真っ先に暁斗が受けるべきだったのは沙夜の尋問ですね。そこの時点で、暁斗が本気だとかいったならまだわかります。けど時間がたってからなぁなぁで付き合うことになった関係上、付き合うという結果は暁斗の消極的判断のようにも見えます。
それらがあるから、先生を選んだことを祝福してくれるなら、素直に受け取ろう、それが誰もが望むこと、と言われたところで、どうにもすんなり受け取れないんですよね。絶対一部は祝福する前に戸惑う様子しか浮かばない。沙夜からすれば相当唐突だったはず。
美晴ルート前半は「美晴に関する話」、後半は「美晴ルートでなければならない話」ですが、結局のところ、後半半分が基本的に恋愛事情的な話だけであるこというのが大きいと思います。確かにこの前半と後半を混ぜられるかどうかと言われると微妙なんですけど、だからこそじゃぁそこは分離して別途やる方がよかったかなと。
勿論美晴ルートそのものを否定はしません。ただ、前半を書きたいがために、後半が迷子になっていたんで、方向性としてはそういう方がよかったんじゃないかなぁと感じます(未プレイですけど、なんかALcotハニカムの「キミのとなりで恋してる! ~The respective happiness~」は『結ばれなかった妹ルート』で徹底的に結ばれないからこその幸せを描いてるんですか? やらなきゃなぁ……)。
結果的に、本編から外れたifルート(ここでは本作追加三ルート)ということであることに変わりはないのですが、沙夜アフターとか見てると、結果的にニート脱却は出来そうなわけで、その物語上での不変の事実があるからこそ、うまい具合に調理できたんじゃないかなぁとは。
――改めて書き出してみて思ったんですけど、この作品のキャラ設定ってとことん魅力的に、しかも被らないようにうまいことやってるなぁてすごく思いますね。このキャラのこの一面が見たいとかというのがぽんぽん浮かんでくる。
だからこそ、本編感想でも書いた通りひかりの鉄道好きを始めとした使われてない設定がただのいらない/無駄な情報、にしかなってないのが実に勿体ない。それを生かして今以上に発展性のあるシナリオがあっただろ、とどうしても思ってしまいます。
美晴に関してはどうなんでしょうね、美晴ルートとしてやる分には素材を十二分に生かしてたとは思うのですが、どうしても恋愛に持ってく必然性が。別に「等身大の恋愛」だとかそういうコンセプトを掲げて発売したわけじゃないとはいえ、どうにも「若い奴らが天文の世界を引っ張っていく、それを森田さんとか隠居組は温かく見守る」くらいの方がよかったなぁと。
ともあれ美晴は、先述の通り「自身は結婚とかとは無縁になるかもしれないけど教え子たちが教員時代のトラウマを解消してくれた」というルートにすべきだったかなと。以下に詳しく。
追記Ⅳ
本編感想でちろっと書いた「ひかりと沙夜のハーレムルートが見たかった」という話が、本作を読んで一層強くなったという話。
美晴ルートをひかりと沙夜のハーレムルートにすべきだったと主張してますけど、どうしてそうすべきだったかといえば「惑星観察ノートは三人の作品だから」ということに他ならないんですよね。そしてそれをお手軽に出来るのがそのハーレムルートだということに他なりません。
プレイしたりそもそも公式の粗筋を見るだけでもお分かりの通り、本編本作通じて「みあげて」という作品にハーレム的展開は一切ありません。三角関係はありますが、それが妥協としてのハーレムみたいなのはなく、暁斗は誰か一人だけを選んでいます。生涯を共にしてるかどうかまでは一部キャラはわかんないけど。
勿論そうやって暁斗が選び取った道、というのもいいんですが、個人的に惑星観察ノートを基にして「三人の話」を見たかったということにつきます。それに関しては、どういうルートを辿ったところで不変の事実なんですから。
惑星観察ノートは、暁斗とひかりと沙夜、三人の合作であり、誰が欠けても完成しえなかったものであることは疑いようがありません。そしてそれを届け出てくれた美晴先生、それをこっそりコピーしていた森田さんの行動あってこその結びついた様々な活動であるので、それに関わった人は全員出して欲しかった。何も十人以上その場に集めろっていうんじゃないんだからさ。
