良作J.Q.V.を生み出した昼王氏による、新たなディストピア観。しかしながら登場人物が抱える『闇』は、誰しもが持ちうる弱さで、シールがあろうがなかろうが逃れられない『痛み』を読者に突きつけるのだ。
これは、庁人硬度認定証によって、職業・能力・収入など、全ての自由を管理されたセカイでの、無能力者の代名詞ちゅーそつの少女達による非日常的な青春の1ページを記録したてつがく的物語である――――(命題1『じんせい』
最底辺であることは、怖いことだ。初期設定からまざまざと見せつけてくる本作。ちなみに1st graduationとありますが、全部で四部作の予定だそうです。
常々私が言ってることに「古今東西文化というものは奴隷又は最下層民を設定し、差別・区別の対象とすることによりそれを維持してきた」というのがあるんですが、割とそれを実践してきてるなと。
正直、この作品は、下手な感想をここで喋るより、読んでもらった方が早いと思う。完成版は同人ショップとかでは頒布してないので、DLでない限りはコミケを待つしかないのだが。
ただ、ネタバレなしで言うのなら、ギャグと銘打っているものの、あまりギャグが前面に出てくるわけではないので、そこは注意されたし。ぶっちゃけ面白いかどうか的な意味でもギャグ必要だったか? という。
というわけで、この作品のそれは、アルエのツイーターが全てを物語ってるように思う。
繋がることは怖いことだ。
アルエの叫びが、ネット上の誰かに届く日はくるのだろうか。(命題2『おくじょう』
そして、体験版でも読めるこのパートこそが、現状言えることの全てであると、私は考えた。
アルエ「『素晴らしい人生とは』」
アルエ「この最低な人生から逃げ出すこと」
アルエ「過去の罪を全て帳消しにして」
アルエ「新しく人生をやり直すこと」
(中略)
――――誰もがそうなのかもしれない。
皆、何気なく日常を送りながら、常にどこかで逃げ道を用意しているのかもしれない。
学歴や職歴に関係なく。
人間である以上は、脆弱性を切り離せないのだから――――
――以上、命題2『おくじょう』より
――素晴らしき人生って、なんだろう?
追記
最近の作品だと、07th Expansion最新作「トライアンソロジー」とかなりテーマ的には似通っているものの、こちらの方が鋭利に抉ってきます。
正直、テーマの書き方的にはこっちの方がとにかく優秀。ただ個人的にキャラやシナリオ運びなどは好きになれるのが殆どなかったのでそこは似たり寄ったり。
追記Ⅱ
とりあえずどう考えてもモチーフ的に朝○民主○義○民共○国辺りを使ってますよね。
四部作だそうですが、今後の展開として共産主義のディストピア的シナリオを本気でやってくれたらいいなぁ……。