なんで美晴ルートでひかりと沙夜が「いや暁斗が行くべきだ」なんて言ってるのよ。最近まで教職を辞した真の理由を知らなくて、とか言うんだとしても、もう知ってるんだし、幾ら美晴と暁斗が一緒に生活してるからといって、ノートのことは暁斗任せにしてほしくなかった。
暁斗は美晴先生の教え子だった。だけど同時に、ひかりと沙夜だって教え子だったわけだ。そしてその三人が惑星観察ノートを作り上げた。だからその三人の間に優劣なんてない。
せめてノートを森田さんの前で再び見せるシーンで、こっそりひかりと沙夜もいて「そう、そうだったんだよ!(ババーン」みたいなタイミングで感謝の言葉を言いに行くのが見たかった。これは普通に美晴ルートだとしても出来たと思うんだけどなぁ。
でまぁ、これらを効率よく、ひかりアフターや沙夜アフターと別にやるとなると、えちシーンなし美晴ルート(的なtrueルートみたいなの)かひかりと沙夜のハーレムルートが妥当になるんですよね。でどっちの方が需要ありそうかといえば後者かな、というだけで。
それとは別にあれだけ仲いいと暁斗がちょっとでも優柔不断ならハーレムで付き合ってその上でどっちを選ぶか、みたいなのぐらいはあってもおかしくないんじゃないかな、とは思ったり。それが対等な幼馴染だからこそ。
別に本編感想に於けるひかりルート提案宜しくこういう方がよかったみたいな具体案があるわけじゃないですが(そもそも本来ハーレムルートって好きじゃない)、実際絶対ひかり/沙夜には負けられない! みたいなのはあったらにやにや出来そう。まぁ姉妹ブランドのLATTEの方の仕事かもしれないけど、前作でハーレム突っ込んでたんだし行けるって。
ひとまず、雑な流れとして。
ひかりと沙夜が暁斗取り合い
↓
そういや先生元気ないよね→暁斗が見た先生の様子を語る
↓
今度こそ惑星観察ノートを完成させようぜ!(ひかりルートと被る?)
↓
先生呼び出して三人で感謝の言葉
↓
で! どっち選ぶの!
まぁこの程度のシナリオでもいいから、先生は物語進行のスパイスに徹してくれた方が、個人的には輝いたと思うんです。なんなら先生視点で「あー暁斗は箒星と沙夜と取り合いになってるのかー、若いの爆ぜろーチッ」みたいなのを見ながら、けど裏で三人が画策してたことに気付かないで素直に感謝されて戸惑うとか。
あ、先生が「とりあえず決めらんないなら両方と付き合ってみたら?」とか適当言ったら暁斗が本気にしちゃったとかいうのも楽しそうだよね、まぁいいや。
なんというか、ころげては二つもファンディスク出したんだから、ひかりと沙夜に関してもう一個くらい何か作ってくれないかなぁ。自分が見たいだけ、というのはあるけど、少なくとも沙夜に関しては出したら甘々だけど妬くところもちゃんとやれば恐らく普通に売れるで。
補記:――って上で言ってたのが、先生はともかく幼馴染ハーレムだけでも実現してくれるとは正直全く思ってなかったです。いやほんと嬉しい。
追記Ⅴ
FDまでの描写を元に、本編中で描かれなかった「沙夜ルートに行った際のひかりの失恋」が描きたかっただけの二次創作公開してますので宜しければどうぞ。以下アドレスは共に全く同じ内容ですのでお好きな方で。
Pixiv:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8650819
ハーメルン:https://syosetu.org/novel/135027/
追記Ⅵ
やめて! ひなみんのJK的特殊能力で、さをとめのエロ本を焼き払われたら、生命維持が豚まんと直結してるチャンプ爺さんの精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、辞めないで暁斗! あんたがいなくなったら、ひかりや沙夜との約束はどうなっちゃうの? 週刊少年チャンプはまだ残ってる。ここを耐えれば、チャンプ爺さんがひなみんに気にせずエロ本を買えるんだから!
次回「暁斗卒業」。美晴先生スタンバイ!
追記Ⅶ
陽南「むつらぼしの会は、ズッ友、だよ……!」